パストラーナがデイトナ500に挑戦、他NASCAR情報

 NASCAR Cup Series、開幕戦のデイトナ500まであと1ヶ月ほどとなりましたが、開幕にして最大のイベントに向けて少しずつ動きが出てきました。1月17日、23XI レーシングはトラビス パストラーナが No.67 Black Rifle Coffee Company Toyota Camry TRD でデイトナ500に参戦すると発表しました。

2010年、スバル インプレッサを使用して自動車の大ジャンプに挑戦したパストラーナ

 パストラーナはモトクロス選手として有名で、2000年のAMAモトクロス選手権 125ccのチャンピオン。1999年に開催された第5回 X Gamesでは、この大会で初開催されたMoto X フリースタイルに出場し16歳で優勝、以後も史上初のバイクでのバク宙に挑むなどX Gamesを代表する選手の1人として活躍した、と個人的に思っています。
 一方でラリー活動にも進出し、2006年からラリー アメリカを4連覇。2006年にX Gamesで初開催されたラリー競技では決勝で1995年のWRCチャンピオン・コリン マクレーと対戦し、最後の最後にマクレーが横転するというマクレーらしい出来事により、ラリー競技でも初代優勝者となりました。

 幅広く活動の幅を広げるパストラーナは2011年にNASCARの下部カテゴリーに出場すると、翌年からエクスフィニティ― シリーズ等にさらにステップアップ。2013年の1年だけでしたがシリーズへのフル参戦も果たしました。最高位はリッチモンドでの9位で、他に10位が3回ありました。カップ戦は初挑戦となりますが、チャーターの無い車なので予選で出場権を獲得しないと決勝の出場権はありません。パストラーナは

「デイトナ500に出る機会を得られてワクワクしているよ。毎年、仲間のデイルの家に友達や家族で集まって観戦しているイベントで、人生で一度は出てみたいと思っていたレースなんだ。僕がスーパークロスで初めて勝ったのが16歳の時のデイトナで、2013年のエクスフィニティ― シリーズでは予選で3位だった。そのレースでは良い結果を出せなくて、最後は時速180マイルで後ろ向きに芝生に突っ込んでフィニッシュしたけど10位だったんだ。」

 2013年のレースというと、最後の最後に多重事故が起きて、カイル ラーソンの車が激しくフェンスに衝突してエンジンなどの大きな部品が飛散し、観客に負傷者が出たことで知られるレースです。ちょうどフィニッシュ地点で90度横を向いている黄色いNo.60がパストラーナです。


「これまで出場したことがないような大きなレースで、残り僅かな出場枠を手にするのは簡単ではないと思う。でも、23XIチームは私に舞台に相応しい車を与えてくれると信じているし、自分にもできる技術があると信じている。自分の力を最大限に発揮することが重要であり、23XI トヨタ チームでこのような試みができることをうれしく思うよ。
 彼らはスーパースピードウェイでは常に競争力があるので、デイトナに行けば強くなれると思う。友人や家族、懐かしい親戚もみんな来る予定だし、ファンのみんなやブラック ライフル コーヒー カンパニーのパートナーともこの瞬間を分かち合えるのが楽しみだよ。」

 とコメントしました。ちなみにブラックライフルコーヒーは、2014年に退役軍人のエバン ヘイファーという人が設立したコーヒー豆の販売店で、高級なコーヒーの販売を通じて退役軍人の支援を行うことを使命に掲げています。退役軍人の雇用の受け皿となり、起業支援なども行う組織だそうです。
 チャーターを持っていない人の本戦出場は参加者が多いと非常に狭き門になりますが、23XIの車の速さが助けとなるかどうか注目です。では、その他の気になった話題を大雑把にお送りします。

・C.スミス、デイトナ等5戦に出場

 2022年のクラフツマン トラック シリーズで3位、今季はコウリッグ レーシングからエクスフィニティ―にフル参戦することが決まっているチャンドラー スミス。カップでも QuickTie のスポンサーによりコウリッグからスポット参戦し、まずはデイトナ500に参戦することが発表されました。カーナンバーは13を使用します。
 現時点ではデイトナの他にリッチモンド、オールスター戦、タラデガ、そして最終戦のフェニックスへの出場が予定されています。クイック タイは建築構造物に用いる締結金具やアンカー ボルト等の製造・販売を行っている企業のようです。
 

・プロジェクト91、デイトナは無し

 一方、世界の有名ドライバーをNo.91のドライバーとして起用する、トラックハウス レーシングの"プロジェクト91"はデイトナ500では行われないことが確認されました。年間6~8戦で行いたい、という意向が示されていたため最大のレースでも実施されるのか注目でしたが、デイトナは普段の2人・ロス チャステインとダニエル スアレスの2台に集中してデイトナ制覇を目指します。

・ラーソン、2024年のインデイー500へ

 一方で、インディーカーへNASCARのチャンピオンが挑戦することになりそうです。ラーソンが2024年のNTTインディーカー シリーズ・インディアナポリス 500に、アロウ マクラーレン SPから参戦すると発表されました。
 2024年の日程はもちろん発表されていませんが、インディー500とカップシリーズのコカ-コーラ 600は同日開催になることが確定的ですので、同日に両レースに出場して1100マイルを走ることになりそうです。"ザ ダブル"に挑戦したのは2014年のカート ブッシュが最後で、1100マイルを全て走り切ったのは2001年のトニー スチュワートしかいません。

・ペティー GMSが名称を変更

 2022年にGMSレーシングがリチャード ペティー モータースポーツを買収する形で新たに設立されたペティー GMS レーシング。エリック ジョーンズがダーリントンで優勝し、2023年はジョーンズと新人のノア グレッグソンの組み合わせでさらなる結果を狙います。ジミー ジョンソンが共同オーナー兼スポット参戦ドライバーとして加入するなど話題が多いですが、なんとチーム名が変更されました。
 新たなチーム名は『レガシー モーター クラブ』。銀行が合併して名前が長くなったら全然違う名前を付けた、みたいな感じでガラッと変わった上に、あまりレース組織としては耳慣れない感じの響きになりました。オーナーのモーリー ギャラガーは

「ちょうど1年前、私はリチャードペティーモータースポーツを買収する機会を得ました。 我々は2022年シーズンを通して、ダーリントンのサザン500でのエリックの勝利、2023年のノアのチームへの加入など大きな前進を遂げました。ジミーがオーナーとして加わったことで、彼の経験と知識による変化は避けられないと思っていました。我々の目標はレースに勝ち、チャンピオンシップを獲得し、最高レベルのパフォーマンスで我々のパートナーを代表することです。レガシーM.C.の新しいイメージは私たちを際立たせ、成功をもたらすチーム環境を育むものです。」

とコメント。また新任オーナーのジョンソンは

「新しいチーム名についてブレインストーミングをした後、モーリーと私は何か特別で異なることをする機会があることに気づきました。私たちは過去に敬意を表し、未来を認める名前(=レガシー)が重要だと考えました。"モーター クラブ"という言葉は過去の自動車クラブにちなんだものです。レガシーMCは自動車レース愛好家のための包括的なクラブになります。また、レース以外でもこのスポーツの新しい遺産を創造することを楽しみにしています。」

 なんだかよく分からない気もしますが、広い視点で捉えると1つ思い浮かぶことがあります。少数オーナーになった上に、チーム名からも名前が消えたリチャード ペティーですが、彼と言えば『ペティーズ ガレージ』というチューニング店が有名な他、『リチャードペティー ドライビング エクスペリエンス』という運転講習でも知られています。
 こうした、車好きの一般ユーザー、レースに直接関わるわけではないけど、スポーツ走行を楽しみたい、といった人たちとNASCARチームとの関連付けとして、ジョンソンが言うような『自動車レース愛好家のための包括的なクラブ』というものが何か形として成立すると、後々分かってくることがひょっとしたらあるのかな、と思いました。
 御年85歳のキングペティー、現実問題として彼の名前を冠した活動にはいつか終わりが来ますし、まだキングが元気なうちに、代替わりではないですけど、そうした活動を次世代へ、より広いファンへ、というようなことができると、お客さんにとっても意義あるものになるのかもしれません。私の考えすぎかもしれませんけどw

テスト用スキーム

 また、スポット参戦を予定するジョンソンが使用するカー ナンバーが84であることも併せて発表されました。かつての番号である48を逆にした数字であり、また彼は通算で83勝しているので、次の勝利を狙うという意味もあるかもしれません。
 記録によればNo.84はカップシリーズで通算223回使用されており、誰も優勝したドライバーはいません。最も使用したのはA.J.アルメンディンガー。2007年~2008年にチーム レッド ブルで計38戦使用しており、最後に使用したのは2011年のコール ウィット。レッドブルが活動をやめて閉鎖されて以降は84で出走したドライバーはいません。

・シプレ、処分解除&移籍

 昨シーズンのプレイオフ第6戦・シャーロットのレース後に無期限の出場停止処分を受けたマイク シプレ。NASCARは1月10日に処分の解除を発表し、これを受けてリチャード チルドレス レーシングは、シプレをエクスフィニティ―シリーズのコンペティション ディレクターとして起用すると発表しました。スチュワート-ハース レーシングのクルー チーフだったのに、ひっそりと移籍していましたw
あかん指示を出したシプレの無線

 シプレはシャーロットの最終周、チームメイトのチェイス ブリスコーを援護するために、意図的にドライバーのコール カスターに対して後続車の邪魔をするような指示を出したとして無期限の出場停止処分を受け、チームの控訴も棄却されていました。
 シプレはクルーチーフとしてカップ、エクスフィニティ―双方で200戦以上の経験を持ち、ケイシー ケイン、ラーソン、タイラー レディック、カスターといったドライバーと組んで通算で24勝を挙げています。意外なところでは現在のトラックハウスのオーナー・ジャスティン マークスと組んで2016年のミッド-オハイオで優勝しています。2018年のラスベガスでチャステインがエクスフィニティ―初勝利を挙げた時のクルーチーフもシプレでした。

・シカゴランドでモトクロス開催

 2019年を最後にレースが開催されず、その後工業団地の建設計画予定地に含まれているという情報が流れたり、NFLのスタジアム誘致の噂が出たり、挙句2023年にはNASCARがシカゴの市街地でレースを開催することになり、完全にいらない子状態になっているシカゴランド スピードウェイ。一体どうするのかと思われる中で、スーパーモトクロス 世界選手権のイベントが開催されることになりました。
 3戦で開催されるシリーズのプレイオフ2戦目の開催地として、9月23日にイベントが開催されることが発表されました。イメージ図を見るとフロントストレッチからターン1あたりに特設のダート場が作られるみたいですね。これ元々のターン1のウォール突き破ってるけどどうなってるんだw

 シカゴランドのオーナーはNASCARなのでほったらかしにはしないでしょうが、次にどういう展望を描いているのか、まずは復活の第一歩という感じでしょうか。

 とりあえず今回私の目に留まった話題はこんな感じでした。後でチーム情報のページも色々更新しておきます。

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