NCS プレイオフ 第9戦 マーティンズビル

NASCAR Cup Series
Xfinity 500
Martinsville Speedway 0.526miles×500Laps(130/130/240)=263miles
winner:Christopher Bell(Joe Gibbs Racing/DEWALT Toyota TRD Camry)

 NASCAR カップ シリーズ、いよいよ残るは2戦。プレイオフ ラウンド オブ 8の最終戦はシリーズ最小0.526マイルのマーティンズビルです。先週は出場停止処分により欠場だったバッバ ウォーレスが復帰、またアレックス ボウマンは最終戦のフェニックスで復帰することが発表されました。ノア グレッグソンは最後の代走ですね。大事なのはプレイオフの争い、レース前の段階でのポイントは

 こうなっています。私が『苗字がBで始まる4人がファイナル』と書いて呪いをかけたのか、ライアン ブレイニー、クリストファー ベル、チェイス ブリスコーの3人が脱落圏。もう1人のウイリアム バイロンがギリギリの状況です。ベルとブリスコーは勝たないとほぼ無理、ブレイニーも優勝かそれに近いぐらいの結果が必要ですね。

・エクスフィニティ― シリーズ

 エクスフィニティ―シリーズもラウンドオブ8最終戦、Dead on Tools 250。なんか怖い名前ですけどハンマーなどの工具と、それを腰にぶら下げておけるツール ベルトなんかを扱っている会社みたいですね。
 レースはプレイオフ争いとマーティンズビルの特性があわさって、とりわけ最終ステージは接触だらけ。レース前の段階で既にチャンピオンシップ進出を決めていたジョッシュ ベリー、グレッグソンに続き、ステージ2を終えた段階でタイ ギブスがポイントでの進出を確定させて残りは1枠となります。
 この段階でポイントで4位なのはジャスティン オールガイアー、1点差でA.J.アルメンディンガーとなっていました。レース前はAJが5点リードしていたのを、ステージ ポイントでオールガイアーがひっくり返していました。

 迎えた最終ステージ、一発逆転を狙ったオースティン ヒルは213周目の接触事故で車が中破。228周目のリスタートからはオールガイアーとAJの直接対決になり、お互いに順位を入れ替えるたびに後ろからぶつけて抜き返す構図。最終的に側面同士の接触でアルメンディンガーのタイヤがパンク。スピンしてコーションとなりAJ一歩後退。
 その後のコーションでオーバータイムとなると、これまた優勝で逆転サヨナラホームランといきたいブランドン ジョーンズとギブスの争い。リスタートで前にいると必ずぶつけられて抜かれる、というもはや後ろの人有利な状況に、さらに事故連発でとうとうトリプル オーバータイムに突入しますが、最後は最終周にギブスが完全にジョーンズを吹っ飛ばしてコーションを出し優勝。

 既にギブスは最終戦の権利があるのでどうせならチームメイトを勝たせてもう1台送り込めばよかったのに、そんなことお構いなしの個人戦で同僚のチャンスを潰して今季6勝目・通算10勝目を挙げました。オールガイアーが5位、アルメンディンガーは16位に終わり、最後の1枠はオールガイアーが手にしました。
 これでエクスフィニティ―シリーズのチャンピオンはグレッグソン、ギブス、ベリー、オールガイアーの4人で争われることになりました。ジョー ギブス レーシングが1台と、あとの3人は全員JRモータースポーツですね。
 なお、NBC/USAネットワークのリポーターとしてお馴染みのパーカー クリガーマンが、来季はビッグ マシーン レーシングの48番でフル参戦することが発表されています。パーカーはタラデガでこのチームから出走して6位の結果をおさめています。パーカーがんばって!

・予選

 カップシリーズの予選、ブッシュ ライト ポール アワードは先週のホームステッドで圧倒的に速かったカイル ラーソンが獲得。チェイス エリオット、ブリスコー、ブレイニーと続きます。ポイントで優位な状況なので大事に行きたいロス チャステインが9位、稼がないとまずいデニー ハムリンが11位、ベルが20位、バイロンが25位です。
 今回Moji Sushiというお寿司がスポンサーについているトッド ギリランドが19位、トライデント シーフーズという会社が運営しているブランドのようで、日本でも水産加工業をしていて日本法人があります。ニューハンプシャーで78番のMy Mochi Iceの話題を書いたらいきなり事故ったので、今日は寿司が無事に最後まで走ることを願います。しかしアラスカサーモンを原料としたサプリメントって何なんやw

・ステージ1

 スタート直後にいきなりトラブル発生、国際映像の周回数表示がなぜか1 of 499、1 of 498、と総周回数の方が目減りしていく謎の不具合を起こしました。4周目に復旧したけどどういうミスなんやw
 ラーソン、チェイス、ブレイニー、ブリスコーの上位4台で非常におとなしい序盤戦。25周目あたりから周回遅れに追いつき始め、車間距離が一気に詰まります。ラーソンはけっこう長いことランドン カッシルに詰まってましたが、カッシルのスポンサーであるネイションズ ガードってヘンドリック系の会社で去年はラーソンのスポンサーでもありましたね^^;

 68周目にはペースガタ落ちで29位になっていたカイル ブッシュが周回遅れになりますが、この辺りに大量の周回遅れがいて大混雑、翌周にチェイスがラーソンの内側に入りました。本日初のリード チェンジです。23位にはバイロンがいるのでこのままコーション無く走り続けるとバイロンはリード ラップを守れない可能性が出てきました。
 77周目、4位に落ちていたブレイニーは伏兵・コール カスターに思いっきり押されて3つも順位を下げてしまいます。当てられたことよりも車がかなりルース方向で運転が困難であることを怒っている様子。
 ペース鈍化はブリスコーにも訪れ、加えて無線にも不具合が発生して自分からチームへの一方通行になっている模様。ラーソンもやはりペースが落ちてきて、この後ハムリンが2位、カスターが3位となります。カスター、謎の覚醒。

 ハムリンは2位になって前が開けるとそのままチェイスに追いつき110周目には真後ろに到達。119周目からは完全に並走し、3周かけてチェイスをかわしリードを奪いました。一方そのころ、カイルはもうホイールだけで走ってるんじゃないかというぐらいフラフラで3周遅れの35位、コディー ウェアーより遥かに遅い異常事態で、結局このレースを6周遅れの29位で終えました。

 ハムリンは残りの周回数でバイロンを周回遅れに蹴り出すべくさらに勢いを強め、なんならさっきチェイスを抜いた時よりも強引な走りでバイロンに襲い掛かり、ステージ最終周を前にとうとう抜くことに成功。もう1台抜けなかったのでバイロンはフリー パスを得られますが、フリーパス車両は隊列の最後尾からのリスタートなので、抜けないここではリードラップでステージを終えるのとかなりの違いがあります。
 ステージ1はハムリン、チェイス、カスター、ラーソン、ブリスコー、ブラッド ケゼロウスキーのトップ5となりました。20位スタートのベルがなんと7位です。ステージ間コーションでリードラップ車両がピットに入りますが、ここでブリスコーは給油缶がうまく抜けずに隣のピット ボックスまで転がってしまい痛恨のペナルティー、バイロンと仲良く最後方からのリスタートです。
oh my...


・ステージ2

 ハムリンがリスタートですっと抜け出してリード、チェイス、ラーソン、カスター、そしてベルが5位に続きます。中団でのスタートからなんとか巻き返して戦える位置まで戻してきました。それにしてもこのヘルメットカメラ、視界の様子がゲームとそっくりですね(え)


 ハムリンはチェイスに対して早々に1.2秒の差を付けました。このあたりはタイヤをいつどう使うかというマネージメントの考え方が違うのかなという印象です。どうせ抜けないトラックなので2位のチェイスは後ろに抜かれさえしなければ、無理に今タイヤを潰す意味があまりありません。
 188周目、タイラー レディックが車ではなく人間側の問題でリタイア、医療室を出た後はインタビューを断って去っていきました。後からの情報では、リスタート時に玉突きの接触があり、そこから気分が悪くなってしまって続行できなくなったとのこと。また脳震盪の犠牲者かと思いましたが次戦も出場は可能だそうです。そういえば開幕直後に「足が痺れて感覚が無い」と言っていたのもレディックでしたね。。。

 周回遅れを処理しつつもチェイスとの差をさらに広げたハムリン、210周目にはブリスコーの姿を捉え、その前方にはバイロンもいます。クリス ゲイブハートからも無線で「おい、前方に24と14がいるの見えてるか」と聞かれ「見えてるよ」と周回遅れに蹴り出す気満々です。
 216周目にブリスコー、2周後にバイロンを抜き、あとはハムリンがもう1台周回遅れを増やせば任務完了。リードラップ車両はこの段階で既に16台まで減りましたが、リードラップ車が減るとレースの終盤のコーションで後ろの人が新しいタイヤを投入する賭けをしやすくなるので、今10位あたりにいる人たちにとっては実はありがたい側面もあります。リーダーからすると大逆転を食らうリスクが微妙に増えるので良い面ばかりとも言い切れないのが面白いところ。

 225周目にはマクラウドが車両の左側、フロントのフェンダー後端から出火してピットに入ったので、タイヤカスが原因で内部から燃えてしまう問題がまた起きたのではないか、と気になりますがステージ2はあっという間に残り20周。ハムリンはさらに周回遅れを増やしたので、バイロンが次のコーションでフリーパスを貰うのは絶望的。
 ハムリンは最終的に14位以下の車を全て周回遅れにしてステージ2を独走、2位のチェイスに大差をつけてステージ2も制しました。3位からラーソン、カスター、ベルのトップ5。

 ステージ2を終えた時点で当落線上の人のポイントはこうなりました。

2  Chase Elliott 4111 +24
3  Ross Chastain 4105 +18
4  Denny Hamlin 4102 +15
5  William Byron 4087 -15
6  Ryan Blaney 4080 -22

 2ステージ連続で大量点のチェイスが2位に浮上、ハムリンもチャステインと3点差で、バイロンももう勝たないと無理ですね。ベルとブリスコーは点数を書く意味が無いので割愛。5位以下の人が勝たなければ2~4位の3人は大事にリードラップで車を持ち帰ったらファイナル進出となりそうです。

・ステージ3

 ステージ間コーションのピット作業でチェイスとラーソンの順位が入れ替わり272周目にリスタート。しかしすぐラーソンはリスタートですぐチェイスに内側に入られて2位を明け渡してしまいました。まあここは無理しないですわな。
 するとリスタートの翌周、チャステインが明らかにブレーキングでミスってケゼロウスキーに強烈な一撃をお見舞い。ケゼロウスキーがスピンして本日初のアクシデントによるコーション発生です。これでバイロンがフリーパスを得てリードラップに戻り、チャステインはぶつけたのでタイヤ交換のためピットへ。チャステインは余計なミスでリードラップ車両を増やし、自分は順位が下がってこの先の不確定要素を増やしてしまいました。

 281周目にリスタート、またハムリンとチェイスのトップ2です。ラーソンはリスタート直後が弱い様子で6位へ後退。順位はハムリン、チェイス、カスター、ベル、ブレイニー、ラーソンとなります。
 このランではハムリンとチェイスの差はさほど開かないまま推移、また持久戦かと思ったら320周目にオースティン ディロンが単独でクラッシュして4回目のコーションとなりました。ブレーキが全然利かなかった模様ですが、少し前方にはチャステインがいたのであやうく巻き添えになるところでした。

 リードラップ車両がピットに入りますが、ハムリンは右側のタイヤ交換に手間取って4位に後退、逆にベルがここで順位を上げてリーダーとなりました。ベルが勝つとポイントの出場枠が2つになるので、現状ではチャステインとハムリンの争いです。今回はブリスコーがフリーパスを得てリードラップに復帰、周回遅れの人たちはウエイブ アラウンドを選択しました。だんだんレースが荒れてくるだろうからここはラップ バックを優先します。

 330周目にリスタート、ベルはリードを守り、チェイス、ブレイニー、ラーソン、ハムリン、カスターのトップ6。ベルはチェイスとの差を1秒以上に広げてステージ2のハムリンと似たような展開です。ハムリンはチャステインより4つ以上前で終えるとファイナル進出ですが、現状でチャステインは13位あたりでとどまっているので、このままだとスイカ男がまさかの脱落危機。

 393周目、J.J.イェリーがコリー ラジョーイに軽く押されたようでスピンしてコーション。先ほどのウエイブアラウンド組はそろそろ燃料が切れるころだったので非常にありがたいコーションになりました。上位勢ももし仮に何も起きないままだと500周目まで燃料がもつか微妙だったので絶好のコーションであり、極めて重要なピット作業となります。
 
 ベルは間に周回遅れを挟んでいたおかげで悠々と先頭でピットを脱出、ここにブレイニーが続きました。勝たないといけない2台がこの終盤で並ぶというなんという劇的な展開でしょうか。しかもハムリンはまた順位を下げて6位になり、チャステインは11位、さっきよりも差が詰まりました。
 404周目にリスタート、ベル、ブレイニー、チェイスのトップ3。ハムリンは早々に5位に上げた一方、チャステインは集団に埋まって14位に後退。自分がリードラップに呼んでしまったバイロンが前にいます。ケゼロウスキーに突っ込んだミスが悔やまれます。
 ベルとブレイニーの差は0.6秒ほどでしたが、残りが50周あたりになると周回遅れとの絡みもあってブレイニーが接近。エクスフィニティーのパターンからして最後に相手が後ろにいたら20000%当てられて終わるので、ベルはとにかく当てられない範囲まで離さないといけません。
 
 ところが467周目、カッシルがブレーキの故障で壁に突っ込む自損事故でコーション発生。残り30周ほどでリードラップ車両は17台、作戦をどうすべきか悩ましいところです。ピットが開くと上位はタイヤ交換を選択、ベルは堅実な4輪交換でしたが、ラーソン、ケゼロウスキー、バイロンの3台が2輪交換でベルの前へ。
 ハムリンは左前輪がうまく外れずに12位まで順位を下げ、なんとチャステインの後ろに回ってしまいました。そして、ブリスコーが大逆転を狙ってステイ アウトしました。カスターもステイアウトしており、明らかにチームメイトのため後方の壁になる考えです。もう荒れない方がおかしい情勢。

 残り24周でリスタート、ブリスコーはちょっとミスって危なかったけど、狙い通りカスターと1-2を形成します。3位をケゼロウスキーとラーソンが争って並走しているために差が開き、新品タイヤのベルはこの2台がいるせいでどうしようもない状況。ブリスコーにとってこれ以上ない展開。
 一方中団ではハムリンとチャステインがぶつけ合いの真っ最中。オールガイアーとAJの争いと同様にどちらかが潰れるまでやめないんじゃないかと思いましたが、481周目にわりとあっさりとチャステインが引きました。解放されたハムリン、4点差を付けるべく先を急ぎます。

 リーダーのブリスコーはカスターの献身的ブロックにより1秒差を築いて大きくリード、ローバルではあからさまに早いブレーキが故意の妨害と見做されて強烈な制裁を受けたカスターですが、今回はただ走ってて抜けないだけなので極めて合法です。
 この後、おそらくNBCの放送ではリーダー争いとチャステインが複数画面で映されていたはずなんですが、国際映像はなぜかチャステインの映像ばかりが映る致命的問題。残り13周でカスターがとうとうケゼロウスキーに抜かれ、2位以降が争いながらも一気にブリスコーに迫っていくんですが、その様子がほとんど分からずチャステインが映ります。担当ディレクターさん、チャステインが好きなんでしょうかw
 ベルは何度かケゼロウスキーと接触しつつも残り11周で2位となるとブリスコーの背後へ。こうなるとさすがにブリスコーも打つ手がなく、残り5周で縁石に乗りつつグリグリと内側からベルが前に出ました。

 どっちにちろチャステインはポイントでハムリンに勝つしかありませんが、ハムリンが5位まで上げたのに対しチャステインは10位。残り2周、もう彼の前に捕まえられそうな相手がおらず、ハムリンが誰かに撃墜されない限りは残念ながらあと一歩のところでファイナル4はその手からこぼれ落ちることになります。
 あまりに最後まで1点を巡る争いが激しいので、実況のリック アレンもうっかり「1Lap to go!」の後に「presented by Credit One bank!」を言い忘れてたぶん後で怒られてると思いますが、クリストファー ベル、今季3勝目はラウンド オブ 12の最終戦シャーロットに続き、またしても崖っぷちでの優勝でファイナル行きを決めました。
 私は、コメント欄でカイル・プッシュさんが「なんとなくベルがチャンピオンになる気がする」と書いていたところから「カイル・プッシュさんの言霊でマーティンズビルでベルは勝つ」と書いてきましたが、私が気まぐれで書いた「ブリスコーがうっかり最後の4人に残る」という言霊に勝ちました、あと3周ぐらいカスターが粘ったら行けてんけどなあ。

 ところが、本当のドラマはその後ろで起きていました。最終周、ターン3、チャステインの車に異変が起きました。
スイカ豪「いっけー、スイカマグナーーーーム!!!!」

ミニ四ファイター「おーっと、スイカ豪選手、すごい追い上げだあ!」

ギュィィィィィン

ミニ四ファイター「これは、これは・・・勝ったのはスイカセイバーだあ!」

 NASCAR・75年の歴史を覆す出来事が起きました。チャステインがターン3で減速することなく外壁に沿って壁走り、なんと数秒間で5台を抜き去りました。ダーリントン等で最後に壁に突っ込む人は稀にいますが、誰かに詰まるか、先に車が壊れるかで上手く行った試しはありません。
 以前にCherryさんから「ゲームではニューハンプシャーで壁走りすると速い」と聞きましたが、現実はそう甘くない、と誰もが思っていたら、現実にやる人が出ました。ロス チャステイン、あらゆるものを根底から覆す結末で5位でチェッカー、後にケゼロウスキーが重量規定違反で失格となったので正式には4位となり、ハムリンをポイントで上回ってファイナル進出を決めました。この周に記録された18.845秒というタイムは、2014年の予選でジョーイ ロガーノが記録したタイムを上回るNASCAR史上最速でした。
スイカ豪「やったぜ!」

「ゲームキューブのNASCAR 2005を(弟の)チャドと一緒にたくさん遊んで育ってきて、あれをやるとうまく逃げられたんだ。実際にうまく行くかは分からなかったけど、8歳の時にやってたんだ。5速に入れて、ターン2の出口、最終周に(まだ順位が)必要かと聞いたら、必要だった。誰がリードしているのか分からなかったし、僕はただ選択しただけだった。5速のギアを握ってバックストレッチを駆け抜け、全力を尽くした。壁にぶつかったら、ハンドルを切るようにして、ターン4のアクセスゲートとかヤバいものに引っかからないようにと祈ったけど、やり切ったんだ」
 とチャステイン。ミニ四駆ではなくゲームが原点でした(そりゃそうだ)。ちなみに、チャドは彼の6歳下の弟で、今年のトラックシリーズに3戦だけスポット参戦しています。オートスポーツwebもモータースポーツ.comも『兄』って書いてますけど、ロスはもうすぐ30歳、チャドは24歳なので間違いですね。

 とりあえず結果を振り返っておくと、優勝はベル、2位からラーソン、ブレイニー、チャステイン、ハムリンのトップ5でした。ブリスコーは9位、カスターは14位まで落ちました。でもカスターは今回良い仕事をして最後までレースを盛り上げてくれたと思います。ただどうも来年はライアン プリースと交代になる可能性が高いという噂です。モジスシのギリランドは13位となかなかの結果。そういえば『モジ』ってそういう意味だ、門司か?w
 最終戦でポイントが5000点にリセットされてチャンピオンを争うのは、ジョーイ ロガーノ、チェイス エリオット、クリストファー ベル、そしてロス チャステインの4人となりました。ちなみにオーナー ポイントのチャンピオンシップは、22、5、20、1の4台になっており、ラーソンが残っているのでチェイスが外れています。

 なぜか月曜日にTwitterのトレンドにNASCARが入っていたので、何かあったんだろうなとは思いながらネタバレしないようにしていましたが、そりゃあ話題になりますわな。ドライバーや関係者の反応も様々ですが、F1からフェルナンド アロンソがこの走りをTwitterで称賛していたり、逆にロガーノあたりは「こういうことが毎回起きるようなことは望ましくない」という趣旨の発言。ラーソンに至っては「恥ずかしい」としました・・・たしかあなた、ダーリントンで壁走りしませんでしたっけ?
 この件に関し、NASCARの最高執行責任者・スティーブ オドネルはシリウスXM ラジオの番組で

「同様の試みは見たことがありますが、成功したことはありません。75年の歴史の中で、誰もそれを成功させたことはないんです。そしてロスは、誰もが見たことのある、でも誰も考えていなかったような初めてのことをやってのけたんです。そのとき、誰もがテレビゲームの動きのようだと表現したんだと思います。」
「確かにルールの範囲内でした。初めて見るものは何でもそうです。あの動きについては、内部で何度も議論してきましたし、あらゆる可能性を考えてきました。しかし、現時点では、あれはルールブックの範囲内の動きであり、35レースで一つの方法をとってきたのに、36レース目でしわ寄せが来るようにルールを調整するのは正しいことだとは思いません。」

 と説明しました。今回の動きが成立するには、最終周の最後のターンであり、なおかつ旋回速度が低いトラックで、しかもそこが普段の走行ラインと異なっていることが条件となります。ダーリントンの場合普段から外も走るので、壁走りすると前の車に突っ込むことが多いですが、ここは外側なんて誰一人絶対に走らないのでがら空きでした。
 そしておそらくこれも重要な点ですが、チャステインの車載映像を見ると、綺麗に壁に沿って走っているように見えても、何度もガンガンと衝撃を受けながら走っています。昨年までの鉄製の車体であれば、おそらくどこかでフェンダーが曲がって、ターンを通過しきる前にタイヤか車が壊れて事故っています。
 今年の車両はカーボン製になってドライバーの脳震盪が問題となるほどに固いので、これが壁走りの成功に大きく寄与したと考えられます。先端素材を使わなかった過去74年間には起こせなかった、と言っても決して言い過ぎではないでしょう。
 気になるのは最終戦で同じことが起きないかですが、単に壁に接触したら無効、だとミスや接触の被害者まで全部アウトになるので競技規則として文言を明文化するのは非常に難しく、いきなり用意できるわけもないので、オドネルの言う通り規則として規制はできないでしょう。レイアウト的にフェニックスのターン3~4はそこまで半径が小さくないし、利益を得るのは簡単ではないと思いますが、1位以外の人でコンテンダーだと2位も36位も一緒なのでやろうとはするかもしれません。一番怖いのは2位のノン コンテンダーが無茶して1位のコンテンダーにぶつけてしまうことですけど、さすがにそこまでするアホはいないと信じましょう・・・

 とはいえ、マーティンズビルでこれから毎戦最終周に全員が壁走りをやり始めたらさすがに見た目にもマズすぎます。レース後にブリスコーは「俺もやれば良かった」なんて冗談半分で言ってますが、規則が変わらなければみんな本気になるでしょう。NASCARとしてもそのまま何も対策をしないというわけにはいかない情勢です。競技規則を考えるか、車両規則でフェンダーを潰れやすくするか、お偉いさんはオフへの難しい宿題ができました。

 ちなみに結果論ですが、ケゼロウスキーが失格になってステージ順位も全て抹消になったので、ハムリンのステージポイント20は変わらない一方、チャステインはいずれのステージもケゼロウスキーより下位だったので、正式な結果としてはステージ2を終えた段階でチャステインとハムリンの差は3点ではなく5点だったことになります。
 見た目上としてはハムリンは5位、チャステインがもし普通に走っていたら10位で終えていて、いずれもケゼロウスキーが失格になってレース後に1つ繰り上がるわけですから、5点差に対して5順位差、数字で言うと4135点で同点です。同点の場合は当該ラウンド内での最上位がより高い方がタイブレイカーを得ると規定されており、2戦連続で2位のチャステインは同点なら誰に対しても無敵の状態でした。
 ということは、もし仮にチャステインが大暴走せず大人しくチェッカーを受けていた場合、ハムリンが歓喜したものが翌日になってケゼロウスキー失格の瞬間に結果がひっくり返る、というこれまた信じられない結末が起こったことになります。もしそうなっていたらそれはそれで大騒動だったので、NASCARと、ひょっとしたらケゼロウスキーとRFKレーシングはちょっと助かった面もあるのでは、と思いました。

 たまたまこういう騒動が起きた時だけNASCARを目にする人は『ぶつけ合いでルール無用の荒くれレース』だと思い込みそうですが、10年間フルで見続けて、なおかつ日欧のレースもそれなりに見ている人間として1つだけきちんとお伝えしたいのは、NASCARは日欧のレースと違って、よほどの故意の危険行為以外は接触に一切ペナルティーが出ませんが、言い換えればペナルティーなど存在しないのに、接触させずにレースをさせることに長けたプロによるレースです。
 縁石や芝生があるので少々押し出しても許される日欧のレースよりも、即壁に当たるぶんだけインディーカーと同様にラインの残し方はシビアな面があり、相手にきっちりとラインを、しかも旋回速度の高い外ラインの人が立ち上がりにかけて抜き返すためのラインまで開けるのが常識で、ミスってぶつけたらレース中でも無線を通じて謝罪する人も多いです。真面目な話、F1ドライバーのバトルより平時はよっぽどフェアーだと思うことが多いぐらい。
 そんな中で稀にこういうことが起こるからこそ盛り上がるわけで、年がら年中ルール無用でぶつけあっているわけではありません。人によってはこういうのを引き合いに出してグランツーリスモ等で「NASCARなら当たり前だ」とか言って故意の接触を正当化している人もいるかもしれませんが、その人はNASCARを知らない人間だと思います。
 普段からお互いに信頼関係を構築してフェアに争っている中で、トラックの種類や場面によっては「このぐらいのことは最終局面ではあっても仕方ないよね」というある程度の暗黙知が生まれているからこそ、マーティンズビルでは遅い相手の後ろをコツンと押して「あなた遅いからそろそろどかないと吹っ飛ばしますよ~」という合図を出したり、最後はお互いにゴリゴリやったりできるわけです。
 普段からぶつけることしかできない人間は誰も相手にしませんし、もっと言うと根本的にNASCARの競技ライセンスが発行されない/取り消されるので門前払いでしょうねw
 競技の普及に『ニワカ』は大事なので、珍事からでもお客さんが来てくれるのは良いことですが、NASCARを頭の悪い色物レースだと一部分だけ見て誤解だけはしてほしくないなと思います。まあ、5穴ホイールを「3本も締まってたら十分じゃね?」と最初からナットを締めないぐらいにアホなことばかり考える連中であることには激しく同意しますけど(誉め言葉?)

 さて、いよいよ次戦は最終戦のフェニックス、各シリーズでチャンピオンが決まります。カップシリーズだけはドライバーとオーナーでチャンピオンが異なる可能性もあるので、4人のドライバー+ラーソンの順位が大事ですが、動画の公開までネタバレしないよう最後まで気を引き締めて参ります。

コメント

カイル・プッシュ さんのコメント…
ラスト1周以外はどうでもいい!そんなレースでしたね。
チャステイン、すごい!あれは誰も思いつかんでしょう、思いついてもやらないでしょう。
ルール云々ではなく、とにかくすごかった!
天晴れ!!!

と、チャステイン一色?のレースでしたが、主役はベルです!!
ベル、本当に勝ちましたよね!!
ベルも天晴れです!!!
SCfromLAさんと私の言霊で、本当にチャンピオンになりそうです!!
こーら さんのコメント…
最後の周のチャステインの壁擦り走りには驚きましたね。そのおかげ(?)で日本のメディアにも取り上げられていましたね。
あとベルが勝ってトヨタ全滅は防げましたね!
ウルミコス さんの投稿…
新たなミニ四ファイターの誕生をSCさんがどう斬るのか楽しみにしていました(っ ◠‿◠ c)
このまま勢いでチャステインがタイトル取ったらオモロイなと思いつつ、コバもロガーノもベルも今シーズンはそれぞれ物語性があり、甲乙つけがたいですね(っ ◠‿◠ c)

フェニックスは壁走りでアドバンテージなさそうですが、何がおきるか分からんのがNASCARということで今週末のドラマも楽しみです(っ ◠‿◠ c)
首跡 さんの投稿…
1台だけ壁にゴリゴリ当てながら、猛スピードでターンを駆け抜けていて爆笑しました。反応は様々ですが、間違いなく大勢の記憶に残るシーンだったと思います。

そして、次が最終戦フェニックス!
チャンピオンシップ4に残ったメンバーなら誰が勝っても嬉しいですが、私はチャステインを全力で応援します。今季の締めとして、あと1つスイカを割ってくれー!
Cherry さんのコメント…
ネタとしては面白いですけど真面目に走ってた人たちに失礼な気は正直感じますwあれでチャンピオンをロスに取られたら視聴しているスマホ破壊するかもしれませんw
取り敢えずチェイスに予選だけ速いスタイルを終えてもらって最後は圧巻の走りを決めてもらいたいですね。じゃないと泣いちゃう...w
正直ベルがかっさらってく気がするんで心の準備はしときます...
あっ、ちなみに昔ニューハンプシャー壁走りの話しした時、同じことできそうなマーティンズビルの話をしなかったのにはわけがありまして...
実はゲームの作り込みが悪いのか意図的なのか壁走りをするとターン1,2、ターン3,4の終わりにある謎の当たり判定突起物に引っかかって壁から弾かれるんです。そこに引っかかると結局減速してしまい、フロントにも謎にダメージが入るという損しかない結果が待っていますw謎の突起を避けるために減速してしまったら壁走りの意味がないので真面目に前の人を突っついて走るのが一番だったりしますw
日日不穏日記 さんの投稿…
チャステインの走りはトレンド入りしてましたね。ツイッターで思わず見てしまいました。ベルよりも、チャステインが大歓声を受けていて、ハムリンには大ブーイング。気の毒な気がしました。コンテンダー最下位だったエリオットが心配な気がします。ま、誰が勝つか分かりませんが。
SCfromLA さんの投稿…
>カイル・プッシュさん

 残り100周を切ってからが本番だとは思ってましたけど衝撃でしたね。でもやっぱりベルは勝つんです!
SCfromLA さんの投稿…
>こーらさん

 たぶんアロンソのおかげもあって普段NASCARに興味が無いヨーロッパの人にすら話題になったと思いますよw
ハムリンは壁走りで抜かれるか、翌日にケゼロウスキーの失格でいきなりひっくり返るか、という2つの結末しかなかったわけで、タイトルに手が届かない宿命なのかなあ、と思えてならないラスト10秒でした。
SCfromLA さんの投稿…
>ウルミコスさん

 先週何度も書いたミニ四駆が結果的に前振りみたいになったのでチャステインはここの読者ではないのかと疑ってしまいました(っ ◠‿◠ c)あと「コバ」ってw
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 私も爆笑しました。現地のコメンタリーも言ってましたけど、早送りにしか見えないような映像で正直何回見ても意味が分からないですw
日本でこれほどチャステイン熱が高い場所も珍しいと思うので、声援が届いたということにしてきましょう、ね、まっささん?
SCfromLA さんの投稿…
>Cherryさん

 そう思う人がいるのもまた当然だと思いますw あまりにコロンブスの卵的発想なので、負けはハムリンですらそこはレース後に怒って無かったあたり、ドライバーからするとなんかもう良い悪いの範囲を超えてしまってちょっと思考停止した感すら感じますw
グランツーリスモにも謎の出っ張りが時々あるので、たぶんそれも壁走り防止用に仕掛けた見えない壁ですね。チャステインもターン4で何かに引っかからないことを願っていたようなので、リアルでもたぶん運が悪かったら吹っ飛ぶんでしょう^^;
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 ハムリンは妙にブーイング、チャステインは歓声にちょっとブーイングって感じでしたが、ハムリンは去年のドーナツ阻止事件やらチェイス撃墜事件やらでここのお客さんからは格好の攻撃対象なんでしょうね^^;
チェイスもよく考えたら最終的にポイントがけっこうギリギリだったので気にはなりますね。今のところ予想オッズで一番人気みたいですが、期待値込みでしょうし。
まっさ さんのコメント…
皆さまのコメントが出揃ってから満を持して登場です!日本一のチャステイン(チャスティン)ファンのまっさです。
HREの服部さんが選んだドライバーなだけあるでしょ?
ダレルウォレスジュニアのように乱闘しないでコース上で悪者を成敗する謙虚さ(xfinity ハーヴィック撃墜事件参照)
そして、スイカ男はライバルにスイカを投げず自らスイカを食べることでパワーアップして名実ともに真のカップドライバーになりました。
新世代NASCARを全世界に、一般大衆に向けて広めた功績はシーズンMVPです。(異議は認めない)
良い、悪いは当然あるのは理解してます。(ラーソンのコメントだけは容認できませんが)
まだまだ歴史の浅いチームだからこそできた技なのかなと。
チームごと全世界に名前を売って長い長いNASCARの歴史に名前を刻むことに成功しました。拍手!ライコネンじゃなくても合法的な手段で話題になったことにまっさは涙しております。
チャンピオンまでもう少し!このモーメンタムを活かして突き進めーーーーーーーー!
警戒されまくりで厳しいかもですが世界最強のスイカ投げをフェニックスで披露してください!
今から推してもまだまだ古参ですよぉぉ!!!!!!

あ、オフシーズンにチャステインの生い立ちに迫る連載よろしくお願いします♫
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 いやあ確かにあの動きはスイカを食べて超加速したみたいに見えますね~、あと車が壊れない無敵モードにもなってますw
生い立ちはまっささんの方が絶対詳しいでしょw