ギブスがカップシリーズへフル参戦、他NASCAR情報

 NASCARは短いオフ期間に入りましたが、時々思い出したようにドライバーやチームの話題等をお送りしていきます。
 11月15日、ジョー ギブス レーシングはタイ ギブスが2023年のカップ シリーズに54番のトヨタ カムリ TRDでフル参戦すると発表しました。

 言わずもがな、オーナーであるジョー ギブスの孫であるタイ ギブス。2021年に18歳でARCA メナーズ シリーズにフル参戦してチャンピオンを獲得し、並行してエクスフィニティ― シリーズにも参戦し18戦で4勝を記録。
 2022年はエクスフィニティ―にフル参戦して7勝を挙げ、フル参戦1年目でチャンピオンを獲得しました。20歳 1か月 1日でのチャンピオンは史上4番目の若さでした。

 また、カップシリーズでもカート ブッシュの代役として15戦に出場、デビュー3戦目のミシガンで10位に入った一方で、残るレースは概ね20位近辺、平均順位22.9と高い壁も経験しました。
 祖父は孫の着実な成長を望んでいるようで、これまでに繰り返し2023年もエクスフィニティ―に留め置く意向をメディアに対しても示していましたが、カイル ブッシュとの残留交渉がまとまらずに移籍したためにシートに空きができたことが影響したものとみられます。
 クルー チーフにはエクスフィニティ―で組んでいたクリス ゲイルがそのまま就くことも発表されました。ゲイルは2017年~2020年にエリック ジョーンズのクルーチーフを担当して2勝を挙げています。デニー ハムリンを担当しているクリス ゲイブハートとちょっと名前が似てるので間違えないように気を付けないといけません^^;

 ただ、ご存知の通りギブス家については、タイがエクスフィニティ―でチャンピオンを獲得した僅かその数時間後、彼の父であるコイ ギブスが急逝するという極めて悲しい出来事がありました。本来であればこうした発表にはドライバーやオーナーのコメントが添えられているのが通例ですが、今回はそうした内容は一切盛り込まれておらず、現在は喪に服す期間であるため、喜びのコメントを発信する状況にはないと思われます。

 なお、発表にある通りギブスの車両はカイルが背負っていた18番ではなく、エクスフィニティ―で使用していた54番へと変更されています。発表された内容では、最後に『JGRは将来的にNASCARカップシリーズで18番を使用する予定です』と書いてありますが、カイルの長年のイメージから刷新する、敬意を表してしばらく欠番にしておく、といった意味合いがあるものと考えられます。
 ちなみに54番という数字、あまりカップシリーズでは見覚えがないですがそれもそのはずで、最後に使用されたのは2019年・リック ウェアー レーシングのギャレット スミスリーとJ.J.イェリーが2回ずつ使用して以来誰も使用しておらず、フル参戦となると2003年のトッド ボダイン以来。54番を背負って優勝したのは過去に1962年・1963年のジミー パーデューと、1973年のレニー ポンドだけです。

・プリースがカップへ昇格

 11月16日、スチュワート-ハース レーシングは2023年にライアン プリースがカップシリーズにフル参戦し、41番のフォード マスタングのドライバーとなることを発表しました。代わって、3年間この車のドライバーだったコール カスターはエクスフィニティ―へと活躍の場を移すことになりました。と、柔らかい表現を使いましたが要するに降格ですね^^;
ナッシュビルで優勝したプリース

 2013年のNASCAR ウィーレン モディファイド ツアーでチャンピオンを獲得したプリース。エクスフィニティ―シリーズでは2016年にJDモータースポーツからフル参戦したものの、シーズン17位に終わると勝てる環境を求めてチームを離脱。
 とはいえアテがないので2017年はシートが無い中、たまたま人脈を通じて話が来たのがエクスフィニティ―でJGRの20番。この年の20番は固定ではなく複数ドライバーで回すことになっており、プリースは持参金片手に売り込みをかけてニューハンプシャーのレースにスポット参戦、なんとそこでカイルに次ぐ2位になりました。
 さらに2戦後のアイオワに再び参戦するとなんと優勝。これでJGRから時々シートを得られることになり、翌年のブリストルでも再び優勝、こうした活躍のおかげで2019年から3年間はJTGドアティー レーシングからカップシリーズにフル参戦しました。しかし2021年はチームの財政難から彼のチャーターを用意できずに綱渡りでのフル参戦、そして2022年はJTGDが1台体制に縮小したためにシートを失いました。
 あ、ウィーレンなんとかってどんなシリーズやねん、というと、実はNASCARの数あるカテゴリーの中で唯一『オープン ホイール』の車両によるシリーズです。どちらかというとカップシリーズへと繋がるピラミッドからは少しズレた位置にあるようで、ここでチャンピオンを獲ってカップに来る、という感じのカテゴリーではなさそうなんですが、16歳からこのシリーズに出ているプリースは16年間何かしら出場し続けており、2021年にも7戦で3勝しています。
決してボンネットが吹っ飛んだわけではない

 シートを失ったプリースはSHRにリザーブ兼開発ドライバーとして雇われ、カップに2戦、エクスフィニティ―に3戦、キャンピング ワールド トラック シリーズには10戦だけ出場。このうちトラックでは9回のトップ10フィニッシュ、ナッシュビルでは優勝と一定の結果を残しました。共同オーナーのトニー スチュワートがプリースの能力を評価し、ジーン ハースに進言したようです。スチュワートは

「ライアンはこれまで何度か自分に賭けてきましたが、それらはいつも報われてきました。今度は、私たちが彼に賭けます。私はモディファイドツアーのレースをいくつか走ったことがありますが、多くの才能を持ったタフなシリーズです。ライアンのモディファイドツアーでの優勝は彼の才能を物語っています。
 そして彼は、ギブスからエクスフィニティ―シリーズに参戦することで、自分のチップをすべてテーブルの真ん中に押し込んで自分に賭けていることを証明したと思います。そして、ようやく巡ってきたチャンスに、彼は見事に応えたのです。今、ライアンはカップで正当な機会を得ました。我々は彼がいることを誇りに思いますし、彼が我々のレースカーで何ができるかを楽しみにしています」

とプリースの起用について語りました。プリースは

「この機会のために働いてきたんだ。今年の始めは何も保証されていなかったけど、レース カーであれシミュレーターであれ、時間をかければSHRは私のための場所だと感じた。SHRは、レーサーによるレーサーのための会社であり、まさに私が望んでいた場所だ。今シーズンが終わったばかりで、ほとんどの人が休みを取りたいと思っているのは知っているけど、私は早く始めたいんだ。」

 JTGD時代はクラッシュが多く、ただでさえお金のないチームでお金を使わせていて見ているこっちが心配になりましたが、下積みを再度経て得た機会で新しい姿を見せられるのか注目です。
 

 一方、カスターは2018年、2019年と2年連続エクスフィニティ―シリーズでシーズン2位の成績を残し、2020年からカップにフル参戦。ちょっと偶然っぽく第17戦・ケンタッキーで優勝してプレイオフに進出はしましたが、3年間でトップ10フィニッシュは僅か12回、ここ2年はいずれもチーム内の4人のドライバーで年間順位が最も低い数字で今季は25位でした。
2020年・ケンタッキーで優勝したカスター

「コール カスターは2017年からSHRの一員となり、私たちは彼が私たちと一緒にいてくれることをうれしく思っています。コールの経験は、エクスフィニティ―シリーズで成長を続けるライリー ハーブストにとって貴重なものとなるでしょう。」

 とスチュワート。SHRは2017年にエクスフィニティ―にも参戦を開始して以来、フル参戦するのは1台だけでしたが、来季はカスターとハーブストの2台体制となるようです。ハーブストは23歳、カスターは出戻ったとはいえまだ24歳で、SHRはケビン ハービックがもうすぐ47歳。
 エリック アルミローラは一旦2022年を前に発表した引退を撤回してもう2年の契約をしましたが、さすがにそこまで行ったらやめる可能性が高いと考えられるので、2024年以降のシートを巡る争いがチーム内で行われることになりそうです。カスターはエクスフィニティ―にフル参戦できるのかまだはっきり分かりませんけど^^;

・NASCAR、ブラジルにも進出

 NASCARはアメリカ以外にも

ピンティーズ シリーズ(カナダ)
ウィーレン ユーロ シリーズ(ヨーロッパ数か国)
メキシコ シリーズ(メキシコ)

の3つの海外シリーズを傘下に持っていますが、2023年に新たにブラジルでもNASCARの名を冠したシリーズ・NASCAR ブラジル スプリント レースが開催されることになりました。
 これは、元々2012年からブラジルで開催されているGT スプリント シリーズというカテゴリーとNASCARが提携し、新たにNASCARの名称を冠してシリーズを行うもの。このレースは元々共通の車体にカマロっぽい外観とマスタングっぽい外観を被せた車両で行われているレースのようで、NASCARとの相性は良さそうです。
 ただ、スペックを調べてみたらエンジンは最大排気量3.6L のV6エンジンで最高出力は公称360馬力。車両重量は1000kgとされており、アメリカのストック カーと比べると随分と軽量で扱いやすい車両のようですね。
 NASCARの冠を与えられたことで、より多い賞金が与えられたり、優秀な若手がNASCARのドライバー育成企画に参加するなどの特典が与えられます。ブラジルではストックカー ブラジルというシリーズが非常に有名で人気を誇っており、フェリペ マッサ、トニー カナーン、ネルソン ピケ ジュニアといった世界的に名前が通じるドライバーも参戦しています。
 こっちの方が550馬力のV8エンジンを搭載していて迫力があり、私の中でも『ブラジルで昔からやっているNASCARっぽいシリーズ』という認識なので、たぶんGTスプリントはちょっとマイナーなカテゴリーと思われます(Wikipediaのページも見当たらないぐらい)。NASCARの名称でどの程度浸透するのか気になるところですね。
GTスプリントレースはこんな見た目

 NASCARでは2023年のル マン24時間レースにガレージ56枠で参戦するための車両開発が進められており、またユーロシリーズでは3月に非選手権としてなんとフィンランドで氷上レースが開催されることも明らかになるなど、国際化、多様化を推し進めています。これはいよいよ日本にもNASCARがやってくるフラグですね(っ ◠‿◠ c)
 なお、ルマン仕様のカマロは先日バージニア インターナショナル レースウェイでマイク ロッケンフェラーの手によってテスト走行が行われたという情報です。

コメント

las vegas さんのコメント…
こんにちわ。カイルの移籍等あわただしくなってますね。やはり私としてはケロッグよりもM&M‘sのイメージが強くカイルの移籍はさみしくもあります。新天地でもさらに活躍してくれることを。
NASCAR JAPAN www やってほしいです。 昔、見に行けなかったのですが鈴鹿でサンダースペシャルってのやりましたよね?そのあとNASCAR見るようになったんで悔しい思いをしました。
自分ネタを一つ、2000年ごろに鈴鹿でTOYOTAフェスみたいなのがあって友人とピットウォークしていると、いろんなカテゴリーのTOYOTAのレーシングカーがあり、その中に見覚えのあるNO.5のTUNDRAが!!!そして人だかりの中になんとMIKE SKINNERが!!!!私はその時の格好が黒のつなぎにキャップを後ろにかぶりサングラスをしていました。友人にビデオを回してもらいながらMIKEといっしょに握手をしながらサムズアップ!!人ごみを抜けて興奮しながら友人と喜んでいたところなぜか知らない人が私の横に並び一緒に写真を撮ってきて握手を求めてきました。私もなぜか一緒ににその人とサムズアップしながら写真に納まりましたwww 友人爆笑 私を関係者と勘違いした様で。懐かしい思い出です。 SCさんいつも貴重な情報ありがとうです。 Matty Dも忘れないでね。
では。
SCfromLA さんの投稿…
>las vegasさん

 こんにちは~、サンダースペシャルはNASCAR公式でフルレース動画が公開されてますが、若かりしころのリポーター桃田さんとかも見れて面白いですねw
 確かにトヨタのイベントって注目度が低いけどストックカーが日本まで来る貴重な機会になってるのをレース番組とかで目にしましたね(といっても番組ではNASCARなんて扱わないのでただ映ってるだけ)。関係者と間違われるのが面白すぎて思い出し笑いしそうなレベルなんですが、写真を撮った人のその後も気になります。家に帰って「これ誰やねん」ってなってそうw