F1 第21戦 ブラジル

FORMULA 1 HEINEKEN GRANDE PRÊMIO DE SÃO PAULO 2022
Autódromo José Carlos Pace 4.309km×71Laps=305.879km
winner:George Russell(Mercedes-AMG Petronas F1 Team/Mercedes-AMG F1 W13 E Performance)

 2022年の長いF1シーズンもあと2戦になりました。第21戦はサンパウロGP、今回は今年3度目、ブラジルでは昨年に続く2年連続のスプリント制度適用レースとなっています。そういえば2017年のフェリペ マッサを最後にブラジル人のフル参戦ドライバーは途絶えたままで、この熱狂的ファンが集うイベントに地元ドライバーがいないレースが続いてますね。

・レース前の話題

 11月11日、アメリカの暗号資産交換業大手・FTXトレーディングが連邦破産法第11条を申請して経営破綻しました。トム ブレイディ―、ステフェン カリー、大谷 翔平、大坂 なおみといった有名アスリートとアンバサダー契約を結んでおり、F1ではメルセデスが2021年9月にスポンサー契約を結んでいました。
 正直、この手の新興分野の企業がやたらと羽振りよく有名人を広告に多用するような時って中身が伴っていないのに大きく見せかけようとすることが結構あるので、大谷が契約したと聞いた時にも「さすがにちょっとこの手の企業とは契約しないでほしいな」と思っていました^^;
 というわけでメルセデスはこの週末にFTXとの契約を停止してロゴの掲載を取りやめました。今は「契約していた大谷らにお金は入るのか?」みたいな話になっているみたいですが、広告塔になっていた人たちに対しては場合によっては「詐欺的企業の宣伝に加担していた。有名人が起用されているから信用したのに騙された!」と訴訟を起こされる可能性もゼロでは無いので、私はそっちを気にした方が良いんじゃないかと思ったりしますね。。。

・予選

 金曜日はお天気が今一つで予選は小雨混じり、かつそのうち大雨になることが目に見える中での戦い。Q1はインターミディエイトから終盤にスリック、Q2はスリック、と来て迎えたQ3。とりあえずスリックで降らないうちにタイムを、とピット出口にみんな車を並べる中で、シャルル ルクレールだけなぜかインターミディエイト^^;
 「インターは俺だけ?」と走る前からテンション下がり気味のルクレール、とりあえずそのままアタックに入ろうとしたらピット入り口の寸前でいきなりピットに入るように言われて間に合わず変なラインで計測周に入り、結局計測せずピットに戻るという全く意味のない時間を過ごしました。
 その間に他の人は最初の計測を終えましたが、計測2周目に入ったジョージ ラッセルがターン4で飛び出してしまいセッションは赤旗中断。この間にいよいよ本格的に雨が強くなり、もはやこのスリックのタイムを再開後に更新することは不可能になってしまいました。
 結果、ピレリ ポール ポジションを獲得したのはなんとケビン マグヌッセンでした。ピットに先頭で並んでとにかく飛ばして1周目に速かったことが幸運を手繰り寄せました。ちなみにオーナーのジーン ハースは翌日が誕生日です。2位にマックス フェルスタッペン、自爆したラッセルが3位、ルクレールはタイム無しで10位、このチームは何かやらかさないと気が済まないのかw

ハースのスタッフ大はしゃぎ

・スプリント

 24周のスプリント、大半がソフトを選ぶ中でフェルスタッペンがミディアムを選んでスタートしたので、マグヌッセンは最初の2周だけラップ リードを記録しますがここからは速い人に譲っていきました。レース前に私は「8位で1点獲れたら上出来やろうなあ」と思ってたんですが、結果本当に8位でしたw
 フェルスタッペンは前に出たらそれで終わりだろうと思ったら、なんとラッセルが常にDRS圏内で追走し、周回を重ねてもソフトだから不利ということもなくフェルスタッペンを追い詰めて15周目にとうとう1位へ。フェルスタッペンは19周目にカルロス サインツに抜かれた上にウイングを踏まれて翼端板も失い、結局スプリントは4位止まり。

 レース結果はラッセル、サインツ、ルイス ハミルトン、フェルスタッペン、セルヒオ ペレス、ルクレールの順となりますが、サインツにはPU部品追加投入による5グリッド降格があるので、決勝はメルセデスの2台が1列目に並ぶ形となりました。とうとう勝てるかメルセデス。決勝日が誕生日となるランド ノリスは6位スタート。

 一方2台並んで最悪なスプリントだったのがアルピーヌで、エステバン オコンとフェルナンド アロンソが6位、7位でスタートしたのに1周目から身内でバトル。ターン4でアロンソが押し出されると、ストレートではアロンソがスリップストリームから出るのが遅すぎてウイングの端をオコンにぶつけてしまいビリへ転落。
 オコンの車にも損傷があるのかペースが上がらず抜かれまくり、アロンソには接触に対して5秒ペナルティーまで発行されるグダグダの展開で、オコンが17位、アロンソは18位と酷い結果でした。コンストラクターズ選手権で4位を争うマクラーレンには大チャンス。

・決勝

 グリッド紹介は今週も絶好調の塩原節。「記録更新マックス、残るは"アレ"しかない」
 "アレ"というのは野球に興味が無い方にはさっぱりですが、阪神タイガースの新監督となった岡田 彰布がオリックス バファローズ時代に「優勝と口にするとみんな意識するので"アレ"と表現したらチーム内で流行し、交流戦で優勝した」という逸話から岡田監督の名物となったものを持って来たと思われます。この場合のアレは年間最高勝率記録ですね。

 フェラーリとハースはミディアム、他の上位勢はだいたいソフトを選んでのスタート。シグナルが5つ点いたと思ったらすぐに消えるせっかちなスタートでしたがメルセデスは1-2を維持しました。一番危ないセクター1をみんな通過したので一安心かと思ったら、ターン8でダニエル リキャードがマグヌッセンに軽く接触。マグヌッセンが回された上に、半回転して当事者のリキャードに命中するクリティカルヒット。2台が事故っていきなりのSC導入です。こりゃあ押した側が悪い。もし岡田監督が解説なら
「おーん、ねえ、はっきり言うて最近こういう事故多いよねえ。周りが見えてないというかね。やっぱりこういうエラーは無くしていかないと勝てないよねえ。」と言うことでしょう。

・リスタート

 7周目にリスタート、フェルスタッペンが加速のタイミングをうまく合わせたためハミルトンに対して大外刈り。ハミルトンもかなり突っ込んで応戦したのでフェルスタッペンはコースの右端に追いやられ、切り返しのターン2で接触。フェルスタッペンはウイングを損傷してピットへ、ハミルトンもダメかと思ったら、翼端板がホイールに真横から当たっただけで大きな破損がありませんでした。10位まで落っこちたもののレース続行。
 さらにターン6ではノリスとルクレールも接触してルクレールもまたクラッシュしてしまいました。SC導入かと思ったらルクレールは真正面から壁にぶつけたので足回りが無事でピットへ。この2件は後程フェルスタッペンとノリスに5秒ペナルティーが出されました。

 フェルスタッペンにペナルティーが出たのが疑問な方もいると思いますが、ターン1でハミルトンは外側になんとか1台分の空間を残しており、ターン2への進入の段階で0.3車身分ぐらい前にいました。昨年のイタリアGPで絡んだ時と状況が似ており、ここからハミルトンは内側の丸々1台分の空間は残さずに切り込んでいき、フェルスタッペンは黄色いソーセージ縁石に少し乗って跳ねながらハミルトンに突っ込んでいます。
 まだ横に並んでいるんだから内側に1台分開けるべきだろ、と内側にいた人は思いたくなりますが、鋭角なコーナーで内側にいるとブレーキも早く踏まなければいけないし、旋回速度も遅いので実際問題入ったところで抜けません。元々がブレーキで斜め後ろから入ってきて並んでいるというのもあり、判定としては『ここは前のドライバーのコーナーであって、後ろの人が引くべきだ』と判断されてしまいます。
この段階でもう引きなさいよ、という判定と思われる

 入られたって抜かれないのなら開けておいてあげても良いだろ、というとそういうわけにもいかず、ここからまた長い全開区間なので、ハミルトンとすると「お前が引けオラ!」とブレーキを踏ませて頭を抑えることで、ターン4で抜かれないように仕向けていると考えられます。
 ただ今回はそもそもリスタート直後に、ちょっと反応が遅れたハミルトンもやや怪しげな動きでフェルスタッペンを抑えたようにも見えるので、全体で見たらレーシング インシデントでも良かったのでは、とも思える争いではありました。去年のイタリアでもフェルスタッペンにペナルティーを出しているので、前例が多少効いたような気はしますが、モンツァよりここのターン2は角度も緩いですし、開けとかなあかん気が個人的にはするんですけどどうなんでしょうね^^;
 
 これで1位~3位はラッセル、ペレス、サインツの言うなればセカンド対決。1.5秒差のトップ2に対してサインツが少しずつ離されるのがタイヤ違いのせいか、単に限界なのか。

 17周目、サインツが思ったより早くピットに入りミディアムからソフトへ。ミディアムなら長く走りたいので謎のピットでしたが、右リアのブレーキ ダクトに捨てバイザーが詰まって炎上騒ぎになりそうだったのが原因でした。本来予定していた戦略とズレた上に、バイザーを除去する作業が伴ったので静止時間も長めの4.1秒、フェラーリには二重苦。
 一方リーダーのラッセルは「タイヤの状態は良いぞ、長く行こうぜ」と、メキシコでの失敗を意識したような無線。ペレスがアンダーカット圏にいたらそうはいかないんですが、20周目あたりからペースに差が出始めて差が3秒以上に開きました。ハミルトンの方も4位に浮上してずっと10秒差なのでラッセルと同等のペースで走れていることがうかがえます。

・ピット サイクル 1

 23周目、ペースが落ちて来た2位のペレスがピットへ、昨日フェルスタッペンが苦労したミディアムに繋ぎます。バルテリ ボッタスの後ろで戻ったのでちょっと埋まりました。すると翌周にラッセルがすぐ反応、もう1周引っ張っても良かった気がするんですけど、アンダーカットされるのが怖いメルセデス、とりあえず余裕で事実上の1位を維持します。ラッセルもミディアム。
 ハミルトンは29周目まで引っ張ってミディアムへ交換、フェルスタッペンとの接触でちょっとピレリの文字が消えてしまったタイヤとようやくおさらばです。元々ピット前はサインツから離れて前後に誰もいない4位にいたので、復帰してもやっぱり対戦相手が誰もいない4位、ラッセルからは15秒差です。

 36周目、サイクルがズレてしまっているサインツが2回目のピットへ、ミディアムに繋ぎますがまだ34周残っているのでもう3ストップ作戦しかありません。ハミルトンはちょうどサインツに次の周に追いつきそうだったので、争う前にいなくなってくれて幸運でした。誰にも詰まらず見た目上の3位となり、ラッセルから10.6秒後方なので元の位置に戻った感じですね。ペレスまでは4秒で、そのペレスは「プランB」と言われています。オカダさん、プランBって何でしょうね?
「そらバントでしょ」

 44周目、ハミルトンがペレスに追いつきますが、何せ昨年から何度となく通せんぼを食らっている因縁の相手。ちょっと苦手意識があるんじゃないかと感じます。また数周にわたって抑えられたら困りますが、今回は翌45周目のターン1で無事に外から攻略に成功、これでメルセデスが1時間ぶりに1-2に復帰しました。それにしてもルイスってブラジルで人気ですね、一番歓声が多い気がします。


・ピットサイクル2

 47周を終えるとペレスがピットへ、ソフトを1セットしか持っていなかったのでミディアムを投入。そうするとハミルトンはアンダーカットされたくないので翌周にピットに呼ばれますが、せっかく最初のスティントを伸ばしたのに、今度はえらい短く区切られたので本人には理解不能、「俺のタイヤ良いんだぞ!」と吠えつつ中古のソフトに繋ぎました。
 ハミルトンとしたら、自分は新しいタイヤで追い上げているので可能な限り引っ張り、もしVSCでも出たら利益を得られる状況を期待しつつ終盤勝負がしたかったんだと思います。実際、今日の雰囲気ならペレスをもう一度コース上で抜くことはじゅうぶん可能だったと思いますけど、メルセデスは堅実ですし、下手にラッセルを脅かすような行動も採りたくないでしょう。
 ラッセルも続く50周目にピットへ、こっちも急いで入る必要は無いんですが、3ストップのサインツが見た目上アンダーカットしそうだったので、それを避けるための対策と思われます。前日にスプリントで24周走れているので、残り21周ならタイヤの寿命にもおそらく問題はありません。ラッセルは1位で入って1位で戻りました。いよいよアレが近づいてきました。

 ターン2外側にいるおじさんがマーシャルかと思ったらサッカー元ブラジル代表・ロベルト カルロスだったのでちょっとビックリして笑ってしまいましたが、52周目にノリスがトラブルでターン11の先に車を止めました。これでVSCとなり、3ストップ組だったサインツはこれ幸いとピットへ、ああ、ハミルトンは待ってたら勝てたかもねえ。。。
 結局VSCはSCに切り替わったので、サインツは災いが転じて大チャンス到来。そしてマクラーレンが2台とも脱落したので、形勢逆転でアルピーヌにも大チャンスなんですが、あろうことか8位にオコン、9位アロンソと昨日と似た状況で、しかもアロンソはサインツ同様3ストップだったので今タイヤを換えたばかり。チームは再発を避けようとオコンに注意を促しますが、オコンは「レースさせてくれ」と反論します。ダメだこりゃ。
 
・リスタート(2回目)

 リスタートに向けて周回遅れのウエイブ アラウンドが行われますが、3人の周回遅れのうち指示が出たのはウイリアムズの2人で、角田 祐毅はなぜかお声がかからず。そのまま60周目、角田が4位と5位の間の変な場所に残った状態でリスタート。角田、当然コントロールラインを通過した途端にブレーキを踏んで道を譲ります^^;
 メルセデスは平穏に2台でリスタートを決め、3位がペレスとサインツの争いになりました。ミディアムでタイヤが目覚めていないペレスをサインツが攻めますが、なんともいえないペレスの動きもあって抜くことができません。その間にアロンソは綺麗にオコンを含む前の車を攻略することに成功。ぶつからなくてよかった。

 63周目、DRSが使えるようになってサインツはペレスを抜くことに成功、この後3位からサインツ、ルクレール、アロンソ、ペレス、フェルスタッペンという並びになり、チーム戦が活発になります。レッド ブルはフェルスタッペンに対して「アロンソとルクレールから点を奪ってやれ」と指示して順位を入れ替えました。ペレスとルクレールの選手権2位争いを意識しての動きです。
アロンソ絶好調!

 ただ、ペレスとするとこれでは自分の点数も減ってしまってなんだか釈然としないと思うので、フェルスタッペンが前の車を抜けなかった場合には順位を返す旨も伝達されます。
 一方のルクレールも「この状況だと選手権順位がどうなるか考えてくれ」と、サインツに3位を譲らせるように暗に要求。確かに3位と4位では点差も大きいですけど、表彰台をわざわざ譲って、サインツの結果を奪ってまで2位を獲りに行くべきなのかは正直微妙。しかもルクレールの1.2秒後方にアロンソがいて、それをフェルスタッペンがDRS圏に入って追いかけているので、変に譲ると数台に抜かれてまた笑いものにされてしまいます。

 最終周、ラッセルはハミルトンを従えて波乱の71周を走り切り、通算81戦目で念願のF1初勝利。メルセデスとしても苦労の末に今季初勝利を挙げました。2位にハミルトン、そしてフェラーリは入れ替えなかったので3位サインツ、4位ルクレールでした。
 そしてその後ろではフェルスタッペンに、「アロンソを抜けなかったらペレスに譲ってくれ」と指示が出ますが、正直私は疑っていました。DRS圏内でアロンソを追っているので、そのまま帰ってきて「最後の最後に逆転するチャンスがあったから譲る必要は無いと思った」とでも言うのではないか・・・結果、やっぱり順位を返さずに帰ってきました(´・ω・`) いや岡田さん、最後の場面、いかがでしょうか。
「そらね、譲れ言われて譲るドライバーいないですよ。そんな誰も2位とか3位とか興味ないですよ、はっきり言うて。僕もいっぺん、球児のセーブ王かかっとったから、横浜スタジアムで代打出した時に、4点差になったらセーブ付かへんから『悪いけど三振してきてくれ』言うたことありますけど、2位やったらね、そんなんやらんよね、普通。」
 特別解説のオカダ監督でした。

 イギリス人ドライバーによる1-2は2010年カナダGPでハミルトン、ジェンソン バトンが達成して以来12年ぶり。表彰台ではラッセルの優勝でイギリス国歌が流れますが、イギリスでは9月8日にエリザベス女王が死去してチャールズ国王が即位、これに伴って国歌が『God Save the Queen』から『God Save the King』に変更されています。


 F1世界選手権が始まったのは1950年ですが、2年後の1952年からエリザベス女王が即位して以来ずっとこの歌は女性バージョンだったので、男性バージョンがF1の表彰台で流れるのは史上初めてと思われます。と言っても歌詞が違うだけなので、吹奏だけの表彰台では(たぶん)一切違いが無いんですけどね。

 ラッセルは予選での自爆がある意味勝利への最初の鍵になっていたわけですが、スプリントでの安定した速さと焦らない勝負眼、決勝も極めて冷静なレースでした。2020年にハミルトンの代走でほとんど勝てそうなところまで行ったので、そういう意味では初めての優勝争いではないですが、また今回も勝てないと逆に勝てない呪いがかかりそうでしたから勝ちきってくれたのは嬉しかったです。
 非常に目が大きくて、見た目になんというかプロフェッサー感が漂っていると私は勝手に思ってるんですが、ドライビングもまさしく、かつてプロフェッサーと呼ばれたアラン プロストみたいな、何の面白味も派手さもなく最速でゴールに辿り着くようなスタイルなので、フェルスタッペン、ルクレールとまた違ったタイプで非常に期待しています。

 で、レッドブルはそんなめでたいメルセデスと対照的にレース後は不穏な状況。ペレスは指示を守らなかったフェルスタッペンに激怒、フェルスタッペンは私の想像よりも悪い反応で、指示を出したチームに対して明確に拒否を示した模様。とりあえずチーム側としては自体は収拾し、次戦ではペレスの2位獲得に全力を注ぐことを確認した、としていますが、まあ、そんなんねえ、考えてないと思いますけどねえ、おっとオカダ監督が出て来てしまった。

 そしてなぜかウエイブアラウンドでいないことにされてしまった角田、原因はシステムの不具合でした。レース映像が残っている方はもう一度ご覧いただくと分かるんですが、ちょうどVSCの少し前にラッセルに周回遅れにされた角田はSC時の隊列で2番目にいました。そこからピットに入ったんですが、第1SCラインを超えたらSCやコース上の車両を追い越しても構わないので、第1SCライン~ピット入り口までの短距離だけ角田は隊列より速く走って、ちょうどコントロールライン上では角田はラッセルよりも前にいました。
 ラッセルより前=リード ラップということになるわけですが、システムが周回遅れの車両を検知して対象者を決めるのがちょうどこのタイミングだったらしく、システム上で角田はリードラップと誤認されていました。この後もちろん周回遅れに戻るわけですが、システム上は対象者ではなかったので取り残された、ということが起きたようです。
 この仕組み、昨年の最終戦で周回遅れの取り扱いについてレース ディレクターの判断がコロコロ変わって不満が出たことから、人間が介在して恣意的運用にならないように機械化したみたいなんですが、そしたらグランツーリスモみたいなバグが出ました^^;
 どう見ても周回遅れの車が隊列内にいるんだからどうにかすれば良いのに、その仕組みが無いから放置になって、結果リスタート直後に上位に青旗の対象車両がゆっくり走っている、というアホな状況になりました。これは、たまたまSC導入時にリーダーの近くに周回遅れがいて、その人がピットに入って一時的にリードラップに戻らないと起きない不具合ですが、シルバーストーンみたいにピットがコースより近道だったりすると起きる可能性があります。
 しかも、角田の後ろ・17位にいたニコラス ラティフィーは角田を追い抜いてラップ バックついでに16位に上げており、SC中に前の車を追い越してはいけない、という大原則がこの変な不具合のせいで合法的に破られてしまっています。入賞圏外だったから大した影響は無いものの、これが周回遅れ12台のレースで同じ不具合が起きて、その人がチャンピオンを争っているドライバーで、最低でも2点獲れたのが11台に抜かれて一人だけ周回遅れの20位で0点でした、なんてことになったら笑い事じゃ済まないはず。
 角田の方も、リードラップに戻れるもんだと思って追い越していたらやっぱりダメだと言われた感じで、カメラの端っこの方に映っているので正確には分からないですが、ターン1でペレスに追突しかけて急ブレーキを踏んでいるように見えました。
 そして急ブレーキの後は指示に従って、一度は抜いたサインツの後ろに戻ったので、フェラーリ側からすると「これ、レース後にSC中の追い越しでペナルティーとか言われないよね・・・」といういらん疑念を生んでしまい、ルクレールに譲らない一因にもなったみたいです。

 新しい仕組みに失敗はつきものですから、絶対失敗しないものを最初から作れ、とは言いませんが、起こっている出来事があまりにお粗末であることを考えると、むしろ昨年の最終戦で起きた特殊な状況、というか曖昧な制度をディレクターが自分で思い付きで運用してしまった出来事の方がよっぽど特殊な気がするので、自動化ではなく規則の運用厳格化を徹底すれば済んだ話のような気がしました。
 最近、保育園の送迎バスなどで児童が取り残されて亡くなる痛ましい事件についての報道が多く見られましたが、なんというか今回の件は『バスに最新の安全装置を導入し、出欠確認システムも刷新したので、児童の姿が今日は全く見えないので登園していない気がしますけど何ら問題はありません』と言ってるようなおかしさを感じました。
 人間はミスするものなので機械で補助してそれを減らすというのは大事なんですが、機械一辺倒で人間がそれに依存すると結局はまた同じ出来事を繰り返す、あくまでちゃんと人の目で見て、自分の頭で考えなさい、そんなことがこの件から頭に浮かびました。みなさんも日常生活でくれぐれも機械を過信しないでください。うちの両親も、稀にガスコンロの安全装置に頼りすぎて弱火で空焚きしかけている時があります。。。

 次戦は、開幕戦横浜DeNAベイスターズ戦、じゃなかった、最終戦のアブダビです。そらそうよ。

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