NCS プレイオフ 第7戦 ラスベガス

NASCAR Cup Series
South Point 400
Las Vegas Motor Speedway 1.5miles×267Laps(80/85/102)=400.5miles
winner:Joey Logano(Team Penske/Pennzoil Ford Mustang)

 NASCAR Cup Series、プレイオフはラウンド オブ 8までやってきました。ここからの3戦でいよいよ最終戦でチャンピオンを争う権利を手にする4人が決まります。初戦は今年2回目のラスベガス。春のレースはコーション連発、タイヤのセット数制限と相まって戦略がバラバラになり、たびたびタイヤ無交換の動くシケインがさらに混乱を呼ぶなかなかの荒れたレースでした。
 カイル ブッシュが優勝まであと3周だったのにエリック ジョーンズが事故ってコーションになり、オーバータイムでアレックス ボウマンが勝った、というレースでした。そのボウマンはテキサスのレース後に脳震盪のような症状を起こして2戦連続で欠場していましたが、さらに3戦を欠場することが発表され、早くても復帰は最終戦となっています。

・レース前の話題

 この週末を前に気になるドライバー契約に大きな動きがありました。現在のリチャード チルドレス レーシングから2024年に23XIレーシングに移籍することが既に発表されていたタイラー レディック。
 RCRには来年からカイルが加入することになり、レディックはRCRの契約下にあるのにチームが彼の方を向かない、という状況に陥って処遇が注目されていましたが、今週になって「早期に契約が解除されるのではないか」という噂が流れ始めると、10月15日にRCRが契約の早期解除、23XIレーシングへの移籍を発表を行いました。
 そしてこれに呼応する形で、23XIのカート ブッシュは今季限りでフル参戦から退き、来季の45番にはレディックが乗ることを発表しました。カートは第21戦・ポコノ―の予選でのクラッシュで脳震盪の症状が見られたため、以降およそ3ヶ月にわたって欠場が続いており、そのまま第一線を退く形となりました。医師の判断により今期中の復帰も行わないとのことで、カートの姿は見られるとしても来年に、一部のレースで、ということになります。
 現在欠場を余儀なくされているボウマンもカートと同様にならないか心配ではありますが、結果的にレディックを発端とした契約問題は、カイルの移籍に兄のカートが絡んで最終的に収まった、という皮肉な結果となりました。

・併催レース

 さて、今週もエクスフィニティ― シリーズが併催でこちらもプレイオフ・ラウンドオブ8の初戦。ステージ1はポール ポジションのA.J.アルメンディンガーからノア グレッグソンがリードを奪ったものの、これをタイ ギブスが捉えてステージ1を制します。ステージ2ではグレッグソンがやり返し、リスタートで得た順位を守り切ってステージ2を獲りました。
 最終ステージもグレッグソンが優位かと思いきや、ここで争いに加わったのはジョッシュ ベリー。一旦はグレッグソンがリードを取り返しますが、161周目に出た3回目のコーションが分岐点となります。グレッグソンは先頭でピットを出たものの、ランドン カッシルが唯一のステイ アウト。
 167周目のリスタートでグレッグソンは後ろを警戒しつつもカッシルに前を抑えられて混戦になってしまい、この隙を衝いたアルメンディンガーがリーダーに。ところがAJは振動を訴えて思うように走れず、翌周にベリーがリードを奪還。そのままベリーが今季3勝目、ラスベガスでは昨年の秋のレースに次ぐ2度目の勝利を挙げてチャンピオンシップ進出権を手にしました。

 グレッグソン、ジャスティン オールガイアーが続きましたがこの2人はチームメイトながらレース後少し険悪な雰囲気に。コンテンダー8人中7人がトップ10フィニッシュでしたが、アルメンディンガーは結局ルース ウィールの疑いがあってグリーン中にピットを余儀なくされ、コンテンダーで最下位となる22位でした。
 なお、このレースにはキャンピング ワールド トラック シリーズに参戦中の女性ドライバー・ヘイリー ディーガンが出場してエクスフィニティ―でのデビューを果たし、13位と予想外の好結果でレースを終えています。

・ステージ1

 そしてカップ シリーズ。ブッシュ ライト ポール アワードは悩み事が無くなったレディックが獲得。オースティン シンドリック、ウイリアム バイロン、ライアン ブレイニー、ジョーイ ロガーノ、ダニエル スアレス、そして7位に先週のヒーロー・崖っぷちから生き残ったクリストファー ベルが続きました。デニー ハムリンはなんと31位。
 決勝が始まるとレディックとシンドリックが2周半にわたって並走しますが、やっとこさレディックが完全に前に出ました。3位バイロン、4位ブレイニーも1周目に軽く接触がありましたが接近戦を繰り広げ、「バイブレーションがある」と不安なことを言いながらも25周目にブレイニーが3位に浮上。バイロンはペースが落ちて来たようです。
 ペース鈍化はリーダーのレディックにも見られ、一旦広げたシンドリックとの差が失われると34周目にリード チェンジ。シンドリックがコース上で相手を抜いて自力でリーダーになるってあまり記憶に無いですね。
 
 ステージ折り返しが近づくと36周目あたりからピット サイクルとなります。1.5マイルはピットサイクル前にタイヤ爆発サイクルが来ることが多い今シーズン、久々にアンダー グリーンでのピットを見た気がしますが、このサイクルで最初にピットに入ったダニエル スアレスがサイクル前の4位からアンダーカットに成功してリーダーとなりました。逆にシンドリックは引っ張ったので8位まで後退。
 57周目、これまた早めのピットで7位から2位に順位を上げていたバッバ ウォーレスがスアレスを抜いてリードチェンジ。そのままリードを維持してステージ1は終盤となりました。ロガーノが徐々にウォーレスに迫っており最後にもうひと勝負あるのかが見どころになるはずでしたが、ステージ残り4周でカイルがスピン。コーションとなりました。
 これでステージ1はコーションの中での終了となり、ウォーレス、ロガーノ、スアレス、ベル、ブレイニー、シンドリックの順となりました。スタートから車が不調らしく70周目の段階で周回遅れとなっていたチェイス ブリスコー、ここでフリー パスを得てリード ラップに戻ることができました。

 放送席が注目したのはスピンしたカイルのグリル右端から出て来た大量の黒い粉。スピンして砂を拾ったわけでも、ブレーキ ダストでもなく、おそらくタイヤカスと思われ、普通に走ってる車のグリル内に大量に進入するぐらいタイヤ摩耗が激しいんだ、という話です。これ、冷却系にも影響するので厄介ですね。


・ステージ2

 ステージ2はウォーレスとスアレスの1列目、攻めたセッティングなのかスアレスが見事なリスタートでリードを奪うと、最近ちょっとスイカ投げがご無沙汰なチャステインも好リスタートでトラックハウスが1-2となります。
 一方のウォーレスは5位に下がってケビン ハービック、カイル ラーソンとの争いになっていました。94周目のバックストレッチで3台が並び、真ん中にいたハービックが引いてウォーレスとラーソンの争いに。内側にいたラーソンが外へせり上がって行き、ちょっと膨らみすぎてウォーレスが外へと追いやられてしまいました。
 一応ピッタリ1台分ぐらいの空間はあるものの、実際にはサイド フォースも効いてるのでそんな簡単に切り抜けられるはずもなくウォーレスが壁に接触。するとウォーレスは明らかに左に大きくステアリングを切りラーソンに突撃。ラーソンもろともクラッシュ。

 出火など緊急性のある場合を除きAMRセーフティー クルーが到着するまで車から降りてはならない、というのがNASCARの規則ですが、ウォーレスはこれを完全に無視して勝手に車を下りるとラーソンの方へと歩みより、
ふざけんなおら!

 ラーソンを小突いて乱闘、というか一方的にまくしたてました。この2人はプレイオフで脱落しているので、これだけならまあ勝手にやってろという話で済んだんですが、この事故に通りすがりのベルが巻き込まれて左後部にかなりの損傷。結局修復ができずそのままリタイアとなってしまいました。
 特にトヨタのドライバーであるウォーレスとするとトヨタのコンテンダーを破壊したという事実は最も起こしてはいけない結果、逆にヘンドリック モータースポーツからすると、チャンピオンを争う上で強敵となり得るベルが勝手に追い詰められたので、ラーソンを犠牲に得をしたような形になりました。


 医療室から出て来たウォーレスはさっそくマーティー スナイダーからインタビューを受けました。ラーソンのクルー チーフ・クリフ ダニエルズから「あれが報復じゃなかったら何なんだ」と言われていることについて

「クリフは賢いから、この車がいかに簡単に壊れるか良く知ってるんだろうね。 彼がやったように、スロットルを戻させるためにわざとフェンスに押しつけられたら、ステアリングが壊れたよ。たまたまそこに居合わせただけさ。嫌な出来事だ、チームにとって嫌なことだ。
すごく速い車だったけどショート ランのスピードが無くて見ての通り順位が下がり、ラーソンが3ワイドダイブ ボムを狙ってきた、こっちがクリアーになっていないのにね、こっちはスロットルを戻さなかったさ。前を走るのは初めてだけど戻さなかった。戻すような場所じゃなかったし、そして彼も戻さなかった。そしてジャンクになったわけだ。彼の酷い動きのせいさ。」

 マーティーは報復ではないのかとさらに質問を続けますが、ウォーレスは「マーティー、それは釣りだ」と、誘導するような質問に不快感を示しました。ただ、最後にベルを巻き添えにした件について聞かれると「・・・・スポーツ」とだけ答えました。自分でもマズいことを認識していますね。この話の続きは後ほど。


 リード ラップ車両がピットに入り、ここでハムリンが2輪交換で最初にピットを出ました。事故発生前は13位、2台が抜けて実質11位でしたが、自分のチームのドライバーが起こしたもめ事で順位が上がりました。103周目にハムリンとスアレスの1列目でリスタートしますが、後方で混乱がありリッキー ステンハウス ジュニアがすぐにスピンしてコーション。
 108周目にリスタート、2輪交換のハムリンは伸びを欠きスアレスがあっさりとリードを奪いますが、翌周にチームメイトのチャステインがこれをかわして新たなリーダーとなりました。スイカ男、走りがなかなかにゴキゲンです。

 燃料的にステージ2はなんとか給油無しで走り切れるのでここからは持久戦。スアレスは120周目あたりまでチャステインに付いていましたが、そこからペースが鈍化して2位にはブレイニー。ブレイニーはそのままチャステインの背後に迫ります。チャステインはなんとか順位を守ろうと奮闘したものの131周目にブレイニーがリーダーとなり、お次はロガーノがやってきました。今日のペンスキーはみんなタイヤのもちが良さそうです。
 ブレイニーはその後2位のロガーノとの差を着実に広めて2秒とし、そのままステージ2を制しました。ロガーノ、スアレス、チャステイン、ハムリンのトップ5。ハムリンはリスタート直後こそ順位を下げましたが、その後は安定したペースで周囲とそん色なかったので、2輪交換大成功&最終ステージに期待できる内容です。他のドライバーも2輪交換が効くというヒントを貰いましたね。

 ステージ間コーションで全車ピットへ。ロガーノが先頭、ハムリンが見るからに早い作業で3つ順位を上げて2位、ブレイニーは3位に後退。スアレスはジャッキを落とすのが早すぎて作業に大失敗し後退しました。なんかスアレスのチームってこういうのが多い気がする。

・ステージ3

 最終ステージ、リスタートからロガーノとブレイニーが抜け出しました。翌周にはチャステインが3位となり、ハムリンは4位へ。さっきは2輪交換で走っていたので、アジャストして4輪を交換するとバランスがさっきよりも今一つ、ちょっと合わない、なんてことは起こりがちです。燃料の重さでもバランスが変わりますし、この辺は妥協が効かないオーバルの難しさです。
 ロガーノとブレイニーは接近したままの争いで、一時ブレイニーが仕掛ける場面もありましたがかわしきれずにそのままの順位で進行します。一発で抜けないとたいていクリーンエアーを得た人が段々有利になりますね。ピットサイクルが訪れるまでの暫しの持久戦を楽しんでいたら、194周目にJ.J.イェリーがスピン。左リアのタイヤが壊れた様子でしたが、上手いこと内側に巻き込んで芝生に突っ込んだので壁には当たりませんでした。

 残りが70周弱という微妙な距離でのコーションですが当然全車ピットへ、ここでチャステインが3位から一気に先頭に躍り出ました。逆にロガーノは給油時間が長くてタイヤ交換後にかなりの待ち時間が発生し、8つも順位を下げてしまいます。ナットが締まっていない疑いがあったレディックや、燃費レースに賭ける後方の数名はリスタート前にピットで再給油しました。

 200周目、チャステインとブレイニーの1列目でリスタート。チャステインがリスタートで負けるはずはなくリードを守ります。一方ブレイニーはバイロンとの2位争いになりますが、バイロンは201周目のターン1で車が底打ちして完全にラインを外れ、並走するブレイニーへ向けてせり上がっていきました。
 しかし2台とも見事な動きでなんとか事故を回避し、順位を少し失うだけで済みました。これで2位にはどこから来たのかエリック アルミローラ、3位ハムリン、4位に春の忘れ物を取り戻したいカイル、貴方もいつの間に来てたんですかw
 
 207周目、ここまで頑張っていたシンドリックが壁に接触してタイヤをパンクさせ予定外のピットを強いられますが、コーションは無し。ぶつけてしまったシンドリックは結局このレース29位でした。
 残り50周、序盤は周回遅れになっていたブリスコーが、連発したコーションで車をなんとか合わせてきて8位に浮上。レース序盤から苦戦しているチェイス エリオットがずっと20位近辺で浮上できないことを思えば驚異の回復力です。とはいえ燃費レースになるのであればまだまだ油断はできず、レース終盤になってタイヤの内圧を攻めた設定にしている人もいると思われ、誰かのタイヤが壊れる危険性も少し高まることが予想されます。
 残り40周、2位まで順位を取り返していたブレイニーがターン2で姿勢を乱して壁に接触。クラッシュ前に先に何かしら壊れた疑いがあるようですが、外壁にぶつけた後トラックを横断しておもいっきり内壁にもぶつかりました。これで修理に時間を要したブレイニー、完走したもののシンドリックの1つ上・28位でレースを終えました。

 これでリードラップ車両はピットへ、ジャスティン ヘイリーが2輪交換の賭けに出ますが、4輪交換ではチャステインが先頭。カイルが1台だけなぜか異様に内側を走っていると思ったらどう見てもちゃんとホイールが装着されておらず車体と干渉しており、なんとか脱輪させずピットに戻りたいところでしたが残念ながらバックストレッチで車輪がポロリ。地元ラスベガスなのになぜかお客さんが沸いてます。
 ロガーノは今度は左後輪を外すのに手間取ってまた8つも順位を落とし10位へ。どうにも調子が上がらないエリオットはここでサスペンションをいじって大規模なアジャストを行っている模様です。

 残り35周でリスタート、ここでチャステインは立ち回りがうまく行かず2位争いの混戦に付き合わされることになり、ヘイリーがクリーンエアーを活かしてリードを維持。混戦を回避してなんとブリスコーが2位になりました。どっちが優勝しても一大事だぞ^^;

 チャステインはスアレスとレディックにかわされて5位へ後退。一方リーダー争いはブリスコーにヘイリーをささっと仕留められる競争力が無く、かといって3位はスアレスとレディックが争っていて前に追いつかないので、ヘイリー優勝のお膳立てが整ってきます。
 しかし残り29周、レディックと並走していたスアレスがターン4で内側に巻き込んでしまってスピン、コーションとなりました。

 真後ろを走ると風が当たらないのでダウンフォースが抜ける、というのは分かりやすい話ですが、ターンでこういう位置関係になると、元々旋回中の車には真っすぐ風が当たらなくて空力バランスが理想的ではないのに、その空気の流れの一部が遮られて非常に難しくなります。ドライバーはこういう斜め前方の空気を切られる動きを嫌うそうで、スアレスもそんな見えない敵にやられて空力バランスが乱れスピンしたと思われます。このコーションで中団以降の車がまたピットへ。

 12台がステイ アウトし残り22周でリスタート、新品タイヤで最上位は7列目のロガーノです。今回はヘイリーのリスタートが今一つでブリスコーが外から仕掛けました。2列目のレディックも優勝候補かと思ったら、リスタート直後にハービックが内側に無理に飛び込んできて3ワイドになり、ハービックが外に流れたので煽りを受けて失速、優勝の機会を逃します。
 3ワイドの外側にいたチャステインも危うくセットで巻き添えになりそうでしたがギリギリ回避して3位、ターン3~4ではブリスコーがヘイリーをかわしてリーダーとなり、その直後に後方でカッシルがスピンしたためにコーションとなりました。

 残り16周でリスタート、ブリスコーとヘイリーがバックストレッチを並走し、お互いにサイド ドラフトがかかってしまって遅くなったその一瞬の隙にチャステインが2台の内側に飛び込みました。これぞチャステインというリスタート直後の2台抜き、リードを奪い返しました。
 しかしレースはまだ終わりません。残り10周、タイヤの新しいロガーノがブリスコーをかわして2位となります。チャステインまで約1秒差ですが、旋回速度に大きな差がありあっという間に追いついてしまいました。
 残り6周、ロガーノに完全に捕まったチャステインは鬼ブロックで対抗。もはや自分が速く走ることなど微塵も考えていない、という雰囲気でひたすら前を抑え込みます。しかしさすがにトラック全域でこれを継続するには限度があり、残り3周でとうとうロガーノに並ばれてしまいました。チャステインも粘ったもののさすがに抵抗できず。
 ロガーノはそのまま車を持ちかえって通算30勝目となるチェッカーを受けました。ターン4でチャステインとカイルの2位争いが接触に発展していた気がしますが、どっちがどういう状況なのかはっきりせず。レース後のピットもなんか怪しい雰囲気でしたがチャステインが逃げて喧嘩は回避された様子です。

 悪気はないんですけどロガーノの優勝インタビューってどう切り取ってもなんかイラっと来る気がしますw それはさておきロガーノがチャンピオンシップ進出一番乗りを決めました。ピットで立て続けに失敗して優勝争いから一歩後退したはずが、結局そのために思い切ってタイヤを替えたのが奏功したので人生何が起きるか分かりません。チームの戦略勝ち、ということにして失敗は忘れることにしましょう。
 チャステインはあのまま鬼ブロックしていても、絶対に最終周でぶつけられてもっと下位になる結末しか見えなかったので、相手に乱気流を浴びせてミスを待ちつつ、ある程度で諦めて2位に狙いを変えるのは最善策だったと思います。今年はコンテンダーが勝つ可能性がそこまで高くないシーズンなので、ポイントで上にいればそこそこの確率でチャンピオンシップへは進めます。無茶して自分から追い込まれる必要はありません。
 3位からカイル、ブリスコー、ハムリンのトップ5。他のコンテンダーはバイロンが13位、チェイスは結局どうやってもダメで21位、ブレイニー28位、ベルは34位。途中で一瞬だけ前にいたアルミローラは終わってみたら18位という結果に。これを受けてポイントはこうなりました。

 勝てはしなかったブリスコーですが、33点を稼いだことでポイント争いではなんとか勝負できる範囲に食い下がりました。ベルは23点差とはいえまたもや勝つしかない状況に近づいてしまいました。コンテンダーで唯一の今季未勝利ドライバー・ブレイニーは残り2戦も確実なポイント回収ということになるでしょうか。

 今回のレースはタイヤがアホみたいに壊れるわけではなく、1.5マイルの良いレースが見れたなという印象でした。ひょっとしてブリスコーが勝つんじゃないか、という展開を一瞬で断ち切ったのがカッシルのスピンでしたが、エクスフィニティ―でも優勝争いに微妙に影響したのがカッシルのステイアウト選択だったので、この週末の陰の立役者は彼かもしれませんw


 で、大暴走したウォーレスですが、決勝の2日後にペナルティーが発表されて1戦の出場停止となりました。やはり接触は意図的と判断され、NASCARの最高執行責任者・スティーブ オドネルによれば「非常に危険で一線を超えていた」と判断されたようです。
 23XIレーシングは声明を発表、

「23XIはバッバに下された1レースの出場停止処分についてNASCARと足並みを揃えており、ラスベガスモータースピードウェイで起きた事件について、シリーズが明確な立場を取る必要性を理解しています。バッバの行為は、我々のチームやパートナーの価値観にそぐわないものです。我々はバッバと話し、彼の対応について非を表明しました。バッバは今シーズン著しく成長しており、この経験は、彼がNASCARの競技者としてさらに学び、成長するための機会です。」

 ウォーレスはSNS上でラーソンに対して謝罪のコメントを投稿、またベルに対しても謝罪したとの情報です。欠場となる次戦の代役としてはジョン ハンター ネメチェックが起用されることも発表されました。既にカートが欠場してギブスが代役を務めている23XIは、起用する2名のドライバーがいずれも正規ではなく代理という珍しい状況で次戦のホームステッドを迎えることになります。

 ウォーレスの行為に関しては私も感心しませんでした。たしかにラーソンはせり上がってますし、170mphで走っていてピッタリ1台分の空間ではぶつからないのも無理ですが、ラーソンが無茶な動きで潰しにいった、というほどではなくレーシング インシデントの範囲だと思います。このレースでももっとえげつない場面は何度かありました。
 ウォーレスは1勝して自信もついたし、今日も勝てる車だったのにリスタートで順位を下げて少し苛立ってはいたんだと思いますが、即座にキレるのは精神的に自分を制御しきれていないな、と見えました。それに、乱気流の影響や接触回避の意図もあるとはいえ、あの位置関係で壁にぶつかるのは全てラーソンのせいではなく、『この速度と位置関係で戻さなかったら壁に当たる』という判断をして引けなかった自分の技術の面も含まれていると思います。
 それらを踏まえてインタビューも非常に印象が悪かったと思います。確かにマーティーは彼から「報復だ」という趣旨の発言を引き出そうとしたんでしょうが、事故の時点から全然頭が冷えずに応対した感じで、どうやっても悪い印象にしかならない状態でした。
 もとよりウォーレスは黒人であるということで嫌っている人も残念ながら多いと思いますが、そうした視線に対してこの手の対応は印象をさらに悪くするだけで何も得をしないので軽率だと思いました。軽率だからやるべきでない、と考える前に手が出たからこうなってるので当たり前の話ですけどね。
 特に今年はクラッシュ後に脳震盪を起こし選手が欠場する例が2件も起きており、高速で事故を起こすと選手生命に影響しかねないことは、特にここ数週間で参加者、ファンを問わず共通認識だと思いますが、そんな中で最高速が出る地点で故意に事故を起こした、という責任は重いと思います。時にぶつかってでも争うのがNASCARだ、という話とは次元の違う問題です。
 仮に『日々見えないところで差別的扱いを受けて文句を言いたいのはこっちだ』という思いがあったとしてもそれとこれとは別の話で、1週間の謹慎期間でチームの声明通り成長しないといけませんね。逆にネメチェックは良い機会を得ました。来年カイルの後釜で18番にどうかと個人的には思ってるんですけど。

 さて、次戦は今シーズン最後の1.5マイルとなるホームステッドです。トラックシリーズはこのレースでチャンピオンシップに出場する4人が決まる最後の勝負となっています。お天気は今のところ温暖で良い天気になりそうな週末のようです。

コメント

こーら さんの投稿…
チャステイン頑張って欲しかったけど惜しかったああ(取り乱しました)

トヨタはラスベガスいい感じではなかったですね。あとウォレス出場停止で代役としてJHネメチェックが走るのでどういうレースを見せてくれるのか楽しみですね!
日日不穏日記 さんの投稿…
カートは、来年でラストイヤーと思ってましたが、レディックが飼い殺しになるのもどうかと思ったので、来年の移籍は良いと思います。エリオットはカットライン上とは言え、ずっと20位前後で、プレーオフポイントを吐き出しちゃったのは、心配です。ホームステッドで心機一転、頑張って欲しいと思います。カートは無理せず、静養に努めてほしな、ボウマンも。
SCfromLA さんの投稿…
>こーらさん

 チャステインはもうちょいでしたね~、なんかカイルと最後に絡んでたのが気になりますけどw
ジョンハンターはカップで走っているべきドライバーだと思うので、久々な上にたぶん今までで一番競争力のある車ですしちょっと楽しみですね。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 カートほどのドライバーなら本来は「今年で辞めます」と開幕前に言っておいて各地のファンに挨拶していくのが本来の形だったと思うので、怪我で去らざるを得なくて去る、というのは惜しいですね、本来ならプレイオフを戦っていたわけですし。
レディックがそれを忘れさせてくれるぐらい頑張って、JGRを食ってチャンピオンになるというMTJの再現をしてくれるのを期待する、というのも来年の1つの楽しみ方かなと思います。そうなるとバッバの立場がかなり危ういですけどw
カイル・プッシュ さんのコメント…
バッバ、あれはあかんやろ!
しかもベルに何してくれてんねん!
と思いました。しかも勝ったのがロガーノで、ボクにとってはいろいろ後味の悪いレースでした。
カイル・プッシュ さんのコメント…
それから、カイルのタイヤが外れた時、スタンドが湧いてましたね。
ラスベガスなのに、、、
SCfromLA さんの投稿…
>カイル・プッシュさん

 大丈夫です、まだ言霊が生きているはずなので、ベルはマーティンズビルで勝ってファイナルに進むはずです!(←根拠なし)カイルの脱輪でえらく盛り上がったのはちょっと驚きでしたね~、ロガーノが勝ってもブーイング混じりに歓声があったし、なんやかんや言って強いものを好む、というところなんでしょうかね。
首跡 さんの投稿…
朗らかな笑顔の多いロガーノって素敵ですね...
えっ、笑顔がくどい? ハハッ これまたご冗談を

それはそうとチャステインは勝てませんでしたが、この結果は仕方ないと思いました。無理に抑えていたら、かつてのケンゼスみたいになりそうだったので...
今季の彼は1.5マイルオーバルで力強い印象があるので、次のホームステッドでも上位フィニッシュを狙いたいところですが、何よりトラブルが起きないことを祈ります!
まっさ さんのコメント…
あーーーーーー!惜しい!!!
でも、スイカ投げ爆弾で自爆しないで2位になれるレースをしっかり2位でゴールできたのは日本一のスイカ男ファンには安堵です。(上からすみません)
彼、相手に報復やリスタートで張り切りすぎて自分のスイカに乗って滑ってしまったりすることが下位カテゴリーでも多くて多くて。。。
99のピットストップが???状態で1号車のピットストップが異様に早いのも謎ではありますが、、、
こうなると、、こうなると、、、、チャンピオンシップ4!いよいよ夢物語ではないぞ!
もしも、神田まさか、、、、、!?なことがあると私どうなってしまうのでしょう....。
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 ロガーノの特徴的な笑顔は見たら一生忘れないことは確かですw
あのまま抑えてたら確実にチャステインはロガーノの餌食だったので良い引き方だったと思いますね。ここに来て調子が上向いているのは好材料です。
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 チャステイン、一時期やらかしすぎてちょっとしょんぼりして弱気な運転に見えた時期がありましたけど、今回はリスタートの積極性と冷静に引く判断がうまく調和してて良い戦い方だったと感じました。あのしょんぼり期間が成長の糧になってたとしたら、本当に行けるかもしれません。