SGT 第6戦 SUGO

2022 AUTOBACS SUPER GT Round6 SUGO GT 300km RACE
スポーツランドSUGO 3.586km×84Laps=301.224km
GT500 class winner:CRAFTSPORTS MOTUL Z 千代 勝正/高星 明誠
(NDDP Racing/Nissan Z GT500)
GT300 class winner:muta Racing GR86 GT 加藤 寛規/堤 優威
(muta Racing INGING/TOTOYA GR86)

 8月を過ぎたら急にシリーズが進んでいくオートバックス SUPER GT。第6戦はマモノさんが住んでいるらしいスポーツランドSUGO、全戦に出場している車両にとってはここまでがサクセスウエイトの多いレース、次戦は倍率が半分になります。この週末はマモノさん以前の問題として、台風14号が異例の勢力で九州南部に接近しており、全国的に天候が不安定でした。
 このレースでGT500のZとNSX-GTに2基目のエンジンが投入されました。既に投入済みのGRスープラに対して多少開発期間を長く取ることができ、しかも後は300kmのレースが3回なので運用的にも少し負担をかけて使うことが可能になります。このコースだとエンジン性能の差は見た目でほとんど分からないですが、チャンピオンを争うための重要な武器です。

 予選、GT300クラスはSUGO4連続ポール ポジションを狙うSUBARU BRZ R&D SPORT(89kg)・山内 英輝がQ1担当・井口 卓人のタイムを1秒近く更新して暫定1位となりますが、これを午前中の練習走行で速かったK-tunes RC F GT3(38kg)・高木 真一が塗り替えて通算14回目のポールを獲得、したはずでした。
 ところが予選後の車検でウエイトに関する規定違反が見つかったため失格となり、思わぬ形で山内がやっぱりポールを奪いました。K-tunesによれば整備の際に下ろしたバラストを再設置する際にちょっと乗せ忘れがあったそうで、人的失敗によるものでした。
 2位からSYNTIUM LMcorsa GT Supra GT(33kg)、Banboo Airways ランボルギーニ GT3(24kg)、Weibo Primez ランボルギーニ GT3(33kg)、LEON PYRAMID AMG(51㎏)、HOPPY Schatz GR Supraとなりました。ウェイボウラカンはアタックの最後をARTA NSX GT3(3kg)に詰まってちょっと邪魔になっていたので、これが無ければ2位だったのではないかと思います。
 そして依然としてドライバー選手権で1位のリアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(100kg)は8位、同2位のTANAX GAINER GT-R(93kg)は12位でした。ただ、リアライズは前戦での接触で累積ペナルティー ポイントが貯まってしまい、4グリッド降格となっています。

 一方のGT500はQ1でRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(11kg)・大湯 都史樹がコース レコードを更新、Modulo NSX-GT・大津 弘樹も0.054秒差の2位で、ダンロップのNSXが速そうだと誰もが思いました。ところがQ2でレッドブルは謎の失速、笹原 右京は大湯より0.6秒以上遅くなって7位、Moduloは伊沢 拓也がSPコーナーで飛び出してしまい8位に終わってしまいます。
 ポールを獲ったのはまたもやWedsSport ADVAN GR Supra(35kg)・阪口 晴南。ウエッズにとって今季4度目のポールで、監督の坂東 正敬はインタビューで
「ただいま御朱印めぐりと同じような形でですね、各サーキットのポールポジションを集めております。東北でも獲りました~」
とお馴染みのノリを披露。しかし真面目な話、阪口はちょうど飛び出した伊沢がコースに戻って来たところで交錯し、最終コーナーの入り口で完全にいらん減速をさせられていました。引っかかった直後のマサ監督はカメラにけっこう怖い顔をしていましたね。伊沢はすぐに謝罪に行って、阪口がこのせいで順位を下げなかったことに安堵したそうですが、あれでポールを獲れるってものすごい速さです。
めっちゃ引っかかる晴南

 予選結果は2位からZENT CERUMO GR Supra(16kg)、MOTUL AUTECH Z(44kg)、STANLEY NSX-GT(46kg)、Astemo NSX-GT(34kg/-2)、DENSO KOBELCO SARD GR Supra(37kg/-1)となりました。ただ、モチュールは累積ペナルティーポイントにより4グリッド降格されます。


 決勝日、予選では14位だったグッドスマイル 初音ミク AMG(72kg)・谷口信輝が予選後の夜に腹痛を訴えて虫垂炎により緊急入院したことが明らかになりました。先週のF1イタリアGPでアレクサンダー アルボンが虫垂炎で入院して欠場しましたが、2週連続で同じ話を聞くとは想像もしませんでした。
 残念ながらSUPER GTの規則では既にドライバーの変更期限を過ぎているので代役を立てられず、ドライバー交代しないと規定違反になるのでミク号は競技として成立させることができなくなりました。それでもチームはファンのために片岡 龍也だけで参加することになり、スタートで他所の邪魔をしてはいけないので、フォーメーション ラップの途中でピットに入って決勝は最後尾から安全にスタートしました。

 空模様が不安定な状況の中、2周のフォーメーションを経て決勝スタート、GT500はみんなあえて車間距離を開けてスタートした様子ですが、ウエッズ・国本 雄資のタイヤにまだ全然熱が入っていない様子で、ヘアピンの入り口でそれを見透かしたゼント・立川 祐路が思い切って内側に飛び込みました。さらにスタンレー・牧野 任祐にもかわされた国本、アステモの松下 信治も来ているのでさあどうしようか、というところでGT300の方で事故が発生。
 PACIFIC hololive NAC Ferrari(24kg)・木村 武史とapr GR86 GT(42kg)・永井 宏明がターン3で接触。固定カメラの映像だとお互いにやや不用意という感じに見えましたが、これでフェラーリが後ろから外側のバリアにぶつかってしまい、1周が短いコースですので素早くSC導入の判断が下されました。フェラーリは今回ケイ コッツォリーノが予選のQ1で最速タイムを出しており、レース後半での追い抜きが期待されましたが無念の0周リタイアです。


 4周目には早くもリスタート、松下はタイヤが冷えたであろう国本を抜きたいところでしたが、リスタートの反応が遅れて捕まえ損ねてしまいました。国本からするとこれでようやく落ち着ける感じです。
 GT300はスタート、リスタートともBRZ・井口が決めて上位勢の順位は動きませんでしたが、6周目に87号車ウラカンの阪口 夏月、88号車・元嶋 佑弥が続けてLMcorsa・吉本大樹を攻略、ウラカンが2台で2位、3位となります。ペース的には元嶋の方が速そうに見えますが、堂々と正面から争っている様子。

 13周目あたりからコース上には弱い雨、今回はリアルタイム視聴なので気象庁のナウキャストを見ながら観戦していますが、まとまった雨雲がこっちに来ている、というようなレーダー観測情報は見られません。しかし14周目を終えて5位のデンソー・関口 雄飛がまずピットへ向かいました。すると翌周に両クラスのトップ、BRZとゼントも同時にピットへ。


 多くの車が一気にピットに入ったのでSUGO大渋滞となり、前の車が邪魔で一旦後ろに下げないと発進できない車が多数発生。ARTA NSX-GT(42kg)は左後輪がハマっていないのにジャッキを落としてしまい、ジャッキを上げ直す前に発進させてしまって脱輪する無茶苦茶な状態でした。この周に入るのは最もピット内での損失が多かった印象です。
 
 一方、GT500ではアステモ・松下、レッドブル・大湯、モチュール・ロニー クインタレッリ、そして予選でターボが壊れて最下位だったau TOM'S GR Supra(47kg)・坪井 翔の4人はとりあえずスリックで走行継続。ところが濡れた路面で松下はペースが上がらず、17周目に大湯、クインタレッリに続けて抜かれてしまい、この周で諦めてピットに入りました。
 
 GT300も多くはタイヤを替えましたが、ウラカンは2台でステイ アウト。濡れた路面で元嶋が阪口夏月をかわして赤い方の88号車がとりあえずリーダーとなります。ところがウラカンには条件が悪いらしく、9位スタートのStudie BMW M4(63kg)・アウグスト ファルファスが追い付いて画面に映っていない間にリードを奪いました。
 さらに、残念ながら阪口夏月はGT500の19周目にハイポイントで飛び出して砂場に停止。これを見てスリックで粘っていた大湯とクインタレッリも急いでピットに入り、直後にFCYとなりました。坪井はピットまで遠すぎてここで入ることができず唯一スリックで孤立、リーダーは立川に戻りました。2位には真っ先にタイヤを替えて成功した関口。
 クインタレッリはFCYのおかげでロスが少なく済んで実質4位でコースに戻り、大湯はピット内で逆転されて実質5位です。ここでどれだけ給油するかの考えが全然違って、ニスモは5秒ほどしか給油していませんでした。おそらく無限は満タンまで戻してますね。一連の流れで損をしたのはスリックで抜かれてからウエットに替えた松下で、実質9位まで下がってしまいました。
 
 スリック組がどちらかというと失敗に終わったGT500と対照的にGT300は持ちこたえておりファルファスが快調、さらにGAINER TANAX GT-R(60kg)・安田 裕信、TANAX GT-R・大草 りきが追いかけます。一方タイヤを替えた井口はペースが上がらず、ARTA・武藤 英紀にかわされました。これで武藤はタイヤ交換組で先頭です。BRZはタイヤが合わなかったそうですがスリックにしろレインにしろ、体重が重くて荷重がかかる車の方が調子が良さそうに見えます。
M4はいかにもどっしりして雨で速そうw


 GT500はウエット タイヤのレースになったら性能の差が戦力の決定的な差になりました。タイヤ交換直後には1位と17秒も差があったクインタレッリが別次元のペースで前の車を周回遅れのごとくかわしていき、27周目には立川もやっぱり周回遅れのごとくかわしてトップに立ちました。ブリヂストンとは違うのだよ、ブリヂストンとは。


 11位スタートのCRAFTSPORTS MOTUL Z(34kg/-2)・千代 勝正もこの段階で3位になっており、これまた驚異のペースだったので28周目に立川をかわし2位へ。ミシュランだけが別クラス状態です。千代は15周目の大混雑時にピットに入っていましたが、画面を見る限り前に誰もいない出口側のピットだったので影響を受けなかった様子、7番目にピットに入ってなんと3番目にピットを出ていましたw

 GT500は29周目あたりからドライバー交代を伴う2回目のピットを行うところが現れ始め、この頃から雨量が強まってきました。GT300のリーダー・ファルファスと2位安田も28周目を終えてピットへに入り、それぞれ荒 聖治と石川 京侍へ。3位の大草も翌周に入り富田 竜一郎に交替です。
 M4は運悪く87号車のウラカンが斜めピットで前に入って来たので脱出に時間がかかって順位を下げてしまい、この段階でドライバー交代を終わらせた組はGAINER・石川、TANAX・富田、M4・荒のトップ3になります。ここへ、一度タイヤだけ交換したので2回目のピットとなるARTAが35周を終えてピットに入り、これらの車の後方・実質4位で合流しました。ARTAの後半担当は木村 偉織です。

 44周目、apr GR86・織戸 学がその木村との軽い接触でスピン。芝生の上に止まったので、これを見てFCYの可能性を感じたニスモはクインタレッリをピットへ呼びました。この少し前から雨量が減って路面は乾き始めていましたが、まだスリックには少し早いのでウエットへ繋いで松田 次生へ交替。ドライバー交代を終えた中で先頭となり、実質2位のゼント・石浦 宏明とは10秒以上の差です。一方、見た目上1位になった千代はギリギリまで路面状況の回復を待ってスリックに繋ぎたい意図が見えます。

 その1つの先行指標となるか、GT300は43周目にリアライズが藤波 清斗からジョアン パオロ デ オリベイラへと交替しスリックを投入。ここからGT300はウエット→スリックのサイクルが始まります。見た目上の先頭は14周目にレインに換えて以降走り続けているmuta Racing GR86(14kg)・加藤 寛規。
 見た目上2位はコース上で追い抜きを繰り返して非常に速い様子の木村偉織ですが、1位のmutaとはピット回数が違うため1分差がついており、既にスリックに繋いだ組はもっと後方にいます。このまま乾いていくのなら木村もいずれスリックに換えることになるのでお互いに残り1ピット。また雨が降って話が変わらない限り、mutaはとんでもなく有利な状況になりました。

 49周目、そのmuta GR86・加藤がピットへ。もちろん用意してあるのはスリックで、なんと静止時間29秒の早い作業で堤 優威に繋ぎました。2位以降の車もみんなスリックに換えて行ったので堤は実質1分リードでコースへ。若手がいきなり難しい条件でコースに解き放たれるので大変ですが、優勝がかかる大勝負です。私ならがちがちに固まって変なボタンを間違えて押しそうw

 GT500では55周目にようやく千代がピットへ。当然こちらもスリックに繋いで高星 明誠に交代し、優勝に向けた大事なアウト ラップに入りました。2周後にラップバックを狙っていた5位のカルソニック IMPUL Z(39kg/-3)・平峰一貴がちょっと強引に内側に突っ込んで危うく絡みかける事件がありましたが、後続もみんなスリックに替えて高星と2位松田の差は28秒です。平峰は既にスリックに替えて熱が入っていたので、ペースが速くて先を急いでたんですね。

 ところが台風のせいかマモノさんのせいか分かりませんが、69周目/残り16周で再び雨が降ってきました。レーダーを見るとさっきと違って大きな雨雲の塊が近づいてきていて、次は降っても止まなさそうです。路面水量が増えたらまたウエットに替えるか、もうここまで来たら耐えるか迷いどころ。2004年のSUGOがまさにそんなレースでした。
 
 上位勢は両クラスともここまでの戦略ゲームで概ね決着がついて天気が急変しなければ変わらない状態ですが、GT300の4位は荒とオリベイラが激しく争っていました、かつてGT500でチームメイトだったことがありますね。残り6周、我慢して機会を待っていたオリベイラが馬の背へのブレーキでとうとう荒を攻略し4位へ。そういえばその2004年のレースでGT500の勝者だったのが荒/立川のコンビでした。

 残り4周、植毛ケーズフロンティア GT-R・田中 優暉がS字でミスって外側の壁に植毛。これでSCが出て終了かと思いましたがレースはそのまま継続され、GT500はCRAFTSPORTS MOTUL Zが今季2勝目を挙げました。気づいたら松田次生が9秒差まで迫ってました(;・∀・)


 3位にレッドブルNSX、4位ゼント、5位には最も厳しいハンデで14位からスタートしたカルソニックでした。ウエッズスポーツはまさかのポール トゥー テールになってしまって15位でした。次は九州で御朱印もらうか・・・

 GT300は完璧な戦略で走ったmuta Racing GR86 GTが優勝、GR86にとって初優勝、チームとしては昨年エヴォーラを使ってもてぎで優勝して以来です。加藤にとっての優勝はそれ以来、堤は昨年たかのこの湯 GR Supra GTのドライバーとして鈴鹿で勝っていますのでそれ以来の優勝です。


 2位からGAINER GT-R、TANAX GT-R、リアライズ GT-RとGT-Rだらけ。5位にStudie M4でした。ARTAは織戸との接触がドライブスルー ペナルティーの裁定を受けてしまい、順位を下げて7位。BRZはタイヤが外れてグダグダになりそうなところ、なんとか8位で耐えきって入賞。予選で失格になったK-tunesが9位、初音ミクは規定いっぱいの56周まで片岡が走って撤退し最下位でしたが、規定周回数を満たしたのでチームのポイント1点は貰えました。


 今回はとにかく天気の読みが大事でした。レーダーを見ていると、見るからに雨雲が近づいているわけではなく、後から履歴を見るとちょうどサーキット周辺の山間部で雨雲が発生しているような状態でした。レーダーだけで言えば、最初の雨はすぐ止むと考えてできるだけとどまりたくなりますが、実際はそうならなかったのであそこは入るのが正解だったことになります。私はすぐ止むと思ったので、もし担当エンジニアだったらドライバーにブチギレされていますw
 あの時、GT500でクインタレッリはまだ乾いた路面があるので可能な限り耐えることを考えてピットの指示を断っていたそうで、さすがに諦めようとするタイミングとFCYが重なったことで『損切り』の被害を最小限に抑えることができました。

 で、2回目のピットは結果としては乾くのを待って直接スリックに繋ぐのが正解だったわけですが、それをやるにはウエットで40周以上走り続けられるだけのタイヤが必要でした。GT500では現実的にミシュランの2台以外それは厳しかったと思われ、そういう点でもタイヤが戦力の決定的な差でした。
 クインタレッリは『乾くのを待つ < 車が飛び出した』でピットに入った判断を悔やんでいるようですが、たしかに止まった感じからするとちょっと過剰反応だったようには見えます。ニスモはSC絡みで勝ったこともあるし、最初のピットも成功したので神経質に見ていたんだと思いますが、今回は裏目に出ました。勝ったクラフトスポーツの千代/高星組はドライバー選手権で1位に浮上、ニスモは3位です。

 逆にタイヤが合わないなりに対処したのがカルソニックで、1回目のウエットがダメだと判断したら、27周目に2回目のタイヤ交換を行ってベルトラン バゲットのまま3スティント目に突入。もし雨量がそこそこで維持されるなら3ストップを確定させるのは大失敗になる可能性もあり、本来ならもう1周待ってドライバーも交替しておくのがセオリーですが、攻めた作戦で選手権リーダーながら5位の結果を手にしました。
 平峰のラップバックは正直危なかったのでニスモの偉い人にレース後怒られているかもしれませんが、それはともかくドライバー選手権では51点で2位。ウエイト51kgはちょうど最大燃料流量規制にかかるので次戦の実際のハンデは 34kg/-1 になりますが、オートポリスはウエイト感度が高くて48kgとかで走るよりおそらく軽い方が有利なので、ランキング上位でも結果が期待できます。

 GT300の方はドライバー選手権がリアライズ、ゲイナー10号車、11号車、とGT-R勢がトップ3に並びました。つまり両クラスとも日産が上位を独占してるわけですね。BRZの井口/山内組は12.5点差の4位ですが、オートポリスは得意ジャンル。ただ最終戦のもてぎはGT-Rの得意な場所な上に他にも競争力のある車が多いので、連覇にはオートポリスの優勝が必須となりそうです。

 次戦はオートポリス、今度こそ晴れると良いですね。

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