F1 第16戦 イタリア

FORMULA 1 PIRELLI GRAN PREMIO D’ITALIA 2022
Autodromo Nazionale Monza 5.793km×53Laps=306.72km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull RB18-RBPT)

 F1夏休み明けの3連戦、締め括りはイタリアでこれがヨーロッパでのレースとしても締め括りになります、そろそろフェラーリさんには夏休みボケを解消していただきたいですね。前戦に続いてこのレースでもPUやギアボックスの交換によるグリッド降格が大量に発生しており、予選はあんまりよく分からない状態になりましたw
 さらに、土曜日になってアレクサンダー アルボンが虫垂炎で離脱、急きょニック デ フリースがウイリアムズの代役ドライバーとなりました。デフリースは今回たまたま金曜日のFP1でアストン マーティンから出走していたのでぶっつけではないにせよ、思わぬ形でF1デビューを迎えることになりました。元々この人がF1に乗れないのは単なる巡りあわせの悪さだと思うので注目です。


 で、その予選ではデフリースはなんとQ1でチームメイトのニコラス ラティフィーを破ってQ2に進出。2回目のアタックはコース外走行でタイムが取り消されたものの、1回目のアタックの、それもタイヤを休ませた後に続けて行った中古タイヤのタイムで通ってしまいました。残念ながらQ2の2回目のアタックでは危うくスピンしかけて失敗し予選13位となりますが、ラティフィーの存在感がとても薄くなってしまいました。
 Q3はシャルル ルクレールが今回も速さを見せてピレリ ポール ポジションを獲得、彼はグリッド降格もないのでそのまま1位から決勝を迎えます。予選順位で言えば2位からマックス フェルスタッペン、カルロス サインツ、セルヒオ ペレス、ルイス ハミルトン、ジョージ ラッセルの順でした。
 しかしグリッド降格があるのでスタート順位は大きく変わってしまい、ルクレール、ラッセル、ランド ノリス、ダニエル リキャード、ピエール ガスリー、フェルナンド アロンソのトップ6に。ラッセル以降は予選で6~10位の人たちです。その後ろの7位に5グリッド降格のフェルスタッペンで、なんと予選13位のデフリースはフェルスタッペンのお隣・8位スタートになりました。私ならこんな場所怖いから、アメリカのドラフト会議みたいにお金と引き替えに8位グリッドを誰かにトレードしたいですw
 モンツァの予選は近年スリップストリームを巡る大渋滞が頻発していましたが、今年の車は後方乱気流が少ない=スリップが効きにくいので、スリップに頼らないで綺麗にアタックが行われるのか、余計にギリギリまで近寄って走ろうとして渋滞するのかも注目でしたが、結果は後者でホッとしました。

 そして日曜日の決勝、1列目の2人はソフト、マクラーレンの2台はミディアムを選択。ところがノリスはスーパー海老スタートを披露してしまい6位へ後退、ルクレールとラッセルの争いはルクレールが制しました。ラッセルはターン1で外から行って追い出されたので不満そうでしたが、厳密に考えたらラッセルが引くべきと取るか、ルクレールが相手が引く前提で最初から併走する気が無いのが問題なのか微妙ではあります。スタート直後なのでこのぐらいはレーシング インシデントですが、ぶつかってたら揉める原因だったでしょうね。


 一方、7位からスタートしたフェルスタッペンの方は1周で5位になり、2周目のターン1で既にリキャードまで抜いてもう3位です。デフリースはグリッドをトレードで放出しなくても無事に集団の中で走っています。さすがフォーミュラEで混戦には慣れてますね、あの車よりこっちの方がアホみたいにデカいけどw
 フェルスタッペンは5周目にラッセルも簡単に抜いて2位、一方グリッド降格で13位からスタートしたペレスは7周目に早くもハードへ交換し、右前から煙と火を出しながらピットを出ていきました、ってあかんやん。

 10周目、ルクレールとフェルスタッペンの差は1.5秒、7位スタートのハンデは皆無です。ルクレールのエンジニア・ザビエル マルコスは無線で「フェルスタッペンがプランCで来るなら、こっちはプランBで行こうと思うんやけど、ええかな?」。ルクレールも同意します。
 しかし12周目、状況を崩す事態が発生、ベッテルが出力低下を訴えて白煙を上げており、とうとうダメになってターン7の先で車を停めてしまいました。コース脇の安全な場所ではありますが、どけるにはレースをしたままでは危ないのでVSCとなりました。ちょうどみんな新しい周回に入ったばかりなのでピット大混雑とはなりませんでしたが、先頭のルクレールはギリギリVSC中に最終セクターに辿り着きピットの機会到来。

マルコス「プランAにするのはどう思う?」
ルクレール「かなりギリギリやろうけど、、、それが最善ちゃうかな」

 ルクレールはピットに入りミディアムに交換、話の内容からしたらこれで最後まで走るつもりでしょう。ピット作業を終える前にVSCが終わってしまいましたが、フェルスタッペンの17秒後方・3位で合流できました。

 今回は創設75周年記念のイタリアGPということで、車体の一部やスーツに黄色を配した特別な装いのフェラーリさんですが、どうしてもジョーダンに見えてしまうのは私だけでしょうか^^;
 ルクレールは前のラッセルと12秒の差があるのでしばらく誰にも会わない感じです。何か違うことをしないとフェルスタッペンに勝てそうもないですからね。ところがルクレールには17周目にこんな無線が

マルコス「コーナーの出口で、ショート シフトせんといてな」
ルクレール「無理やわ無理無理。エンジン大丈夫か確かめてくれよ」

 モンツァは低速からの脱出が多いですし、ダウンフォースがスカスカなので高速コーナーもあんまり高回転で通過したくないためショートシフトは自然と使うと思うんですが、いきなり封じられると困りますね。その昔BARホンダ時代に佐藤 琢磨のエンジンばっかりやたら壊れた際、琢磨がショートシフトしないように言われてた記憶がありますが、あんまり回転が低すぎるとエンジンに負荷がかかったりするんですかね。

 18周目あたりからは中団のドライバーがピット サイクル。多くはハードに繋ぎます。デフリースはサイクル前まで9位を維持して集団にきっちり付いていき、こちらはソフトからミディアムへの1ストップ。既にトラックリミット違反回数がかさんで黒白旗を受けており、このままだと5秒ペナルティーを食らいそうです。ルクレールの方は無線で「プランC」と言われているので考え方を変更でしょうか。Aが1ストップなのでCは2ストップ、Bは1ストップでもAと違ってハードに繋ぐ戦略と想像。

 フェルスタッペンは25周終わりでピットへ、ソフトからミディアムへ繋いで、ルクレールの10秒後方でコースに戻りました。ルクレールとは同じタイヤで13周の履歴差があります。ルクレールの無線からするとたぶん正面から1ストップで対決はしないと思いますが、フェルスタッペンが追い上げる番です。
 一方中団ではピット前から続いていたリキャード、ガスリー、デフリースの争いが30周目になってもまだ続いていました。そしてグリッド降格で18位からスタート、ミディアムで引っ張って見た目上3位まで上がって来ていたサインツは30周を終えてピットに入りソフトへ繋ぎます。ペレスの後ろ・8位で合流、速さはありますね。ペレスのブレーキはどうやら大丈夫なようです。なおラティフィーはこの時点で17位。

 33周目、ルクレールとフェルスタッペンの差は5秒になりました。「プランC了解」とルクレール、これはもう諦めて2ストップですね。この周を終えてピットに入りソフトに交換しました。今度はルクレールが19秒後方からフェルスタッペンを追える、かどうかは分かりませんが気持ちとしては追いかけます。
 ところが蓋を開けてみるとフェルスタッペンとルクレールのペースはほぼ同じどころか交換直後にフェルスタッペンの方が速く、これでは追いつけそうもありません。ルクレールも摩耗を気にしていきなり飛ばさず丁寧に熱を入れたものと思われますが、タイヤが安定してもペース差は0.4秒ほど。これでは追いつくのにもう1レースぐらい必要です。

 中団の争いは31周目にアロンソがPUの不具合で離脱、リキャードはなんとかガスリーを振り切って、9位~11位をガスリー、デフリース、周 冠宇の3人で争っていました。デフリースはガスリーのDRS圏から千切られるとジョウにやられるので食い下がっておきたいところ。正直優勝争いにはもう何も起こらないので、私はずっとこっちのタイム差を見ていました。ガスリーを抜いてしまえば楽になれそうなので、デフリースが抜くことを期待します。私、ホンダPUとかそういうの全然関係無い派なのでw

 結局レースは全体に膠着して周回数だけがどんどん進行、デフリースは一時ガスリーのDRS圏から外れてジョウの攻勢を受けますが耐えていると、フェルスタッペンに周回遅れにされたタイミングでうまく逃亡に成功。さらにガスリーが周回遅れにされるタイミングで再度DRS圏に戻りました。
 これを見た私は一安心して、ちょっと気が早いけどドライバー オブ ザ デイでデフリースに投票してポチっとボタンを押しましたが、どうやらこれが禿の呪いの起動ボタンだった模様。47周目に7位を走っていたリキャードの車に不具合発生、ターン6と7の間に車を停めました。
 これまたVSCだろうとみんなピットが準備をはじめますが、ギアが噛んでしまって車を動かせないようで、なおかつここはコース外の幅が狭くて車体の一部は舗装部分に出ているのでVSCどころかSC導入になりました。
 ラッセルは真っ先にピットへ。フェルスタッペンもルクレールも後ろががら空きでフリー ストップになっているので翌周にピットに入り、みんなソフトでリスタートに備えます。ところがリキャードの車の排除にクレーンが登場、こうなるともう再開するには周回数が足りません。NASCARと違ってオーバータイムは御座いませんので、そのままレースは終了してフェルスタッペンが優勝、これでフランスから5連勝です。

 今季11勝目のフェルスタッペン、今回は7位からのスタートで優勝しましたがこれで『異なる7つの順位から優勝したドライバー』ということになっています。列挙すると『1位、2位、3位、4位、7位、10位、14位』の7つです。既にベルギーで6つ目の順位を記録して新記録だったそうなんですが、さらに更新しました。次は予選で2位になったらわざと10グリッド降格してみたらどうでしょうw
 2位ルクレール、3位ラッセル。4位が18位スタートのサインツ、5位が19位スタートのハミルトン、そして6位も13位スタートのペレスと、トップ3チームの後方スタート組は全員上位へ帰ってきました。7位にノリス、8位ガスリー、そして9位にデビュー戦のデフリースが入りました。ドライバーオブザデイも獲得です。
 実は最後のSC中に不規則な動きをしてジョウを邪魔しかけたので審議対象となっていました。ブレーキに問題があったそうで、エンジニアの指示に従ってブレーキをあれこれ操作していたら、SC下での速度制限を無視しそうになったので慌ててブレーキを踏んだことが原因だったようです。ただ、審査委員会は彼が急きょデビューして不慣れである点を考慮して戒告処分と決定しました。起こった結果に慣れの問題を持ち込んで良いのかという謎はありますが、実害が出ていないのも大きかったでしょうね。一瞬入賞が消し飛んだかと冷や汗をかいたデフリースですが、結果が確定して正式に9位です。

 たまたま金曜日に走行機会があり、たまたまグリッド降格が多いレースで上位からスタートできて、たまたま自分の前の車2台が脱落したことが9位の理由ではありますが、予選でチームメイトに負けていればもちろんこんな結果は出ていません。1回どこかでブレーキをミスったら10位に入れたかどうかでしたし、もしトラックリミット違反で5秒ペナルティーを受けていたら、SC下での終了は全て台無しにしていました。期待以上の内容と結果だったと言えると思います。
マックス「おめえはええなあ、オラワクワクしてきたぞ」
デフリース「ハハハ(年下の先輩って絡みづらいなあ)
※想像です

 ウイリアムズはラティフィーのお金に頼る部分も大きいのでそう簡単に来年のドライバーを入れ替えるわけにはいかないでしょうが、まだ来季の席が空いているチームの候補者に名前が乗せられたのは言うまでもなさそうです。でも他陣営に行かれたら彼を手元に置いているメルセデスが困るので、ラティフィーの持ち込み資金のいくらかに相当するお金をメルセデスが負担してでもウイリアムズに押し込む、なんてこともひょっとしたらあるのかもしれません。
 デフリースは基本的にフォーミュラEでマセラティ―と契約していると見られており、F1へ行くならそちらを優先できるオプションがあるとされています。ですからデフリースがF1で居場所を見つけるとフォーミュラEのドライバー起用にも波及することになります。マキシミリアン グンターあたりはシートを得る可能性が出てきて喜んでるかもしれません。

 今回ルクレールは何をどうやっても勝てそうにはなかったので、フェラーリも一生懸命考えましたが車の差を受け入れるしか無かった感じです。VSC時の積極采配も、自分たちの車が優位だったらちょっと焦りすぎですが、正面から戦っても厳しそうだという状況ならやってみるしか無いので、良い挑戦だったと思います。力が拮抗しているなら、モンツァは意外と抜けないので前で蓋することもできるんですけどね。
 モンツァは305kmだと終わるのが早すぎるから、シンガポールから25kmぐらい取ってきて柔軟なレース距離にしたらどうかと毎年思いますが、3連戦の3つ目ともなると「まあ早く終わっても良いか」と思ってしまいましたw

 次戦はそのシンガポールです。フェラーリはトラクション重視のトラックであればそこそこ速いような印象があるんですが、フェルスタッペンを止められるでしょうか。計算上は次戦でフェルスタッペンのチャンピオンが決まる可能性も出ています。なおラティフィーは15位でした。

コメント

ウルミコス さんの投稿…
取って付けたようなラティフィの紹介にブッ吹いてしまいました(っ ◠‿◠ c)
首跡 さんの投稿…
確かにフェラーリの黄色いスーツ、ジョーダンそっくりです!
結果は2位と4位でしたが、特別カラーが格好良かったのでヨシ!
SCfromLA さんの投稿…
>ウルミコスさん

 大谷の「なおエンジェルスは敗れました」が流行ってる(?)ので、似た感じで行けないだろうかと思いついて実行しましたw
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 サインツはもうちょっと躓くかやらかすかと思っていたので4位は見事なリカバリーでした。きっとティフォシも考え得る最善の結果だと納得して、特別カラーの思い出補正で楽しく家路についたことでしょう。