SGT 第5戦 鈴鹿

2022 AUTOBACS SUPER GT Round5 FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT 450km RACE
鈴鹿サーキット 5.807km×77Laps=447.139km
GT500 class winner:カルソニック IMPUL Z 平峰 一貴/Bertrand Baguette
(TEAM IMPUL/Nissan Z GT500)
GT300 class winner:グッドスマイル 初音ミク AMG 谷口 信輝/片岡 龍也
(GOODSMILE RACING & TeamUKYO/Mercedes AMG GT3)

 オートバックス SUPER GT、第5戦は8月最後の週末にお送りする鈴鹿での450kmレース。450kmなら78周かと思ったら1周少ない77周で447kmのレースです。前週はスーパーフォーミュラがもてぎでの土日2連戦を開催していたので、掛け持ちしているドライバーやスタッフは結構な忙しさ。サッシャ フェネストラズはその前の週に急きょフォーミュラEにも出ていたので、SUPER GTの前戦からの4連戦に「ちょっと疲れた」と苦笑い。
 GT500クラスでは、今回トヨタ車がシーズン2基目のエンジンを投入。セルモの1台だけはエンジン故障で既に2基目を投入していましたが、この『先行投入』したデータも参考にして、残りの車両に後半戦仕様のエンジンを投入しました。一方で日産とホンダはここではまだ投入せず、開発期間の確保とこれから気温が下がっていく時期に合わせた、より攻めたエンジン戦略を立ててきたようです。
 
 土曜日の予選は曇り気味、さらに併催カテゴリーの影響で予定より進行が遅れてしまい、20分ほど遅れてのセッション開始となりました。GT300のQ1はA組をARTA NSX GT3(3kg)・木村 偉織、B組はHACHI-ICHI GR Supra GT・佐藤 公哉が最速を記録しました。
 HACHI-ICHIはQ2でも三宅 淳詞がQ1の佐藤より0.9秒も速いタイムを記録して暫定1位になりましたが、これをTANAX GAINER GT-R(45kg)・大草 りきが0.054秒上回りポール ポジションを獲得。全体的にQ1よりタイムは大きく更新されましたが、大草はQ1担当・富田 竜一郎のタイムより1.3秒も速いタイムでした。第3戦では車高の規定違反でポールが幻になりましたが、今回は車検も大丈夫でした。

 予選順位はTANAX GT-R、HACHI-ICHI Supra、Weibo Primez ランボルギーニ GT3(33kg)。4位になんとサクセスウエイトが上限に到達しているリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(100kg)。5位に前戦で片手が届いていた優勝をパンクで失ったグッドスマイル 初音ミク AMG(12kg)。
 ARTAはQ1よりQ2でタイムを落としてしまい8位。テストでエンジンが壊れて前戦を欠場したHOPPY Schatz GR Supraは新しいエンジンを購入し、ディフューザーにも従来のベニヤ板でははくカーボンを入れる巨額投資を行いましたが惜しくもQ1敗退で17位でした。
 表示されているセクターのタイムしか手がかりがないですが、GTA-GT300規定の車両はGT3規定の車両、GT-Rあたりに対してセクター3・4で0.6秒近く失っているように見えるので、出力の面でそうとう苦しんでいるように見えます。

 GT500のQ1は通過ギリギリの8位タイムと最下位のタイム差がたった0.4秒という相変わらずの僅差、CRAFTSPORTS MOTUL Z(35kg/-1)は惜しくも9位で通過はなりませんが選手権上位勢としてはなかなかの結果でした。
 Q2ではMOTUL AUTECH Z(30kg)・ロニー クインタレッリが本人も完璧と語るアタックでポールポジションを獲得。チームとしてはここ2年も勝っているニスモですが、ポールは2019年第5戦富士以来3年ぶり。クインタレッリ、ミシュラン、いずれにとっても同様でした。もちろんZにとっても初のポールです。

 2位からAstemo NSX-GT(38kg)、Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(1kg)。4戦連続のポールを狙ったWedsSport ADVAN GR Supra(27kg)は4位でした。タイヤで見ればミシュラン、ブリヂストン、ダンロップ、ヨコハマの順。車両で見れば日産、ホンダ、ホンダ、トヨタの順。ダンロップが決勝で蓋になるのかどうかは毎度のことながら注目点です。5位には今年あちこち不具合が起きるZENT CERUMO GR Supra(16kg)です。


 決勝は幸いにして晴天。おそらく深夜に少しだけ雨が降ったんじゃないかと思いますが、特に影響は無さそうです。気温は30℃ほど。私は京都に遊びに行ってましたが8月末にしてはカラッとして30℃ぐらいだったのですごく歩きやすかったですね、って前にもこういう話書いたな。ZENTは決勝前のウォームアップ走行をしようとしたらブレーキに不具合のおそれがあったのでこれを全く走らず修復。スタートには間に合いましたが今日もちょっと不安です。
 またGT300ではapr GR SPORT PRIUS GTが駆動系の不具合によりピットからのスタートで、結果的にピットを出たり入ったりしていました。マッハ車検 エアバスター MC86マッハ号(45kg)もグリッドから動けずにヒヤッとしましたが、押してもらったら動きました。実は漫画の世界でもマッハ号が動かなくて押してもらってるという舞台裏があったら、とか考えるとちょっと笑えます。

 いよいよ決勝スタート、ターン2の先でいきなりENEOS XPRIME GR Supra(43kg/-1)がターン3でスピン。前にいたKeePer TOM'S GR Supra(45kg/-1)に少し詰まってしまい、ブレーキを踏んで左にステアリングを切っているところに、自分の前端に右前からKeePerの後端が引っ掛かかり、内側に巻き込む力が多すぎて回ってしまった、という感じです。一方CRAFTSPORTSの千代 勝正はミシュランの発動の早さを活かして2周で2つ順位を上げて6位となりました。
 GT300では埼玉トヨペットGB GR Supra GT(27kg)・川合 孝汰がお馴染み1周目にピット義務消化作戦。富士ではそもそも車が不調でペースが上がりませんでしたが本日はいかがでしょうか。

 両クラスとも上位勢の順位に変化はなく、GT500はクインタレッリが着実に差を広げていき、4位のWedsSport ・国本 雄資から後ろが4台でやや固まっている状態。GT300は大草がリードし、2位以下もそれぞれ早い段階から車間が広がっています。HOPPYスープラは自慢のディフューザーが接触で壊れたらしく、せっかくのカーボンをピットでむしり取りました(T T)

 GT300はこの後もさっさと義務を消化する作戦を採用する車がちらほらと出てきますが、なんと7周目にGT500のARTA NSX-GT(42kg)もピットへ。給油のみを行ってピットを出ました。スピンしてビリになっていたENEOSも翌周に同じ行動。手元で急いで計算しましたが、GT500の航続距離はだいたい35周なので、7→35→35で走り切ることは可能です。かなり異例の戦略でギャンブル的ですが、抜けない鈴鹿ですしSC出動確率も高いので、下位スタートならやる価値はあります。

 GT300の9周目、1位争いが接近。HACHI-ICHIスープラ・三宅が急激に大草に追いつき、ダンロップコーナーでいとも簡単に大草の内側に入ってかわしました。直線が遅いので王道のシケインやターン1での追い抜きが難しい中、近寄った勢いで手の内を見せないまま一発で抜いた三宅、お見事でした。大草は最初の勢いを維持することができません。まあ45kg背負ってますからね。


 17周目、GT500でリアライズコーポレーションADVAN Z(35kg)が右後輪をパンクした様子。そして同じ17周目にリーダーのクインタレッリもピットに入りました。こちらは何か起きたわけではないですが普通に4輪交換と給油。前輪の内側が猛烈に摩耗しているので、ちょっと過負荷になっている可能性があります。まだ2位の松下 信治とは3秒以上の差があったにもかかわらず入って来たのでよほど感触がおかしかったんだろうと思います。
 2周後に入ったCRAFTSPORTSも同じ症状だったのでミシュランのスタート使用タイヤに共通のお悩みだった様子。ミシュランがこういう状況になる時って、どのタイヤを使っても走り方を気を付けても改善できずに3ストップになったりするので要注意です。
 au TOM'S GR Supraも17周で入って坪井 翔からジュリアーノ アレジへ交替。基本的にはレースの1/3を基準にして戦略を立てることが多かったGT500が450kmというレース距離でかなりばらけています。GT300だけでもレースの状況把握が大変なので、せめて500ぐらいは似た作戦になってくれないと頭が追い付きませんw

 何台か間の車が抜けたことでGT500のコース上の順位はAstemo・松下、Red Bull・笹原 右京、ZENT・立川 祐路。ダンロップは蓋になるどころかロングで安定したペースで走っており、笹原は松下を追走しています。松下はあえてホンダの傘下ドライバーを蹴ってヨーロッパに再挑戦した人、笹原は知らない間にホンダの傘下から外されていたけど、実力で再び声をかけさせた人ですから結構面白いですね。
 一方GT300は1回目の給油を終えた車同士の『裏の1位争い』がグレーンブレイブ・川合とARTA・木村の争い。コース上では引き続き三宅がリードし、大草は3位のリアライズ・藤波 清斗に追いつかれてしまいました。藤波は重たい車でレース序盤は後ろからつつかれまくっていましたが、タイヤも壊さず順位も落とさず、周囲がみんなピットでいなくなったところで自分の走りに徹している雰囲気です。このあたりはもう得意の職人芸になりつつありますね。
 この3台はいずれも23周目に同時にピットへ。それぞれ佐藤、富田 竜一郎、ジョアン パオロ デ オリベイラへと交代し、早めにピットを終えたグループよりも後ろでコースに戻りました。これで実質的な1位は川合となりますが、24周目の西ストレートでこれを木村が抜いて実質的なトップを奪いました。1周目に入ったグリーンブレイブは35周以上走る必要があるので、タイヤ・燃料の双方でペースはそう簡単に上がりません。

 GT500は27周目あたりからピット サイクルとなり、27周目にRed Bullが笹原から大湯 都史樹へ。ピットを出てターン1~2でちょうどクインタレッリが後ろから来て外から抜こうとしますが、大湯もこれを見て外へ動き相手をコース外へ押し出しかけた、というかクインタレッリがブレーキを踏んでなかったら確実にコース外だったので黒白旗を出されて警告を受けました。もちろんタイヤが冷えているのでこの後すぐに抜かれてしまいます。
 Astemoは29周目に入って松下から塚越 広大へ。左前輪の交換に少し手間取って2秒ほど失い大湯に先行されますが、さらにARTA・福住 仁嶺にもかわされてしまいます。変則作戦でペースを上げるわけにいかない福住に前に出られたのは結構痛い出来事です。
 大湯の方はタイヤに熱が入ったらクインタレッリを追い上げて接近戦へと持ち込むと、32周目の130Rでクインタレッリが危うくはみ出しかけてスロットルを戻したらしく、ものすごくあっさりと大湯が前に出ました。クインタレッリはタイヤを換えてから15周、第1スティントを17周で諦めていますから、また厳しくなっている可能性があります。

 GT300はARTA・木村、muta Raging GR86(5kg)・堤 優威、初音ミクAMG・片岡 龍也の3台が実質的な1位争い。それぞれ1回目のピットに入ったのは16周目、5周目、16周目。前の2台はタイヤ無交換ですが片岡は4輪交換しているのでペース的に優勢です。片岡は32周目にGT500をうまく利用して堤をかわし、翌周に木村もかわして事実上の1位になりました。
 そういえば元々は上位にいて23周目にピットに入った王道戦略の人たちはどこに行ったんだろうか、と思ったらTANAX GT-Rは20秒ほど後方。HACHI-ICHIスープラはタイヤが全然合わないようで佐藤が苦戦し順位を徐々に下げていました。

 GT500ではクインタレッリがますます挙動不審になり始めて37周目にZENT・石浦 宏明にかわされ3位に後退。石浦はこの段階でリーダーの大湯まで7秒差でしたが、前が開けると明らかに速いペースで追い上げて行って41周目にはもう1秒差以内。クインタレッリの方はここで残り36周と燃料的にはウインドウに入ったので2回目のピットに入ります。ただバックアップ用の別のタイヤが機能しないとタイヤが36周も走れそうにありません。

 43周目、GT500も早めに2度目のピットに入る車が出てくる中でコース上では大湯、石浦、塚越の3つ巴による争いが発生。大湯もタイヤがちょっと限界に近付いてきた様子でペースが上がらず、とにかく必死で抑え込みます。
 GT500の優勝争いが重要な局面を迎える中でGT300のリーダー・初音ミクAMGは42周目にピットへ。片岡から谷口 信輝に交替して締めにかかります。3周前にピットを終えていたARTA・武藤 英紀よりも前でタイヤの発熱を完了させ事実上のリードを維持しました。ARTAも8位スタートから表彰台のチャンスです。

 48周目、GT500の優勝争いから塚越が一抜けしてピットへ。すると2周後の50周目、HACHI-ICHIスープラが130Rでクラッシュ。誰がどう見ても100%SCが出る状況で、ピット入り口に近かった人が一斉にピットへ入りました。第2スティントのタイヤが合わなかったHACHI-ICHIはちょうど2回目のピットを終えたアウト ラップ中でしたが、130Rの手前でタイヤに不具合が発生したようで、いきなり巻き込んでカウンターを当てたらすっ飛んだ、というような状況だったそうです。佐藤に幸い怪我はありませんでした。

 GT500ではDENSO KOBELCO SARD GR Supra(32kg)とカルソニック IMPUL Z(49kg)がここに間に合わせ、DENSOはなんと給油のみでピットを出て実質2位を手にしました。DENSOは2回目のピットサイクル前には11位、カルソニックは13位あたりでしたからものすごい得をしました。
 一方でRed Bull、ZENT、WedsSport、KeePerは入れる位置にいませんでした。タラレバですが、上位2台はAstemoの動きを見て翌周に反応していたらどちらか片方は戦線に残れていたはずでした。
 GT300はこのSCでピットに入れたリアライズGT-RとTANAX GT-Rが大きく得をして事実上の3位、4位で合流。初音ミクとARTAはなんとか1位、2位を失わずに済みました。

 55周目にリスタート、事実上の3位でリスタートしたのはMOTULの松田 次生でしたが、リスタート早々にタイヤの古いDENSO・中山 雄一に詰まったようで逆にカルソニック・平峰 一貴にかわされました。平峰は中山もヘアピンで簡単に抜いてなんと実質2位。ところが平峰はこの2周後に周回遅れのENEOSを130Rで抜こうとして飛び出してしまい、この間に松田に抜き返されてしまいました。
 この前の映像が無いのではっきり分かりませんが、大嶋 和也は周回遅れなのでもう少し明確に譲るべきだったように、中継映像を見る範囲では感じました。大嶋自身も飛び出しているし、SCで競争相手が分からなくなってカルソニックは順位を争う相手だと誤認していたのかもしれませんが。

 GT300は谷口がリスタートから差をつけたのに対して2位から武藤、オリベイラ、富田の3台が接近戦。Weibo Primezウラカン・小暮 卓史とグリーンブレイブ・吉田 広樹も続いています。この中で勢いがあるのはTANAXの富田で、53周目に車の重いオリベイラを130R入り口で抜くと、2周後に武藤もかわして実質2位へ。谷口も目の前です。
 一方抜かれたとはいえ依然として上位にいるリアライズGT-Rでしたが、画面には映っていない、おそらく41周目か42周目だと思いますが、シケインの立ち上がりでWeibo Primezウラカン・元嶋佑弥にオリベイラが後ろから接触し、スピン寸前にさせて順位を上げていたそうで、これに対してドライブスルーのペナルティーが課せられ入賞圏外へ落ちてしまいました。

 63周目・残り15周、GT500は塚越、松田、平峰がひとかたまりに。一度SCでタイヤが冷えたのがよかったか松田は好ペースで塚越を追い上げ、最もタイヤが新しい平峰はさらに勢いがありそうです。リスタートから10周ほどでちょうどGT300の後方集団にこの3台が追い付いてしまい大渋滞。
 65周目、松田がデグナーの2つ目でGT300の小暮と軽く交錯。松田はインを開けてくれるだろうと思っていたのに、小暮は早い段階から車を右に向けて閉めに言ってしまった様子で、松田は本来よりもかなり内側まで車を持って行ったために縁石に大きく乗り上げ、ラインも窮屈になってしまいました。
 これを見た平峰が立ち上がりで右から松田を抜こうとしましたが、松田も急に進路を右へ動かしたので完全な幅寄せになってしまい平峰は芝生へ。なんとかこらえましたがグリルの右側は芝だらけ。松田にはドライブスルーのペナルティーが課せられました。塚越はこれで2位と差が開いてちょっと一息。
事故寸前^^;

 松田のレース後のコメントによれば、平峰が来たから防ごうとしたわけではなく、外で小暮がヨロヨロしていて危なく感じたので距離を開けた結果、そこに平峰が来ていたのでコース外へ追いやってしまった、という流れだったみたいです。
 ただ、もちろん当事者であるプロだから分かることなのかもしれませんが、外からの映像でそこまで小暮が危機感を感じるほどよろけているようには見えませんでしたし、その進路変更も、後ろに相手の車がいるという状況でコースの左側1/3のあたりから右端にまで飛び避けるほどの急な移動は安全な動きとは私には思えませんでした。ちょうど寄せた瞬間の映像が無いので、寄ったところで少し接触した結果として車が右に向いて端まで行ったのなら分かりますが、無接触だとしたらちょっと楽観的な動きに思えます。
 なおこの後、小暮は左後輪がパンクして緊急ピットを強いられ17位に終わりました。思えば第3戦の鈴鹿でも小暮はパンクで緊急ピット、ピットを出た後のデグナー1つ目で松田が追突してペナルティーが出てるんですよね。前回は新品タイヤ+FCY明け=リスタートの瞬間が激遅、という状況が把握できていないことで起きた接触だと思いますが、偶然とはいえ2回続けての接触は気まずいですね。。。

 さてレースは残り9周、GT300の3位にいたARTA・武藤が問題発生により自主的にコース外へ退避。危ないのでFCYとなりました。ピットで木村偉織も残念そうな表情、ARTAは前戦も電気系の故障でリタイアしていて、NSX GT3が450kmを走り切ってくれません。このFCYは塚越がちょうど71周目に入るあたりのタイミングで解除されました。1分半ぐらいでしたかね。
 3位が脱落したGT300、優勝争いはというとロング ランではやはりTANAX GT-Rは分が悪いのか、谷口が富田を引き離していきました。3位にはなんと21位スタートでここまで全然目立っていなかったapr GR86 GT(9kg)がグリーンブレイブをかわして上がってきました。どこから来たのか(;・∀・)

 残り3周、GT500は塚越のペースがなんだか数周前から全然上がらなくなってきてあっという間に平峰が追い付きました。ヘアピンで内側に飛び込んで平峰がリードを奪います。見た感じ燃料が足りないような雰囲気の動きでしたが、給油後に4周ほどのSCと半周ほどのFCYもあったので、まさか燃料が足りないなんてことは無いだろう、というのが見ていての印象でした。でもペースはガス欠っぽいんだよなあ。

 レースは最終周へ、平峰もグリルに芝をへばりつかせているのでエンジンやブレーキに不具合が出ないか最後まで心配でしたが、それでも塚越を引き離して無事にトップでチェッカーを受け、最後尾スタートからなんと優勝を果たしました。マレリもこんな感じで経営が立て直せると良いですね!塚越は後ろにさらに2台が追い付いてきて風前の灯から思われましたが、最終周になると復活してなんとか2位を確保。3位にDENSO、4位CRAFTSPORTSとなりました。


 GT300の終盤は無風で、こちらも過去何度も勝てそうなレースを不運で落としてきた初音ミクAMGが無事に帰ってきて、なんと2017年開幕戦以来という久々の優勝でした。2位に3.5秒差でTANAX GT-R、apr GR86が3位でGR86として初めての表彰台となりました。

 GT500はSCの運、不運というものがあってこれはどうしようもないところですが、その後にまだ劇的な展開があったというのが印象に残りました。事後取材で明らかになった塚越失速の原因は、やはり燃料不足でした
(;・∀・)
 2回目のピット作業の際に、見た目上は非常に迅速でしたが燃料がきちんと入っていない時間帯があったようで、なんと予定量の2/3しか入っていない非常事態でした。SCとFCYがあったのに足りない、じゃなくて、SCとFCYのおかげでなんとか走り切れた、というのが事実だったのです。きちんと給油できていればおそらく勝っていたと思われるので悔いが残りますが、他方でSCが出ていなければ表彰台も不可能だった可能性が高いので、運が良かったとも言えそうです。
 Red Bull NSXからすると最悪のSCで、結果論ですがSCが無ければAstemoはガス欠、ZENTはトラブルでこの後ガレージ送りになっていましたので優勝を手にしていた可能性がありました。3台が健全でもあのタイヤと車の仕上がりなら3位は確実に手にできた内容でした。それだけに6位という結果は、今季最上位ではありますが相当凹む結果だと思います。

 一方、SCを活かして3位となったDENSOが2回目のピットでタイヤを交換しなかったのは、元々2回目はタイヤ無交換で行くのが基本戦略だったのが大きな理由だったようです。1回目のピットを33周まで引っ張っており、タイヤは33周→44周の割り振りということになります。前戦も同じ方向の作戦でした。もしタイヤを交換していればリスタートは実質3位からだったと思われますが、勝てた可能性のある条件になっていました。
 チーム監督の脇坂 寿一もこのあたりはタラレバとして替えたらよかったかな、とはレース後に口にしたものの、事故発生時にすぐピットに入ったので、急にタイヤを用意して混乱するリスクも考えたとのこと。確かに一理あります。いずれにせよ中山はタイヤをうまく最後までもたせてチームの期待に応えた見事な走りだったと思います。
 そして、最終周の130RでSTANLEY NSX-GT(46kg)・山本 尚貴がクラッシュして車両が中破したのも驚きでした。ちょうどここで松田次生と争っていて、松田に内側に入られた山本は外で並走して粘ろうとしましたが、外側の路面が汚れている上に、この車も2回目のピットをタイヤ無交換で済ませた47周も使ったタイヤなので性能も厳しかったようです。
 MOTUL Zはペナルティーやタイヤの問題がありましたが5位、同じくミシュランのCRAFTSPORTSも4位で、この2台はSCとFCYでタイヤを休ませることができたのが大きかったのではないかと思いました。

 一方GT300ですが、初音ミクAMGはSCの有無にかかわらず勝てるレースだったと思います。本来なら富士で勝っていたはずがパンクでレースを失い、もう5年も勝っていないとどうしても「またか」という気持ちになりますから、そういう状況で2戦続けて高い競争力を発揮し続けるのって簡単なことではないと思います。ベテランコンビ、本当にお見事でした。
 TANAX GT-Rも45kg背負った中で2位で16点獲れたのは非常に大きい結果です。SCが無かったらもう少し変則戦略組に負けていた可能性があると思うので、うまく運も味方に付けました。逆にリアライズGT-Rはその運を味方にできなくて、そうそう全て上手く運ばないなと思わされましたね。

 で、気づいたら3位にいたapr GR86。本来ならドライバーには永井 宏明がいるはずでしたが体調不良で欠場することになって今回は織戸 学が第1ドライバー、本来第3ドライバーの平良 響が第2ドライバーとなり、第3ドライバーとして上村 優太を急きょ起用しました。
 永井はトヨタカローラ三重の社長なども務めるジェントルマン系ドライバーで、ARNレーシングというチームの代表でもあります。上村とはスーパー耐久やGTワールドチャレンジアジアでコンビを組んでいました。上村はポルシェカレラカップジャパンで優勝常連のドライバーです。
 練習走行で駆動系に不具合があったapr GR86は予選で21位と苦戦したので最初のピットを早めに行い、織戸→上村→平良と3人で繋いで、SCも上手く拾って順位を上げました。決勝の最速ラップはTANAX GT-Rの大草が記録していますが、この車も0.024秒差のタイムをレース中に記録しており、速さが非常にあったと思われます。あえて無交換を採用せず速く走る考えも結果的に上手く行ったようです。

 鈴鹿は過去に1000kmもやったぐらいですが、450kmは長すぎず短すぎずなかなか良い塩梅のレースだなと思いました。もうGT500でも変則作戦を発動する時代になってきましたが、これも450kmという距離設定ゆえの出来事なので、とりあえず来年もこれを続けたらいいんじゃないかな?と個人的には思いました。
 両クラスともドライバー選手権は持ちポイントとウエイトの具合を見ると現段階では全然何がどうだとは言えそうにない状況ですね。次戦はSUGO、全戦出場している車両にとってはここが最もサクセスウエイトが重くなるレースです。GT500はカルソニックが最大燃料流量3段階引き下げ、他にも3台が2段階引き下げというキッツイハンデを背負います。

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