FE 最終戦 ソウル

ABB FIA Formula E 2022 Hana Bank Seoul E-Prix
Seoul Street Cuircuit 2.618km
45munutes+1Lap(規定により6分45秒延長)
winner:Edoardo Mortara(ROKiT Venturi Racing/Mercedes-EQ Silver Arrow 02)

 ABBフォーミュラE、シーズン8最終戦ソウル。これが2014年に始まったこのシリーズの通算100戦目です。ルーカス ディ グラッシは全ドライバー中で唯一全てのレースに休むことなく出場し続けて通算100戦目を迎えました。サム バードも同様でしたが前戦・ロンドンでのケガでこのソウル2連戦に出られずに98で記録が止まってしまいました。もう1人の初期メンバー・セバスチャン ブエミはシーズン3のニューヨーク2連戦をWECとの日程重複で休んだので、同じくこれが98戦目です。
 そして、前日のレース中にアントニオ フェリックス ダ コスタと接触した際に手を傷め、アレクサンダー シムズにぶつけられてこれをさらに悪化させたらしいアントニオ ジョビナッツィーがこの最終戦に出られなくなりました。代役として、つい先週のSUPER GTで初優勝していたサッシャ フェネストラズがデビューすることになりました。
 フェネストラズは元々ジャガーの言うなれば2番目のリザーブ。ジャガーがバードの代役としてノーマン ナトを起用しているため『リザーブのリザーブ』という立ち位置で現地にいましたが、ドラゴン/ペンスキーが代役候補を用意していなかったため、急きょ出向して走ることになりました。ナッツィーの99番をそのまま借りて、テロップの顔写真すらありません。前日から準備はしていたものの、正式乗ることが決まったのは朝6時半の連絡だったそうです。

 ジャガーのリザーブであるフェネストラズが、現在は自社製パワートレインを使用しているけど来季はDSと組むことになるドラゴンペンスキーに貸し出され、本人は来季から日産に乗る可能性が高い、という、よく考えたら意味が分からなくなる話ですw

 ドライバー選手権、ストフェル バンドーンは21点のリードを持って最終戦に辿り着きました。唯一逆転の可能性があるミッチ エバンスですが、前日に続く2連勝が必須です。
 土曜日は雨により混乱した予選でしたが日曜日はドライ。グループ予選のA組でバンドーンは悠々と2位で通過しますが、B組のエバンスは車が曲がっていなさそうで苦戦。1アタック目はセクター2で0.5秒近く失ってしまうと、2回目は序盤からアンダーステアの嵐。競技場内のターン11出口では壁に軽くぶつけてしまうバラバラなアタックになり、グループ7位という失望する結果に終わりました。
 バンドーンはデュエルスの準決勝で敗れたものの予選4位でチャンピオンに王手。デュエルス決勝はダコスタとエドアルド モルターラの争いとなり、完璧な走りをデュエルスを通じて見せたダコスタが通算8回目のポール ポジションを獲得しました。現行の車両が使用された最初のレースであるシーズン5の開幕戦でポールを獲ったのもダコスタで、彼はこの車の最初と最後のレースでポールを獲ったことになります。
 2位からモルターラ、ジェイク デニス、バンドーン、ロビン フラインス、ディグラッシ。7位にはなんとNIO333のダン ティクタムが入りました。最終戦にしてチーム史上初のデュエルス進出を果たしたティクタム、決勝で蓋にならないかちょっと心配。エバンスは13位からのスタートです。

 決勝、普段なら歩いてコースを解説してくれるダリオ フランキッティーがなんととうとうデモ車両で実際にコースを走行して走りながら解説してくれました。そこそこのペースで走ってたのが驚きですが、走りながら細かく解説できるわけがないので内容は薄っぺらくなりましたw
 天候は曇りで現地の雨雲レーダーを見ていると18時頃から雨の可能性がありそう、16時台の決勝はどうにかなりそうな感じです。エバンスにとっては予報は外れてほしいでしょうね。スタート、上位5台まではなんとかなりましたが6位あたりからがターン1で大量に突っ込んできて大渋滞。完全に道を塞いでSCになるんじゃないかと思ったら意外とみんな脱出できました。さすが100戦目、渋滞の脱出法も手慣れたものですw

 ゆっくり見返すと、しいて言えば3ワイドの一番内側に入っていったマキシミリアン グンターがきっかけのような気がしますが、ほとんどそこしか居場所が無かった感じもあるので完全なレーシング インシデントでしょう。

 2周目、ターン22でブロック ラインを通っているダコスタのさらに内側にモルターラが突っ込んでちょっと強引な争いに。モルターラはダコスタをかわし、失速したダコスタをデニスもかわしていきました。ごっつぁんです。一方、スタート直後の大混乱を切り抜けて6位を走っていたティクタムでしたが、どうやら壁にぶつけて損傷したらしく3周を終えるとピットに入ってそのままリタイアとなってしまいました。

 6周目に5位のフラインスが上位勢で最初のアタックへ。これを見て翌周に3位・ダコスタと4位・バンドーンが同時にアタックに入ります。この7周目にはパスカル ベアラインとニック デ フリースがターン1で接触し、デフリースはピットまで辿り着きましたが、ベアラインの車はターン4外側の隅っこに置き去りになりました。FCYを出さずに、この区間は永続的な黄旗でどうにかする気みたいです。アホかいな^^;

 この後上位勢のサイクルが一巡してモルターラ、デニス、ダコスタ、バンドーン、フラインスの並びは変わらず。モルターラのペースが妙に速く、特に3位のダコスタ以下とはずいぶんとペースに差があるので想定周回数が違うんじゃないかと気になってくる状態です。エバンスはこの段階で9位。

 13周目、デフリースのリタイアによりメルセデス-EQをチーム選手権で逆転するチャンスだったベンチュリーでしたが、スタート直後の玉突き事故のせいかディグラッシがパンクのために緊急ピット。14位でコースに戻って入賞圏外になりました。
 さらに15周目にグンターがターン19の先でコース右端に車を止めてしまい、これはさすがにレースを止めないと排除できないのでSC導入となりました。時間は残り22分ほどでちょうどレースの折り返し地点です。このSCでついでにベアラインの車も撤去w

 グンターの車は前輪が明後日の方を向いてしまって押し出せなかったのでレッカー車が必要となり、片付けるのに時間がかかってしまいました。残り14分ほど・19周目にようやくリスタート。このSCだけでなんと6分45秒の延長が発生しました。リスタート直後に1位のモルターラと3位のダコスタがアタックに入っていずれも順位を失わずに合流。ダコスタは早速2位のデニスを狙います。
 ターン22で外からデニスを狙っていったダコスタ、ブレーキ位置までの車両長の8割方前に出るところまで行きましたが、デニスが内側で粘ったために切り込んだところで接触しました。大した接触ではなかったものの、このコーナーは外側が狭いのでダコスタは外側の壁に突っ込んでしまって停止を余儀なくされます。これにはデニスに対して5秒ペナルティーの裁定が下りました。もう勝負権は失われていたんだから引くべきだった、ノーズを引っ掛けるな、という判断ですね。

 おそらくデニスは仮にダコスタがもっと空間を残していたとしても、速度と角度的に外側に膨らんでダコスタにどこかしら当たっているのでないかと思うので、判定は妥当に感じます。ダコスタとすると、相手が無茶してくるリスクと「もう俺のコーナーだから入ってくんな」というライン取りを考えた時に、ちょっと後者が強くなってしまうのが年間タイトルを争う上では弱点でもあるな、と思いました。正当性があってもぶつけられて損するのは自分なので、それはそれ、これはこれで回避をもうちょっとできた方が成績は安定するように思います。

 これで追いかけて来る上位が消えたモルターラはリスタート後もペースが速く、またもや2位以下を引き離して独走。エナジー残量を見ても周囲と変わらないので1周少ない、とかいうこともなさそうです。エバンスはなんとか7位まで挽回しましたが、バンドーンが7位以内にいる限り自分ではどうしようもありません。ゲリラ豪雨で上位6台が全員壁に刺さりでもしないとさすがに大逆転チャンピオンは無理な感じです。

 そのままレース時間は45分を使い切って6分45秒の延長戦へ。しかしペースを見ると全体にグループ予選と変わらないようなタイム=全然リフト&コーストが必要ないような状態になっていて、これでは追い抜きも残量を巡る駆け引きも起こりようがありませんでした。
 モルターラが今季4勝目を挙げ、2位でチェッカーを受けたデニスに5秒が加算されるため、バンドーンが2位でこのレースを締めて、2022年のABB FIA フォーミュラE 世界選手権のドライバーズ チャンピオンとなりました。メルセデス-EQ フォーミュラE チームはチーム選手権も制して2年連続のダブル タイトルと有終の美を飾って、フォーミュラEを去ることになります。さようならメルセデスEQ、はじめましてマクラーレン。

 5秒加算を受けるデニスはさぞかし順位を下げるだろう、と思ったら、彼は最後の数周で4位のフラインスより毎周0.5秒早いペースで飛ばし、なんとフラインスと5.4秒差でチェッカーを受けたのでギリギリで3位表彰台を手にしました。当てられたダコスタは10位止まりなのでこれはなかなかの不満でしょうw
 11位スタートのオリバー アスキューが5位、ジャン エリック ベルニュが6位、そしてエバンスは7位でした。レース結果の上位5台はベンチュリー、メルセデス、アンドレッティー、エンビジョン、アンドレッティーとなっていて、いずれも今季限りで撤退するドイツ製パワートレイン使用車両でした。
 日産で最後のレースになると思われるブエミは9位、そのブエミの後釜かもしれないフェネストラズはさすがにペースが遅くて完走した中では最下位の16位でした。でもレースを一度経験して完走までできたのは収穫ですね。そう言っててジョビナッツィーは何もできずに1年終わってしまいましたけど^^;

 ソウル2連戦、調べた限りでは韓国に特段のイベント人数制限は見受けられないので、単にオリンピック競技場の観客席はチケットが全部売れてなかったんだと思いますがお客さんの入りが寂しかったですね。見た目はいかにも市街地っぽいし、「静かな車だから大都市の中心部でもレースができます」というフォーミュラEの当初のイメージと合致するので個人的には好印象でした。日常空間にレースがあるという非日常が良い、とでも言いましょうか。
 ただ、初開催ということもあって甘い目に見積もったのかもしれませんが、エナジー管理の面で比較的管理がしやすいコースだったのかな、という印象を受けました。土曜日は雨絡みだったので参考になりませんが、ドライだったこのレースではスタート直後から長い直線の終盤でのリフト&コーストが映像を見ていてもあまり必要とされていないように見えました。
 試しにダコスタのグループ予選と決勝のセクター毎のタイムを見てみましたが、直線と90度コーナー2つしかないセクター3で予選と決勝序盤のタイム差が0.5秒ほどしかなく、全体でも2秒・2%落ちぐらいのタイム水準で、エナジー管理が厳しいとされるイベントでの予選/決勝の差よりもいくぶん低い数値でした。
 序盤の細かいコーナーが続く区間でタイヤを労わりつつ消費を抑えておけば、あとは回生だけでそこそこ賄えてしまうので極端なリフトがいらないのかな、という印象で、SC導入以降ともなるとどのドライバーもほぼグループ予選のペースでした。たぶんロンドンと同じように、使用可能エナジーを52kWhからいくらか削った方が良かったイベントだったんでしょう。
 いつもの集団戦にならずにすぐバラケてしまったのは、たぶんエナジー管理がそれほど必要無いのでアクセルを踏める時間が制約となってタイムが頭打ちにならず、車の力量なりのタイムで『普通のレース』をしていたからではないかと思います。もちろんみなさん最後は0%でゴールしているので楽したわけではないんですが、ちょっと最終戦としては物足りなさがありました。

 シーズンを振り返ると、バンドーンは1勝だけでしたが無得点だったのも一度だけ。16戦中13戦は5位以内、表彰台8回と抜群の安定感でした。シーズン序盤のメルセデスは予選で良くても決勝でエナジー管理がうまくいかず抜かれて行くレースが何度かありました。
 昨年までの予選制度は選手権上位だとほぼ下位スタートになるので、遅い車を相手に序盤は抑えめに走って、車がばらけたところから余らせておいた余力で抜いて行って可能な限り上位で終わることが大事でした。しかし今年は予選制度の変更で普通に上位からスタートできるようになり、逆に自分たちが追われる対象になったことで、先頭を走っておいて後ろより残して勝つ、という理想をやや求めすぎてしまった感じがありました。
 シーズンの途中からは、デュエルスでの一発の速さを多少捨ててでも決勝で安定して走る車を目指して、決勝の走りで無駄がないから終盤に追い抜きができる、という方向性にチームとして振った印象があり、予選は『デュエルスに出れたら合格』という雰囲気でした。220kWと250kWでは後ろからの押され方が違うので、たぶんアクセルを踏みながらのコーナーではハンドリングも微妙に違っていてセッティングに良し悪しが出るんだろうと思います。
 シーズンの平均グリッド6.81はダコスタに次いで2番目、ポールポジションは2回ですが常にデュエルスに進んで、6位前後からスタートして順位を上げてレースを追えるので、常に5位以内でゴールできていました。もちろんソフトウェアの性能やシミュレーション技術も、そうとうすごい組織力で行われているんでしょう。メルセデスってやるなら絶対本気ですから^^;
 マクラーレンになっても人材の一部は残るでしょうから、日産ワークスにとってマクラーレンはカスタマーでありながらひょっとすると強烈な比較対象になるかもしれないですね。

 そして気づけばシリーズ全体で100戦に到達しました。2連戦とかやってるので進むのが速いわけですが、北京でのあの開幕戦から随分と進んで来たなあと思います。カートのような笑うしかない事故、やたらと出るレース後の失格、理解してないと全然意味が分からないドMなレース方式、柔軟な運営方針、批判も問題点も山積みな上にパンデミックで市街地開催を邪魔されて、本来思い描いていたよりも認知度、視聴者は伸びていないという話も聞きますが、それでも衰退はせずに第3世代へとたどり着いたのはやはりすごいです。
 個人的に今のSRT05eをかなり気に入っていたので次の車両(シャシー名が分からない!)に慣れるのに時間がかかりそうですし、タイヤもハンコックに変わるし、SRT01eから05eへの進化幅と比べても次はかなり強烈な進み具合なので、実はちゃんと車が動かないままシーズンが始まるんじゃないかと未だにちょっと疑っていますw
 たぶんポルシェもシーズン11を最後に抜けるのでまたメーカーが減るでしょうし凋落するべき理由というのもたぶん山ほどあると思いますが、夢物語と思われたものを実現させて8年進めて来た運営がどういう風に舵取りするのか、単にレースだけではなくてシリーズ運営全体を楽しみに来季の101戦目からも見ていきたいと思います。あ、ちなみに来年もエバンス推しでいくつもりです(*'▽')


コメント

Cherry さんのコメント…
いつも公式ハイライト勢なのにめっっっっっっずらしく生でフォーミュラEを見ましたw
バンドーンが誰かにミサイルされてリタイア、エヴァンスが猛追い上げで勝って逆転チャンプを望んでたんですけど、呪いが韓国には届きませんでした...w毎戦毎戦しっかりポイントを取るのがチャンピオンには欠かせないことを改めて思い知らされましたね。
にしてもお隣でやってるのが羨ましいのでコロナ明けに行きたいのですが、そもそもそれまで続いてることを祈りたいですw
とりあえず僕はさらに速くなるあんまりカッコよくないGEN3とマクラーレンを楽しみにして待ちます。フォーミュラなのについてる謎フェンダー、好きだったのになぁ...
首跡 さんの投稿…
バンドーン&メルセデス、チャンピオン獲得おめでとう!
エバンス、モルターラ、来年こそは王座獲得を!

Cherryさんと同じく、私もGen2の外観は格好良いと思うので、これで見納めなのがちと寂しいです。
しかしながら、Gen3もフォーミュラカーにしてはシンプルな外観なので、これはこれでアリだと思いました。(何ならフロント部分はウイングじゃなくてバンパーにしても良さそう...)
来季は色々と変更点が多く、勢力図が入れ替わりそうな気がするので楽しみです。

あと全くの余談ですが、私もポルシェのスキームを見て「昨年の毛零薄キーが乗っていたeCascadiaスキーム(ハリソン バートンのFREIGHTLINERとほぼ同じスキーム)に似てるなぁ」と思いました。
SCfromLA さんの投稿…
>Cherryさん

 来年もソウルは開催予定なのでぜひ!他所のレースを見てると、神戸の市街地なんかうまく道路を使ったら高低差とかありそうだし、海沿いのコースも選べるし面白そうなのになあ、とか思ってしまいました。
 ちなみにあのフェンダーは「市街地の狭い場所で争って乗り上げ事故が起きないため」という理由で取り付けられていて、童夢がGen2シャシー選定入札に応募した車両も同様のコンセプトだったそうです。だから外して大丈夫なのかちょっと心配です^^;
https://jp.motorsport.com/formula-e/news/%E7%AB%A5%E5%A4%A2-fe%E6%AC%A1%E6%9C%9F%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%B7%E3%83%BC%E5%85%A5%E6%9C%AD%E3%82%92%E5%8F%96%E3%82%8A%E4%B8%8B%E3%81%92-fia%E3%81%8C%E6%9D%A1%E4%BB%B6%E5%A4%89%E6%9B%B4-%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%A1%88%E3%82%82-807854/807854/
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 現行車両が多少ミニ四駆的な『性能に関係ないけどカッコ良さそうな形状』という感じなのに対して、新車は『余計なものは付けません!』的なコンセプトで対照的ですよね。たぶん20台でレースしているのを見たらすぐにかっこよく見えると思いますw
 言われて調べて「eカスケイディアってめっちゃかっこいい電動トラック!」とかちょっとテンション上がってたら、フレイトライナーってダイムラートラックの子会社なんですね。ポルシェがダイムラーの宣伝してるみたいになってる、と考えるとなんか笑えます。