F1 第13戦 ハンガリー

FORMULA 1 ARAMCO MAGYAR NAGYDÍJ 2022
Hungaroring 4.381km×70Laps=306.63km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull RB18-RBPT)

 F1は夏休み前最後のレースとなりました、第13戦のハンガリーです。かなり暑くなりがち、抜けない、みんな疲れている、という理由が関係あるのかどうか分かりませんが、結構サプライズが多い印象のあるイベントですね。あと雨はあんまり降らないけど降った時はだいたい荒れますw
 このレースを前に、セバスチャン ベッテルが今季限りでの引退を表明しました。髪が薄くなってきたから、というわけではもちろんなく色々と理由はあるようですが、近年は環境問題に力を入れている様子があり、環境を訴えながらガソリンをまき散らす活動をしている矛盾について口にすることもあったので、家族との時間を大事にしつつそちらの方にも目を向けるのかな、なんて想像します。戦争を受けてロシアGP開催にいち早く反対の姿勢を示したのも彼でしたね。

 土曜日のFP3では雨が降り、天気はあまり良くなかったものの予選はドライ。Q2ではセルヒオ ペレスの1回目のアタックに対してトラック リミット違反によるタイム抹消が告げられましたが、映像を見るとタイヤは白線の上。
ただいまリクエストによりリプレイ検証が行われています
♪エヴァンゲリオンのBGM

 誤審じゃないかと思ったら、2回目のアタックに向かうころに撤回されるという珍事が起きました。結局ペレスはこの1回目のタイムが今一つ、そして2回目も他の車が邪魔になったりして11位になってしまい、Q2敗退。結果論で言えば誤審があっても無くても結果に影響はしていませんが、もし1回目のアタックがQ2通過にじゅうぶんなものだったら、不要な2回目にタイヤを使ってしまったことになるので、きちんと運営してほしいです。

 Q3では1回目のアタックでカルロス サインツが圧倒的に速いタイムを記録、マックス フェルスタッペンはターン2でミスってしまいます。すると2回目のアタックに向かう途中でまさかの不具合発生。出力を失って全くタイムが出ず予選10位となってしまいました。過去にこういう問題があった時は、たいてい1回目のタイムで上位を確保できていたので、10位は珍しい結果です。
 サインツは2回目のアタックでも僅かにタイムを更新しましたが、最後にこれを上回ったのはなんとメルセデスのジョージ ラッセルでした。自身初のピレリ ポール ポジション獲得。メルセデスの1回目のアタックは中古タイヤでしたが、かなり良いタイムだったので私は実はけっこうラッセルが来るんじゃないかと期待していました。
 スタート順位はラッセル、サインツ、シャルル ルクレール、ランド ノリス、エステバン オコン、フェルナンド アロンソとなりました。ルイス ハミルトンはDRSに問題が出て新品タイヤでのアタックができずに7位。ラッセルのタイムから考えると、4位以上を期待できたかなと思います。ラッセルもハミルトンも口を揃えて「速くなった理由は分からないけど」と言っているので、本人たちもなぜ好調か分からないみたいですけどw


 決勝、天候が今一つでスタート時点で雨がパラついている雰囲気。スタートのタイヤはラッセルとノリス、レッド ブルの2台など合計9台がソフト、サインツ、ルクレールなどはミディアムで混ざっています。ここに天候の問題も絡むので、なんか乱戦になりそうな気がします。この裏ではフォーミュラEの予選でアントニオ ジョビナッツィーが予選3位という大事件を起こしてますので、こっちも何か起きても不思議ではありません。


 とりあえず雨は降っていないらしき状態で決勝スタート、ラッセルはサインツの攻撃をなんとか抑え込んでリードを維持しました。後方ではターン2でアレクサンダー アルボンとベッテルの接触があり、部品が落っこちたのでVSCとなります。
 大きな問題はなく部品を掃除してVSC解除、ラッセルはソフトを活かしてまずは2秒ほどのリードを築きました。一方、中団ながらソフトでスタートしたペレスとフェルスタッペンはコース上で順調に前の車を抜いて行き、7周目にはフェルスタッペンが既に6位です。抜きにくいとされるハンガロリンクですが、この日はホーム ストレートで向かい風になっていて、元々ダウンフォースを最強にするコースなのでDRSの効果が絶大でした。
 
 12周目、ハミルトンが抜きあぐねていたノリスをようやくかわして4位とすると、既に真後ろに来ていたフェルスタッペンも便乗。これでフェルスタッペンが5位です。
 一方2位、3位を行くフェラーリはルクレールが少し速いようで、サインツはもうちょっと走れないのか?とやんわりと前に出たい雰囲気を出します。これに応えるようにサインツはラッセルとの間合いを詰め始めました。ペースを見たいんですが、F1公式サイトの無料会員のサインイン機能がバグっていて、パスワードを入れても入れても認証が通らない(わざと間違えたらちゃんと弾かれるので、処理がおかしい)ため、タイム差は分かってもペースが把握できません。いつも観戦のお供にして頼りにしてるのに無念(T T)

 15周目あたりからソフトスタート組はピット サイクル、すると16周目にフェラーリはサインツに対してピットの指示を出しました。サインツはミディアムでのスタートなのでちょっと早い気がしますが、これを聞いたラッセルがアンダーカットを阻止すべくピットに入りました。ソフトからミディアムへ。サインツは逆をやってステイ アウト、陽動作戦ですね。
 サインツは続く17周目にピットに入りミディアム連投。ラッセルがピットを出た直後にアロンソと争ってしまったのでオーバーカットできるかも、と思いましたが、作業時間が3.7秒とやや遅かった、というか作業が終わった後に1秒ぐらい何もせず止まってたのでラッセルが順位を守りました。

 この後上位勢が順次ピットに入って行き、ルクレールは21周目まで引っ張ってピットへ。こちらもミディアム連投でサインツをオーバーカットして2位に浮上しました。ひねくれた見方をすると、さっきの何もしない1秒は故意にルクレールを先行させるための1秒だったり・・・?
 多くのドライバーは第2スティントもミディアムを選んで2ストップ戦略、アルピーヌだけはひねくれてハードに繋ぐ1ストップ狙いでした。ただ、1ストップだからいかに無駄なく走るかが大事なのに、オコンがピットを出た直後に冷えたタイヤでアロンソをブロックして足の引っ張り合いをしています。オコンは昨年のここでアロンソの貢献も手伝って初優勝した恩を忘れたんでしょうか(っ ◠‿:;...,

 ルクレールはラッセルとの差を少しずつ削り取って接近、タイヤに5周の履歴差があります。27周目に初めてDRS圏内に入り翌周から攻勢をかけますが、ラッセルもそう簡単には抜かせてくれません。その間にサインツとフェルスタッペンが徐々に追いついてくるのでルクレールもあんまり長引かせたくはないところ。
 すると31周目、ルクレールはターン1で外側から渾身のブレーキングを見せてラッセルの壁をようやく壊しました。この後32周目にターン2のカメラに水滴が付いているのが見えたので、とうとう降って来たかと思ったらレースに全然影響が無い程度の、雨雲の端っこの方の雨が飛んできている様子。
 しかしラッセルにとってはとりあえず雨よりもサインツの襲来が怖いわけで、なんとかDRS圏に入られないように踏ん張ります。踏ん張っている間にフェルスタッペンがサインツのDRSを取れそうな状況になってきて、ラッセルとすると後ろで暫くやり合ってほしい状態。2~4位争いが激化してきました。

 しかしレッド ブルの戦略家はそんなに甘くはなく、38周目にフェルスタッペンは混戦を避けてピットに入る思いきった判断。ソフトでスタートしているのでソフト→ミディアム→ミディアムの2ストップです。これを受けて翌周に1位のルクレールと2位のラッセルが同時にピットへ。しかしここには1つ大きな問題が。ルクレールはミディアムでスタートしてミディアムに繋いだので、次の選択肢はハードかソフト。ソフトでは残りの31周を走れないのでハード一択です。

 フェルスタッペンはとりあえずラッセルをアンダーカットすると、ピット前には7.5秒差、ターン1でもまだ4秒前方にいたはずのルクレールにあっという間に迫ります。ハードがなかなか温まらないルクレールを僅か1周で捕まえてしまい、41周目のターン1でかわしました。


 ところがなんとびっくり、この追い抜きのリプレイ映像が映されている間にターン13でフェルスタッペンはまさかの単独スピン。一流ドライバーはこういう時に綺麗に前を向けて止めるのが上手いので、フェルスタッペンはちゃんと進行方向を向いて最低限の損失で済みましたが、せっかく抜いたルクレールに抜き返されてしまいました。
 さらにストレートからターン1でラッセルにも抜かれそうになりましたが、ギリギリで持ちこたえました。ちょうどラッセルの前方にペレスがいたことで、ラッセルは最終コーナーを理想的に立ち上がることができず、このぶんだけ届かなかったように見えます。ペレス、絶妙のアシストでした。
ペレスが邪魔でアウトインアウトで走れないラッセル

 フェルスタッペンは大急ぎで走って45周目のターン1で再度ルクレールをかわし実質的な1位に返り咲き。この時見た目上の1位はサインツ、2位はハミルトンですが、こちらもルクレールと同様にミディアム連投になっているので、最後はソフトに繋ぎたいところ。ハードでルクレールが苦戦しているのでなおさらです。この時間帯、速いのはサインツよりもハミルトンでした。
 
 47周目、サインツがピットへ。ソフトに交換してラッセルの8秒後方です。そのラッセルはルクレールを追い上げて51周目にはDRS圏内へ。ハードを選んだことをものすごく後悔しているんじゃないだろうか・・・
 51周目、ハミルトンが上位勢で最後にピットへ、サインツの10秒後方となる5位でコースに戻りました。これでコース上の順位は整理されてフェルスタッペン、ルクレール、ラッセル、サインツ、ハミルトンとなります。
 54周目、ラッセルはさっきのお返しとばかりに外からルクレールをかわして2位を奪還。ルクレールは1分23秒中盤ぐらいのペースですが、ソフトで追ってくるサインツとハミルトンはこれより1.5秒近く速いペース、5位のペレスも1秒ほど速いのでいずれ追いつかれそう。もうハードではどうしようも無くなったルクレールは諦めてピットに入りソフトへ。作戦大失敗です。

 ラッセルは少しずつフェルスタッペンから離され、逆に後ろからはサインツとハミルトンが迫ってきます。しかし先に争いになったのはアロンソとハミルトンの3位争いで、63周目のターン1に辿り着く手前でもうハミルトンが前に出ました。これでメルセデスは2戦連続ダブル表彰台が見えてきました。
 ハミルトンはさらに65周目にラッセルもかわしてとうとう2位。トト ウォルフもちょっとにやけています。フェルスタッペンとは10秒の差があるのでもう1回スピンしてもらわないと追いつかないでしょう(。∀°)

 残り3周、バルテリ ボッタスの車に問題が発生したようでコース脇に車を停めてしまいました。これでVSCとなります。フランスに続いて2戦連続でアルファ ロメオがレースの最後の最後に止まってしまいましたが、どうなってるんでしょうか^^;
 残りが1周ちょっととなったところでVSC解除、フランスではバグったVSCシステム、今日はちゃんと解除されてレースが再開されますが、最後の最後になって少し本気で雨が降ってきたようでフェルスタッペンは超安全運転。VSCで冷えたミディアムでは危ないので、1周でハミルトンに3秒も詰められましたが10位スタートのフェルスタッペンが優勝で前半戦を締めました。
アホみたいにシャンパンをかけるマックス君


 ハミルトン、ラッセル、サインツ、ペレス、ルクレールのトップ6。勝てそうな展開だったのにルクレールはまさかのトップ3チーム最後尾でした。7位に誰も対戦相手がいなかったノリス、8位と9位は1ストップのアロンソとオコン、ベッテルが10位となりました。

 フェラーリは完全にやらかしてしまいました。レッドブルからすると

同点の9回裏 2アウト1・3塁、とりあえず敬遠してもらって次の打者で勝負してほしいので1塁走者に盗塁をさせたら、キャッチャーが正直に2塁に送球してくれた上にそれが暴投でサヨナラ勝ちした

 みたいな感じでした。レース後のフェルスタッペンのコメントによれば、10位からのスタートということで当初はハードでのスタートが検討されていたものの、レコノサンスでソフトですらグリップが低かったため、フェルスタッペン自身がソフトでのスタートを希望、チームがこれに同意して急きょ真逆の考え方に切り替えたそうです。柔軟で風通しの良い組織ですね。
 これは想像ですが、レッドブルがフェルスタッペンを2回目のピットに呼んだ際には、フェラーリは持ちタイヤの関係から反応しては来ないと考えたのではないかと思います。あくまで、タイヤを使う順番が逆なので、自分たちが先に入って、相手は後でソフトに替えて攻めてきて、コース上で抜かれるか抑えるか、というのが前提だったと思います。
 ルクレールは最初のミディアムをわざわざ21周まで引っ張ったんですから、普通に考えて2セット目も27周ぐらい使って残りの22周をソフト、という感じだったろうと思います。振り返れば、オーストリアでの彼らはフェルスタッペンがどうしようが、それを無視して自分たちが最速だと考える戦略に徹し『見た目上は抜かれたってすぐ抜き返せば良いだけだろ』という感じの戦いでした。
 フランスでも、ルクレールがクラッシュしたので結末は分かりませんでしたが、フェルスタッペンの動きにすぐ反応しなかったので同じ方向性だったのではないかと思います。なぜ今日に限っていきなり違うことをしてしまったのか、と思わずにはいられませんでした。
 結果的に2位となったハミルトンとルクレールは同じタイヤの使い方だったわけで、2回目のピットの前に彼らには10秒の差がありました。仮にハミルトンの方がペースに優れていてここから追いついていったとしても、ルクレールは悪くても3位、おそらく2位にはなれたと思います。単純計算ならハミルトンの10秒前方ですからゴール地点でフェルスタッペンより前となり、優勝もあり得ました。それが6位ですから失敗です。
 チーム代表のマッティア ビノットは

「シミュレーションで、ハードを履いた場合、ウォームアップで数周苦しむと示されていた。10~11周はミディアムより遅くなるが、その後は状態がよくなって、30周のスティント終盤には速くなると思われた。我々はマックスに対してポジションを守ろうとしていた。ソフトではその周回数は長すぎたのだ」
「他のチームのハードタイヤで何が起きているかをチェックしていた。すべてを考慮し、何がベストかを検討したうえで選択した。ただ、今日の選択は正しいものではなかったのは確かだ。しかし今日はマシンが予想していたように機能していなかった。速さが十分ではなく、どのタイヤを使っても、期待したほど速くはなかった」

 と、戦略ミスを認めたような言い訳したようなコメント。しかし個人的にはそもそもの部分、「我々はマックスに対してポジションを守ろうとしていた。ソフトではその周回数は長すぎたのだ」というのが、別の戦略にある相手に対する対抗策として基本的に対処を誤っていると思うので、タイヤが予想通り機能したとかしないとかいう話は本筋ではないように思います。
 
 ちなみに、ハードで1ストップしたアルピーヌはペースとしてはなかなか上がって来ずに苦戦している様子でしたが、いかんせん7位より上の車は基本的にペースが違って、一方で10位以下の車ともずいぶんと差があったので、作戦を完遂して順位を得たとはいえ、別に無理せず2ストップでも同じ結果を得られたような気はします。
 ただアルピーヌが世間を驚かせたのはこの翌日で、なんとアロンソが今季限りでチームを離れ、来季はアストン マーティンに移籍してベッテルの後任となることが発表されました。メルセデスの仲間に入ったことを考えると、次はハミルトンの引退にあわせてメルセデスへ移籍する可能性が極めて高いですね(。∀°)

 路面温度の低さと追い抜きのしやすさから積極的な作戦を選んだレッドブル。最後のスティントが32周と長くても行けると判断したのも路温の低さは関係していると思われます。一方でフェラーリは状況を判断する際の優先事項の設定をまた誤った形で、夏休みは毎日F1ゲームで遊んで、机上ではなく『実践』で戦略を磨いた方が良いかもしれませんw
 少し何か失敗があればそこにメルセデスが割って入れる、という状態になったことで、レースは読みにくくて面白いものでした。当人も謎の速さだったわけですが、想定外に気温が低かったことでちょうど良い感じにバランスが出たのかなと思います。分からん理由を理解できれば速くする方法のヒントも見つかるので、偶然を甘く見てはいけません。

 これでF1は一旦夏休み、次戦は8月末のベルギーから再開です。なおフォーミュラEのジョビナッツィーはトラブルでリタイアでした・・・

コメント