NCS 第20戦 ニューハンプシャー

NASCAR Cup Series
Ambetter 301
New Hampshire Motor Speedway 1.058miles×301Laps(70/115/116)=318.458miles
winner:Christopher Bell(Joe Gibbs Racing/Rheem / Watts Toyota TRD Camry)

 NASCAR Cup Series、レギュラー シーズンも残り少なくなってきました。第20戦はショート トラックのニューハンプシャー、スポンサーは餡バターみたいな名前ですが、もちろん餡バターでは無くて、生命保険会社みたいですね。
 なお、ライブファスト モータースポーツは今回My/Mochi Ice Creamがスポンサー、こっちは勘違いでもなんでもなく、Mochi=餅です。雪見だいふくみたいなお菓子ですね。アメリカでは7月17日がアイスクリームの日です。こんなクソくだらない情報を挟むモータースポーツ系ブログはそうそう無いだろうw

 さて、甘いお菓子の話は置いといて、先週のレース後に驚きの発表がありました。7月12日、23XIレーシングが「2024年にタイラー レディックが加入する」と明らかにしたのです。まさに電撃発表。レディックは来年もリチャード チルドレス レーシングに残留すること見込みだと既に伝えられていましたが、まさか再来年に移籍することがこの時点で明かされるとは思いもしませんでした。オーナーのデニー ハムリンによると以前から彼の獲得に向けて接触を続けていたそうです。
 一方、タイ ディロンは今季限りでチームを離れることを明らかにしました。現時点ではノア グレッグソンが有力な来シーズンのドライバー候補だそうです。
 そしてもう1つ、先週のレースではクリストファー ベルがレースの終盤にピットに入った際にナットをきちんと締めずに発進したせいで脱輪しましたが、NASCARはこれに対してペナルティーを課しませんでした。
 NASCARは最近になって脱輪に対する罰則に関する文言に修正を加えたそうで、ピット内での脱輪では、前後にほとんど車が居ない、転がった範囲がすぐそばである、といった、周囲への危険が認められない場面では、必ずしも罰則を課さないことにしたそうです。

 では本題へ。今週の併催はエクスフィニティー シリーズ。最終ステージに入った125周目、3位を走っていたジョッシュ ベリーがシェルドン クリードに後ろを引っ掛けられてスピン、これをきっかけにニューハンプシャーとは思えない多重事故発生^^;


 レースを制したのはジャスティン オールガイアー。35周目に周回遅れのジュリア ランダウア―にうっかりぶつけてしまう失敗を犯し、初めてラップ リードを奪ったのは残り50周を切ってからでしたがそこから先は安定した戦いでした。オールガイアーは奥様の誕生日だったそうで、良い誕生日プレゼントになりました。
 エクスフィニティーでは過去6回のニューハンプシャーは全てトヨタが勝利、それ以前もフォード、ダッヂ、トヨタの3社ばかり勝っており、シボレーの勝利はなんと2007年のケビン ハービック以来でした。


 そしてカップ シリーズ。ブッシュ ライト ポール アワードはマーティン トゥルーエックス ジュニアが獲得。チェイス エリオット、カート ブッシュ、バッバ ウォーレスが続きました。レディックが来ることになった23XIが2列目に並びましたね。カートさん、このタイミングでいよいよ引退でしょうか・・・雪見だいふく号は32位スタートです。
 スタートではいきなりトゥルーエックスが抜け出し、ほどなくウォーレスもエリオットを大外刈りして2位へ。すると5周目にいきなり多重事故発生。

 弟ディロンとジャスティン ヘイリーの接触がきっかけでした。ヘイリーは外ラインから前の車を抜こうと内側に進路を変え、元々内側にいたディロンと接触してるので、内側をきちんと見れてなかった感じですね。アレックス ボウマンとジョッシュ ビリッキ―、そして雪見だいふく号がなんとこの事故に巻き込まれ、この3人は全員これでリタイアとなりました。アイス・・・(T T)

 事故処理に時間がかかったので13周目にリスタート、今日はInterstate Batteriesのスキームなのでカイルに見えてしまうトゥルーエックスが独走し、そのまま無風でステージ1を走り切りました。ちなみにカイルは今日はDewaltのスキームなのでベルに見えて紛らわしいです。2位からウォーレス、カイル ラーソン、エリオット、ケビン ハービックのトップ5でした。

 ピットではハービックが3つ順位を上げて一気に2位となり、ウォーレスの方はせっかく守った2位から3つ失いました。ステージ2はトゥルーエックスとハービックの1列目、本日のリスタートのトレンドは外側選択です。
 78周目にステージ2が始まりますが、始まって早々にターン2でカイルがスピン。幸いどこにもぶつからず綺麗に前を向きましたがコーションです。スピンはするけど立て直しは上手いカイル、契約がまとまらなかったらドリフト競技に転向なんてどうでしょう?

 84周目にリスタートされますが、5周後のターン1でまたもや多重事故。姿勢を乱したコリー ラジョーイがハリソン バートンに突っ込んで、後ろにいたマイケル マクダウルも巻き添えを食らいました。「ダウン シフトしたらリアがロックしたぞ」とラジョーイ。ここでリタイアです。
 ステージ2は残り90周ほど、ここで給油すれば最後まで走れるので多くの車がピットへ。上位勢はトラック ポジションを重視したいので2輪交換や給油のみで作業時間を削りました。トゥルーエックスは給油のみでピットを後にします。エリオットは右側だけ交換したもののホイールのナットが締まっていなかったようで、再ピットしたついでに左側も交換して結局は4輪交換になりました。
 
 ジョーイ ロガーノ、オースティン シンドリック、クリス ブッシャーはステイ アウトを選択。トゥルーエックスは2列目の内側というステイアウト組に取り囲まれた位置を選択し、101周目にリスタートしました。
 タイヤの履歴に差が無いのでトゥルーエックスは簡単に前には出られず、しばしロガーノがレースを引っ張りました。彼とすると、リードを守れるかは別にしてもそこそこの順位を維持した上で、135周目あたりのみんながタイヤを換えたくなるタイミングでコーションが出てくれるのが理想です。

 121周目、ようやくトゥルーエックスはロガーノを抜いてリードを取り返しました。この時点でまだ3位にブッシャーがいて、トゥルーエックスと同様に給油のみを行ったハービックが4位。たまたま4輪交換になってしまったエリオットは22位からリスタートして10位にいます(;・∀・)
 146周目、ここでライアン ブレイニーがスピンしてステイアウト組には待望のコーションとなります。全車ピットに入りトゥルーエックスは4輪を交換した上でリードを維持。2番目にピットを出たのは2輪交換のダニエル スアレスでした。ロガーノは3番目、作戦は大成功です。

 152周目・ステージ残り34周、トゥルーエックスとスアレスの1列目でリスタート。右だけ換えたスアレスは1列目を捨ててでも旋回半径が大きい外側を選んだ方が良かった気がするんですが、やっぱりターン1から旋回速度が遅くて後続に攻め立てられました。抜かれまくるスアレスに注目していたら、ターン3でチェイス ブリスコーがスピン。スアレスにとっては抜かれまくった上にまたリスタートしないといけないので全くもっておいしくありません。
 157周目にリスタート、今日は無敵のトゥルーエックスが引き続きリードします。しかし6周後にカイルさんが本日2度目のスピン。今度はターン4の出口で回って、またもやどこにもぶつけず前を向きましたw
 そしてコーションが出ると、このスピンとは一切関係無く、突然オースティン ディロンとブラッド ケゼロウスキーのぶつけ合いが始まりました。


 コーションになった後、ディロンがすーっとケゼロウスキーに近づいていきなり横からぶつけると、即座にケゼロウスキーが反撃。お互いにぶつけ合いながら芝生まで突っ込んでいく殴り合い。きっとこの前に何かしらあったんだろうと思ったら、リポーター陣がレース中に取材しても「クルーも何が原因か分からない」。
 事後情報を探してみても、結局のところ決定的に何かあったわけではなく、このレースでの些細な接触と、過去のレースで接触があった怒りからなぜかこのタイミングでいきなりディロンがキレた、ということでしかないようです。レース後の取材でも、ケゼロウスキーはディロンと後で話す姿勢を見せたものの、ディロンにはその気が無い、という平行線でした。38歳のケゼロウスキーはこのレースなんと7位で今季最上位、32歳のディロンは23位でした。

 キレるおっさんは置いといてステージ残り18周でリスタート、トゥルーエックスがそのままステージ2も制しました。2位からハービック、エリオット、ロガーノ、ラーソンのトップ5でした。ディロンとケゼロウスキーはリスタート後も近くを走っていたんですが、特に何も起きませんでした。怒りが沸点に達して、とりあえず暴れたらすっきりしたんでしょうか^^;
ステージ2ウイナー・カイr、、、MTJ!

 大半の車がピットへ、今日はトゥルーエックスのクルーもドライバー同様に完璧な仕事ぶりで悠々と先頭を維持、エリオットが2番目にピットを出ました。ブッシャーが2輪交換の賭け、シンドリックは脱輪。左前輪が外れてちょうど作業を終えたハムリンのクルーの下へ辿り着きました。なんか上手いこと拾ってもらえたのでペナルティーを逃れるかと思いきや、たくさん車がいる中でよそのクルーに迷惑かけてるので、クルーの4戦出場停止などお馴染みの重罰を受けることになりました。
 
 ステイアウトしたチェイス ブリスコー、バートン、カイルがトップ3となって193周目に最終ステージ開始。今度はタイヤに履歴差があるので198周目にトゥルーエックスがリードを奪いました。しかし好調のMTJに水を注すように205周目にコーション発生。トッド ギリランドがスピンしました。自滅か押されたのか映像ではちょっと判別つかず。。。

 残りが90周強とまたもや給油したらギリギリで最後まで走れるタイミングのコーションなので多くの車がピットへ、トゥルーエックスは2輪交換で先頭を守り、給油のみで済ませたラーソンが2番目、2輪交換のハービックが続きました。ハービックはボックスを出たところで入ってくる兄ディロンと接触して右前を少し破損、ぶつかってなければ2番目に出れたはずでした。今日はなぜか色々と起きるぞディロン兄弟。

 ここではカート、ロガーノ、コール カスターの3台がステイアウト、210周目にリスタート。またもやステイアウト組に囲まれた2列目内側リスタートのトゥルーエックス、ここまでは上手くいっていましたが初めて試練を迎えます。目の前のロガーノが出遅れた上に、後ろからハービックに内側を狙われて3ワイドの真ん中になってしまいました。これで順位を下げて集団に呑まれてしまいます。
 このレースで初めてダーティー エアーの中に入った上にタイヤは2輪交換。トゥルーエックスはハンドリングが激変し「ターンの真ん中では曲がらんし出口は滑る。全部ダメになった」。NASCARはこれがあるから面白いし怖いですね。
 一方リーダー争いはステイアウトしたカートがリードしロガーノが2位、ピット組で最上位のエリオットが3位。ものすごくどうでも良いんですが、ジェシー パンチがスマートフォンを落っことさないか気になって情報が頭に入ってきませんw
親指でひっかけて支えてるだけ

 236周目、3台によるリーダー争いにクリストファー ベルが参戦。ベルは先ほどのピットで4輪交換しており、トラック上最速のペースで追いつきました。
 ベルに捕まると面倒なエリオット、242周目のターン4出口で軽くロガーノと接触しつつそのまま抜いて行って2位へ。さらに245周目にはリーダーのカートに対してまた同じように接触しました。しかしカートの方はここでは抜かれずに粘り、その間にベルが追いつきました。
 247周目にエリオットはカートをかわしますが、ベルもこれに続いて逆転の機会を窺います。ベルは一旦攻撃を見せたものの、その後は下がってエリオットを静かに追走。長いスティントなので我慢しているのか、やはりクリーンエアーのエリオットが有利なのか、しばらく見ているこっちも緊張する時間帯です。

 すると残り44周、前方に数台の周回遅れが見えたところでベルが動きを見せてエリオットの内側に飛び込むと、周回遅れも活用して2周後にエリオットを完全にかわしました。どうやら攻めるタイミングをじっと待っていたようですね、意外とロング ランでじわじわ追い上げることが多いベル、持ち味が生きた感じです。

 残り31周、カートがピットへ。燃料的にはまだ走れますが、タイヤを換えずにコーションが出た場合の利益と出なかった場合ジリ貧になる損失を秤にかけた結果、ここでもう諦めてタイヤを換えてしまおうという判断です。
 ベルはエリオットをかわした後ひたすら差を広げ続け、この手のレースでありがちな下位チームの選手によるしょうもない自滅によるコーションも今日は起こりませんでした。ハンドリングがグダグダになっていたラーソンを周回遅れに蹴落として最終周に入り、エリオットになんと5秒以上の大差を付けて今季初勝利、通算2勝目を挙げました。エリオット、ウォーレス、トゥルーエックス、ハービックのトップ5。カートは10位まで巻き返しました。

 明らかに最も悔しいのはトゥルーエックスでしょう。最初の206周のうち172周をリードしておきながら、リスタートでの躓きで勝てず、一方で同じコーションで4輪交換したチームメイトのベルが優勝ですから、「あそこには俺がいたはず」と思っているに違いありません。しかも自分のリスタートが下手だったというよりは、ロガーノが出遅れたせいで混戦にさせられてしまったわけですからね。
 勝ったベルからすると、ここは相性の良いトラックなので望んでいた最高の形になって自信を深めたのではないかと思います。昨年のここでは2位でしたし、エクスフィニティーでは2018年、2019年、2021年と出場した3戦で全勝。キャンピング ワールド トラック シリーズでも2回出場して2位と1位で、恐ろしい勝率になっています。
 先週の脱輪でクルーに出場停止処分が下っていれば、代役のクルー チーフと仕事をすることになっていたはずですが、幸運にも罰則を免れていつものメンバーだったのも多少は影響があったと思います。そもそもその脱輪の原因となったクルーによるピット作業の失敗というのもなかったですしね。これからは「ニューハンプシャーといえばベル」みたいなことになっていくんでしょうか。
 
 ロガーノは結局周回遅れの24位でしたが、内容は驚かされるものでした。ステージ2終了後の187周目にピットに入ってそのまま走り続けていたのに、最後に給油に向かったのは296周目・残り5周の地点。コーション周回を含むとはいえなんと110周も走ってしまいました。710馬力仕様のパッケージでオーバルを走ると航続距離は95マイル前後なので、ほぼグリーンで100マイル以上走ったのは驚きでした。作戦的には失敗しましたが、かなり興味深い結果です。
 とかく今日のレースはコーションのタイミングが絶妙で、これが結局トゥルーエックスを圧勝から引きずり落とす原因でした。見ている側としたら非常に面白くてまるでヤラセのような見事な周回数でしたけどねw

 さて、とうとう今季14人目の勝者が誕生してしまいました。ポイントでの進出枠はあと2つ。現在はブレイニーとトゥルーエックスがここに入っています。単純ポイントで言えばこの2人は3位と4位につけているので安定して好成績なんですが、プレイオフ制度においては崖っぷちになっています。
 トゥルーエックスの次はハービックで68点も離れており、これ以上勝者が増えなければこの2人はかなり優勢です。ハービックがポイントで追いつくには相当稼がないといけません。一方で誰かもう1人別の人が勝ってしまったら、トゥルーエックスが圏外へ追い出されます。トゥルーエックスとブレイニーの差は現在37点で、これをひっくり返す必要があります。
 ポイントで3位、4位の人がプレイオフに出れない可能性が出て来たので、NASCARとすればレギュラー シーズンの残りも消化試合感が出ずにシメシメ、という感じだと思いますが、やってる方はたまったもんじゃないでしょうね。自分が勝てば良いだけの話、と言うのは簡単ですが、勝てる車でない時には「誰でもええけど既に勝ってるやつが頑張ってくれー!」という心境になってきます。ケゼロウスキーとかには絶対に勝ってほしくないでしょうw

 次戦はポコノ―です。夏場に立て続けの2回開催だと「えー、またかー」という感じですが、1回だけ出てくるとちょっと気分が上がりますね。予想外の勝者でも出た日にはお騒ぎです。

コメント

ChaseFun9 さんのコメント…
ロードコース×2とDaytonaを残して未勝利は絶対ヤバいですねぇ
勝っていてもブリスコー、レディックといった下位のドライバーも...
一応現時点では17人誕生しない方には賭けます!(笑)
カイル・プッシュ さんのコメント…
JGR、ほんとに誰が誰なのかややこしかったですよね。ボクはカイルがケンゼスに見えました笑

そしてベル!やりましたね!そしてまだトゥルーエックスが勝ってなかったことにもびっくり!
カイルも勝ったのか勝ってないのかわからない勝ち方でしたし、ハービックも買ってないし、、、
いよいよ本格的に世代交代ですかね。

日日不穏日記 さんの投稿…
ベルが勝ったのは予想外でした。終盤独走したことも。トゥレックスは勝たないと、プレーオフ進出は厳しい気がします。デイトナもロードも残ってますしね。解決策は一つ。グレンかインディでAJが勝つことです!僕も嬉しいし、トゥレックスも救われます。ロードはエリオットも勝って良いよ。僕が許す(何様だー)。レディックが来るとなれば、カートはリタイアかな。寂しいけど仕方ないですね。
SCfromLA さんの投稿…
>ChaseFun9さん

 もうこうなってくると、仮に「デイトナでラジョーイが優勝したけどポイントがギリギリ届かなくて31位だったからトゥルーエックスが救われました」みたいな珍事が起きたとしても私は驚かないですねw
SCfromLA さんの投稿…
>カイル・プッシュさん

 今回はJGRはややこしいし、23XIは普段と全然違うし、リスタートが面倒でした(笑)アメリカの経済情勢を見ても高い費用を要するベテランとの契約は簡単ではないので、そういう点でも世代交代は進む可能性がありますね。レディックがおいくらぐらいの契約なのかちょっと気になります(*'▽')
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 確かにAJが勝てば全部解決ですね!とか言ってると想定外の人が勝ってMTJがますます崖っぷちになりそうw