FE 第13戦 ロンドン

ABB Formula E 2022 
SABIC London E-prix
ExCel London Cuircuit 2.141km
45minutes+1Lap
winner:Jake Dennis(Avalanche Andretti Formula E/BMW i FE.21)

 ABBフォーミュラE、残りはあと4戦。第13戦・14戦はロンドンでの2連戦、スポンサーのSABICはサウジ基礎産業公社というサウジアラビアの科学企業です。昨年に続いて大きな展示場施設・エクセル ロンドンの会場内と、ここを出入りする外周の道路を使用した特設トラックが舞台。昨年はコース途中、ちょうどカスタム ハウス駅の横あたりに異様に狭いヘアピンが用意され、ここで事故が多発しました。
 そこで今年はここが改修されて中速のシケイン状のコーナーに変更、昨年よりも7秒近くラップ タイムが速くなっています。なんだか殺人シケイン的形状な気もするのでこれはこれで事故が起きそうな気も^^;
昨年不評だったダブル ヘアピン

中速シケインに変更

 ここは非常に低速で回生箇所も多く、エナジー管理が比較的楽であるとされています。通常の52kWhの使用可能エナジーではドライバーはほぼレース中全力で走れてしまうため、昨年のレースでは48kWhに削減して開催されましたが、昨年の内容と、今季のさらなる技術向上を受けて今年は46kWhの上限で決勝が行われます。
 全力でレース出来るならそれでいいじゃない、と思われそうですが、フォーミュラEの追い抜きの多くはコーナーの遥か手前でスロットルを戻すリフト&コーストがあって成り立っています。誰もリフトしないで走ってしまうと追い抜きは困難ですし、そもそも効率で争うことが主眼のレースなので、こういう措置が取られています。傾向として抜けないレースになると強引にぶつける人が増える、というのも理由です。

 このレースを前に、噂されていたとおり来シーズンからアプトがシリーズに復帰することと、パワートレインがマヒンドラから供給されることが明らかになりました。マヒンドラはシーズン7のM7 ElectroからZF製のパワートレインを使用しており、来季も引き続きZF製を使用します。ZFはマヒンドラの前にはベンチュリーと協力していましたが、ベンチュリーがメルセデスのカスタマーになったのでマヒンドラとの提携に切り替えていました。


 予選、グループ予選のA組ではポイント リーダーのストフェル バンドーンが1位で通過する一方、選手権3位のミッチ エバンスは最後のアタックで思いっきりミスってしまい8位で脱落。ルーカス ディ グラッシはアタック妨害があったとしてなんとセッション後に全タイム抹消の厳罰が下りました。ディグラッシ、またもやペナルティーで予選を棒に振りました。
 B組では選手権2位のエドアルド モルターラが5位、選手権4位のジャン エリック ベルニュも7位となり、選手権上位4人のうちバンドーンしかデュエルスに進出できませんでした。

 バンドーンはデュエルスでも決勝まで進みますが、ジェイク デニスがバンドーンを破って通算2度目・デュエルス制度では初のポール ポジションを獲得しました。スタート順位はデニス、バンドーン、ニック デ フリース、セルジオ セッテ カマラ、オリバー アスキュー、マキシミリアン グンターのトップ6となりました。


 決勝、アタックモードは6分×2回。昨年は8分×2回だったので少し短くなっています。あんまり長いとそれはそれで全員が常時250kWに近い状態になるので、その辺も意識されたのかなという印象。
 スタートでは上位8台がなんとかかんとか順位通りに通過しましたが、9位スタートのモルターラが大きく出遅れたことで中団が詰まってしまい、ターン2で多重事故になってモルターラがフェンダーを根こそぎ壊す大打撃を受けました。サム バードはサスペンションが折れてリタイア。ここでのレースは通算3回目ですが、一度も無事に全員が1周目を生き残ったことがありません・・・w
色々飛び散っている^^;


 5周目、セッテカマラがターン1でデフリースの内側に思い切って飛び込んで3位へ浮上、メルセデスEQの間に割って入りました。コース上の複数個所にでかいカウルが落っこちているんですが、1周が短いので回収できず放置されています。一度FCYを入れるべきでは・・・
 7周目あたりから中団で1回目のアタックモードのサイクルとなり、8周目に4位のデフリースと5位のアスキューが同時にアタックへ。順位を失わずに合流しました。これを見て翌周に上位3台も全員同時にアタック、デフリースがセッテカマラをアンダーカットして3位を取り返します。デニスとバンドーンは順位維持で何の変動も起こりません。この頃には大きなカウルは誰かしらに蹴飛ばされたらしく、うまいことラインの外へ移動していました。蹴飛ばされてるようじゃダメなんですがw
 
 1回目のサイクルが終わろうとする中、上位勢で唯一まだ動いていなかったのが7位スタートのニック キャシディー。3戦連続でのポールこそ逃しましたが好調は続いているようで、アタック無しで6位を維持。13周目、開始から16分経過してようやく1回目のアタックに入りました。これで一旦グンターに抜かれたものの、すぐ抜き返して上位集団を追います。グンターのペースがあんまり速くなかったことが、彼がアタック無しで6位を守れた要因の1つですね。

 キャシディーがまだ1回目のアタックを使用中の15周目あたりから他のドライバーは2回目のサイクル開始、デニスとバンドーンは17周目にまた同時アタックで特に何も起きない状態が続きます。バンドーンとすると選手権を争う他のドライバーが軒並み後方なので、もはや危険を冒して勝ちに行く必要性が薄れています。

 残り15分、上位勢は1分16秒0近辺のタイムでみんな平行線、アタック温存作戦のキャシディーは24周目・残り14分というところでようやく2回目のアタックに入りました。混戦を切り抜けてなんとか8位まで追い上げて来たエバンスもまだアタックを残しています。キャシディーは大きなリフトが必要となるターン10の手前でアスキュー、セッテカマラを立て続けにかわして4位へ。さらに3位のデフリースを追いかけます。

 優勝争いは結局最後まで平行線、デニスはエナジーを残しながら追いつかれない、という無敵の状態になっていて、バンドーンはファンブーストを持っていたものの使う機会すら訪れませんでした。デニスがそのまま逃げ切って、昨年のロンドン以来となる通算3勝目を挙げました。バンドーンは選手権を考えれば申し分のない2位を獲得。

 3位争いはキャシディーがデフリースに追いついたものの、デフリースが鬼ブロックして最後まで順位を守りました。が、この過程でブレーキング中の進路変更があったとして、レース後に5秒加算のペナルティーを受けてしまいました。これにより3位キャシディー、4位アスキューとなりました。
 そしてメルセデス的に多少痛いのは、5秒加算の結果デフリースはエバンスに0.366秒差で抜かれてしまったことで、5位エバンス、6位デフリースとなりました。エバンスは諦めずに走った結果思わぬ形で順位が繰り上がり、14位スタートから大きく挽回できました。もし最終的にエバンスが1点差でチャンピオンになったらデフリースのせいですね(。∀°)

 一方、一時はデフリースを抜いて3位に浮上してみせたセッテカマラでしたが、途中で表示されたエナジー残量が他車より明らかに少なく、かなりやせ我慢して走ったために最後は完全に電池切れ。完走すらできませんでした。ドラゴン/ペンスキーは明らかに効率面で劣勢で、上位勢と同じペースで走ったら絶対足りないのに、無理して走っている場面が非常に多いです。
 FCYなどで偶然足りることを期待しているのか、あるいは競争力のない状態で下位を走るぐらいなら、最後はリタイアしてでもしっかり映像に映ることでスポンサーへの印象を良くしたいという意図的なものなのか要因は分かりませんが、セッテカマラは予選では速いため彼に引っかからないように走るのはかなりレースに置いて重要な気がします。
 どのみち来年はDSと組むことになるので現行パワートレインの開発を進めてもあまり意味が無く、ちょっと厭戦ムードなのかなという気もしますが、アントニオ ジョビナッツィーが毎回のように予選からタイムを出せずにガレージに引っ込んだりして、ドライバーが悪いのか車が悪いのか管理が悪いのか、さっぱり分からん状態なのであと3戦なんとか2台ともきちんと競争できる状態に置いてあげてほしいです。何せこのチームは11チーム中唯一の今季無得点。セッテカマラの予選での速さをもうちょっとレースに繋げていたらここまでの成績にはなっていない気がします。

 ドライバー選手権では、ベルニュとモルターラは1点も獲ることができず

VAN 173
EVA 149
MOR 144
JEV 128
 
 バンドーンのリードがさらに拡大して24点差になりました。ベルニュはスタート位置が悪かった上に、レース序盤はチームメイトに追突するなどなんだか落ち着かないレースを展開し、さらにセバスチャン ブエミに当てられてコース外に追いやられました。残り3戦、最大で得られる点数は87点なので、この段階での45点差はかなり致命的、争いからは脱落したと言えます。

 元々抜けないコースではありますが、今回のレースはチャンピオンを争うドライバーでバンドーンだけが上位にいたので危険を冒す必要性が薄れ、デフリースが後ろにつけて守護する形になったので、余計にレースを動かす要素が無くなって流れて行った印象でした。
 バンドーンの予選での車の動きを見ると、他の車よりもかなりステアリングを切った際の応答性が早いように見え、多少タイヤの摩耗が増えるとしても予選で確実にスパっとタイムを出して、事故が起きやすい中団スタートを避け、抜きにくいコースなのであとはどうにかする、という方針かなと感じました。
 エバンスの方も車は速いはずなので、2戦目は予選できっちりタイムを出してバンドーンに自由に走らせないようにしないといけません。ここでバンドーンが差を広げて最終戦を迎えるようだと、バンドーンはタイトルに片手が届くことになります。次戦もエクセルロンドンです。

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