F1 第12戦 フランス

FORMULA 1 LENOVO GRAND PRIX DE FRANCE 2022
Circuit Paul Ricard 5.842km×53Laps=309.69km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull RB18-RBPT)

 F1真夏の4番勝負、3戦目はフランス。だだっ広すぎて一体どこを走ったら良いのか分からなくなりそうなポール リカールです。前戦で車両から出火したカルロス サインツはこのレースで新しいPUを投入したので最後尾スタートが確定、ケビン マグヌッセンも同様です。なぜかシーズンが進むと信頼性が落ちているフェラーリですが、内燃機関そのものの不具合で対策は夏休み明けにならないと間に合わないそうなので、今回投入したものも基本的に同じ仕様です。
 よく言われるのは『壊れないけど遅いエンジンを速くするより、速いけど壊れるエンジンを壊れ無くする方が良い』というやつで、開発が凍結されていても信頼性向上を目的とした改造は他メーカーの同意があれば可能なので(お互い様なので普通は誰も拒否しない)、ちゃんと対策できるのなら遅いよりは希望が持てるかもしれません。

 ヨーロッパは現在記録的な暑さに見舞われており、ましてやコース外も全部舗装されていて映像にも緑化部分が少ないポールリカールは見てるだけでもちょっと暑くなってきます。タイヤはC2~C4という真ん中の設定ですが、ソフトのC4は決勝では役に立たない様子。
 予選では降格が決まっているサインツとマグヌッセンが2人とも手を抜かず走ってQ3へ進出。走らないことを期待していた人にとっては嫌がらせでしたw
 一方ミック シューマッハーはQ2進出かと思ったらターン3の内側に入りすぎてタイムが取り消されました。ここは縁石で飛び跳ねるのであまり無理してカットする場所ではなく、どちらかというと『早くハンドル切りすぎて跨いでもうた』感じのミスでした^^;

 Q3ではサインツがシャルル ルクレールにスリップストリームを与えてあげるフェラーリのチーム戦が行われ、ルクレールは狙い通りピレリ ポール ポジションを獲得。マックス フェルスタッペンは0.3秒も及びませんでしたが、フェラーリは非常に速かったので仮にルクレールが単走でもおそらく結果は同じでした。

 3位からセルヒオ ペレス、ルイス ハミルトン、ランド ノリス、ジョージ ラッセル。チームの母国レースとなるアルピーヌはフェルナンド アロンソが7位でいつもながら仕事をしています。アロンソが走ると何かすごいことが起きるんじゃないかとついつい期待してしまいます。
 アルファタウリはアップデートを投入し、母国レースのピエール ガスリーは気合いが入っていましたが練習と予選で車の状況が異なったらしくなんとQ1敗退。一方で角田 祐毅はQ3に進出し、サインツとマグヌッセンがタイムを出さなかったので8位となりました。昨年のポールリカールでは予選開始早々に自爆したので、嫌な思い出を1つ振り払いました。

 決勝は気温30℃、路面温度50℃ほど。私の部屋は31℃、暑いぞ大阪。多くがミディアムでのスタートです。ルクレールは綺麗に蹴りだしフェルスタッペンが続きましたが、3位にハミルトンが浮上。ペレス、アロンソと続きました。中団では角田がエステバン オコンに迫られていたので「オコンは直線速いから抜かれちゃいかんよー」なんて呟きながら画面の奥の方を注視していたら、

 接触しました。内側にいたオコンがやや膨らんだ上にカウンターを当ててしまったので外にいた角田にドスっと当たりました。オコンには5秒ペナルティー、角田は損傷が大きくて17周でリタイアしました。去年は予選の最初、今年は決勝の最初に撃沈したので、来年は完走できますね(っ ◠‿◠ c)

 ルクレールとフェルスタッペンは1分38秒前半のペースで1秒以内の差での争い、ハミルトンはこれよりも1秒ほどペースが遅く、ペレスはこれに捕まってレッド ブルとすると2台が分断されてしまいました。とはいえ決勝ペースでフェルスタッペンはルクレールより優勢な様子で、無理に攻め立てこそしないもののDRSを使って常に真後ろにつけます。
 8周目あたりになるとルクレールのペースはやや鈍化し、3位のハミルトンも含めて39秒0あたりの似たようなペース、ペレスはそのハミルトンから2秒ほど離れてしまいました。簡単に抜けるかなと思ったら意外と難しかったようです。
 
 13周目に入るとさすがにフェルスタッペンも少し距離を開けてとうとうDRS圏外へ。なにせタイヤがしんどいので、目先の状況だけではまだ最終的な結末を読むことができません。ペレスも一旦ハミルトンから離されているものの、タイヤ戦略を考えてわざと離れたかもしれないですしね、ペレスのタイヤ管理術を甘く見ちゃいけない。
 すると15周を終えてフェルスタッペンが先にピットへ、ここはピットのロスがものすごく長いので7位でコースに戻りました。前戦ではレッドブルを無視して自分たちの戦略でレースを支配したフェラーリ、今日はどうするかが見どころです。ところが18周目に信じられないことが起こりました。

 なんとルクレールがターン11でクラッシュ。単独スピンでした。ちょうど国際映像がエンジニアのザビエル マルコスからの無線「このタイヤ気を付けてね」を放送した瞬間にクラッシュするという映像的に意味の分からんことになりましたが、即座にSC導入となります。
 週明けの全国の病院に『7月24日午後22時32分あたりからの記憶がない』という症状を訴えて受診する人が続発しないか心配です(っ ◠‿:;...,

 このSCを受けてピットは大混雑。ハミルトンがフェルスタッペンを逆転するかと思いましたが、辛うじてリードを維持しました。フェルスタッペンはルクレールをアンダーカットするために一生懸命飛ばしていたと思いますが、結果的にハミルトンのオーバーカット阻止に役立ちました。

 中継映像ではこの後ルクレールとマルコスの事故直後の無線でのやり取りが放送されました。

マルコス「だ、だ、だ、大丈夫?」
ルクレール「(荒い呼吸で)スロットル踏めん!」
マルコス「・・・・・・・・・今0%だけど」
ルクレール「ノーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 ルクレールはバックで脱出を試みようとしてできなかったのでこれを言っていたようですが、

・荒い呼吸かつ早口で聞き取りにくかった
・前戦でスロットルが戻らない不具合があった
・この状況でバックで脱出を試みるとは考えにくかった
・めっちゃ怒ってる

 といった要因から、なんとなく「スロットル戻らなかった!」と言っているように聞こえてしまうため、また同じ不具合で事故ったように思えてしまいましたが、原因は単なるミスでした。マルコスもたぶん同じように感じて意味を汲み取りかねたので「今0%だよ」って答えたんでしょうかね^^;


 21周目にリスタート、フェルスタッペン、ハミルトン、ペレス、ラッセルのトップ4です。去年はこんな顔ぶれでしたよねえ。さらにハードでスタートしてこのSCでミディアムに乗り換えたサインツが22周目には5位まで浮上しました。ただ、さっきのピットでアンセーフ リリースがあったので5秒のペナルティーを食らいます。

リカルド アダミ「残念ながら5秒のストップ&ゴー ペナルティーが出たぞ、次のストップで消化する。」
サインツ「ストップ&ゴーじゃないだろ!」
アダミ「そう5秒ペナルティー、すまん」

 5秒のストップ&ゴーは3周以内に強制的にピットに入った上に5秒間の停止=ここだと30秒以上のペナルティー、5秒ペナルティーはピット作業の際についでに5秒停止、入らなかった場合は結果に単純に5秒加算なので似てるけど全然違うんですよね。よく本山 哲がチームからの無線にこうやって細かい注意を入れながら走ってましたねえ。頑張れアダミ。

 フェルスタッペンは1分37秒台のペースでささっと逃げる一方、後ろの3人は1分38秒0近辺で膠着状態。ただいちばん後ろにいるラッセルに対してタイヤも戦略も車の性能も違うサインツがちょっかいを出し始め、30周目のターン10でかわしました。ラッセルからすると別にサインツに抜かれるのはあんまり関係無いので中途半端にブロックせずさっさと行かせるのが得策です。
 サインツは続いてペレスにも追いつきますが、果たしてミディアムでレースの最後まで35周も走るのかが謎。そもそもさっき「次のストップで」って言ってたのでたぶん入るんだろうなあという状態です。ところがここからサインツとアダミの間で謎の迷走が始まります。
 サインツは40周目には「抜けんわ」と伝えてピットに入りたそうにしていますが、残り13周でピットに入ると26秒も下がってしまうのでアダミから出された結論はステイ アウト。
 するとサインツは腹を括ったのか41周目にペレスを攻め立てていきますが、このタイミングで今度はアダミから「ボックス、カルロス、確認して」。放送される無線はリアルタイムではないので、実際にこれが伝えられたのがいつなのかは分かりませんが忙しいさなかだったのは間違いなく、サインツは「今とちゃう、今とちゃう、今とちゃう」そしてサインツはコース上でペレスを抜きました。なんか話がややこしくなってきたぞw

 42周目、この争いの間に追いついてきたラッセルがDRSを使ってターン7でペレスの内側に飛び込みますが、ちょっと強引すぎて接触。ペレスは追い出されてシケインを曲がらずに真っすぐ通過しました。損傷がないのか、シケインを曲がらなかったことは審議対象にならないか、と気になることが山盛りでしたが、こっちを気にしている間になんとサインツがピットに入りました。サインツは8位でコースへ。サインツの流れを確認すると

サインツはペレスを抜けないのでピットを希望
チームはステイアウトを指示
サインツがペレスに接近
チームが一転ピットを指示
サインツはバトルに忙しく、無視してペレスを抜く
結局ピットへ

 ぐるっと回って最初のサインツの希望は叶ってるんですが、意思決定までに辿る経路が長すぎませんかね^^;
 
 一方、ラッセルはさっきペレスがシケインを通過したことをまだ納得していないようで、無線で文句を垂れ流しつつもなおペレスを狙います。さすがに頭に血が上っているので、トト ウォルフから直々に「ジョージ落ち着け、お前ならヤツを抜ける」とティモンディみたいな激励が来ました。
 
 サインツの方は47周目に5位へ復帰、4位のラッセルとは22秒も差があって残り6周なのでここが限界です。

アダミ「あと5周、あと5周。」
サインツ「も~~!意味わかんねえ」

 いや、最初にピットを希望したのはあなたなんですけど。。。

 50周目、なぜかいつも車が壊れる周 冠宇が今日も止まってしまいVSCとなりました。万一妙なタイミングだとピットに入ることになるかもしれないのでみんな慌ててタイヤを準備しましたが、入れるタイミングでもなく短時間でVSCは解除。

 ただ、この時VSCのシステムに不具合が発生。終了のお知らせが出たもののグリーンにならずにVSC状態が続く、という変なことになり、バトルの真っ最中だったペレスとラッセルは一旦ターン7あたりでレースを再開してまたすぐにやめました。
 この妙な状態が影響したか、今度こそ本当に解除されたタイミングでラッセルがペレスをあっさりと抜いてしまいました。FCYと違ってVSCはある程度の範囲で加減速ができるので、ペレスがわりと一定速で走っていた、というかVSCの変な動作にやや戸惑っているのに対し、ラッセルは一旦距離を開けて速度が乗った状態でVSC解除になるようにうまく間合いを調節したように見えました。
 
 ペレスはラッセルから3位を取り戻すべく追いかけ回していたので、この後も中継映像はここが中心。フェルスタッペンは最後だけ映像に映ってトップでチェッカー、これよりもさらに映らなくなったハミルトンが10秒差で2位。ラッセル、ペレスと続きメルセデスが2台で表彰台を獲得しました。条件はみんな同じとはいえシステム不具合は勘弁してもらいたいですねえ^^;

 ルクレールが事故った時点で優勝争いは決まってしまったようなものでしたが、2位以降の争いが非常に拮抗していて、タイムを見ながら観戦するのは非常に面白かったです。ペレスは簡単にハミルトンを攻略できるものだと思っていたので意外でした。ここは路面の凹凸が非常に少ないので、そういった点でメルセデスは跳ねる問題をあまり気にしなくて良いのも好材料だったかなと思います。
 アルピーヌはアロンソが6位、オコンも8位と車なりの結果をきっちり出してコンストラクターズ選手権でマクラーレンを逆転し4位へ。なんとなくアロンソがアルピーヌのポイントを引っ張ってそうに思えますが、実際はオコンが56点、アロンソは37点で稼ぎ頭はオコンです。アロンソはペナルティーやらトラブルやらありましたけど、それにしてもオコンの印象が薄く感じるのはアロンソが濃すぎるからでしょうかねw

 ドライバー選手権ではフェルスタッペンが63点もリードしてしまったので一方的な展開に近づきつつありますが、いつどんな理由で欠場を強いられることになるか分からない世の中なのはプロ野球を見ていると感じるので、気を緩めずに行きたいですね。
 ちなみに、私の職場でもパートの方の息子さんが高熱を出して案の定COVID-19だったため、先日から全部私一人でどうにかせにゃならんという、なかなかに難儀な課題に挑戦している最中です。『重症化』というのはこの病気の重症度分類の都合上『重度の肺炎があるかどうか』が基準なので、38℃の高熱に数日間うなされて喉の痛みでロクに水分も取れず死にそうな思いをしていても『軽症』です。
 こうした症状はある種統計に出てこなくて実感が沸きズラいですが、誰にでも起こり得ることだ、というぐらいの気持ちは常に持っておいた方が良いと思います。気を付けてお過ごしください。次戦は夏休み前最後のレース・ハンガリーです。

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