FE 第9戦 ジャカルタ

ABB FIA Formula E World Championship
Jakarta E-PRIX
Jakarta International E-Prix Cuircuit 2.37km
45minutes+1Lap(規定により1分30秒延長)
winner:Mitch Evans(Jaguar TCS Racing/Jaguar I-Type 5)

 フォーミュラE第9戦、やってきました初開催のインドネシア、ジャカルタです。2019年に開催が発表され、本来は2020年から開催予定でしたが感染症の影響でようやくの開催。その開催地を巡ってもあれこれと現地では問題があったようで、最終的にはアンチョールという観光地区になりました。ここに至るまでになんか色々政治的な駆け引きとかあったっぽいですね。調べたらアンチョールは第2次世界大戦の後にリゾート地として積極的に整備が推進された地区で、遊園地があったりして高級住宅が多いとか。
 コースの方はレイアウト的には1周2.4kmで70秒程度と通常営業な長さですが、狭い+直角コーナー、というありがちなものではなく、幅が広めでターン1を過ぎると多くの時間はどっかしらにステアリングを切っていて横荷重がかかっている時間が長い印象。複合コーナーも多くて路面も滑りやすいみたいで、私がここをゲームで走ったとしたらちゃんとラインをトレースできるまでに1時間近くかかりそうですw
 アタックモードの起動位置はターン16の外側、角度的に微妙に入りにくそうな場所にあるように見えます。なお、開催の1週間前に雷雨に伴う強風でスタンドの屋根が一部崩壊する事故がありました。。。
画面左が北の方角で、海が目の前にある

 前戦からの期間にもドライバーに関して動向の噂が出てきました。シーズン1以来ずっとルノー/日産 e.damsに乗り続けて来たセバスチャン ブエミですが、来季はエンビジョンへ移籍するのではないかとThe Raceは伝えました。ニック キャシディーとのコンビになるようです。
 また、アウディーの撤退と共にフォーミュラEを去ったレネ ラストがマクラーレンのドライバーとなる可能性についても報じられました。来季はアプトがカスタマーとしてシリーズに復帰する可能性があり、その場合ラストは有力なドライバー候補と見られていましたが、マクラーレンが声をかけているようです。かなりドライバーがごちゃごちゃになりそうですね。覚えるのに20戦ぐらいかかりそうです。

 さて予選、グループ予選のA組ではアンドレ ロッテラーが4位に0.003秒届かずに敗退が決定、8戦目にして初めてデュエル進出を逃しました。B組は路面のグリップ向上を見込んで最後のアタックがお先どうぞ予選になり、結果タイヤにうまく熱が入っていないのかタイムが伸びない人多数、ダニエル ティクタムにいたっては時間切れでアタックできず、アントニオ ジョビナッツィーは途中でアタックをやめた時に記録したタイムしかなくて、トップの113%落ちでタイム無し扱いに^^;

 デュエルではA組1位のストフェル バンドーンがいきなり敗退するお約束。決勝はアントニオ フェリックス ダ コスタとジャン エリック ベルニュによるDSテチーターの対決になります。ダコスタは準決勝まで最速を重ねていましたが、準決勝からのインターバルがベルニュより短いことも影響したのかアタックの最初から後ろのグリップ感がズルズル。
 結果、あちこち滑りまくるダコスタは全くまとまらない走りになってベルニュがポール ポジションを獲得しました。スタート順位はベルニュ、ダコスタ、ミッチ エバンス、エドアルド モルターラ、ジェイク デニスのトップ5。初めてデュエルに進んだブエミが6位、ドライバー選手権で1位のバンドーンは7位から。
 旋回している時間が長いとはいえ、220kWから250kWに上がったデュエルであまりタイムが上がらなかったのが面白いところでした。踏んでも滑って扱いが難しい上にタイヤが過熱するので、あまり恩恵を受けられない様子です。
 
 決勝、気温は30℃、湿度は60%を超えていて蒸し暑い天候です。ピット内は扇風機がガンガン動かされていました。アタックモードは4分×2回の標準的な設定。スタートではダコスタが少し出遅れ気味でしたが、上位5台の順位には変動なく1周目を終了。バンドーンはスタートでブエミを抜いたものの、2周目に抜き返されてこちらもスタート順位通りに戻ってしまいました。するとその直後、オリバー ローランドの車の左前輪が外れていて突然のSC導入となりました。なんかNASCAR以外も脱輪が増えて来た^^;

 車輪を回収するだけなので作業はすぐ終わり4周目にSC退出、するとダコスタがターン7のブレーキで完全にミスって、エバンスが空いた内側から前に出ました。ダコスタにはできるだけ頑張って順位を取り返すよう指示が出ますが、そんな簡単に抜けたらこのレースは苦労しませんw
2台揃ってミスったDSテチーター


 8周目、上位勢の先陣を切ってなんとリーダーのベルニュと3位のダコスタが同時にアタックモードへ。それぞれ1つ順位を下げただけで済みます。ベルニュから見るとちょうどダコスタがウインドウ内にかかっていたと思うので、チームとしては同時に動かすことが大事でした。
 翌周にエバンスがカウンターを打ちダコスタのギリギリ前でラインに戻りました。未使用のモルターラが見た目上の2位となります。こちらはすぐには動かず未使用でステイ アウト。やはり250kWに圧倒的なペースは無いようで、モルターラは未使用のままでも周囲と同じようなペース、結局2位のまま周囲のアタックが終了しました。アタックモードの人は温度管理もしないといけないので、加速は早いけどリフトも早くしてるんでしょうね。
 
 この間、ブエミのペースが遅かったせいだと思いますが5位のデニスから後ろに大きな空間ができました。14周目・残り27分、見た目上4位のダコスタが早くも2回目のアタックを使って5位で合流。すると翌周にようやくモルターラが1回目のアタックモード。本来ならデニスの前で合流したかったはずですが抜かれて後ろになってしまい、ここはできるだけエナジーを注ぎ込んでターン1の入り口でかわしました。
 さらに翌周にベルニュも2回目を使い、これで一旦前に出たエバンスを翌周にコース上でかわして当面の1位を確保しました。あとはずっと前を走っているのでどの程度マネージメントできているのかが気になるところです。暫く競争相手がいないので今のうちに節約しつつ温度の上昇を抑えたいところ。


 ここから暫く動きはなく進行し残りは15分30秒、ここでモルターラが2回目のアタックに入りました。3位から4位へ。これを見てエバンス陣営はペースを上げるよう指示、後続との差を広げた上で2回目のアタックへ入り、狙い通りダコスタの前方で合流して順位損失無しに義務を果たしました。
 モルターラの方はダコスタに抑えられていてアタックモード中でもペースが上がっていないので、エバンスは当分後ろを警戒する必要が無くなりました。あとは前を追うことを考えるのか、今日は無理だと考えて確実に2位を狙うのか。ところで20位のジョビナッツィーは明らかに残量不足で走り切れそうにないんですが、ヤケになったんでしょうか(っ ◠‿:;...,

 エバンスはアタック時間を使い切ったところでベルニュの真後ろに到着、残り10分+延長戦は自力での争いです。お互いファンブーストを持っていますが、レースの最終盤は電力不足で使うことが難しくなりますから、さっさと使って勝負するか、そうでなければ熱害が怖いので放置です。
 残り6分40秒、見た感じターンではエバンスが速そうなのでどこで仕掛けるんだろうなあ、まだ早いよなあ、とか思ってたらその瞬間にエバンスがターン7でベルニュの内側に飛び込みました。この時点で残量でも少し優位に立っており優勝へ大きく前進。ベルニュは残量が楽ではない上に、タイヤもちょっと厳しいので回り込むコーナーで内側を警戒する余裕が無かったように見えます。

 3位のモルターラを挟んで4位はダコスタとバンドーンの争い。ファンブーストで抜こうとしたバンドーンでしたがダコスタが絶妙にブロックして順位を明け渡しません。争ったので3位とはずいぶん差が開いてしまいました。今からダコスタを抜いたところで3位のモルターラにはもう追いつけないので、今日のバンドーンは良くて4位という感じ。下手にダコスタに手を出して事故ると怖いので慎重に行かないといけません。

 レースは残り時間が無くなって、累計2分間のSCに相当する1分30秒の延長戦へ。ジョビナッツィーは所定の45分すら走れずにエナジー切れを起こしてピットへ。今回はエナジー無視でとにかく車を早く走らせるテストでもやってたんでしょうか、その割にはそこまで速くなかったですが。。。一方優勝争いでは3位のモルターラが僅かに残量で優位になっており前に迫ります。

 残り2周、タイヤで苦労し始めたらしいエバンスに対してベルニュがコツコツ押しながら攻勢、エバンスは危うくさっき自分が抜いたところで内側を衝かれそうになりますが、なんとか車を曲げてベルニュの攻撃を未然に防ぎました。後ろが滑るので旋回ブレーキのコーナーで強くブレーキを踏めないのかな、という印象。さらにその後ろからモルターラが大逆転を伺い、三つ巴になってとうとう最終周へ。


 最終周に入ると残量が厳しいベルニュとやや多いモルターラの2位争いの方がハゲしくなり、どこかで一発クロスをかけてアクセルを踏んでやろうとモルターラが企んでいるのがよく分かります。しかしベルニュは踏める隙を与えません。レイアウト的にもそういう箇所が少なそうです。
 後ろが争ってくれたことでエバンスは僅かながら楽になり、エナジーを見事に使い切ってトップでチェッカー、今季3勝目。ベルニュ、モルターラ、ダコスタ、バンドーン、と結局終盤は順位変動が起きませんでした。ブエミは10位で辛うじて1点、オリバー ターベイが普通に実力で走って12位というのはNIOとしてはかなりの健闘です。
全員0.0%(;・∀・)


 ドライバー選手権ではバンドーンが変わらず1位ですが、21点稼いだベルニュが5点差に追い上げました。モルターラが7点差、エバンスが12点差。5位以降が離れてひとまず上位4人が抜け出しています。
 結果的にリスタート直後のターン7でダコスタがミスったことがレース結果に大きく影響しました。今回のアタックモードはあまり抜きつ抜かれるになる展開を生まない特性があった上に、早々に6位以下が離れてウインドウ内の車も減ったので、上位勢はアタックモードで変動を起こすのが難しくなり、2位になったエバンスは2回のサイクル中もほとんど自分のレースに集中できていました。
 もちろんそれはベルニュも同じでしたが、抜くならもうちょっと待ってから、という裏をかいて早めに前に出たエバンスのレース感が上回った紙一重の争いでした。ダコスタが壁として機能していれば、ベルニュはそうそうつかまらなかったでしょう。
 予選制度の変更でスタート順位がある程度実力を反映しているため、競技としてはより洗練される一方で順位変動は必然的に少なくなりました。そんな中で極端にロング ランに振っていると思われるメルセデスEQは常に決勝で注目しておくべき存在ですが、さすがにDSとジャガーとベンチュリーが何台も前方にいると追い上げに限度がありますね。
 もう少し予選順位を気にして方向性を変えて来るのか、今の路線を維持した状態で底上げをさらにしてくるのか、今年限りで撤退するとはいえ、マクラーレンへの引き継ぎへ向けてやる気スイッチは入ったままのメルセデスEQの動きが残りのシーズンもレースを左右しそうです。次戦はバンクーバーの代替イベントとなるマラケシュです。


コメント