F1 第9戦 カナダ

FORMULA 1 AWS GRAND PRIX DU CANADA 2022
Circuit Gilles-Villeneuve 4.361km×70Laps=305.27km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull RB18-RBPT)

 F1は2週連続開催、先週のアゼルバイジャン・バクー シティー サーキットからたぶん10000km近く移動してカナダのサーキット ジル-ビルヌーブへやってきました。今週はたまたまNASCAR Cup Seriesが今年唯一のお休みですので、きっとアメリカの方も普段より多くF1を見ることでしょう、知らんけどw
 カナダはここ2年続けて開催されていなかったので3年ぶりの開催、F2などが開催される場所ではありませんので、若いドライバーにとってはシミュレーターでしか走ったことが無いトラックということになります。そういえばグランツーリスモ6のトラックパスエディターでジルビルヌーブもどき作ったなあ、ゲームの仕様でピットはバックストレートの位置にしか置けなかったり、最終コーナーが異様にうねったり、ヘアピンの半径が小さすぎて再現不能だったり、出来の悪いコースでしたw

 元々、事故が多かったり、4時間以上レースをやってたり、ピット出口で玉突き事故が起きたり、初優勝が出たりと意外なことが起きると言われるこのコース、急に跳ね馬がゴキゲンを損ねだしたシャルル ルクレールはPU交換でグリッド降格が事前に決まっており、さらに土曜日が雨になって予選はかなり路面水量が多い状態からスタートと、始まる前からもう波乱です。

 いざ予選が始まると雨だったFP3で速かったピエール ガスリーがQ1で脱落、Q2ではセルヒオ ペレスがターン3で真っすぐ突っ込んでしまって敗退となります。ランド ノリスも何やら車が不調なようで脱落、雨と言えば期待してしまうメンツがQ2までに消えてしまいました。
 Q3、圧倒的に速いのはマックス フェルスタッペンでポール ポジションを獲得しますが、2位に滑り込んだのは雨で大はしゃぎするフェルナンド アロンソ。土曜日にもドライバー オブ ザ デイを作るなら間違いなくこの人ですね。ルクレールの代わりにせめてフェルスタッペンを止めたいカルロス サインツはスペインの先輩に敗れて3位となります。

 先週痛めつけられた体がちょっと心配なルイス ハミルトンが4位、一方チームメイトのジョージ ラッセルはスリックを履く賭けにでたものの、ターンの途中に濡れた箇所があるような状態ではさすがに無理があり、ターン2をゆーーーーーーっくり飛び出して撃沈し8位止まり。この恩恵にもあずかって、ケビン マグヌッセン、ミック シューマッハーが3列目に並びました。初めてQ3に進んだ周 冠宇は10位です。

 決勝は雲一つないと言っても良いぐらいの快晴、上位10台はミディアムを選んでスタートし、シグナルが点いたと思ったら一瞬で消えました。ちょっと不意打ち。ターン3でハミルトンとマグヌッセンが軽く接触したものの大きな混乱はなく、上位10台ではシューマッハーが2つ順位を下げた以外に変動なし。何か起こすならスタートしかなかったアロンソ、何もできなかったので3周目にはサインツにかわされます。
狭い^^;

 マグヌッセンは併走した際にハミルトンの左前輪と自分のウイングの右端が横同士でこするように当たりましたが、翼端板が中途半端に潰れてぶらついたためにオレンジ ディスクが掲示されました。さらに8周目、ペレスがギアボックスと思われる不具合でターン8の外側に車を停めてしまい、これでVSCとなりました。
 フェルスタッペンはこのVSCを利用してピットに入り1位から3位へ後退。ハミルトンも入ってこちらは4位から6位へ。サインツ、アロンソはステイ アウトを選択し、VSCは11周目に入るあたりで解除されました。

 フェルスタッペンは15周目にアロンソに追いつくとDRSを使ってあっさり2位へ。アロンソ的には争う相手はフェルスタッペンではなく、自分が3位になるためにメルセデスを破ることが大事だと考えていると思われます。一方そのころ、後方スタートのルクレールは12位で詰まっていました。目の前でアレクサンダー アルボンとバルテリ ボッタスが争っているためにどうしようもなくなっています。

 19周目、今度はシューマッハーにPUの不具合が出たとみられ、またターン8に車を停めて2度目のVSC。ここでラッセル、エステバン オコンといったあたりがピットに入りました。シューマッハーが止まった時に上位3台はちょうどピット入り口を過ぎた直後だったので反応できず、サインツは1周回って20周目にピットへ。作業を完了してピットを出るより前にVSCが終わってしまったので少し利点が薄れましたが、それでも通常のピットよりは7秒ほど得をしています。アロンソは絶対間に合わない位置だったのでここでも入れず、一人だけものすごく不運でした。

 これでリーダーは再びフェルスタッペン、3位でコースに戻ったサインツはDRSを使ってすぐアロンソをかわし2位へ戻します。フェルスタッペンとは9秒差。ハミルトンもすぐアロンソに追いついてしまい、23周目にハミルトンがかわして、これでアロンソは普通に行ったら4位以下ということになりました。
 VSCの恩恵を受けられなかったアロンソは28周を終えてピットに入り、7位でコースに復帰。オコン、ルクレールに次ぐ7位となります。元々オコンより13秒近く前を走っていたアロンソですが、ピットでのロスがVSCの有無で10秒近く異なり、そこに加えてオコンが新しいタイヤで走ったのでアンダーカットされました。タラレバですがあと2周早く入っていればオコンの前で戻れた可能性があり、偶然を待つか、順位を重視するかで前者を選んで立ち遅れたようにも感じます。

 リーダー争いではサインツが新しいタイヤを活かして少しずつフェルスタッペンとの差をつめますが、まだ8秒差。1周が短いコースということもありますが、毎周0.1秒程度ずつ地道に削り取って行く作業です。

 41周目、オコンに詰まって6位から先へ進めなくなっていたルクレールがとうとうピットへ。ハードからミディアムへの1ストップですが、作業に手間取ってしまい4台が連なる大渋滞の一番後ろ、12位という面倒な場所に送り出されました。なんかここ2戦は上位チームでも作業にもたつく場面が多いですね。

 一方リーダーのフェルスタッペン、タイヤを30周以上使って「マジでタイヤが落ちて来たぞ」。サインツが6秒差にまで詰めて来ており、さすがにハードを使い倒して60周走るのはしんどいので43周を終えて2度目のピットとなります。ハードを2セット残していたのでもう一度ハードへ。ピットを出たところでハミルトンをギリギリ抜けずに後ろとなってしまい少し損をしました。とはいえハミルトンも同じ履歴のタイヤなので翌周にピットへ。
 ハミルトンはラッセルの後ろに回ることになり、またどっちが前だの後ろだので揉め事が起きるのかと思ったら、ラッセルも翌周にピットに入ったので何も起きませんでした、考えすぎたw
 これで順位はサインツ、フェルスタッペン、ハミルトン、ラッセル。サインツのリードは10秒ですが、フェルスタッペンが猛烈な勢いで追い上げて来るので、このまま行ったら逆転されそうです。

 48周目、こちらも2度目のピットに入ってタイヤを替えた角田 祐毅がターン2を全然曲がれず壁に突っ込む致命的失敗。車をどけられないのでSC導入となり、サインツは当然ここでピットに入りました。フェルスタッペンに抜かれて2位には落ちたものの、自分の方が新しいタイヤになって勝負を仕掛けられます。アルピーヌは2台とも入ってミディアムへ。

 リスタート順位はフェルスタッペン、サインツ、ハミルトン、ラッセル、オコン、アロンソで55周目にリスタート、残りは16周。2周後のDRS使用許可が出るまでサインツは圏内で粘り、DRSを使ってフェルスタッペンに重圧をかけていきます。
 サインツは乱気流の影響もあってセクター1~2で少し離され、DRS検知点に0.7秒ぐらいの差で入っては、セクター3の直線でDRSを使って元に戻す、というような展開が続きました。フェルスタッペンからすると、一度どこかで相手にDRSを使わせなければトドメをさせそうなので、前半を頑張っている雰囲気もあります。
 ただ、0.6秒差でヘアピンを立ち上がった59周目でさえ並ぶところに辿り着かなかったので、DRSに加えてフェルスタッペンが立ち上がりで滑るようなことが無いと追い抜きは非常に難しそうだな、というのが見た感じの雰囲気。
 サインツも攻め続けるとさすがにペースに鈍化の兆しが見られ、最初の頃は0.3~0.7秒でやり合っていたものが、だんだん0.6~0.9秒の範囲に移行していきます。そして残り2周となった69周目、サインツが久々に0.6秒差でDRS検知点を通過しましたが、その先のヘアピンで突っ込みすぎて少しもたつきました。これで完全に離れて勝負あり、フェルスタッペンが逃げ切って2週連続の今季6勝目を挙げました。

 サインツ、ハミルトン、ラッセルと続き、ルクレールが5位まで巻き返しました。オコンは6位でしたが、アロンソはPUにやや不具合があった上に、終盤バルテリ ボッタスを抑えようとして蛇行したことが違反とみなされて5秒加算、最終結果は9位で、2位スタートを考えると本人もやや失望という結果でした。

 今回はVSC、SCのタイミングがレース的に絶妙なところで3回出たので盛り上がりました。これがなければ特に何もなくフェルスタッペンが逃げて終わり、だった気がしますね。
 そのVSC/SCのタイミングに関しても後で振り返ると、2回目のVSCで仮にシューマッハーの車を片付けるのがあと10秒遅かったら、サインツはVSCの恩恵を完全に受けられたので、実際よりも3~4秒前方でコースに戻っており、そうすると2回目のSC時にはフリー ストップを得られた可能性があります。
 フェルスタッペン側からすると、2回目のピットをアンダー グリーンで行うに際しては『自分たちがピットを終えた時にサインツにフリーストップを与えない位置で戻る』というのは1つの要素だったと思うので、サインツが近くにいればもっと早くピットに入ることになったか、あるいはピットに入らず居座って2ストップvs1ストップでコース上で暫く争ったかもしれません。
 こういうタラレバを想像すると、2回目のVSCのちょっとした持続時間の差が結果的にその後のレース展開にもすごく大きく影響したのかな、と思えました。普通に走ればフェルスタッペン、サインツの順で終わるレースなのでサインツとしたら勝てる機会が近寄るだけでもすでに儲けものだったわけですが、些細な外的要因で勝っている展開にすらなりえたので、レースって紙一重だなと思いました。
 最後にサインツが突っ込みすぎたのは、ミスをしたというよりはこれまでの流れから普通に走ると抜けないのでちょっと賭けに近い走り方をした、という勝負の結果に見えました。もうトラクションのかかりも悪くなっているので、普通に走っても抜けずに終わる可能性が高いのは自覚していたと思います。

 フェルスタッペンの方は、そうは言っても一回何かミスったらやられるので楽なわけ無いんですが、一切隙が無かったと思います。この場面では、相手は選手権を争う相手ではないサインツで、しかもルクレールはあまり得点を獲れないことが分かっていますので、万一抜かれたところで「SCの運が無かった」で割り切れる状況だった、というのは少なからずあると思います。
 別に「抜かれてもいいや」という弱気ではなく、あくまで勝ちに行くんだけど、でも優勝がベストで、じゃあベストに次ぐベターは何で、それはどの程度許されるものなのか、というあたりも全て頭の中で消化していることで、リスクの負い方、ミスへの許容度、そういった自身の精神面の制御も完璧にこなしているんじゃないか、そんな風に思えました。
 単に「新品タイヤの速いやつが来た、逃げないと!」と思って走るのとではきっと雲泥の差があります。まあひょっとしたら「サインツごときに俺を抜けるわけないだろ」ぐらい図太くて、2位なんて単語を欠片も頭に浮かべないぐらいの精神構造なのかもしれませんけどw


 ところで、冒頭でアメリカの視聴者の話題を書いたので実際にどうだったのか調べてみたところ、アメリカでのカナダGPの視聴者数は170万人、視聴率0.96%と2019年を大きく上回った一方で、NASCARとどっかぶりしていたマイアミGPほどの数字にはならなかったようです。着実にアメリカでのF1人気は上がっているけど、NASCARとは顧客層がズレてるので流れては来ないんですねえ。NASCARはこの顧客層を取らないといけませんなあ。

 さて、次戦は1週の休みを挟んでイギリスへ向かいます。7月はイギリス、オーストリアの連戦をした後、1週休んでフランス、ハンガリーでまた2連戦、月間4戦をこなして約1か月の夏休みです。

コメント

カイル・プッシュ さんのコメント…
角田、、、