F1 第8戦 アゼルバイジャン

FORMULA 1 AZERBAIJAN GRAND PRIX 2022
Baku City Cuircuit 6.003km×51Laps=306.049km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull RB18-RBPT)

 F1第8戦はヤバい市街地・アゼルバイジャン。ポーポイズ現象がハゲしい今年の車で走ると決勝のDRSが使えない状態はそうとう人間がきついんじゃないだろうか、と心配になります。
 前戦終了後にレッド ブルがセルヒオ ペレスとの2年間の契約延長を発表したことを受け、去就が気になるアルファタウリのピエール ガスリー。レッドブルとしては2023年まではガスリーとの契約があるものの、"昇格"がなければこの先の契約は延長されず自由契約になる見込みで、そうすると目標の無いドライバーを手元に無理に置いても仕方ないので、今季を終えた段階で移籍するのではないか、という話になってきました。
 マクラーレンがダニエル リキャードの低迷にかなり不満を示していてシーズン中にクビになるんじゃないかとさえ言われる状態なので、このあたりを絡めた椅子取りゲームへと発展していきそうです。


 話題をコース外からコース内へ。F2で事故があってコースの修復が必要になったため、F1はFP3の段階で進行が15分遅れ、予選もこれに伴って15分の遅延。元々現地時間18時からという遅い開始時間だったのが15分押しになり、路面温度が下がってくるのと、赤旗が連発するようだと最悪の場合は日没時間が来てしまいます。もう少し早くできませんかねえ^^;

 だいぶ暗くなる中でQ3、1回目のアタックではカルロス サインツが最速でしたが、2回目のアタックはターン2の段階でグダグダになって失敗。一方シャルル ルクレールがセクター1で一人だけ異様に速いタイムを叩き出すと、そのまま他を圧倒するタイムを記録してポール ポジションを獲得しました。

 この週末に速さを見せていたのはレッドブルでしたが、Q3の2回目のアタックに向かおうとしたらペレスの車に給油の問題が発生したとのこと。これにより、本来ペレスに先行してもらう段取りだったフェルスタッペンは引っ張ってもらう相方がいなくなり、ペレスも一人だけ離れた場所で走るためにこれまた少し損。
 結果、ペレスが2位、フェルスタッペンが3位でした。サインツ、ジョージ ラッセル、ガスリーのトップ6。角田 祐毅も8位でRBPTは4台が8位以内からスタートですが、予選が良いと決勝で負けがちのアルファタウリ、今週の出来栄えやいかに。

 気温25℃、路面温度49℃、予選より時間が早い15時開始なので非常に暑い中での決勝です。大半はミディアムを選択してのスタート、ペレスが抜群の蹴りだしでルクレールに何もさせずターン1でリードを奪います。勢いだけならフェルスタッペンもありましたが、前に2台いたので行き場がありませんでした。広くてターン1までの距離が長いコースだったら2台とも抜いてた感じです。

 ペレスは2周でルクレールに2秒差をつけてDRS圏外へ追い出し成功。フェルスタッペンの方はルクレールの1秒前後の範囲です。そこから2秒離されたサインツは無線で「レッドブルはええ」。とはいえ、そのレッドブル(=フェルスタッペン)はルクレールのペースで走ってるんですから、間接的に「ルクレールはええ」と言っていることになってしまいますね^^;
 全体にDRSトレインになるかと思ったら、2周目を終えた段階でみんな絶妙に1秒強の差があって案外DRSを使える人がいませんでした。
 
 ペレスが2秒リード、フェルスタッペンがルクレールのDRS圏にいるけど抜けない、という状態で膠着したまま9周目。ここで置いてけぼりを食らっていたサインツが油圧系の故障でターン4の外側に停止。ぶつけたわけではないですがこのままでは車両を撤去できないのでVSCとなりました。
 ここでルクレールはロスが少ない利点を活かすためにピットへ。方やレッドブルはステイ アウトして戦略が分かれました。作業にちょっと時間をかけてしまったルクレールでしたが3位で復帰してほぼ損失が無く、リスタート時点でフェルスタッペンまで12秒、ペレスまで14秒差。単純計算なら今のところ事実上ルクレールが1位です。4位は同じくこのVSCでピットに入ったラッセル。

 14周目、ペレスは画面に映っていないところで失敗したのかフェルスタッペンより1秒も遅く、これでフェルスタッペンは後ろに追いついて翌15周目のターン1でリード チェンジ。VSC再開後のペースは安定してフェルスタッペンが速かったので、ペレスへの無線は「争うなよ」。下手に均衡してたらレッドブル的には悩まされるところでしたが、このぐらいペース差があるとすんなり入れ替わって安心です。
 ペレスは抜かれた後もあっという間に置いて行かれたので16周を終えてピットへ。ハードへ交換しますが作業時間5.7秒とこれまたえらくかかってしまって、ラッセルのギリギリ前方になってしまいました。ルクレールの18秒後方です。作業は終わってたのにジャッキがいつまでたっても下りなかったので指示系統の失敗でしょうか^^;
 ペレスの2周後にフェルスタッペンもピットへ。こちらは慎重に3.5秒の作業でルクレールの13.5秒後方の2位となりました。基本的にはみんなこのタイヤで最後まで走るつもりですが、どうせ4位以降とは大差ができて3台の中での争いなので、どこかで2ストップのレースへ移行するパターンもあり得ますし、またVSCでも出れば流れは変わります。
 まあ何にせよ暫くはこの3台には何も起きないだろうから他の順位争いに興味が移っていくであろうと思われた20周目、マックデリバリー案件が発生しました。


 突然ストレート上で白煙を上げる1台の車。ちょっと日陰にいるので分かりにくいですが赤色っぽいですね。アルファロメオではないですし、アバランチ アンドレッティーでもマヒンドラでも日産e.damsでもなく、どう見てもフェラーリでした。ルクレール、またもやリタイア、気の毒です。。。
 これで順位はフェルスタッペン、ペレス、ラッセルで、4位にVSC中にピットを終えているガスリー。同じく既にピットを終えている角田も7位としており、脱落したフェラーリを横目に元ホンダPUは好調です。フェラーリPUでは周 冠宇も問題によりピットへ戻る指示。アルファロメオはやたら周の車ばっかり壊れてこれまた気の毒。24番って阪神タイガースだとメル ロハス ジュニアの番号なので、なんか頼りない番号に見えてきます。桧山 進次郎みたいな頼れる番号に見える日が来ると良いのですが。

 1位を快走するフェルスタッペンはペレスとの差を広げますが、どうやら目標ペースの1分48秒0を超過してチームから見ると飛ばしすぎなようで、エンジニアからご注意を受けました。タイヤ一本のズレで事故って終わる箇所もあるので管理する立場のおじさんたちからすると心配するのも無理はありませんが、でもやっぱり47秒台で走ってます。聞く気ねえw

 33周目、今度はケビン マグヌッセンに問題発生。コース脇に車を停めて本日2度目のVSCとなりました。またフェラーリPU(´・ω・`)
 これ幸いと多くの車がピットへ。ハードでスタートしてまだ引っ張っていたリキャードとエステバン オコンにとっては恵みの雨でした。一方アルファタウリの2台はステイアウトを選択、2台ともタイヤは 4/1/1 で決勝に入っているので、もう使えるタイヤがソフトしかありませんでした。ソフトでここから15周は摩耗的によろしくありません。

 35周目にVSCが解除されますが、ここでそのアルファタウリ・角田に大問題発生。振動が大きすぎるせいだと思いますが、リア ウイングのフラップに亀裂が入ったようで、DRSを開くとアクチュエーターと繋がった左側は開くけど、孤立した右側は開かない、という妙な状態に。
 これじゃあ怖くてDRSを使えないのはもとより、この状態で強大なダウンフォースを支える強度が保たれているのかも不明です。あまりに危険なのでオレンジ ディスク フラッグが振られ、角田は緊急ピットでウイングにテープを貼るNASCAR的処置をしてコース復帰。タイヤは仕方なくソフトにし、結局このレース13位でした。
!?


 一方レッドブル2台はタイヤを換えたのでさらに余裕になり、フェルスタッペンとペレスでファステストを出し合っていました。フェルスタッペンは1分46秒台後半で走行していると、また「47.5で走ってくれ」という依頼。しかしフェルスタッペンは「ホントに?タイヤ冷えるんだけど?」と反論すると「じゃ、47.0で」と、交渉(?)に成功しました。エンジニアを値切るドライバー現る(。∀°)

 残り9周、ガスリーの後ろにVSCでタイヤを換えているルイス ハミルトンが到着。車が跳ねすぎて背中が痛いハミルトン、この頃には「シートが冷たくなってきた」と、ひょっとしてもう感覚が無くなってるんじゃないかと思わせるかなり怖いことを言っていましたが、ペース的に1秒以上速いのでハミルトンが前へ。これでメルセデスが3・4位となります。上位2チームが脱落してさらっとその順位をメルセデスがいただく今季お馴染みの光景。その頃フェラーリの方はガレージが閉店ガラガラになりました。ウワオ!
 
 昨年は勝ったと思ったらいきなりタイヤがぶっ壊れて優勝を失ったフェルスタッペン。他所のチームではさっきからDRSが壊れるはドライバーの背中も壊れるわで、たぶん設計上許容されている範囲を超えた入力が入っているので何か起きやしないか最後まで無駄に心臓に悪いレースでしたが、最終的にペレスに20秒の大差をつけて優勝、今季5勝目を挙げました。
 ペレスはファステストの1点をおみやげに2位。以下ラッセル、ハミルトン、ガスリー、セバスチャン ベッテルのトップ6。ガスリーとベッテルは1度目のVSCの際に装着したハードで残りを走り切りました。

 今回は予選こそルクレール、ペレス、フェルスタッペンの順でしたが、レースでの速さは逆だった、というところでしょうか。3位になれたはずのルクレールが、それもVSCのおかげで少し違うことをやってみる機会を得られたのに車が壊れてしまったのでとても残念でした。おかげで優勝争いは以後何も起きませんでした。

 やたら直線の速いアロンソが7位、リキャードとランド ノリスが続きました。この3台の争いはレース内でたびたび捉えられていましたが、展開と車両特性の関係でマクラーレンはひたすら歯ぎしりするしかない状態、逆にアルピーヌとアロンソからすると「しめしめ」という感じのレースでした。
 マクラーレンは2台で戦略が分かれており、序盤は11位スタートのノリスがミディアム、12位スタートのリキャードがハードで走行。2台揃って前を行くアロンソを抜けずにつかまり、リキャードはチームからの指示でずっとノリスの後ろにいることを命じられました。ハードの方がペースが良いので彼とすれば前に出たかった雰囲気です。
トム スタラード「ランドに機会を与えたいから後ろにおってな」
リキャード「ずっとそれやっとったらガスリーに食われるで」
スタラード「分かっとる」

 アロンソが18周目にピットに入ると、ノリスはアロンソをオーバーカットするつもりで攻めて2周後にピットに入りましたが、ピットを出たらオーバーカットどころか間に別の車が2台挟まってさらに面倒なことになっていました。ちょうどルクレールが煙を吹きながらピットへ戻っている後ろにノリスがいたので、ひょっとしたらピット入り口で黄旗が出ていて攻められずに多少損したのではないか、と思えます。
 一方のリキャードはハードなので可能な限り引っ張っていたら2回目のVSCが出たので少ない損失でタイヤ交換を済ませてノリスを逆転。アロンソのすぐ後ろで復帰し、自分は新しいミディアム、アロンソは15周使ったハードなので順位を上げる好機でした。ところがマクラーレンは直線が遅すぎて、アルピーヌは逆にやたら速いので、ながーーーーーい直線だけで0.5秒は離されてしまって全然抜けません(;・∀・)

 今日のミディアムは延々と飛ばせるタイヤでは無いので膠着。そうしている間にハードを履いたノリスが5秒あった差を詰めてきて、第1スティントと立場が逆転。取扱いに窮したチーム側は妥協案として『抜けないなら一旦ノリスを前に出して攻撃させて、成功したらそのまま、失敗したら順位を返す』という話でまとまったように見えました。「アロンソは無線で今が目一杯のペースだと言っている」というのが拠りどころでした。
 ところが、アロンソの「目一杯」は陽動作戦だったのか、段々と置いて行かれるリキャード。結果的に49周目に自己ベストを出したのでアロンソの言う目一杯はたぶんペース配分を考慮した上での目一杯だったんでしょう。
 ノリスはノリスで元々目一杯だと言っていたので、リキャードには追いついたものの、じゃあ今から入れ替えてアロンソを追えるかというとそんな状況ではなく、結局そのままの順位で終わりました。

 チームとすると前にいるドライバーを優先し、チームとして最大限ポイントを獲れるように戦略を考えただけなので特に何か間違えていたわけでもないんですが、既に片方のドライバーの処遇が露骨に報じられている中で、レースの全域で『ペースだけ見たら後ろを走ってる人の方が速い』という状況になり、かつ『最終的に前を走っているのがたぶんクビになる人』だったため、無線のやり取りもなんとなく不穏というか、決して良好なチームとは感じられない雰囲気でした。
 アンドレアス ザイドルがチームと取りまとめるようになって以降、ほぼ一本調子で右肩上がりだったマクラーレンに久々に停滞期間、という感じ。この2人は求める車が異なっていて、ノリスの車にリキャードが合わなくて結果が出ない、というのは残念ながら事実だと思うので、その結果契約してもらえないのも仕方ないと思いますが、チーム競技なのでこのあたりはうまくまとめたいところですね。

 今回は優勝争いが早々に決着したので特に思い出もなく、ちょっとマクラーレンの争いが気になったぐらいでした。角田のウイング破損は勿体なかったし、怖かったですね。フラップが半分しか開かなかった瞬間に空力バランスが狂っておかしな挙動になったり、過負荷でウイングが壊れたりしなくて本当によかったです。
 ただハミルトンの体の具合といい、やたら壊れたフェラーリPUといい、上にも書きましたが車の設計と走行条件にかなり齟齬が出ているようには思いました。この特殊なレースだけのために、厳しい予算制限のなかで強度を持たせたり、そのための専用品を開発する余裕なんてみなさん無いでしょうし、これを『壊れる設計にした自己責任』で済ませて良いのか私にはちょっと疑問です。
 昨年の2件のバースト、今年のこうした問題を教訓にして、何か重大な事態が起きる前にこのイベントの考え方を見直すべきではないかと思いました。というか、そもそも私は今年の車の方向性自体がそもそもちょっと変な方向へ行ったように感じているのですがね^^;

 次戦は2週連続開催でカナダへ。日本時間だと予選は朝5時、決勝は3時スタートみたいですね。3時だと5時起きして録画で視聴かなあ。

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