FE 第8戦 ベルリン

ABB FIA Formula E World Championship
2022 Shell Recharge Berlin E-Prix
Tempelhof Airport Street Circuit 2.355km
45minutes+1Lap
winner:Nyck de Vries(Mercedes-EQ Formula E TEAM/Mercedes-EQ Silver Arrow 02)

 フォーミュラEベルリン2連戦、右回りとなる日曜日のレースです。このレイアウトを見ると昨年の最終戦でミッチ エバンスの車がスタートで動かずに悲劇的な形でチャンピオンを逃したことが嫌でも思い出されます。
 通常は同一開催地で2連戦を行う場合には2日目はフリー走行が1回だけになりますが、今回は逆回りになるので言わば別コース扱い。2日目も2回のフリー走行が行われ、タイヤも各日に2セットが使用可能です。


 予選、グループ予選のA組では前日に8位スタート→1周目に12位転落→3位フィニッシュ、という離れ業を見せたストフェル バンドーンが最速。B組は前日の勝者・エドアルド モルターラが最速でした。エンビジョン レーシングの2人・ロビン フラインスとニック キャシディーは前日は揃って苦戦し10列目からの決勝スタートでしたが、今日は揃ってデュエルに進出しました。

 デュエルではいきなりバンドーンがB組4位のアンドレ ロッテラーに敗れます。前日の走りを見ても、基本的にメルセデスはタイヤへの入力を少なくしてレースでの速さに車を振っており、1周だけ、しかも出力も強くなるデュエルではすぐタイムが出せないのかな?という印象を受けました。ロッテラーは開幕から8戦全てデュエルに進んでいる唯一のドライバー。
 一方モルターラの方はデュエルでも快調で、3ラウンド全て最速のタイムを出す完璧な走りで2戦連続のポール ポジションを獲りました。フラインスが2位、以下ニック デ フリース、ロッテラー、アントニオ フェリックス ダ コスタと続きました。
 キャシディーは6位でしたが、パワートレインを総取り替えしたために80グリッド降格ペナルティーという笑うしかないことになっていて、最後尾スタート+スタート後に10秒停止ペナルティー。SCが出ないと勝負にならないですね(。∀°)これで6位はルーカス ディ グラッシで、7位からバンドーン、ジャン エリック ベルニュ、エバンス、と選手権の1位~3位が綺麗にここに並びました。

 決勝、アタックモードは8分を1回だけという戦略でミスったらもうそれ以上何もできない仕様。スタートではモルターラが良い蹴りだしをしたように見えましたが、ターン1を前にしてスロットルを戻すのが少し早かった様子。まず外からフラインスが並びかけ、ついモルターラは左へ寄せたら、その隙に内側にデフリースが入ってきました。そのまま内側に潜り込んだデフリースがリードを奪います。アントニオ ジョビナッツィーがスタートの段階から異様に遅いんですが後方待機作戦でしょうか^^;
あ、と思った時にはもう遅かった感じ

 2周目以降はほとんど何も順位変動が起きないマネージメント戦、デフリースは1分10秒台からすこーしずつペースを切り上げていきます。すると9周目、唐突にデフリースが真っ先にアタックモードに入り、同時にダコスタ、バンドーンも入りました。まさか先頭から動くとは思っていなかったので全くカメラが捉えていませんでしたw
 翌周にはフラインスもアタックを取りに行きましたが、アクティベーションの最終検知点を通過し損ねたっぽくて起動に失敗。デフリースの方はフラインスが勝手に下がってくれたので前が開け、この後モルターラを抜いてとりあえず先頭へ復帰します。モルターラは今日もサイクル無視作戦の様子です。
フラインスはタイヤ2~3本ぐらい内側を通ったかも?

 モルターラは14周目・残り28分でようやくアタックへ。5位で合流し、自分より前のドライバーはみんなアタック切れが間近に迫っている状態です。結果、モルターラはこの後1周に1台ずつ抜いて行く感じで19周目には2位まで戻すことに成功。アタックは残り2分ほど残っていますが、デフリースは2.2秒前方にいるのでちょっとここまで捕まえるのは難しそうです。こうなると2位で良しとするしかない感じ、デフリースだけ別次元です。

 残り20分、アタックモードのサイクルが終了しデフリースとモルターラは1.5秒差。ディグラッシ、フラインス、ダコスタ、バンドーンの順となっており、とりあえずフラインスはアタック取得ミスを順位1つの損失でしのいだことになります。ディグラッシはうまく順位を上げました。
 
 24周目・残り16分、ダコスタがファンブーストを使ってフラインスをかわし4位とすると、翌周にバンドーンもフラインスをかわしました。一方デフリースはモルターラより毎周0.2秒ほどペースが早くて差が2秒以上にまた広がってしまいました。残量にもあんまり差がなく、こうなるとモルターラにはいよいよ勝てる方法がありません。
 もう1台のメルセデスEQも好調で、バンドーンは26周目にダコスタも抜いて4位、これで上位4台は全てメルセデスになります。なおジョビナッツィーはもう周回遅れ目前になっており、そろそろSCも出ない雰囲気になってきたので余ったエナジーでペースを上げ始めました。コース上で最速です。でも誰も争う相手がいません。。。
 
 残り5分、上位3台は2秒以上の間隔が空いてしまい、ペースも1分9秒0近傍で全く変わらず。バンドーンだけが相変わらず元気で、3位のディグラッシをとうとう捕まえると残り3分というところでかわしました。
 デフリースは最も残量が多い状態で走行し、うまくペースを調節して40周目を最終周に。そのまま1%近く残したままチェッカーを受けました。本人はチェッカーが見えていなかったので、もう1周あるんじゃないかとちょっと慌てたっぽいですが、フラッグ スタンドが少し見えにくい位置にある気もしますね。

 2位からモルターラ、バンドーン、ディグラッシとメルセデスEQで上位独占。5位は最終周にフラインスがダコスタをかわしました。フラインスはターン6へ向けた直線でまず外へ振って、ダコスタが外をカバーしようとした瞬間に内側に進路を変えて不意打ちしようとした感じですが、残念ながらこのタイミングで追いつきすぎてオカマを掘りました。
 レース後にフラインスはダコスタに謝りにいったそうなんですが、レース審査委員会はこの接触についてお咎めなしと判断。ダコスタはこの判断について、「彼は誤りを認めているのになぜ罰則が無いんだ」といった感じで納得がいかなかったみたいです。おそらく、ダコスタの動きも追突を誘発するような動きがあったので、全体としてはレーシング インシデント、という裁定が行われたものと思われます。

フラインス「おつかれさまでした。ごめんなさい。」
審査委員会「問題ありません。良いレースでした!」
ダコスタ「ちょっとまって。」

 デフリースは開幕戦でいきなり優勝して連覇へ向けて死角なしかと思いきや、移行のレースでは10位が3回と6位が1回。全く上位の成績を残せず、ベルリンでも土曜日はブレーキに問題があって全く競争力が得られずに10位だったとのこと。ただ車自体は素晴らしいので、ブレーキを交換したら圧倒的な強さでした。
 結果的には、スタートでモルターラの前に出た時点でもはや他の人には勝てる方法が無かったに等しかったと思いますが、仮に3位のままだったとしてもそれでも勝ってた気がします。それぐらい効率やタイヤの管理が圧倒的でした。

 レース全体としては、ベルリンの2日間を通じてSCどころかおそらくイエロー フラッグすら一度も振られていなかったのではないかと思います。タイヤもエナジーも管理が難しいトラックで45分の外的要素が入らない真っ向勝負だったので、実力が良く見えるレースではありましたが、さすがに何も起きなさ過ぎるとやっぱり単調でしたね^^;
 このコースは2017年から使用されていて各チームがかなりデータを持ってしまっている、というのが何も起きなかった一因かなあと感じました。もし来年も開催するのなら、来年は車両が変わるのでむしろ同じコースの方が車の進歩の度合いを測りやすいのでありがたいですが、もともと特設なんだから可能であれば同一車両規定で2回開催したら3年目はレイアウトをごっそり変えた方が面白いしお客さんも飽きずに来てもらえるのでは?とか思います。

 ドライバー選手権では、バンドーンが2戦連続3位でこのベルリンで30点を加算。一方ベルニュはこの日が9位だったので2戦で20点、エバンスはこの日が10位で2戦で11点しか得られませんでした。モルターラが2戦で50点の荒稼ぎをしたために選手権で2位に浮上しましたが、バンドーンから見た2位との差で言えば、レース前の3点差から12点差に開きました。

 次戦は6月4日、初開催のジャカルタです。アンコール ビーチ シティーという大きな商業施設の周辺に設置される市街地サーキットみたいですね。

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