FE 第7戦 ベルリン

ABB FIA Formula E World Championship
2022 Shell Recharge Berlin E-Prix
Tempelhof Airport Street Circuit 2.355km
45minutes+1Lap
winner:Edoardo Mortara(ROKiT Venturi Racing/Mercedes-EQ Silver Arrow 02)


 フォーミュラE 第7戦・8戦はベルリン2連戦。土曜日の第7戦は左回りの順走レイアウトです。そもそも特設コースなので、何をもって順走なのか?と改めて聞かれると「最初は左回りでレースしてたから」としか答えようが無いわけですけど。過去2年はベルリンがシーズン最終戦だったのでなんとなく終わりそうな気になってしまいますが、全16戦予定のシーズンなのでこれで折り返しです。
 日程で言えば、第10戦のバンクーバーが今季のカレンダーから外れて、代わってマラケシュが加わることが発表されました。感染症の影響、ではなく、開催地の土地所有者のうちの1人とイベント主催者の間で土地利用契約が進まなくて、これが長引いたせいで最終的に自治体の開催許可が出なかった、みたいな話のようです。

 このレースを前に、今季限りで撤退するメルセデスEQをマクラーレンが引き継ぐことと、アンドレッティーが来季からポルシェのパワートレインの供給を受けることが正式に発表されました。マクラーレンのパワートレインはまだ発表されていませんが、既にThe Raceでは日産が供給することになると繰り返し報じています。私もそれを信じてそう書いてきたので、違ったら困りますw
 ドライバーに関しては、ストフェル バンドーンはDSペンスキーと契約する見込みであるとThe Raceは報じており、ニック デ フリースが残留したとしても1人は新たに契約する必要があるようです。バンドーンがDSへ移籍する一方で、アントニオ フェリックス ダ コスタはポルシェと契約すると同サイトは伝えており、結果的にアンドレ ロッテラーが玉突きでシートを失うことになります。
 よく考えたらドラゴン/ペンスキーの現行のドライバーはDSの契約ドライバーに置き換えられるから、このままだとアントニオ ジョビナッツィーはまたジョブナッシーに戻ってしまいます。テチーターはどうなるのか続報が見当たりませんが、どうあってもドライバーは自力で新たに探す必要があるわけですね。

 さて予選です。グループ予選ではA組はパスカル ベアライン、B組はダコスタが1位を記録しました。B組ではセバスチャン ブエミが4位で初のデュエル進出となるはずでしたが、途中ピットでタイヤを交換した際に、安全のために定められたピット最低滞在時間に違反していたために最速タイム抹消の裁定。これによって5位だったアレクサンダー シムズが繰り上がりで進出しました。
 脱落だと思ったら拾われたので急いで車に乗り込んだシムズですがここからまさかの展開。デュエルの準々決勝でベアラインを破ると、準決勝ではジャン エリック ベルニュとまさかの同タイム。これはあまりに見事すぎて笑いましたw
 同タイムなら前ラウンドでのタイムが早い方の勝ち上がり?それともグループ予選の順位?というとそうではなく、普通の予選と同じでタイムを先に出した方の勝ちという規則でシムズは決勝へ。敗れたベルニュは規則への不満をぶちまけました。
 そしてデュエル決勝、シムズはここまで全て対戦相手がターン1でミスっており、ここでもエドアルド モルターラがやっぱりミスって0.15秒ほど序盤で先行。ここまでミスのない走りと相手のミスで勝ち抜いていたシムズでしたが、ここで映像に映っていない最終コーナーで完全にミスったと思われモルターラ逆転。モルターラが自身初のポール ポジションを獲得しました。最終コーナー出口の固定カメラ前を通過するシムズの車が明らかに遅かったですね・・・
 チーム代表のディルバク ギルはお馴染みの心臓トントンポーズでシムズのアタックを見ていましたが、落ち着かせるためにやってるのに力が入りすぎて最終セクターではほとんどパッション屋良状態、むしろ心臓に悪そうでした^^;
途中までは勝っていたシムズと落ち着かないギルさん

 スタート順位はモルターラ、シムズ、ダコスタ、ベルニュ、ロッテラー、ベアラインのトップ6。選手権で1位のバンドーンは8位、ここ3戦絶好調のミッチ エバンスは9位から。ブエミは最速タイム抹消でも10位でした。

 決勝、アタック モードは4分×2回。スタートでブエミの出足が非常に遅くて後続が詰まってやや混乱。上位の方はロッテラーがベルニュを抜いてDS2台に割って入り、バンドーンはタイヤがまだ仕事してないのか、抜かれまくって12位へ後退。ベルニュは3周目にロッテラーに詰まってターン6でミスり、ここをダコスタに抜かれて6位に下がってしまいます。

 4周目、ダコスタがシムズかわすと、翌周にはロッテラー、さらに翌周にベルニュも同様でシムズは次々抜かれていきます。エナジー的にこれ以上速く走れないものと思われます。予選で予想外の順位になっても、エナジー管理の面で劣っていると長い直線の終盤でリフト&コーストをしている間に簡単に抜かれるので、なかなか番狂わせを決勝でも続けるのは難しいですね。
 
 開始8分、1位のモルターラに『ピット レーンでの速度違反でレース後審議』の情報。もちろんレース中にはピットに入っておりませんのでグリッドへ向かうための走行での出来事ですが、レース後審議なのでせいぜい罰金刑でしょうか。
 開始12分、後ろのエバンスと1.2秒差だった6位のベアラインが上位で最初にアタックモードへ。順位を失わずにギリギリ戻れました。ここから1回目のアタックのサイクルとなりますがモルターラは無反応。他の人がアタックをきっかけに抜いたの抜かれたのでごちゃついたタイミングで空間ができれば良かったんですが、誰かしらが常にウインドウ内にいるため結局全員のアタックが終わるまで全く動きませんでした。モルターラの1回目よりシムズの2回目の方が先になっています^^;

 モルターラの後ろは1回目のサイクルを終えてロッテラー、ダコスタ、ベルニュ、ベアラインの順で、まずロッテラーが順位を上げた形になっていました。既に2回目のアタックに入っているシムズを挟んで7位になんとバンドーン。出足は悪かったですがすごく効率的に走れているようで、コース上でサクサク抜いています。
 そしてちょうどレースの折り返しとなる残り22分ほどでようやくモルターラが1回目アタックへ。入る前に少しペースを上げて後続と距離を開け、一旦ロッテラーに抜かれて2位になりますが、すぐに抜き返して1回目のサイクルでは確実に1位を守りました。しかしもう後ろの人たちは2回目のサイクルに入り始めているので、勝つにはこの後もう一度同じことをやる必要があります。

 残り15分、モルターラ、ロッテラー、ベルニュ、バンドーン、ダコスタのトップ5。モルターラ、ロッテラー、バンドーンの3人がまだアタックを残していて、レース全体でもまだ使い切っていないのはこの3人ぐらいになっています。バンドーンはなおも残量には周囲より僅かに余裕があり、この後ベルニュを抜いて3位。ベルニュの方はアタック使用中のダコスタにも道を譲って5位に後退します。

 残り13分、未使用の3人の中でロッテラーが最初にアタックに入り、翌周にバンドーンが反応、いずれも4位のダコスタより前で戻れました。
 残り9分30秒、バンドーンから2周遅れてモルターラも2回目のアタック、3位でコースに戻りました。ロッテラーのアタックが切れたところでバンドーンとモルターラは2台でまとめてロッテラーをかわし、これでメルセデスとメルセデスのカスタマーによる優勝争いへ。
 モルターラにとっては一緒にロッテラーを抜いたことは非常に大きく、これで翌周にアタック切れしたバンドーンを楽々とかわして1位に戻りました。3位にはベルニュが浮上、そこそこエナジー残量があるのでおそらくチームの指示でダコスタと順位を入れ替えたものと思われます。

 残り5分、ベルニュがファンブーストを使用してバンドーンをターン6で仕留めて2位へ。さらに残り1分30秒、みんなかなり残量がギリギリなのでにらみ合いに入ったその間隙を衝いてベルニュがモルターラを狙いましたがちょっと突っ込みすぎ。逆にバンドーンに狙われて鬼ブロックを余儀なくされ、ここで争ったのでモルターラは楽になりました。一方2位以下が大混戦で残り2周です。

 最終周、みんな残量2%台のギリギリから入って必死に管理。ダコスタが少し不足気味だったようで最後になって急激に後退しましたが、そのほかの上位勢は計算通りと言うべきか0.0%でチェッカーを受けて行ってモルターラが優勝。ピット速度違反に関してはどうやら1200ユーロの罰金を受けたようですがレース結果には影響しませんでした。そらそうやわな。

 必死で守ったベルニュが2位、予選での不機嫌さを思えば良い結果ですが、最後の勝負所でちょっと気持ちが前に行き過ぎたのはドライバー的にかなり悔しいと思います。どうやらアタックモードに入るタイミングを巡ってエンジニアと意見の相違があって戦略面でもあまり納得は行っていないらしく、見ている側とすると堅実に上位を走っていますが、やっている側は思ったより不満が多い雰囲気です。
 バンドーンが3位で、ドライバー選手権では変わらず1位。ただベルニュがレース前より3点詰めて3点差の2位につけています。4位からロッテラー、エバンス、ベアラインで、ダコスタは8位まで後退しました。予選を沸かせたシムズが9位。残量を見ると、後方待機作戦で一発逆転を狙ったのか、何か計算ミスがあったのか、日産のマキシミリアン グンターはエナジーが余ってしまうほどで18位でした。

 今季はポールシッターがマネージメントで苦戦して勝てない状況が続いていましたが、モルターラはうまくペースを配分して勝ちに繋げました。完全にアタックのサイクルをズラすと入り時を失って後手に回ることがありますが、モルターラ陣営はペースを上げればある程度の台数はウインドウ外に追い出せるという自信があったのではないかと想像します。アタックに入っても最低限の台数だけにロスなく抜かれて、それをロスなく抜き返す理想的な使い方でした。

 時間制レースではペースによって周回数が変動しますが、今回のレースでも40周か41周かが微妙な線でした。結果的にベンチュリーは40周のペースで走りましたが、序盤に6位と7位の間に空間があったのはエバンス陣営が『41周だったらこのぐらいのペースで走らないと足りない』と考えて抑えていたことが一因のようで、一方でバンドーン陣営は早い段階で『40周だろう』と見積もった、というのがバンドーンのコース上での追い抜きを助けたようです。
 前方の人は41周を頭の片隅には入れつつも、安易に抜かれなくは無いので基本は40周を想定し『もし41になったら無理やり節約するしかない』という感じだったんでしょう。
 こうして考えると、マラソン中継の予想ゴール時間みたいな感じで、画面の情報に『予想合計(あるいは残り)周回数』みたいなものも時々表示してもらえると、たとえば40.9と41.1を微妙に数字が行き来していたら「おお、ペース次第でどうなるか分からんぞ」と見ていても分かりやすいので面白いかなと思いました。さすがにレース見ながら残り時間とラップタイムで自分で計算するのは大変なんですよね^^;
 もちろん車も非常に速かったですが、バンドーンは戦略でも効率でも非常によかったので、逆回りでの日曜日のレースも手強そうです。ベルニュの効率の良さも相変わらずなので、苛立って変にポイントを捨てるようなことが無いといいなと思いますね。次戦はベルリン逆走レイアウトです。

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