2022 Monaco E-Prix
Circuit de Monaco 3.337km
45minutes+1Lap
winner:Stoffel Vandoorne(Mercedes-EQ Formula E Team/Mercedes-EQ Silver Arrow 02)
フォーミュラE 第6戦はモナコです。昨年に初めてF1と同様のレイアウトが採用されましたが、回生量をある程度確保するためにはどうしても低速なターンが必要なので、ヌーベル シケインだけは異様に狭くて窮屈に設定されていました。そもそもターン1も鋭角にしたかったけど、反対意見が多くてやめた、という経緯があって回生場所の確保が大変でした。
しかし今年はとうとうここもF1と同じ形状になりました。F1からするとどこも低速なコーナーなわけですが、フォーミュラEからするとモナコはとても路面が綺麗で高速で回生する場所が少ない『高速コース』になってしまいます。エナジー管理がとても大変で、ある意味Gen2車両の各陣営の知見の集大成と言えそうです。
で、このモナコでいよいよ来年から使用されるGen3車両のお披露目が行われました。どうやら部材調達の難航などでシーズン9の開幕は2023年に入ってからとなり、本来の秋から始まる日程には戻せないままになりそうですが、人前に出すところへこぎつけました。
戦闘機に着想を得たというこの車両、上から見たら三角形にウイングをくっつけただけの非常にシンプルな見た目になっています。公表された寸法では、全長で約180mm、ホイール ベースで約130mm、全幅も100mmといずれも現行車両より小型化されており、出力向上や高効率化を図りながらも60kgも現行型より軽量化されています。
今回の発表を受けて情報解禁となり、各チームもとりあえずプロモーション的にGen3の画像をSNSに投稿しています。日産は
A #NissanFormulaE concept livery fitting for a new beginning.
— Nissan NISMO (@NISMO) April 28, 2022
The Gen 3 @FiaFormulaE car is adorned with Sakura, also known as cherry blossoms. They're the most popular flowers in Japan and can also be found in the @Nissan Ariya. #FeelElectric pic.twitter.com/TPLsJlu3ID
桜色の車でした。ほぼグランツーリスモのフォトモードですねw その日産ですが、前戦ローマのレース後にe.damsを買収すると発表し、来年から名義としては日産の単独名義での参戦となる見通しです。珍しくNHKのニュースでも経済ニュースとして扱われていましたが、そもそもこのレースを知らないとe.damsが何なのか意味が分からないので謎なニュースだろうなと思いました。
また、昨シーズンまでアウディーと組んで参戦していたアプトが、カスタマーとして再度参加する可能性が報じられています。そもそもアウディーが撤退した際に、彼らが独立チームとして継続参戦せずに参戦枠を返上して去ってしまったことは少し驚かれていました。実現すると盛り上がるんですけど、予算やどのメーカーがパワートレインを供給するかなど壁は少なくありません。
さてレースの方にまいりましょう、グループ予選のA組ではストフェル バンドーン、B組はローマで2連勝して波に乗るミッチ エバンスが最速でした。
デュエル予選に入ってもエバンスは好調で、準々決勝、準決勝、決勝と勝ち進むごとにタイムを少しずつ切り上げる盤石の走りを披露。最終的にこの週末で唯一の1分29秒台のタイムを叩き出してポール ポジションを獲得しました。一方のバンドーンは準決勝でパスカル ベアランに敗れてしまいます。予選順位はエバンス、ベアライン、ジャン エリック ベルニュ、バンドーン、ルーカス ディ グラッシ、アンドレ ロッテラーのトップ6。
決勝、スタートでは上位6台は順位通りに1周目を終えました。後方はターン6のヘアピンで多少渋滞したものの、玉突き事故で車が道を塞いだり乗り上げたり止まるようなことは起こりませんでした。3周目に入ると概ね縦一列になって行きます。
車載映像を見るとトンネルを出る遥か手前からスロットルを戻しているのでかなり節約しないといけないのは目に見えて明らか。それなりに高速なのでスリップストリームによる節約効果も大きいと思われ、エバンスとすると風除け役を引き受けながらどうレースを組み立てていくのか難しいところです。
これだけの大集団だとなかなかアタックモードは使いズラく、中団グループが1回目のサイクルに入ったのは9周目・開始14分あたり。上位勢では11周目に3位のベルニュだけがまず動きましたが使うと一気に見た目上6位に後退しました。
13周目、エバンスは僅かながら後ろとの差を広げて1回目のアタック、3位のバンドーンも同時に入りました。翌周に暫定1位のベアラインもアタックへ。これで見た目上の順位は、既にアタックが終わったベルニュが1位、エバンスが2位、ベアラインが3位となります。
エバンスは当然ベルニュを抜くものと思われましたが非常に上手く抑えられて前に出られず。さらに、無線で「エナジーが必要だぞ」。周囲よりも少し残量が少なくて抜きたくても抜けないエバンス、前を抜くどころかトンネルの出口で早々にスロットルを戻してあっさりとベアラインに2位を明け渡してしまいました。
ベアラインの方はこの後ベルニュを抜いて1位へ、逆にエバンスはバンドーンにもまた同じ場所で抜かれて4位へ。これで1回目のサイクルを終えてベアラインが見事に1位を得ました。が、好事魔多し、なんと16周目にベアラインの車に問題発生、ミラボーを立ち上がったら旧失速してしまいました、なんてこったい。これでベルニュが先頭となり、バンドーンが2位、エナジー不足のエバンスが3位です。
17周目、ベルニュは先手を打って2回目のアタックに入り、5位のディグラッシもこれに続きました。ところが、さっき失速していたベアラインがそのままトンネルの出口で止まっており、レース コントロールはとりあえず全車に現場を通過させたうえでFCYを発令。アタックを使った2台は時間の大半を失ってしまいました。
18周目、残り15分30秒でFCY解除、FCY前に1秒差だった1位バンドーンと2位エバンスの差がなぜか3秒に広がっています。バンドーンはFCY前の減速開始をギリギリまで攻めたっぽいですね。この差を活かしてバンドーンは翌周にすぐアタックモードを取ります、抜かれずに使える何でお得なことはモナコでは滅多に無いので千載一遇の機会でした。
ところがこれとほぼ同じころ、ターン1でロッテラーがクラッシュ。オリバー ローランドがロビン フラインスから順位を守ろうとしたら突っ込みすぎて、ロッテラーの内側にねじ込んで行き場を奪ったようです。今度はFCYではどうにもならなそうなのですぐにSC導入、バンドーンのアタックは事実上無力化されました。ローランドも損傷が大きくリタイアしましたが、次戦で3グリッド降格のペナルティーを受けました。
こうなると気になるのがアタックモードの残し具合で、この段階で上位8台のうち1位のバンドーンと3位ベルニュ、4位ディグラッシは使用済み、残る5台はまだ残っています。SCで隊列が詰まってしまうので抜かれる危険性は増えますが、武器が手元にあるのでうまくやると情勢を覆すチャンスです。エバンスは前戦でも自分だけアタックを残してSCが出ましたね。
このSCはさすがはモナコの回収班、と思わせる速さで作業が終わり、21周目・残り9分半ほどでもうリスタートとなります。5位のフラインスはリスタート直後にアタックに入り、エバンスは2周後の23周目に入りました。後ろと少しですが差を広げ、かつそのフラインスがちょうど4位あたりで争っているので、隙を衝くならここだと考えたのでしょう。
できればフラインスの前の3位、1つ順位を捨てるだけで隊列に戻りたかったエバンスですがギリギリでフラインスにかわされて4位へ。エバンスはフラインスのアタック切れのタイミングで3位にはすぐ戻しますが、エナジー的にそこまで無理できない上にベルニュの防御は固いので、抜くのに25周目までかかってしまいました。もうアタックモードは1分しか残っておらずさすがにバンドーンを追えそうありません。
レースは45分を使い切って4分30秒の延長戦へ、バンドーンは手持ちのファンブーストも使ってエバンスを2秒以上引き離し安泰の様子。かと思ったら、微妙にエナジー残量でエバンスに負けていて、僅かずつですが追いつかれています。エバンスは必至の管理で残量を周囲と同等に戻して本来の速さをある程度発揮できる状態でした。
しかしさすがに2秒を詰めるほどの極端な差ではないので、バンドーンはギリギリまで使い切ってチェッカーへ、久々にみんなが残量0.0%表示になるカツカツの状態。予想通りモナコのエナジー管理は綱渡りでしたが、バンドーンが今季初勝利・通算3勝目を挙げました。モナコで勝つのはGP2時代の2015年以来と思われます。これでドライバー選手権でも1位に浮上です。
ポールからスタートすると管理に苦戦してボロボロになるメルセデスEQでしたが、バンドーンは程よい4位スタートから序盤にうまく節約し、ここにライバルのアタックが役に立たなかったという展開が重なって優位にレースを進めることができました。2回目のアタック無効化は、順位を失わない中での出来事だったのでそこまで大きな痛手にならずこれも幸運でした。
一方エバンスは勝てませんでしたが、序盤の状況からするとベアラインのリタイア、ライバルのアタックモードを見事に無力化する展開がなければ表彰台も厳しかったように思うので、この状況では最善の結果だったと言えると思います。
3位からベルニュ、フラインス、アントニオ フェリックス ダ コスタ、ディグラッシ。その後ろに18位スタートのニック キャシディー、22位スタートのセバスチャン ブエミが続きました。エンビジョンの車はけっこう効率が良さそうなのでキャシディーはうまく節約しながらコース上で順位を上げた形。
一方のブエミはNIOのダニエル ティクトゥムよりも4秒以上後方を走っていたので、レースのどっかの段階から後方待機作戦に切り替えていたものと思われます。SCが終了するリスタート時点で15位でしたが、前方の数台より残量が多くここから上げていきました。逆にチームメイトのマキシミリアン グンターはリスタート時点で8位でしたが、使い過ぎになっていて最終周にお手上げ。完走した中で最下位となる17位に転落しました。
でも後方待機のブエミと、そこそこ争って10位からリスタートしたキャシディーの比較では残量はほとんど同じだったので、エンビジョンと日産にはそれなりに効率の差があるようにも感じました。
F1だと絶対並ばないヘアピンで平気で2台並んで内回りして通過する姿はやはり面白いものがあります、来年は車がさらに細くなってスピードは上がるわけですが、どんなレースになるんでしょうか。部品在庫が足りなくてみんな無理できないので何も起きずに終わった、みたいなオチがある気もしますが、来年もモナコ開催希望です。
次戦は2週間後にベルリン2連戦、土曜日は左回り、日曜日になると逆走で右回りで走る2連戦です。




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