F1 第5戦 アメリカ(マイアミ)

FORMULA 1 CRYPTO.COM MIAMI GRAND PRIX 2022
Miami International Autodrome 5.412km×57Laps=308.326km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull RB18)

 2022年のF1第5戦は初開催のマイアミ、アメリカではなんと通算11番目の開催地だそうです。NFL・マイアミ ドルフィンズの本拠地 ハード ロック スタジアムの周辺を使用した市街地コースで、長い2本の直線をクネクネさせて繋いだ感じ。基本的に高速コーナーが多いですが、高速道路の下をくぐるターン14~16あたりは妙にせせこましくてここだけちょっとフォーミュラE的です。空撮映像の見た目はけっこう好みですね^^


 フォーミュラEといえば、シーズン1で一度だけマイアミでレースが開催されていて、あの時も高速道路の下をくぐっていたので場所は近いのかな、と思って調べたら今回の開催地から真っすぐ南へ20kmほど行ったところでした。遠くも無いけど近くもないですね。

 予選、Q3の1回目のアタックではマックス フェルスタッペン、シャルル ルクレール、カルロス サインツが0.08秒差に入っていて2回目に期待が高まりましたが、フェルスタッペンは2回目のアタックで早々に失敗してしまい更新ならず。
 一方ルクレールはタイムを更新、セクター1でこれをさらに上回っていたサインツでしたが以降でその差を吐き出してしまい、結果ルクレール、サインツ、フェルスタッペン、セルヒオ ペレスの順に。サインツはFP2でクラッシュしていてちょっと事故病に憑りつかれてるので2位でもまあ良しというところかもしれませんが。バルテリ ボッタス、ルイス ハミルトンと続きます。ボッタスはええ、と思いました。


 決勝、40℃を超えるほどに上昇した路面温度でさすがはマイアミという感じで、タイヤは大半がミディアムを選択。スタートは奇数列が有利っぽいけどターン1が近いからどうかな、という事前の想像でしたが、フェルスタッペンはサインツより少しだけスタートが良くてターン1で外からかわすことに成功。大きな混乱は起こらずルクレール、フェルスタッペン、サインツ、ペレスで流れが落ち着きます。

 上位4台はそのまま似たようなペースで走る中、8周目の最終コーナーをルクレールの真後ろで立ち上がったフェルスタッペンがピット前の直線でDRSを使ってかわしリード チェンジ。右前タイヤがやや傷んでいるように見えるルクレールですが、なんとかDRS圏を維持しようと抜かれても必死の追走を見せます。でもそれをやるとまたタイヤを傷める原因になるので、長い目で見たら4位のペレスにもまだチャンスがあるかも。
 
 フェルスタッペンはじわじわとタイムを切り上げて行く一方、ルクレールは12周目の最終コーナーで止まり損ねるなど見た目にはやや苦しそう。それでも前と離れたらちょっとタイヤの温度も落ち着いたのか、14周目にはフェルスタッペンと0.001秒差のタイムを出すなどなんとか手持ちの状況で管理している様子がうかがえます。

 中団以降のチームは次々とピットに入ってミディアムからハードへと乗り換えて行く中で上位4台は相手の動きを見極めながらの持久戦。ペレスはサインツの真後ろに迫っていましたが、画面に映っていない19周目に急に4秒近くペースが落ちて離れてしまいました。
 本人はパワーが落ちていると主張する一方、エンジニア側は「スリップを失っただけだ」と当初なぜかこの主張に否定的。でも明らかに遅くてサインツとは7秒差になりました。結果的にはありがちなセンサー系の不具合が原因で、リセット操作を行って復旧はしたものの、万全ではなくずっと出力は不足したままだったようです。
 これで22周目の段階でフェルスタッペン、ルクレール、サインツがそれぞれ4秒差、その7秒後方にペレス、さらに8秒後方にボッタスです。ボッタスは常時ハミルトンより良いペースで走っていて完全に独りぼっちになっています。

 24周目、ルクレールはこの前の周にファステストを記録してタイヤを使い切った上で上位4台で最初にピットへ。ボッタスの前でコースに戻りました。これを受けてフェルスタッペンは26周目にピットへ。こちらはペレスの前でコースに戻ってルクレールの遥か前方です。車が壊れなければ優勝に片手が届きました。
 残るサインツとペレスも27周目にピットへ、サインツは右前輪の装着に手間取って2.5秒ほど作業時間が長くなってしまい、ペレスとの差は5秒とやや縮まりました。ペレスにはちょっとやる気が出る情報です。

 7秒差のフェルスタッペンとルクレールは時々ファステストを更新しあってこの差自体は変動なし。5位にはスタートからハードを履き続けているジョージ ラッセルがいて、タイヤを換えた中団組と比べても安定して速いペースなのでとにかく引っ張れるだけ引っ張って何かを待つ姿勢です。
 予選では12位でQ2落ちしたラッセルですが、セクター1の高速コーナーで車が跳ねてラインを外れたのが失敗の原因。跳ねてミスるほど攻めたのが悪いのか、そんな場所で跳ねて制御できない車が悪いのか、という話はありますが本来はもっと速いはずでした。その力量の通り、40周走ってもまだピットに入りません。
 その後ろにはボッタスがいてこちらはピットを終えて履き替えたハードですが、一気にラッセルに追いつくわけでもなく少しずつ差が詰まる状況、そしてハミルトンはハードに乗り換えてからはボッタスよりペースが速くてこちらも少しずつ追いついています。一回思いっきりミスって秒単位で損したのが地味に効いてなかなか捕まえるところまで行きません。

 すると41周目、何かが起きました。フェルナンド アロンソとの接触もあってボロボロになっていたピエール ガスリーがターン7~8でラインを外れてコース外へ。本人はもう車が全然曲がりもしないのでピットへ戻ろうと考えたようですが、ターン8を立ち上がってコースに戻ったところで、後ろから来たランド ノリスと接触。

 これでノリスの右リアのタイヤが外れてしまって即座にVSC、その後にSCとなりました。接触したのはコースとしては事実上の直線だけど微妙に曲線になっている箇所で、ガスリーは半分故障車の状態でしたがやや中途半端な位置を走り、ノリスの方は逆に相手が完全に避けてくれるもんだろうという感じで不要に近いところを走ってしまった雰囲気です。ノリス、今回はやたらとリアルなバスケットボール柄のヘルメットでしたがコートの外に弾き飛ばされました。

 このVSC、ラッセルはちょうどピットに入れそうな位置にいたので渡りに船でピットへ。7位でコースに戻って超ラッキー。他にも同じくハードで粘っていた人が救われました。FP3でクラッシュして予選を走ることもできなかったエステバン オコンもここで最初で最後のピット、ハードから思い切ってソフトに乗り換えて11位リスタートです。

 上位では4位のペレスは後ろと差があったので2回目のピットで新品のミディアムへ。前方の3台は入らずにハードを継続、タイヤ的には自分だけかなり優位性のある状態です。ボッタス、ハミルトンも古いハード、ラッセルは今履いたミディアムで7位なので、またもやSCでラッセルが得してハミルトンは不機嫌になりそうです。
 ハミルトンに対してはこのSCの際、無線で「ピットに入るチャンスがあるけどどうする?」と質問。どうする、と言われても何がどうなるのか詳しいことが分からないと決められないわけでそれは普通はエンジニア側のお仕事。最終的に「おすすめはステイ アウトだ、ステイアウト」と決定。またハミルトンが「ジョージに有利な作戦だ」って文句言ってきそうだから、本人に決めさせて責任逃れをしたいなあ、というチーム側の微妙な空気を感じなくもない一幕でした。

 散らばった破片の回収に時間を要してリスタートは47周目・残り11周。フェルスタッペンは焦らして焦らして踏み出しは最終コーナーの出口の割と普通なところで踏みました。ルクレールはそれなりに対応、サインツはミスってしまってペレスに迫られますがさすがに追い越し可能地点からターン1までが短すぎて抜けませんでした。ルクレール的には脅威が離れてくれるのでありがたい壁です。

 49周目にDRS解禁、ここしかチャンスがないルクレールはフェルスタッペンのDRS圏内。そしてお客さんの発煙筒も勝手に解禁されたようで、客席が近い市街地にもかかわらず赤い煙がすぐそこからコースに流入、それはレース後まで我慢してくれw
 その後ろではボッタスが最終コーナーでミスってメルセデス2台に先行を許してしまい、これでDRSを貰うアテが無くなったハミルトンも翌周にラッセルに抜かれました。ラッセルはコース外を使って抜いたので53周目に一旦順位を返還した上ですぐまた抜き返しました。私がハミルトンの立場なら、正直周りをうろちょろして何回も抜かれる方が余計に腹が立つので「もう別にペナルティー与えんでええからとっととどっか行け」と思いますね^^;

 52周目、サインツを抜けなくてちょっと苛立ったか、ペレスが珍しくかなり強引にターン1で内側に飛び込みましたが止まり切れず。危うくぶつかりそうでしたがサインツがよく見ており回避。一方1位争いもフェルスタッペンとルクレールがまだ1秒圏内でやり合っていますが、決定打は出ません。
 同じころターン1ではセバスチャン ベッテルとミック シューマッハーが接触。破片がかなり飛び散った気がしますがお構いなしにレースは続行。レース コントロールは当初『マグヌッセンとベッテルのターン1での接触について審議中』とメッセージを表示して、勝手にマグヌッセンが関わったことにされています。ミックには他にもう1つ審議がありましたが、そちらも当初は誤ってマグヌッセンと発信されました、日ごろの行いが悪いから・・・w

 ルクレールはさすがにエナジー残量にもタイヤの温度的にも攻撃し続けるには限度があったようで、DRS圏から剥がされたらここで攻撃終了という感じ。フェルスタッペンが逃げ切って今季3勝目を挙げました。


 ルクレール、サインツ、ペレス、ラッセル、ハミルトン、ボッタスと続きました。8番目にチェッカーを受けたのはアロンソでしたが、ガスリーの接触行為による5秒加算が既に確定していたことに加え、コース外を使って利益を得たとしてさらに5秒加算が課せられたので正式結果では11位。
 これにより、最後尾スタート(ただしアストン マーティンの2台がピットからのスタートを選択したので実質は18位スタート)のオコンが8位、18位スタート(同じく実質16位)のアレクサンダー アルボンが9位。ランス ストロールが10位で最後の1席に座りました。アルボンは16周目に早々にミディアムを捨て、あとはハードで淡々と走っていたようですが、先に入ったぶんトラック ポジションを稼いで、あとは終盤のゴタゴタで回りが落ちてくれた、という感じ。見えてないところできっちり仕事をしていたのが報われましたね。

 VSCが出た際、ルクレールはサインツと17秒も差があったのでフリー ストップが可能でしたが入りませんでした。レッドブルのクリスチャン ホーナーはこれを「助かった」とレース後に語りましたが、フェラーリは決勝にミディアムを1セットしか持っておらず、乗り換えるならハードが中古のソフトしか選択肢がありませんでした。
 結果的に破片処理に長引いてリスタート時点で残り11周のレースになったとはいえ、ソフトで走るには周回数が多く、かといって新品ハードでは熱が入りにくいので、ペレスがその場合にステイアウトしたにせよ、ピットに入ったにせよ、走り出した直後にはむしろ狙われる危険性がありました。そのため、無難な判断を行ったとのことです。
 これは戦略としては妥当だと思います。ドライバー選手権で考えてもルクレールはまだ大きくリードをしているので2位なら問題無い範囲で、変にリスクを負う必要はありません。ここは、安易に「ウホッ、フリーストップ行けるやん、入るぞ!タイヤ?古いやつよりええやろ、かまへんかまへん」てな感じで目の前の餌に飛びつく方がリスクがあったので、冷静な判断だったと思います。
 勝敗の分かれ目はスタートからの車が重い状態でのミディアムの取り扱いにあったかなあ、というレースで、フェルスタッペンがうまーくルクレールを追い詰めた印象でした。イモラでのスプリントも同じような流れでしたね。このあたりはチャンピオンを既に経験した人の強みと自信と腕、逆にルクレールは去年までこうしてレースを引っ張るような経験がそんなに出来ていなかった、という差もあるのかなと思います。
 その後もミディアムではフェルスタッペンが僅かに速く、ハードではフェルスタッペンが完全に後ろのタイムを見て走っていたようですが、リスタート後の動きを見るとルクレールもそん色なかったのかもしれません。

 初開催のマイアミ、10年という長期開催契約を結んだということでいきなり大失敗するわけにはいかないイベントでしたが、見た感じは雰囲気も良いですし、バクーやジェッダみたいにやたら危険性が高い設計にもなっていない感じですので良かったと思います。
 思ったより追い抜きができないコースでしたが、そんなに簡単に追い抜きばっかりできても結局速い人が前に来るだけで不確定要素が減りますから追い抜けば面白いってもんでもないですし、DRS区間の長さでいくらでも調整はできるので悪くはなかったと思います。

 さて、次戦はまたヨーロッパに戻ってスペイン、ここで多くのチームはそれなりの規模の新型パーツを投入してくるでしょう。今回はガスリーが予選では速かったけどそれ以外は見どころが少なかったアルファタウリ、もう少しどこへ行っても当たり外れなく安定して走れる性能が欲しいですね。

コメント

Cherry さんのコメント…
マイアミGP前後一週間にINDYCAR、NASCARが行われなくもなさそうですね。NASCARにこれ以上ロードコースを増やされたくないですが...
SCfromLA さんの投稿…
>Cherryさん

 いや~、NASCARはたぶんF1を敵だと思ってるんで乗っからないんじゃないですかねw ちなみにこの日のアメリカの視聴率はNASCARの方が良かったらしいですよ。F1見る人もかなり多いので、お互いに競走して高めあってくれたら良いんですが。