NCS 第8戦 マーティンズビル

NASCAR Cup Series
Blue-Emu Maximum Pain Relief 400
Martinsville Speedway 0.526miles×400Laps(80/100/220)=210.4miles
(NASCARオーバータイムにより403周に延長)
winner:William Byron(Hendrick Motorsports/Raptor Tough.com Chevrolet Camaro ZL1)
 
 NASCAR Cup Seriesはショート トラック3連戦開催中。2戦目は最小トラックのマーティンズビル。例年は500周のレースですが、今回はマーティンズビル75周年記念として、完全夜間レースで開催したいために、普段より100周少ない400周となりました。500周にして夜遅くなったら大変だし見てもらえないからですね。


 Next Gen Carでは初のマーティンズビル、てっきり5速ホールドで走るもんだと思っていたら、ターンを4速で立ち上がってストレートの真ん中ぐらいでクロスした5速へ繋ぎ、すぐにブレーキングしてまた4速にする忙しい運転でした。4速に落とすところで少し車が内側に巻いてエンジン ブレーキも効くので、車を曲げるための使い方という面もありそうです。
 
 さてまずは併催カテゴリー、キャンピング ワールド トラック シリーズはステージ1をゼイン スミス、ステージ2をベン ローズと有力どころがステージ勝利を挙げました。しかしステージ2終了後のコーションでステイ アウトしたウイリアム バイロンがファイナル ステージの大半となる94周をリードし、コーション11回という荒れたレースを制しました。レース後にはヘイリー ディーガンとローレス アランが口論になる場面も^^;

 エクスフィニティ― シリーズも15回のコーションが出る荒れ荒れのレースでオーバータイムへ。そのオーバータイムのリスタートでも外側1列目のサム メイヤーが大失敗したことをきっかけに後続で多重事故が起きて道が塞がり16回目のコーション、レッド フラッグになる大騒ぎ。なおメイヤーは混乱を呼んだもののそのまま走り去ったので何の損害もありませんでした。
 2回目のオーバータイムではリーダーのタイ ギブスをチームメイトのブレンダン ジョーンズが後ろから押して猛烈な煽り運転。その後最終周にジョーンズがギブスをかわして今季初勝利・通算5勝目を挙げました。
 これで終わっていればよかったんですが、2位に落ちたギブスにはさらにターン3でメイヤーが追突、メイヤー自身も内側にランドン カッシルがいたため、ターン4で3台が並んでしまうぐちゃぐちゃの状態になって。大外へ追いやられたギブスは結局8位となってしまいます。
 これにキレたギブス君(19歳)、ピットへ戻るとメイヤー君(19歳)の車にぶつけた上に車を降りるとにらみ合いに。そして口論、を通り過ぎて大乱闘になりました。ギブスにはピットで他車にぶつけた危険行為に対して$15,000の罰金が課せられました。


 メイヤーはぶつけて抜こうとしたのか、単に内側のカッシルに抜かれまいとブレーキを粘ったら、ギブスの方は逆にジョーンズに譲って引いたのでブレーキが早くて結果的に交錯したのか判別しにくいところがありました。いずれにしても、同い年のライバルですから当分はお互いに意識することになるでしょうね。


 そしてメインのカップシリーズ、予選ではチェイス エリオットがPP獲得。今季初、2年前の春のフェニックス以来です。2位からエリック アルミローラ、コール カスター、クリス ブッシャー、バイロン、ケビン ハービックのトップ6。トッド ギリランドがなんと予選10位で沸かせたようです。

 決勝が始まるとまずはエリオットが数車身の大きなリード。アルミローラをかわしたカスターが2位に浮上しますが、僅か25周でエリオットのリードは1.5秒にまで拡大。序盤は一人旅になりました。
 40周目、やや車が曲がらなくて困っていそうなカスターをバイロンが抜いて2位へ。このあたりからリーダーのエリオットは本格的に周回遅れに遭遇し始めます。競争力が拮抗している今季、極端に遅い車が少ないので最初の周回遅れに出会うまでの時間が長い一方、ひとたび出会うと大集団、かつ抜きにくいので大変です。
チェイス君、周回遅れに取り囲まれる

 エリオットは完全に周回遅れのダニエル スアレスに詰まってしまい、その間にバイロンが背後へ。エリオットはその後なんとかスアレスをかわすと、次の周回遅れはなんと先週の勝者・デニー ハムリン。ハムリンも一生懸命粘りますが、ステージ残り5周というところでミスってしまいとうとう抜かれてしまいました。
 ステージ1はそのままエリオットが勝利、なんとかフリー パスの権利を得たいハムリンは目の前にいるマイケル マクダウルを後ろから押しのけて周回遅れの先頭に立とうとしましたが失敗。これでフリーパスを得られず周回遅れに蹴り出されました。
 見ていて不思議に思ったら放送席からも指摘されていましたが、ハムリンはターンで4速に落とす際だけではなく、ストレートの真ん中でもエキゾーストから火が出ており、リミッターに当ててしまっているのかエンジンの制御が変なのか不思議な光景です。遅い原因の1つなんじゃないかと思いましたが調べても特にそういう話題は見つけられませんでした。
今季初ステージ勝利

 ステージ2もリスタートからエリオットがリード、バイロンも数周カスターに粘られましたが2位をきっちり確保します。この後カスター以下を引き離して2台で独走。追いかける側であるというせいもあるでしょうが、バイロンの方がややターンの曲がり方がV字のライン取りで微妙に走り方が違います。
マーティンズビルといえばホットドッグ

 141周目にB J マクラウドがトラブルで低速走行になったものの、自力でピットへ向かってここはノー コーション。残念ながらマクラウドはここでリタイア。ライブファスト モータースポーツは今回、共同オーナーのマット ティフトが引退後初めてマーティンズビルを訪れました。2019年、彼はこのマーティンズビルのレースに出場する前に脳の病気に起因した発作を起こし、結局ドライバーとして復帰することはかないませんでした。
 ティフトにとってここを訪れることはかなり精神的に大きな壁だったようですが、自身を納得させて前へと進むための今回の来場だったみたいです。個人的にティフトは有望なドライバーではないかと思って密かに期待していたので、NASCARに携わる形が変わってはしまいましたが、活動を密かに応援しています。

 トラック上では157周目、ジョーイ ロガーノが軽くカスターを突き飛ばして3位へ浮上。依然としてリーダーはエリオットで、この数十周はず~~~~~~~っと周回遅れのバッバ ウォーレスを抜けずに詰まってるんですが、ウォーレスもそこまで遅くないのでうまく流れてしまっています。
 
 ステージ2終盤、放送席では「思ったほど路面にラバーが乗っていない」という話に。かなり気温・路面温度が低いせいではないかという話ですが、予想よりラバーが乗っていないとチーム側も感じていたとすると、終盤に向けて車がタイト方向になると考えてセッティングした人は狙いと外れてしまう可能性があります。今速い人は引き続き速いということになりますね。

 左がスタート前、右がこの時点での路面ですが、ほとんど路面の色が変わっていないですね。というのも、そもそもまだまだ寒いこの時期のマーティンズビルで、この日は特に気温が下がって5℃ぐらいまで下がっていたのです。ましてや今季はタイヤ/ホイールも完全に変わってしまっているので、このあたりの特性はNASCAR側もちょっと想定外だったようです。というかそんな寒い環境のレースって日本ではあんまりない気が・・・w

 ステージ2最終周、結局エリオットはウォーレスの後ろを走り続けてそのまま穏便に終わる、と思ったら、2周遅れのダニエル スアレスがなんとかコーション前に1周遅れになろうとターン3でエリオットに追突。悪者になるのを覚悟した決死のアタックでしたが、ラップ バックできずステージ終了。
 エリオットは依然としてスタートから1周たりともリードを明け渡さずにステージ2も制しました。スアレスはチームメイトからスイカの投げ方を聞いておいた方が良いですね。

 コーションで全車ピットへ、ここでカスターがピットを出たらなぜかタイヤが落ちていて跳ね飛ばす事件発生。誰のタイヤかと思ったら、クルーが運び損ねて明後日の方向へ転がってしまった自分の使用済みタイヤでした。幸い人間に当たるようなことはなく、他チームのピット前に転がって行きクルーの方が受け取ってくれましたが、ちょっと怖い場面でした。これでペナルティーを受けたカスターは結局21位でこのレースを終えました。
 このピットではバイロンがエリオットを逆転。ようやく本日2人目のリーダー誕生。残り208周でファイナル ステージが始まりました。

 バイロンがリードしエリオットが続く、1位と2位が入れ替わった以外は特にここまでと変わらない展開。207周目にFOXはCrank It Upに入りますが、なんとNASCAR公式はせっかくエンジン音を楽しむべき時間に、なぜかジェシー パンチのリポートをぶっこんで来ました、これはいらないw
 
 レースが残り150周を切っても展開は変わらず。エリオットは周回遅れでヨレヨレ走っていたスアレスとまた不運にも少し接触してしまいますが、特に影響は無さそうです。スアレスはステージ2後のコーションをステイ アウトしてウエーブ アラウンドで1周戻したものの賭けに失敗、この接触の直前にタイヤを替えて熱を入れている途中でした。タイヤが全然温まらないみたいです。スアレスはこのレース4周遅れの29位でした。

 エリオットは基本的にバイロンがさばいた周回遅れを一緒に抜いて行くだけのはずでしたが、この後処理に手間取ってバイロンから1秒以上離されてしまい、その間にロガーノが接近。280周目に後ろから軽く押されて道を作られ、ロガーノと、ついでにブレイニーにかわされてしまいました。エリオットはどうも右リアの摩耗が激しいようで、立ち上がりで踏めなくなってペースも落ちているようです。

 残り109周、カイル ブッシュがピットへ。状況を打開したい中団以降のドライバーに早めの動きが出始めます。マーティン トゥルーエックス ジュニアはなぜか交換直後の右前タイヤがフラットになっていて危うく他車と接触しかけましたが、なんとかみんな避けてくれて大事には至らず。元々あまり調子が良くなかったトゥルーエックス、この再ピットがトドメになってこのレース22位でした。
 そして残り103周でエリオットもピットに入ると上位勢も反応するしかなく、残り96周でリーダーのバイロンがピットに入りました。17周ほどかけてサイクルは一巡、バイロンが引き続きリーダー、ロガーノとオースティン ディロンが2位を争っている、というところで、FOXがコマーシャルに入った313周目にコーションが出ました。原因はハムリンがトラック上に止まったことで、ハムリンはこのレース28位。それにしてもFOXはCMに何か仕込んでるのか?w

 ここでは数台がピットへ。ピット後に4位だったエリオットも入りました。クルー チーフのアラン ガスタフソンは「このまんまでは勝てんから何かせなあかん」と考えたとのこと。しかし同じくピットに入ったカイル ブッシュにピット内で逆転されてしまい、同様の作戦としては2番手になってしまいました。地味に痛いです。

 トラック上の順位はバイロン、ロガーノ、ディロン、ブレイニー、カート ブッシュ、アルミローラ。チューズ ルールでバイロンとロガーノはともに内側を選びました。残り80周・バイロンとディロンの1列目、カイルが5列目、エリオットは7列目からのリスタートです。ちょっと遠いかな・・・

 ディロンはコントロール ライン上で既にバイロンより前に出るぐらいの出足の早いリスタート、これでターン1でロガーノの頭を抑えることに成功し2位を奪います。そのままバイロンを追走。一方タイヤを交換したカイルはリスタート直後に外ラインで前の車を抜いて8位に浮上しますが、そこまで大きな履歴差が無い上に、気温が低すぎてあまり摩耗もひどく無いのでここから先はそう簡単に順位を上げられそうにありません。

 ディロンはリスタート直後こそバイロンを追走したものの、徐々に付いて行けなくなってロガーノに追い立てられます。段々曲がらなくなってる印象です。
 残り20周、一時ディロンとの差を2秒近くにまで広げたバイロンは周回遅れに詰まった影響で1.3秒ほどに縮小しましたがまだまだ余裕という雰囲気。ディロンもロガーノに追いつかれはしましたがうまく走って2位を明け渡しません。
 レースは残り10周を切り1位と2位の差は2.8秒まで拡大。なんとなくカメラに細かい水滴が付着しているので霧雨程度に雨が降っているようで今さら気になり始めつつ、まあもうレース終わるからいいか、と思った瞬間になんとまさかのコーション。394周目、ブレーキが悲鳴を上げたらしいギリランドが単独クラッシュしました。
 
 このタイミングでのコーションは確実にオーバータイムの2周勝負なので上位勢はステイ アウト。否が応でも前日のエクスフィニティーでの乱闘騒ぎが取り上げられます。併催レースがコーション連発で荒れまくったのに、ここまでカップはほとんど何も起きていないのでテレビ的には揉め事を期待しているんでしょうw

 オーバータイム、バイロンは当然内側を、2位のディロンも続いて2列目の内側を選択し、ロガーノが外側の1列目という並びでした。ところが、リスタートのタイミングを少しズラされたかディロンは動きだした瞬間にバイロンに離されてしまい一瞬で勝負権消滅。これで優勝争いはバイロンとロガーノに絞られました。ロガーノが最後に押して道をこじ開けるであろうことは容易に想像できます。

 予想通りというか期待通りというか、ロガーノがターン2でバイロンにゴツン。ターンの真ん中と出口寄りで2回押しましたが、バイロンは押されることを想定して膨らまないように予め考えていたようで、押されても全くラインが乱れません。むしろうまくロガーノを詰まらせて少し距離を作りました。
 そして最終のターン3~4、ロガーノが突っ込んで来ることを予想したバイロンは今度は少しブレーキを深くしてやや外回りするラインを選択し、ロガーノの車はバイロンに掠ることもできませんでした。ロガーノの攻撃をあざ笑うかのような見事な動きでバイロン完勝。8戦目にして初めてシーズン2勝目のドライバーが生まれました。

 ロガーノ、ディロン、ブレイニー、ロス チャステインのトップ5。カート ブッシュ、カイル ブッシュ、アルミローラ、チェイス ブリスコー、そしてエリオットとなり、結局エリオットは185周をリードしながら結果ではもう1人のチェイスに負けてしまいました。予選ではよかったハービックとブッシャーは14位、15位。
 バイロンは先週のリッチモンドでは戦略ミスと言わざるを得ない無理な戦略を強いられましたが、誰よりも長いスティントをきちんとタイヤを壊さずに走り切り、バトルでも相手に隙を見せなかったことから、私はレースでの勝負強さが増していると感じました。その1週間後にチームメイトとのほぼ一騎打ちを制して完璧に近い勝ち方、なんかドライバーとして1段階上にレベルに上がったような気がします。
 エリオットからすると、ピットで1つ順位を下げただけでレース結果が大きく変わってしまったわけですが、ステージ2までずっとバイロンがうしろにつき続けていたことを考えると、たぶんずっとバイロンは余裕をもって追えていたんでしょうね。実は単純なポイントのランキングではエリオットはこのレースを終えて1位になっているんですけど^^;

 レース全体としては、コーションは僅か4回で、ステージ間コーションが2回とトラブルによる停止、自損事故が各1回と接触事故によるコーションは全くありませんでした。おかげで2時間40分という短時間でレースが終了し、これなら500周できたなと思うあっさりした結果でした。リード チェンジも僅か6回で、ピットサイクルでの一時要因を除けばバイロンとエリオットだけがリーダーでした。
 併催レースの容赦ない接触祭りを思うまでもなくマーティンズビルとしては非常に静かなもので、車を壊すと代替部品の入手が大変だから丁寧に、という意識があるのかどうかは分かりませんが、冷え込んだ夜とともにお客さんには少々物足りなかったかもしれません。
 私はぶっちゃけマーティンズビルを40台が回っている姿を見るだけでもけっこう満たされるド変態なので「いや~、プロのレースやったな~」という感想で楽しんだんですが、ここのトラックには持久戦の500周が似合うし、なんならステージ制も無くて良いかなと思いますね。
 こんなバカでかいエンジン積んだ車でせせこましくグルグル回って、ブレーキもタイヤも人間も必死でもがいて耐える、ある種泥臭いレースが、接触事故のあるなしに関係無くマーティンズビルには似合うかなあ、と思いました。

 さて、次戦は物理的に泥臭い、というか泥まみれの一戦、ブリストルのダートです。今年は大雨にならないでくれよ・・・

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
バイロン、強くなりましたね。一気に今シーズン飛躍するような気がします。さて、乱闘で注目されてるタイ・ギブスですが、そう遠くないうちにジョー・ギブスに来そうな気がします。ハムリンは分かりませんが、カイルやトゥレックスも、若くはありませんし、ヘンドリックや、ペンスキーのように世代交代が進んで、2~3年後にはガラっと入れ替わってる気が。ま、ベルも、もう一皮むけないと安泰とは言えませんが。
カイル・プッシュ さんのコメント…
肉弾戦を期待していたのですが、大人しいレースでしたね。個人的には、もっとガンガンやって欲しかったので、少し期待外れでした。
しかし、世代交代が確実に進んでますよね。日日不穏日記さんが書かれていたように、愛しのカイルも立場が危うくなるかもです。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 ここ2戦のバイロンはちょっとゴードン的な力強さを感じてしまいましたね。ギブス君は当然JGRのどれかしらに収まるんだろうなと思いますしエクスフィニティ―でも速いですが、まだ精神的に未成熟な感じがあるのでおじいちゃんには焦らないでもらいたいですね。
あ、とりあえず23XIに送り込んでハムリンに面倒を見させるという手もあるか・・・w
SCfromLA さんの投稿…
>カイル・プッシュさん

 今回はタイヤの劣化が少なかったですし、大径化でブレーキも長持ちするようになったので、極端なペース差やペース低下が起きにくかったことが肉弾戦が起きない要因の1つだったでしょうね。案外あの華奢なブレーキがレースを盛り上げていたのではないか、と今になって思い始めています。