FE 第5戦 ローマ

ABB FIA Formula E World Championship
2022 Rome E-Prix
Circuito Cittadino dell'EUR 3.385km  
45minutes+1Lap(50分15秒に延長)
winner:Mitch Evans(Jaguar TCS Racing/Jaguar I-Type 5)

 フォーミュラEローマ2連戦の2戦目、日曜日のレースです。日本時間で言えば昼間にF1のオーストラリアGPがあり、その約6時間後にFEの決勝。うまいことFIAの世界選手権同士で時間がズレて被らなくなっていますね。今回のローマ戦はいずれも予選の実況を木幡 ケンヂ、決勝はサッシャというローテーション。
 サッシャさんはなぜ予選にいないのかというと、昼間はDAZNでF1の実況をしているため。もちろん土曜日も昼間はF1の予選を担当しているわけですから短時間でDAZNとJ SPORTSをハシゴしてある意味土日で4連戦。F1の仕事終わった後にFEのフリー走行と予選の様子をある程度予習してレース実況なのでかなり大変ではないだろうか^^;

 予選、グループ予選ではA組は前日も大活躍のロビン フラインス、B組は前日の勝者・ミッチ エバンスが最速。しかしフラインスはデュエルの準々決勝でジャン エリック ベルニュに0.085秒差で敗れ、エバンスも準決勝でジェイク デニスの驚異的アタックの前に敗れました。デニスは予選全体で唯一の1分37秒台のタイムを叩き出しました。
 デュエル決勝はデニスとベルニュの戦いとなりますが、連続走行となるデニスはさすがに完璧なコンディションを2回続けて実現できなかったようで勝者はベルニュ。通算14度目のポール ポジション獲得です。そんなに獲ってたんだなあ、と改めて数字を見て感心。
 2位からデニス、アンドレ ロッテラー、エバンス、サム バード、フラインスと続きます。前日のポールシッター・ストフェル バンドーンは8位から、チームメイトのニック デ フリースはデュエルに進めず予選10位だった上に、前日の接触に関するペナルティーで3グリッド降格となってスタートは13位から。

 決勝、本日のアタック モードはなんと8分を1回というトリッキーな設定。8分間ずっと250kWで走ると確実に熱害が生じてしまうので、取得後の8分間の中で各自がいつ250kWで攻めるのか、逆から言えばいかに『アタックしないアタックモード』の時間を考えて電池やタイヤの温度を管理するのか、頭を捻ることになりそうです。終盤まで温存すると、うっかり使い切れずにペナルティーを受ける危険性も高くなります。

 スタート、後方でアレクサンダー シムズがマキシミリアン グンターに追突している気がしますが、それ以外は大きな混乱はなく上位9台はスタート順位通りに1周目を終えました。1回やらかすとさすがにみなさん2戦目は慎重ですね。

 18台が数珠繋ぎという状況の中、4周目にロッテラーがデニスをかわして2位へ。デニスはちょびちょびミスをしてはまたベルニュに詰めてましたので、やや効率の悪い走りに見えます。翌周にはエバンスもデニスを抜きました。


 後ろが争っているその隙に、ベルニュは1分45秒台だったペースを43秒台へと引き上げて後続に揺さぶりをかけます。追いかける側のロッテラーはエバンスに狙われてブロックを余儀なくされ、ベルニュにとっては美味しい展開となります。

 7周目、エバンスがロッテラーをかわし2位へ。同じころ、ターン4ではアントニオ フェリックス ダ コスタとエドアルド モルターラが接触して破片が飛び散ります。ダコスタは既に並ばれているのに内側を閉めてモルターラを壁に追いやっておりペナルティーを受けました。
 レース後、ダコスタはTwitterへの投稿で公式謝罪。「モルターラには申し訳なかった。わざとではないがもっと空間があると思ったんだ」としました。モルターラはこの接触の時はまだ無事でしたが、その後最終コーナー出口で壁にぶつけてしまい、ターン3で停止してリタイアとなりました。
 さらに8周目にはアントニオ ジョビナッツィーが何か壊れたのかコース上で止まってしまい、これが原因でSCとなりました。数台がアタックモードを使い始めていましたが、これで8分のうちいくらかが無力化されてしまいました。

 10周目、残り24分というところでリスタート。SC前に後ろを少し離そうとしていたベルニュは『飛ばし損』になってしまい、結果的にエナジー残量で1%弱エバンスに負けていました。そのため、リスタート直後のターン4であっさりとエバンスにかわされた、というかほぼ無抵抗に先に行かせた感じになりました。
 その後残り21分あたりから上位勢もアタックモードのサイクル。12周目にアタックモードに入ったフラインスが一気に2秒近くペースを上げ、14周目にベルニュとエバンスを立て続けに抜いてリーダーになります。後ろが次々とアタックに入りますがエバンスは動かず。前日に続いて他とはサイクルをズラす考え方のようでこの後3位へ後退、逆から言えばアタック無しでも3位までしか落ちませんでした。

 18周目、残り12分。リーダーのフラインスのアタックが切れ、その1周後にアタックに入っていた2位のロッテラーが「待ってました」とばかりにターン4でかわしていきます。この時点で3位のエバンスはまだアタックを使っていません。後ろのドライバーもみんなそろそろアタックが終わりそうになり、エバンスがいよいよ俺のターンに入ろうかというところでしたが、なんと残り11分、シムズがクラッシュしてしまい2度目のSCとなります。
 エバンスとすると、本来ならアタックを使うとおそらく1つ順位を下げて、4位からコース上で抜いて取り返す展開になるはずでした。しかしこれでは隊列が詰まってしまうのでアタックを取りに行くとさらに順位を下げる可能性があります。しかし残り時間を考えると、8分を使い切るにはリスタート後すぐにアタックに入るしかありません。

 残り約7分でリスタート。エバンスとしたらアタック取得までに少しでも差を広げたいので前を猛烈に煽ります。5位にはチームメイトのバードがいて、チームから指示があったのかリスタートの段階で微妙に距離を作っていて、これにより5位以降とは少し空間ができました。
 エバンスはこの周にアタックモードへ。4位のベルニュには抜かれましたが、5位のバードは絶妙に加速のタイミングを調整してエバンスを前に入れてあげたように見えました。これでエバンスは1つの順位損失で済み、SCが入らなかった場合と大差ない状況を作ることに成功します。

 エバンスは翌周にすぐベルニュを抜いて3位へ復帰。さあこれで前2台を捕まえるチャンスです。そしてここで残り5分となったので延長時間が確定、2度のSCによる合計で今日も5分15秒の追加となりました。

 エバンスは22周目にフラインス、ロッテラーを続けて抜いて残り2分半でリーダーに返り咲き。まだアタックモードが4分以上残っていますが、もう無理に250kWを使って走る必要も無いので最小限でペースだけ維持すれば連勝は目前です。昨日に続いて速い上にエナジー残量でも有利という理解不能な速さ。
 エバンスが1位に返り咲いた同じタイミング、ベルニュがフラインスを抜いて3位となると、翌周にロッテラーも抜き勢いよく2位へ。ただエナジー残量ではエバンスの方が上なので優勝はさすがに難しそうです。この後も2位争いは激しさを増していき、段々荒っぽくなってきました。
 予定の45分を使い切り、延長戦に入って残りは2分。ここでターン7での激しい順位争いで、6位を争うニック キャシディーとバードが接触。キャシディーがこの手前の全開区間で前に出ていたんですが、ブレーキでバードが軽く追突し、さらにターンの中でもう一回追突してトドメをさしました^^;

 キャシディーの車が止まって道を塞いでしまったのでSC導入となりました。このままレースが終わりかと思ったら、キャシディーが自力で現場を離脱して道が空いたので、なんと最後の1周でSC退出、リスタートとなります。

 エナジー残量的に1周ならかなり攻めることが可能で、しかも2位のベルニュはファンブーストを持っていました。しかしベルニュにはリスタート前に「ファンブーストはもう使えないからな」と釘を刺されます。残りの電力が少ない時に使用すると、規則で定められた240~250kWの出力が出せずに規定違反になる可能性があるので、最後の最後には使わない判断を既にチーム側は下していたようです。
 とはいえ1周のレースでまだ何が起きるか分からないわけですが、エバンスはミスなくきっちりコントロール。そのままエバンスが2日連続のトップ チェッカーとなりました。いやあ、強い強い。
エバンスの右隣りにいる少し顔の長いおじさんが
ジャガーのチーム代表・ジェイムス バークレー


 2位からベルニュ、フラインス、ロッテラー、バンドーンのトップ5。最大の驚きはオリバー ターベイで、普通に走ったら競争力が足りないと分かっているNIO 333は、最初から後方で離れて節約走行しておくギャンブル走行。結果、2度のSC導入により周囲より多くのエナジーを残して同じ場所からリスタートすることができ、終盤にこの残量差を活かして次々と前の車をかわし、最終的になんと7位になりました。弱者の兵法ですな。

 バードは結局接触の影響でリタイアしてしまい、走ってても正直キャシディーを押してクラッシュさせたのはレーシング インシデントにしてもちょっと後味が悪かったところですが、ジャガーの車は土曜日の走り出しからとりわけレースにおける速さの点で完璧でした。2連戦でその優位性を誰も覆すことができなかった、実力にふさわしいエバンスの連勝だったと思います。SCが出た時は詰んだかと思いましたけど、バードのアシストが効きました。
 2連勝でエバンスはさぞかし選手権で圧倒的有利に立っただろうと思いきや、最初の3戦で1点しか獲っていなかったので、連勝しても彼は51点で選手権4位。この2連戦を終えて1位に浮上したのは60点のベルニュで、これを2点差でフラインス、4点差でバンドーンが追っています。バードは車は良かったのに予選での運と接触の影響で2戦で10点しか獲れずかなり損。7位で6点を獲ったターベイはなんと日産の2人より選手権順位が上になりました
(;・∀・)
 エバンスが圧倒的に速かった2連戦ではありましたが、スタートからずっと逃げているわけではなくパズルを解くように1つずつ進めて行って、「あれ?気づいたらもうピース全部埋まってる!?」みたいな展開で、見ていてこっちも常に頭を使うので飽きない50分×2戦でした。次戦は4月30日のモナコです。
 

 
 ところで今回、初めてフォーミュラE公式サイトにあるライブ タイミングを見ながら観戦したんですが、めちゃくちゃ見やすくて感動しました。

 順位、1位からのタイム差、各順位のタイム差、セクター毎のタイムにファステストの保有者、アタックモードの残り時間、と必要な情報が全部まとまっていて、知れないのはエナジー残量ぐらい。レース コントロールのメッセージも表示されるし、表示を切り替えると全車の走行位置も見れるという優れもの。
 これを会員登録も不要、ブラウザで開くだけの状態で自由に見れるとは恐れ入りました。なぜもっと早く気付かなかったのか後悔したほどです。遅延も全然無いので、衛星放送で情報がやってくる日本ではむしろライブタイミングの情報が6秒ぐらい早いですが、そのぐらいではネタバレするわけでもないので、ホント何の文句も無いページです。

コメント

okayplayer さんの投稿…
いやー、ローマの2連戦はエバンス祭りでしたね!
かっちょいい勝ち方でした〜

ところでジャガーのチーム代表っていつもアクション映画の悪役ボス顔だなって思ってます
ジャガーの人が兄で先にやられて、次回作で弟のナッツィが立ちはだかってまたやられるみたいな

…完全にダイハードやないかい!
SCfromLA さんの投稿…
>okayplayerさん

 すごく印象に残る顔立ちだなあと思ったら悪役だったんですね~、っておい! 笑