FE 第4戦 ローマ

ABB FIA Formula E World Championship
2022 Rome E-Prix
Circuito Cittadino dell'EUR 3.385km  
45minutes+1Lap(50分15秒に延長)
winner:Mitch Evans(Jaguar TCS Racing/Jaguar I-Type 5)

 開催できないイベントが発生して日程の穴埋めができなかったため、約2か月ぶりとなるフォーミュラE、第4戦・5戦はローマでの2連戦です。最初の予定では1戦だけでしたが、減ったレースを埋めるために連戦になりました。昨年同様、ものすごく跳ねたり市街地の割にコントロール ラインの直後からすんごい下り坂があったり、異様に長い全開区間があったりとクレイジーなトラックです。

 このローマを前に、フォーミュラEから来シーズンのパワートレイン製造者として登録されたメーカーが正式に発表され、これにあわせる形でその他の体制もある程度見えて来たようです。
 製造者として参戦するのはDS オートモビルズ、ジャガー、マヒンドラ、マセラティ―、日産、NIO 333、ポルシェ AG の計7つ。このうち5メーカーは今季と変わらない体制ですが、DSは体制が変わりそうです。
 The Raceによれば、DSは財政難に見舞われてチームの将来が不透明なテチーターと別れ、来季からドラゴン/ペンスキーと提携して参戦することになる見通しとのこと。また、新規参戦のマセラティ―はベンチュリーと組み、組織としては現状の体制をほぼ引き継ぐもののチーム名からベンチュリーの名前は消滅することになるようです。
 残るチームはどこかしらのメーカーと提携して供給を受ける形になり、既にエンビジョンがジャガーと組むことが発表されています。アンドレッティーはポルシェと、そして現在のメルセデスEQは、チーム運営をマクラーレンが引き継いだ上で日産からパワートレインの供給を受けると専らの噂。テチーターはDSと離れてしまうので別の相棒が必要ですが、その前にチームを引き渡す新しい投資家が必要で、未だに状況が分かりません。現時点での状況は

DS ドラゴン / ペンスキー
マヒンドラ
NIO333
ジャガー
エンビジョン - ジャガー
ポルシェ
アンドレッティー - ポルシェ
マセラティ―(元ベンチュリー/DSと基本的に同じ車)
日産 e.dams
マクラーレン? - 日産(元メルセデスEQ)
テチーター? - 不明

となります。
※4月13日追記 日産はe.damsの株式を取得して傘下に収めることを発表しました

 さてレースの方に行きましょう、グループ予選ではA組でジェイク デニス、B組はアントニオ フェリックス ダ コスタが最速でしたが、デニスはデュエル予選の準々決勝で、ダコスタも準決勝で敗れてしまいます。
 デュエルの決勝はB組2位のロビン フラインスと、同じくB組で3位のストフェル バンドーンの対戦。フラインスはいきなりターン3の入り口ですっ飛びかけて、ギリギリこらえたもののその後も全般的にズルズルとした走りになり、バンドーンがPPを獲得しました。
 2人とも準決勝までよりもタイムが少し落ちており、やはりデュエルに入って 攻める→休憩→またすぐ攻める→休憩、というサイクルで、タイヤを別のセットに入れ替えるにしても内圧と温度を適正なところへ持って行くのが難しそうだなという印象を受けました。メルセデスEQの車はバンプでの跳ね方が結構大きいのでそもそもがちょっと扱いにくそうです。どちらかといえばエンビジョンの方がレースでは安定して速そうに見えます。
 予選順位はバンドーン、フラインス、ニック デ フリース、アントニオ フェリックス ダ コスタ、ジャン エリック ベルニュ、ジェイク デニスのトップ6。前戦で優勝したパスカル ベアラインがその後ろの7位です。

 そして決勝、スタート位置はターン3と4の間に設置されています。昨年は2連戦が2戦とも雨になったのでいずれもSCスタートになってグリッドからスタートしてないんですね。最初に左の90度のターンを曲がったらその先はバンプがいっぱいある全開区間。並んで走ったらヤバそうです。アタック モードの起動ゾーンはターン15・マルコーニ ヘアピンと呼ばれる180度ぐるっと回るターンの大外にあり、使用条件は4分×2回。

 スタートではバンドーンが鬼ブロックでフラインスを抑えて1位を確保。その先はさすがに並ぶのが危ないと察して多くが1列になりましたが、次のブレーキ位置であるターン7に向けてはやはりみんな暴れまくります。結果、10位あたりの争いでオリバー ローランドがエドアルド モルターラに押されてターン7を曲がれず横を向き、後続車両がここに詰まって4台ほどが一時身動きがとれなくなりました。
うごけまへん・・・

 この渋滞はローランドが復帰できたので解消されましたが、この事故渋滞にハマった1台・マキシミリアン グンターがターン9を曲がり切れず真っすぐ突っ込んで停止。こちらは復帰が叶わずオフィシャル車両が救援に入り、これによりFCYが宣告、後にSC導入となりました。渋滞にハマった人はとりあえず隊列に追いついてレースを仕切り直すことができます。

 残り34分30秒というところでリスタート。バンドーンに対して後続がきっちりついて行きます。フラインスに少し余裕が見える雰囲気。
 5分後、上位勢で最初に4位のダコスタがアタックモードを使用。路面に描かれた検知開始点よりまるまる車1台分内側を通っていましたがきちんと作動しており、どうやら実際のセンサーはもうちょっと広範囲で検知してくれている様子。練習走行の段階でどこまでセーフか調べてたんでしょうね。ダコスタは順位を1つ下げただけで済みます。
 同じころ、6周目のターン4でフラインスがバンドーンをかわしリーダーに。抜かれたバンドーンはこの周にアタックモードを使い、後続のデフリース、ベルニュも入って上位勢のサイクルが進みます。これでダコスタがアンダーカットする形で2位へ。
 フラインスはペースを上げてダコスタに抜かれないように距離を保ち、翌周にアタックモードを順位を下げることなく取得。この後1回目のサイクルを終えて、フラインス、バンドーン、デフリース、ベルニュ、デニスのトップ5。9位スタートのミッチ エバンスが少し使用時期をずらしてうまく6位に浮上し、逆にダコスタは抜かれる際に争いすぎて失速したり、デニスに押されたりして7位へ後退してしまいました。


 残り19分、今度はリーダーのフラインスが先手を打って2回目のアタック。抜かれずにバンドーンの前で戻る考えだったと思いますが僅かに足りませんでした。走行ラインへ合流する際にバンドーンに詰まり、少しアクセルを戻すことになって損をしました。翌周のターン4の入り口で抜き返しますが、少し余分にエナジーを使ってしまったことになります。こういう些細なことが結構響くのがこのレースの難しさです。
 バンドーンは翌周にアタックを取得するとファステストを記録してフラインスに接近。そしてフラインスのアタックモードが切れた残り15分、ターン7までの全開区間であっさりとリードを奪い返しました。本日4度目のリード チェンジ。
 ただ、そんな見た目上の1位争いに気を取られているだけでは全体像を把握できないのがフォーミュラE。エバンスが着実に順位を上げています。後ろからアタックモードのベルニュが接近すると、逆に自分が前のデフリースを抜きにいくことで道幅を無くしてベルニュを封じ込めた上、アタックの脅威もデフリースに押し付ける抜群のレース運びを見せるなど切れ味抜群、2回目のアタックを使うと気付けばトップ2の真後ろに。

 バンドーンはエナジー残量が気になるのか抜いたフラインスを引き離せず、残り11分・一瞬のリフト&コーストの隙をつかれて再びフラインスが前に出ます。5度目のリードチェンジ、全部この2人の間で起こっています。メルセデスはディルイーヤの2戦目でも同じように決勝でのペースに苦しんでいたので、何か完ぺきではない要素を抱えているようです。

 こうしてバンドーンとフラインスが2台で争うことはエバンスには好材料となり、遅れてアタックモードに入っていたエバンスが16周目にバンドーン、17周目にフラインスと立て続けに抜いて残り10分でリーダーになりました。たまにこういうパターンで、「速いと思ったら明らかにエナジー足りない突撃だった」みたいなことがありますが、エバンスはこれだけ順位を上げて来た中でも残量も多く残しています。車内にピカチュウでも積んでるんじゃないでしょうか。


 さらにエバンスへの追い風は続き、デニスが『残量なんて最後にどうにかしたるわい』とばかりに攻めまくって一時2位へと浮上。この後結局マネージメントに入って抜かれていきましたが、こうした順位変動は前を走る人間にとってとてもありがたい防壁です。それにしてもあまりに無謀な消費の仕方だった気がしますが、1周計算を間違えたのでは・・・デニスは結局13位となり、チームメイトのオリバー アスキューの目の前まで落っこちました。

 レースは予定の45分を使い切り、FCY/SC導入に伴って追加された5分15秒の延長戦へ。エバンスはライバルに対して余分に持っていたエナジーをペースに転換させて2位のバンドーンを5秒以上ぶっちぎってしまいました。もう画面に映りません。2位からは6台が数珠繋ぎ。

 エバンスはわざとペースを落として残り時間が0になったのを確認してコントロールラインを通過して最終周に入り、結局ぶっちぎりすぎてエナジーを3%も残してトップでチェッカー。昨年は勝てなかったので、シーズン6のメキシコ以来となる通算3勝目。
 2位争いは一時4位に落ちたフラインスがそこから持ち直して一抜けし2位、バンドーンが3位となりました。ベルニュ、バードのトップ5。バードは予選で邪魔されまくって13位からのスタート、なおかつスタート直後の混戦でウイングもだいぶ壊れていましたが、ジャガーの完成度は高かったようでしたたかに順位を上げました。こういう強さがバードの持ち味ですね。

 前戦ではポルシェが戦略的に残り時間ギリギリでコントロールラインを通過して、ライバルが想定していなかった周回数になってしまい混乱を呼びました。今回もエバンスがもう1周するのかどうか微妙なタイミングだったので、さすがに各陣営はやや警戒してエナジーに余力をもたせていたとみられ、いつものように1%未満の残量で戻って来る人は少な目でした。
 2位になったフラインスはそんな中でも最後にやや積極的に使っていたので、チームとして早めの段階で「たぶんエバンスは余分に走らないだろう」と見越してリスクを採ったのではないかと思いました。

 メルセデスは結局デフリースが最終的には何かトラブルがあったのかピットに向かうことになり、バンドーンの3位だけが入賞と予選からすると不本意な結果だったと思います。開幕戦では異様に強かったことを思うとどうしたんだろうか、というところですが、The Raceのリポートによれば、彼らの苦戦の要因には新しい予選制度があるようです。

 昨年は基本的に選手権上位のドライバーは予選で下位に沈む可能性が高く、彼らも後方スタートが多いシーズンでした。チャンピオンのデフリースも予選で13位以下からスタートしたレースが15戦中10戦。メルセデスは両社とも平均スタート順位が14位台でした。こうした場合、決勝では自分よりペースの遅い周囲に合わせてマネージメントしつつ、後半勝負にすることが多くなります。
 一方で、そうした条件で自分たちが上位でスタートすると、周囲にいるライバルはやや競争力で劣る中団~下位チームであることも少なくありません。この場合は比較的エナジーを残しつつレースをリードしやすく、アタックモードの戦略も比較的立てやすくなります。
 ところが、今年は予選制度が変わって、速い人が前に来る、という当たり前のことが起こりやすくなり、ペースを落とせば追われる、逃げればエナジーを使う、アタックモードのタイミングを間違えると順位を下げて効率が下がる、という、これまた当たり前のことが起こりやすくなっています。
♪電費のために~アクセル戻すと~抜かれる!当たり前体操~
みたいなことですね。このあたりに対するチームとしての知見だったり、場面場面での状況判断という点で、まだチームはうまく対応しきれていない部分があるようです。

 一方でここまでやや苦戦していたジャガーはこのレースに向けて気合いを入れ直してシミュレーションに注力し、その結果が表れた模様。エバンスは前の車を抜くべきタイミングで確実に一発で仕留めたことを勝因として挙げており、9位スタートでありながら可能な限り想定通りのエナジー管理で走れたのは非常に大きかったと思います。
 1人だけで45分を走る場合の完璧なエナジー管理のシミュレーションがあったとしたら、実際のレース環境での他のドライバーとの争いは、そのシミュレーションの想定から使用料を逸脱させてしまう無駄な出来事ばかり。
 ある意味でフォーミュラEの争いは、72打で18ホールを回るゴルフにおいて、いかにボギーを減らしてパーに近い結果で回り切るか、というような『マイナスを減らす戦い』という側面が他のレースよりも強いかなと思います。
 路面条件も変われば、2日で3セットしか使えないタイヤの管理の問題もありますが、基本的な部分で効率よく組み立てられたシミュレートのデータ、しかも実際にレースで結果を残したものは翌日にも大きな武器なので、日曜日の第5戦もジャガーに期待大です(←ジャガー推しの人)


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