FORMULA 1 HEINEKEN AUSTRALIAN GRAND PRIX 2022
Albert Park Circuit 5.278km×58Laps=306.124km
winner:Charles Leclerc(Scuderia Ferrari/Ferrari F1-75)
F1第3戦はオーストラリア。思い返せば2年前の2020年、中国で発見されたCOVID-19がヨーロッパへと広まり始め、オーストラリアへ旅立ったF1の関係者はどうなんだ、という中で開催直前に関係者の中から陽性者が出てしまい、金曜日のフリー走行を直前にして中止が決断されました。他国でも一気に陽性者が増えて、世界が大きな転換点を迎えることになる、大ごとにならなければいいなという思いが打ち砕かれた瞬間だったと思います。
あれから2年、帰って来たF1と観客。サーキットは改修工事が行われて再舗装と一部ターンの変更が行われました。特に影響が大きいのが、従来は第3シケインと言える存在だったターン9、10が無くなってほぼ直線と同義の緩やかな曲線になったこと。その手前にあったターン6も高速化されました。これによって平均速度が大きく向上し、全長は25m短縮。個人的にはシケインがあった方が好みでした^^;
DRSゾーンは4か所の予定でしたが、うち1つがこの元シケイン部分でした。しかし、緩やかとはいえ曲がっていて壁に囲まれている地点にDRSは危ない、という意見が出て土曜日から急きょここのゾーンは廃止に。ところがこの箇所は280km/hを超えるような高速区間なので、DRSを使わないと車両によってはポーポイズ現象の発生速度域にかかってしまいます。とりわけ予選では影響が大きいので、急な変更にチーム側もセッティングの調整を迫られました。
また、タイヤの設定が変則的で、柔らかい側からC5、C3、C2とソフトとミディアムが1つ飛ばし。C4ではC3とあまり差が無いと予想された、というのが主な理由だそうですが、Q2最速タイヤでのスタート義務が無いので、レースで摩耗しまくって文句を言われる可能性が低い、というのは攻めた設定に影響している気がします。
このレースから、開幕2連戦をCOVID-19の陽性確認により欠場したセバスチャン ベッテルがようやく参戦。ところがベッテルは金曜日のFP1終了前に車が壊れて止まってしまい、FP2は走行できず。そしてFP3ではクラッシュしてしまいました。FP3ではランス ストロールもクラッシュしたため、アストン マーティンは2台とも予選開始時にまだ修復作業という厳しい状態に陥りました。
なおベッテルはFP1で車が止まった後、なんやかんやとマーシャルとやり取りした末に、コース上をスクーターで走ってピットへ戻る、という行動に出てしまって規則違反。罰金も食らってしまいました。
予選、Q1ではせっかく車を直したストロールがコースに出ますが、ニコラス ラティフィーと接触して特にラティフィー車に大ダメージ。ストロールもせっかく直してもらった車をまた壊してしまいました。ウイリアムズさんは請求書をローレンス ストロール宛で作成しておくと良いでしょうw
ストロールが後ろから来たのでラティフィーが道を譲ったものの、ストロールもウォームアップでアタックしていないと分かると「だったら俺が前出るわ」と抜き返そうとし、しかしまさかさっき譲ってくれた人が抜き返してくるとは思っていなかったストロールはミラーを見ておらずガッシャーン。
ストロールの過失が大きいということで彼に3グリッド降格のペナルティーが課せられますが、譲った数秒後に抜き返す動きが予測しにくいものであったのも確かだと思うので、エンジニア側を含めウイリアムズ側ももう少し状況判断をきっちりすべきだったように思いました。
これにより発生した赤旗で本来なら修理が間に合わないはずだったベッテルの車の修理が間に合ってしまい、ストロールの犠牲によってベッテルが1アタックできるという妙なことになりましたが、そもそもロクにこの週末走れていない状態ではお手上げで18位タイム。アストンマーティンは修理代ばっかりかさんでしまいます。
さらにQ1終了時にはアレクサンダー アルボンが止まってしまい、なんと原因がガス欠だったようで燃料サンプルを採取できないため予選失格扱いとなりました。色々と妙なことが起こるQ1でした。
その後Q2ではセルヒオ ペレスが最速を記録し、フェラーリとレッド ブルの僅差の争いが今週も展開されますが、Q3ではシャルル ルクレールが唯一の1分17秒台のタイムを記録しPPを獲得しました。マックス フェルスタッペン、ペレス、ランド ノリス、ジョージ ラッセル、ルイス ハミルトンのトップ6。開幕から2戦は箸にも棒にもかからなかったマクラーレンが今週は競争力をやや取り戻しています。
フェラーリはカルロス サインツも本来なら上位に来るはずでしたが、ちょうど彼が1回目のアタックを完了しようかという直前にフェルナンド アロンソがクラッシュし、サインツがコントロール ラインを通過する1秒ほど前にセッションが赤旗になってしまいました。2回目のアタックではサインツは失敗。最低でも2列目を期待した中でのまさかの予選9位でした。
アロンソはかなり好タイムが期待できるアタックでしたが、突然油圧系統が壊れてターンを曲がれなくなりクラッシュ。油圧系が壊れたのでパワステが効かなくなり、シフトダウンもできないなかでぶつけないように必死にステアリングを切ろうとしたので、手を離さないうちにぶつかってしまって少し手を傷めたようです。
決勝、大半がミディアムでのスタートを選択。サインツとアロンソがハードを選びました。スタートではペレスがやや良いスタートでしたが、フェルスタッペンに遠慮して引いたらその隙をハミルトンに衝かれました。ハミルトンが2台抜きで3位浮上。
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| 私にとって『F1の開幕』というとこの場面という印象が強いです |
中団ではサインツがスタートで大失敗して大量に順位を吐き出してしまうと、2周目のターン9でちょっと無理に外から抜こうとして完全にラインを外れて飛び出し、ターン10内側の芝生を踏んで自滅。高速コーナーな上に多くの車が近くを走っている状況でコーナーをカットした車が横からコースに飛び込んでくる危険な場面でしたが、幸い誰にも当たりませんでした。これでSC導入。サインツはあの赤旗のタイミングが憎くて仕方ないレースとなりました。
7周目にリスタート、ルクレールとフェルスタッペンがリスタートで駆け引きしているのを見るのは既に今年3回目かな?フェルスタッペンは抜けはしませんが真後ろについて行きます。一方3位のハミルトンは残念ながらついて行けず、この後ペレスに抜かれて4位へ。
11周目あたりからはルクレールが1分23秒台のタイムを繰り出す一方、フェルスタッペンは24秒台で毎周1秒近く引き離し始めます。そのまま徐々に離された末、フェルスタッペンは8秒以上の差をつけられて18周目にピットへ。
これで暫定2位はペレスですが、意外なことにハミルトンがペレスの真後ろ。一旦は3秒近くまで離されたのでそのまま置いて行かれるものだと思っていたんですが、スティント中盤以降ハミルトンが盛り返してむしろ追い詰めている状況です。ペレスは20周を終えて逃げるようにピットへ。
解説によると多くのドライバーはフロントの摩耗を気にしているのに対し、ハミルトンはリアを気にしていた可能性がある模様。メルセデスはバーレーンで猛烈にタイヤが摩耗して苦しみましたがあのコースはリアが厳しい特性ですから、リアが苦しい車両特性とフロントが厳しいコースでつり合いが少しとれているのかもしれません。これって2013年以前のメルセデスが抱えていた課題でしたが、規則が変わってまたこっちの特性に先祖返りしてしまったんでしょうか。この先もちょっと気にして観戦したいポイントです。
フェルスタッペンはタイヤを替えた後に1分23秒1の最速タイムで走りますが、ルクレールは古いタイヤでも24秒0を記録。余裕をもって22周終わりにピットに入りました。ここまでは盤石すぎるレースです。
同じ周にはハミルトンも入ってペレスをオーバーカットしますが、タイヤに熱が入り切らないうちにターン9でペレスに大外刈りされてしまいました。レッド ブルの方が直線が速い上に、メルセデスはこの全開区間でたぶんどの車両よりも酷くポーポイズが起きますから守るのは至難の業でした。
抜かれたハミルトンはすぐさまターン11で抜き返そうかという動きに出ましたが、その瞬間にSC導入のお知らせ。ベッテルがターン4の出口でズラ踏んで自爆しました。あ~、また修理代が・・・
このSCで得したのがまだピットに入っていなかったラッセルで、ここでピットに入ったことでペレスとハミルトンをまとめて抜いて3位へ。ハードでスタートしたアロンソは、ここでミディアムに換えても全然距離が足りないので泣く泣くステイ アウト。リスタート順位はルクレール、フェルスタッペン、ラッセル、アロンソ、ペレス、ハミルトン、ケビン マグヌッセンとなります。マグヌッセンもハードで出た組なのでこのあとは後続の蓋になりそうです。
27周目にリスタート、ルクレールは最終コーナーでドアンダーを出してしまいフェルスタッペンが急激に近づいてターン1で攻め込みますが、内側をがっちり固めて順位を守りました。結果的にフェルスタッペンにとってこれが最後の攻撃機会でした。。。
一方3位争い。ラッキー3位のラッセルはエンジニアのリカルド ムスコーニから「タイヤのマネージメントが最重要だぞ。ペレスを後ろにとどめるのが難しいなら先に行かせろよ」と言われ「いらん、俺はそんなことは聞きたくない」と言って突っぱねました。実際ややタイヤを使って抑えている様子。
なんとかラインを変えてペレスの前で一生懸命粘っていましたが、36周目のターン11でとうとうペレスがかわしました。さすがに抑え続けるのは無理なので最後は諦めて考えを切り替えた様子。それでもここでタイヤを使ってしまったので、この先ハミルトンとのタイヤ管理能力の差が問われそうです。
39周目、既に関心が薄れていた優勝争いでしたが2位のフェルスタッペンに問題発生。ターン1を通過している最中にいきなり車の力がパタリ。そのままコース脇に車を停めてしまいました。開幕から3戦で2度目のPU関係の不具合発生とみられ、レッドブルPUの信頼性が心配になってきます。これでVSC発令。
ハードスタート組のアロンソはこの機会を逃すまいとピットへ。リスタートからたかだか13周ではそれほど後続を引き離せていないので13位まで後退しますが、同じくハード組のマグヌッセンが予想通り渋滞作りに励んでくれていたため、7位のアルボンまで6秒ほどの差。抜いていければ入賞の可能性があります。そのマグヌッセンもピットに入りましたが、アルボンだけはここでもステイアウトしてなおレース開始時のハードを履き続けます。
VSC解除後はアロンソが渋滞にハマっている以外にそれほど見どころも無くレースは残り10周、ペレスに15秒の差を付けたルクレールは「最終周にファステスト狙おうぜ」となんだか一人だけ別世界。そもそも今の状況では誰もあなたが今持っているファステストを抜けませんので必要ございませんw
一方熱いのは9位争いで、ストロールが後続を抑え込んでいます。ストロールはハードでスタートし、最初のSC中にミディアムを1周だけ履いてまたハードへ。たぶん当初目的はこのハードでの実質ノーピット作戦だったと思いますが、2回目のSC時にまたハードへ交換していました。直線だけは速いAMR22で後続を抑え込みます。
ただ、ストロールには直線での蛇行に対して5秒加算のペナルティーが課せられており、実質的な順位で言えば入賞は厳しい状況。これに苛立ったのは隊列のいちばん後ろにいたアロンソで「誰だあのアルファタウリ、何で抜かねえんだよ」と、ストロールを抜けず渋滞を解消できないアルファタウリの人=ピエール ガスリーがなぜか怒りの矛先になりました。いや、直線が速くて抜けないんすよ^^;
言われて尻に火が付いたわけではないでしょうが51周目にようやくガスリーはストロールをかわします。ダムが決壊したストロールはこの後抜かれて行って最終的には12位でした。ところが、肝心のアロンソはというとミディアムが摩耗して酷いペースになっており、順位を上げるどころから後続に抜かれてしまって、結局もう1回ピットに入る羽目に。乱気流を大量に浴びた状態でのミディアムはボロボロでした。アロンソはまさかの17位で完走者ではビリでした。
ルクレールは「集団に詰まる前にファステスト出した方が良いかな」なんて聞いて「誰も更新でけへんから出さんでええわい」とエンジニアにつっこまれていたのに、それでもやっぱり最終周にファステストを出して優勝。開幕戦に続く今季2度目のポール トゥー ウイン。2位からペレス、ラッセル、ハミルトン、ノリス、ダニエル リキャードとなりました。マクラーレン、全然目立たないけどリキャードの母国と好相性でした。
ハミルトンはラッセルに追いついたものの抜けはせずに後輩にSCの運で敗れた形。映像を見ていると、短い全開区間ですらわざわざラインを変えているので熱害が生じているのではないかと思いましたが、レース後のコメントによればやはりPUの温度が上昇して戦えなかったとのこと。1位でぶっちぎれるわけではないことが分かっているのに冷却不足になるってのは基本的に設定を間違えているのでは・・・
そして、アルボンは結局最後の1周だけソフトを履いて周 冠宇との争いを制し10位入賞。予選失格でビリからまさかの結果です。結果論ですが、アロンソもアルボンと同様の戦略が正解だったと思われます。アロンソはVSC中にピットに入る直前、アルボンの6秒ほど前方を走っていました。
真後ろにマクラーレンの2台がいたので、VSC解除後はこれに抜かれてそれなりに時間を失ったかもしれませんが、それでもアルボンの前方でさえあれば10位にはなれていたはずなので、VSCに誘惑されず引っ張った方が正解だったことになります。ウイリアムズは捨て身の作戦だったと思いますが見事な逆転でした。
個人的には市街地は市街地なりのストップ&ゴー要素がある方が好きなので、高速化されてしまったアルバート パークはちょっと好みと合わなかったのが正直なところ。ルクレールが圧倒した上にサインツが早々に脱落して上位争いに特に何も起きようがなかったのも映像的には不運でしたね。ちなみに、このレース後に野球情報を確認したら『佐々木 朗希が13連続奪三振。完全試合継続中』の見出しを見て、F1の記憶が吹っ飛びましたw
次戦は2週間後のイモラ。緊急避難的にカレンダーに戻って来たエミリア ロマーニャGPですが、2025年まで開催契約が延長されて気づいたら常連開催地の仲間に入っていましたw





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