NCS 第4戦 フェニックス

NASCAR Cup Series
Ruoff Mortgage 500k
Phoenix Raceway 1mile×312Laps(60/125/127)=312miles
competition caution:Lap 25
winner:Chase Briscoe(Stewart-Haas Racing/Mahindra Tractors Ford Mustang)

 NASCAR Cup Series、第4戦はフェニックス。ここまで2.5マイルのデイトナ、2マイルのフォンタナ、1.5マイルのラスベガスと来て、1マイルのフェニックスが今回の舞台。ちなみにこの後も1.54マイルのアトランタ、ロード コースのCoTA、0.75マイルのリッチモンド、とバラバラのトラックを転戦していきます。

 Next Gen Carはホイールの大径化にともなってブレーキも大きくなったのでショート トラックでは相対的に速いかなと思ったら、予選タイムでようやくエクスフィニティ― シリーズを上回りました。PPはライアン ブレイニー、以下デニー ハムリン、ウイリアム バイロン、クリストファー ベル、エリック アルミローラの順。
 予選タイムは昨年のカップ シリーズの最終戦よりは遅いですが、馬力もダウンフォースも下げてるのでまあこんなもんでしょうかね。ブレーキの容量が大きくなっているのでレースではドライバーがより積極的に攻めることができる、はずです。

 その併催のエクスフィニティ―ではノア グレッグソンが200周のうち114周をリードする圧巻の走り。ステージ1では0.06秒差でトレバー ベインに敗れて2位でしたが、ステージ2、そしてレースと獲って通算6勝目。開幕から4戦連続トップ3と絶好調です。グレッグソン、良いドライバーだと思うんだけどシートが空いて無いのが勿体ない感じですねえ。

 そしてカップ シリーズはやや曇り空の中で決勝スタート、まずはブレイニーがさっさと後続を引き離します。カイル ブッシュはスタート直後にいきなりドッグ レッグを大幅カット、調子も良さそうで11位スタートから次々と順位を上げていきます。今日は珍しいデウォルトのスキームなので、実況が「カイルブッシュ」って言っても「え、カイルどこ?」ってなりましたw おそらくカイルにデウォルトが付くのは初めてですね。
1台だけ遥か内側にいる黄色カイル

 ブレイニーはハムリンに2秒差をつけて独走でコンペティション コーションの25周に到達。カイルは5位まで上げる一方、ベルは車がタイトなのか11位まで転がり落ちました。チェイス ブリスコーが4位で今週もちょっと面白そうな位置です。

 ピットでは大波乱。「ここはピットが曲がっているから速度違反が多い」と放送席で話題にしているぐらいなのに、ブレイニーとハムリンが両方とも速度違反。ハムリンはブレイニーのバンパーにコツンとやってしまったようですが、押したせいで巻き添え食ったのか、そもそもお互いに速すぎたのか謎に。さらにカイルはエンストして順位を下げます。
 というわけでリスタートは唯一の2輪交換を選んだジョーイ ロガーノと6位スタートから先頭でピットを出ただったブリスコーの1列目、さっきまでのレースは何だったのかという状態で始まり、ブリスコーがリードを奪います。
 レースはそのまま落ち着いた展開を見せましたが、46周目・現地コマーシャル中にコリー ラジョーイがバリアに派手にぶつかり、ホイールが壊れてタイヤだけが脱輪しコーション。車の動きからすると先にナットが緩んだか何かで制御が効かずに壁に突っ込んだ感じです。タイヤをトラック上に転がしたので、ラジョーイ陣営はクルー チーフを含めた3人のクルーに4戦出場停止のペナルティーが課されます。
 ステージは残り10周ほどなので上位勢はステイ アウト。53周目にブリスコーとバイロンの1列目でリスタートしますが、バイロンは内側のリスタートからドッグレッグをカットしてそのままあっさりリーダーに。外が有利と読んだブリスコーでしたがドッグレッグは偉大でした。そのままステージ1はバイロンが勝ちました。60周しかないステージ1はあっという間に終わります。


 ステージ間コーションで各車ピットへ、チェイス エリオットが2つ順位を上げて先頭、ブリスコー、バイロンの順で出ますが、先ほどのコーションでピットに入った組が4台ステイアウト。ステージ2はブレイニーとカイルの1列目となりました。
イェェェェーーーーーイ!!!
とばかりにみんなショートカット


 ブレイニーはクリーン エアーを得てスタート直後と同様に快走、カイルも2位を維持していましたが79周目にチェイスにかわされます。以降の順位は各所でバトルが展開されてスタンドで観戦するぶんには好きなところを見ていれば常時楽しそうです。
 リーダーのブレイニーはステージ開始から30周まではチェイスとの差を2秒強で維持していましたが、ステアリングに振動を感じはじめたようでここから差が縮小。その後ろでは砂漠王・ケビン ハービックが16位スタートから4位まで浮上しバイロンを追い詰めています。
 車と格闘している場面が昨年は非常に多く感じられたハービックですが、今日はすごく楽に乗っているように見えます。彼はフェニックスで現在17戦連続のトップ10フィニッシュを継続しており、今日も10位以内に入ると単一トラックでの連続トップ10記録で歴代最長タイとなります。

 リーダー争い、チェイスは1周あたりにすれば0.07秒ほどのペース差というあるのかないのか分からんぐらいの数字ですが着実にブレイニーに迫り、周回遅れも挟みつついよいよ背後につきました。が、119周目、また現地コマーシャル中にコーションが発生。ベルがターン2で単独スピンしました。
 ブレイニーにとっては絶好のタイミングでのコーションで全車ピットへ。しかしここでチェイスがまたもやピットで順位を上げることに成功。126周目・ステージ残り60周でのリスタートとなり、そのままリードを守ります。

 チェイスに続くのはブレイニー、バイロン、ハービック、カイル ラーソンでしたが、砂漠王は引き続きゴキゲンで先ほどのスティントで仕留め損ねたバイロンを今回は早めに仕留めついに3位へ。
 リーダー争いでは132周目にブレイニーがチェイスをかわしてリードを奪還。抜かれたチェイスに今度はハービックが迫ります。昨年の因縁はきれいさっぱり旧型車とともに捨て去って好バトルを期待したいところでしたが、案外ハービックは近寄れずこの後レースは膠着。
 ロング ランではどうやらチェイスに分があるようで、ここもステージ終盤に向けてチェイスがじわじわとブレイニーに重圧。多少焦ったか、ブレイニーは周回遅れを抜く際に危うく自爆しかけてますます差が無くなります。
 これまで64周以上リードしたレースでは一度も勝ったことが無い、という若干不吉なデータを放送席から引っ張り出されたブレイニーですが、なんとかチェイスから逃げ切ってステージ2を制しました。


 コーションで全車ピットへ向かい、チェイスはちょっと発進を慌てすぎて危うく給油缶ごと連れていきかけますがまたも先頭を確保、ハービック、タイラー レディックが続きます。ブレイニーは発進にやや手間取った様子で4位へ一歩後退。

 そしてここで改めてハービックの記録が話題に。引退したドライバーのイラストが用意されていたことに笑ってしまいましたが、なんかジミー ジョンソンだけはIT企業で製品発表するCEOみたいな雰囲気。今はインディーカーで現役なために、代表的な LOWE's のスーツなんかを模すことができなかったんでしょうかね?
 ちなみにデイル アーンハートとリチャード ペティーはいずれもノース ウィルクスボロでの記録。ここは1949年~1996年にレースが開催されていた0.625マイルのショート トラック。その後閉鎖されたんですが、2021年になって再開を目指す話が出始めており、将来的にカップシリーズが帰って来る可能性があるのかもしれません。

 さてレースに戻りましょう。ファイナル ステージ、チェイスとハービックの1列目、ハービックが内側でのリスタート。ところが砂漠王はリスタートに大失敗、内側の後続はドッグレッグにみんな突っ込んでいきますが、そんな姿を横目に外側の2列目からリスタートしたレディックが2位へと浮上します。
 ここからはチェイス、レディック、ブレイニーの3人が等間隔でのロングラン。これはしばらくレースは動かないかな、と思ってちょうどこの文節を書き始めたその瞬間(レースを見ながら合間を見て下書きをしている)、マーティン トゥルーエックス ジュニアがターン2でクラッシュ。先にタイヤが壊れたようなぶつかり方で一発アウトとなりました。これではコマーシャル中にコーションになるFOXを笑えないw
かなり痛そうなぶつかり方


 全車ピットに入り、チェイスは先頭でピットを出ますが、2位~4位はなんと3ワイド。ブリスコー、ロス チャステインがそれぞれ3つ順位を上げ、ハービックが続きました。ブレイニーはどこ行った、と思ったら右後輪の交換に手間取って9位に後退。
1台に見えるが3台並んでいる

 230周目・残り83周でリスタート、チェイスは外側を選択しましたが、ブリスコーが内側リスタートからドッグレッグを通ってあっさりとチェイスを抜く素晴らしい動き。ラーソンとブッシュの『カイル対決』は以前からありましたが、とうとうエリオットとブリスコーの『チェイス対決』も見られるようになってきましたね(←何の話だ)。
 一方リスタートから7周ほどではラーソンにエンジンの問題が発生。結局バルブ スプリングが壊れたということで、直せるはずもなくガレージへ。ラジョーイ、トゥルーエックスに次ぐ本日3人目のリタイアです。
 
 ブリスコーは一旦チェイスを1秒近くにまで引き離しましたが、そこからチェイスが盛り返して残り50周でその差はおよそ0.5秒。ただチェイスもここまで近寄ると乱気流で少しタイトになるようで一気に逆転する流れにはなりません。その2秒後方ではハービックとチャステインが3位争い。チャステインのペースも良いようです。そういえばスイカの原種ってアフリカの砂漠にあるそうですね。野生のスイカは味としては美味しいものではないけど、水分を含んでいるので貴重な水分になるとか。
 
 ブリスコーは周回遅れがどっさり出てくるタイミングでもチェイスに隙を見せずリードを守り続けます。仮にこのままグリーンでレースが続けば各車ピットには入らずそのまま最後まで走り切れるんですが、そうは言ってもまあどうせ残り30周ぐらいで誰か事故るやろ、と思って見ていたら、残り27周・エリック ジョーンズがクラッシュしてコーションとなりました。エリックさん、先週も終盤に事故ってドラマを作る立役者になってませんでしたっけ^^;

 全車ピットへ向かい、スチュワート-ハースのクルーが会心の仕事。ブリスコーが先頭でピットを出ると、これにハービックが続きます。ハービックの作業は映像で映っていましたが確かに早かったです。これにチャステイン、ブレイニー、レディックと続きチェイスは6位へ後退。これはかなり痛い損失です。

 チームの大先輩を相手にしてちょっと戦いにくそうな気がするブリスコーは内側リスタートを選択。お隣にハービック、後ろにチャステインという状況で残り20周でリスタート。


 リスタートの瞬間にチャステインがブリスコーの内側に飛び込み、ブリスコーは3ワイドの真ん中に挟まれたのでこれは終わったかと思いましたが、ブリスコーが絶妙のライン取りでリードを守ります。ブリスコーはターン1でミドルから入って、そこから大外へ上がって行ってバンクにうまく引っ掛けて大外でターン2を立ち上がる独特なラインをずっと通っていますが、リスタート後の争いでもこのライン取りはかなり有効に見えます。

 ハービックは混戦で4位へ後退、ブリスコー、チャステイン、レディックといずれも未勝利のドライバーがトップ3になり見ている側はテンション上がりまくり。レディックはチャステインとの争いを制して2位に浮上するも、この間にリズムを整えたブリスコーが独特のライン取りで無駄のない走りを見せ、レースはいよいよ残り10周を切ります。

 もうブリスコーで決まりやろ、と思って残りの周回を見守るつもりでいたら、なんと残り9周・エリオットの方のチェイスがまさかの単独スピン、コーションとなります。えーっとチェイスさん、あなた2週間前にも残り9周でちょっとわざとっぽいスピンして最後のコーション出してましたよね^^;
 
 さすがに残り周回数が少ないので上位勢は誰もピットに入らず、後方の7台がピットへ。残り3周、今度もブリスコーは内側を選んで隣にレディック、後ろはやっぱりチャステインでリスタート。
 ブリスコーは今回はチャステインをより警戒して内側に入らせずにドッグレッグを通過すると、そのままターン1~2で得意のラインに入ります。チャステインとレディックが2位を争う間にじゅうぶんなリードを築いたブリスコー、最後は壁からすんごい離れた安全運転でそのまま逃げ切り、参戦2年目・通算40戦目でカップ シリーズ初優勝、シリーズでは歴代200人目の優勝者となりました。

 27歳のブリスコー、父も祖父もスプリント カーでレース経験があり、当初は父にレースを反対されていたそうですが、許可を得るとやはりダートからキャリアを開始しました。今回の内から外へバンクをせり上がるライン取りもダートっぽい走り方だなと思いましたが、他の人が走らないラインでターン2の旋回速度を高く保ち、かつ舵角を抑えてタイヤも攻撃しない走りが冴えたと感じます。
 それにしても、昨年はほとんど上位に顔を出さなかった彼が今年は開幕から既に何度か上位に顔を出してレースを盛り上げ、そしてここでは101周もリードしての優勝。2位にチャステイン、3位レディック、Next Gen Carと共に勢力図に大きな変化が起きたのは間違いありませんね。
 個人的にはチャステインに行ってほしかったところですが、彼はリスタート直後に滅茶苦茶速い一方で(まっささん曰く下部カテゴリー時代からリスタートは飛びぬけて速かったそうです)、そこでタイヤを使いすぎるのか今日のレースはリスタートから数周したあたりのヘタリ具合が大きかったので、ブリスコーに対抗するにはピースが1つ欠けていた感じ。
 レディックの方は絶対的なペースがあと一歩及ばなかったといったところでしょうか。いずれも初勝利で先を越されましたが、年に1回しかない千載一遇の機会だった、というわけではないのでまだまだ彼らも続く可能性はありそうです。そもそもレディックはこれまでショートトラックはそれほど好成績では無かったはずなので、ここでも速かった、といった方が良さそうに思います。今週は足がしびれる話も無かったので一安心ですかね。

 4位以降は143周もリードしたのに勝てなかったブレイニー、どこから出て来たのかカート ブッシュ、ハービック、カイル、ロガーノ、そしてダニエル スアレス、クリス ブッシャーのトップ10。ハービックはフェニックスで18戦連続トップ10フィニッシュとなり、今年の最終戦は新記録のかかるレースとなります。果たしてコンテンダーとして参戦することになるのかどうか。

 今回は4戦目にしてようやくある程度のロングランを見ることができ、そこで今まで顔を出さなかったドライバーが力を出したということが非常に印象に残りました。ショート ランとクラッシュの繰り返しでポッと上位に出て来るのと違って、フェニックスでロング、となると偶然では前を走ることはできないですからね。開幕から4戦、今年のシリーズは本当に面白いし予測不能です。

 さて、次戦はトラックが一新されたアトランタ。スーパー スピードウェイのパッケージで走るというどうなるのか全然分からんレースです。また予想外の人が勝ったりするのかな?


コメント

まっさ さんの投稿…
It's fantastic!!
今シーズンスイカ投げ大会があるかもしれないです!
リスタートセンスはあるのですがその後キレてどかーーーーん!
がお決まり。。 
ここ最近はまぐれでなく実力なのは疑い用がないです。
でっかいチームが車体を理解する前に勝ちを見たいところ。
とりあえずハーヴィックをやっつけてからですかねw

カイル・プッシュ さんのコメント…
カイルのデウォルトは、確かに違和感がありましたね。ケンゼスが走ってるのかと思いました笑

ところで、優勝したブリスコーがピットクルー達とひとりひとり抱き合っていましたが、2番目に抱擁してたのはハービックでしたか?もしピットクルーなら、ハービックに似すぎです。
日日不穏日記 さんの投稿…
ブッシュ兄弟、ケセロウスキーのファンですが、終盤のトップ3、ブリスコー、チャステイン、レディック・・・誰が勝っても楽しみでしたが、ブリスコーが1抜け。チャステイン、レディックには、まだチャンスがあるでしょうし、レディックは、ディロンより、確実に伸びしろがあるので、勝って欲しいところです。ハーヴィック、ケセロウスキーの時代は確実に終わりが近づいているので、新しいスター誕生に期待です。
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 そういえばハービックにまだきちんとお返しをしてないんでしたね。しかしスイカ投げは本当に期待できそうです。
SCfromLA さんの投稿…
>カイル・プッシュさん

 気になったので調べてみました。車を降りた後に抱き合っているMahindraのスーツを着ている人は全員14号車のクルーのはずで、背中にGONZALESと書いてあるのでおそらくトレーラーのドライバーをやってるスティーブン ゴンザレスさんではないかと思います。確かにサングラスして防止かぶってあの口元だとハービックのスーツ着たら日本人には区別がつかなくなりそうですw
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 NASCARはメンバーが変わり映えしない、という見方を示すアメリカのライターの意見を何度か見たことがあるんですが、とうとうその空気が変わりそうな予感ですね。ベテラン勢が乗り味の変わった車にうまく合わせられずに規則変更のタイミングで去るのはどのカテゴリーでもありがちですが、とうとう特殊技能が必要なNASCARにも来たか、と思いつつ、いやまだあのおっさん連中はそう簡単に消えんだろう、と意地に期待する自分もいます。この対決構図がまた面白いw