NCS 第2戦 フォンタナ

NASCAR Cup Series
Wise Power 400
Auto Club Speedway 2miles×200Laps(65/65/70)=400miles
competition caution:Lap 20
winner:Kyle Larson(Hendrick Motorsports/HendrickCars.com Chevrolet Camaro ZL1)

 NASCAR Cup Series、第2戦は昨年非開催だったフォンタナです。デイトナの予選レースでホイールに無許可の改造をした疑いがもたれたチーム ペンスキーとRFKレーシングですが、NASCARはこの件に関してはペナルティーは課さず、問題となった穴に関して許容公差を広げることを発表しました。
 チーム側の主張していた「ホイールによって品質にバラツキがあり、穴が小さすぎてピンが入らない」という問題が実際に起こっていたと考えられそうです。一方で決勝のレース中に脱輪したカズ グラーラとジャスティン ヘイリーはいずれもチームにペナルティー。ヘイリーの場合クルーの過失であるかどうか分からない気がしますが、規則に則って『装備品をトラック上に転がしたやつは処分』の対処が行われました。ちょっと気の毒な気が・・・

 そしてフォンタナです。予選ではデイトナ500勝者のオースティン シンドリックがなんとPPを獲得、エリック ジョーンズ、カイル ブッシュ、デニー ハムリン、ダニエル ヘムリックのトップ5。スーパー スピードウェイとアトランタ以外では全レースで670馬力/4インチ スポイラーのパッケージですが、やはりなかなか運転が難しいようで複数のドライバーがスピンを喫しました。
 予選タイムとしてはここでもエクスフィニティ― シリーズより平均速度で5mph、タイムで言えば1秒ほど遅い水準。速さよりもドライバーが腕を見せられる車を目指した結果ですので、絶対的速さではなく中身で勝負、というところでしょうか。個人的にはレースの面白さって絶対的なタイムにこだわりすぎる必要は無いと思っているので、速くする方向に傾倒しがちな他のカテゴリーとしても学ぶべき点があると感じます。

 そのエクスフィニティ―では合計12回のコーションが発生し、オーバータイムが3回発生する荒れたレースになり、カップからの出向ドライバー・コール カスターが貫録を示して優勝しています。カスターは本職のこちらのレースは21位からのスタートです。スタート前には5列に並んで満員のファンへご挨拶。36台の参加なので1台だけ最後列に余ってるのがなんかちょっと気の毒w
 余り1になったのはレース前の車検に3回引っかかったカート ブッシュで、3回なので最後尾スタート+スタート後にパススルーのペナルティーも課せられます。

 スタートでは1人抜け出したシンドリックでしたが、大外を走っていたら内側からあっさりとジョーンズがリードを奪い、そのまま少しずつ後続を離していきます。
 しかしタイラー レディックが11位スタートから大外ラインを走って順位を上げ、11周目にジョーンズを抜いて本日2人目のリーダーに。一方で、ターン3~4でエイプロンを使って走るフォンタナ走法をするドライバーもいてライン取りはまちまち。新車でもこのライン使えるんですね。
大外ライン vs エイプロン

 15周目、酷いルースを訴えていたカイル ブッシュがなんと単独スピン。コーションとなってこれがコンペティション コーションと統合されてここから給油が可能になります。たった15周ですが右側のタイヤの摩耗が結構酷いようで、うまく管理する必要がある様子。カイルの方はスピンした際に汚れた路面から拾い上げた砂がグリルを塞いでエンジンがオーバーヒート、散々なレースになっていきます。

 20周目、レディックとウイリアム バイロンの1列目でリスタート。レディックは得意の外ラインでバイロンを寄せ付けませんでしたが、2列目から出たチェイス エリオットが速さを見せて23周目にレディックをかわします。さっきはガッツリとエイプロンを走っていたチェイスですがこの後大外でも速いことを見せつけ独走態勢に入ります。
 ところが33周目のターン4、レディックに1.5秒近い差がある中でチェイスが突然ルースになってウォールに接触。幸い大きな損傷は無かったもののリードは無くなり、車も調子が悪そう。2周後にあっさりとレディックとバイロンの2人にかわされました。この後37周目に結局スピンしてコーションの起因となります。

 43周目のリスタートからはレディックがミニ四駆走りであっという間に後続に2秒の差をつけましたが、53周目に29位のジョッシュ ビリッキーがスピンしてまたコーション。この少し前にはマーティン トゥルーエックス ジュニアも壁にそこそこ強く当たり、シンドリックがここに追突。2人にとってはありがたいコーションでした。序盤から自損事故が目立ちます。

 56周目、レディックとジョーンズの1列目でリスタート。ステージ残り8周ということでタイヤを労わる必要がないため各車かなり攻めている様子がうかがえます。ステージ1はそのままレディックが勝利、ジョーンズ、バイロン、チェイス ブリスコー、カイル ラーソンと続きました。ブリスコーの調子が良さそうです。なお、フォンタナではステージ制導入以降、ステージ1の勝者が必ずそのレースの勝者になるというデータがあります。

 ステージ間コーションではトッド ギリランドのホイールが外れる事件があり、この処理でリスタートまでやや時間を要しました。ステージ2、レディックとブリスコーの1列目でリスタート。絶好調のレディックですが、左足が痺れて感覚が無いという異変が起こっており、ブレーキの踏力が自分で全然自覚できない状態のようです。結構怖い。
 ステージ2開始直後はレディック、ブリスコー、ラーソンの3台での争いとなり、ここからブリスコーがリードを奪います。外ラインでクリーン エアーならかなり調子が良いという情報。大外ラインでブリスコーとレディックがレースを引っ張ります。

 89周目には既に4周遅れのカイルさんが左リアのタイヤをパンクさせてピットへ向かうも、何の破片も撒かなかったのかグリーンでレースは進行。しかし91周目に今度はチームメイトのクリストファー ベルがスピンしてこれで5回目のコーションとなります。
 ちょうどこの直前にこれまたチームメイトのハムリンもオーバーヒートでちょうどピットに入りましたが、コーションが出たので何も作業せずにピットを通過。ベルもエンジンに問題を抱えてこのままリタイアとなってしまいました。
 カイルを含めやたらとオーバーヒートが起きたカムリですが、TRDがフォンタナの防塵対策として装着した保護膜が逆に詰まってしまってオーバーヒートを起こす原因になっていたようで、車体形状やエンジン本体の欠陥ではないとのことです。今年から空気の流し方が変わっているので、必要な空気の流れをきちんと把握できていなかった、といったところでしょうか。

 コーション中のピット作業で1位と2位が入れ替わり、レディックとブリスコーの1列目で97周目にリスタート。ちょうどステージ2の折り返し地点です。
 ブリスコーはクリーンエアーが無いと埋もれてしまうようで5位あたりに後退、一方レディックもリードを維持できず、100周目にバイロンがレディックをかわしリーダーとなります。この後ラーソンも2位に浮上し昨年よく見たヘンドリック無双の光景。すると112周目、今度はクリス ブッシャーがスピン。またコーションとなります。

 今年18インチの大径ホイールとなり、タイヤは従来の肉厚なものから低扁平となりました。従来は1マイル以下のトラックになるとインナー ライナーと呼ばれる、タイヤの内側にもう1つタイヤを入れたような構造になっていて、パンクしてもそれなりにタイヤの形状を保って自走が可能でした。
 しかし、今年のタイヤは低扁平なためにインナーライナーを入れる場所が物理的になく、タイヤ自体も薄っぺらいのでパンクするとゴムがほとんど残らずすぐにホイールだけが地面に接します。結果、この週末に『パンクした車が動けない』という問題が多発しました。このブッシャーの場合はなんとか自力で走れましたが、レース中も自走不能となる場面が何度かありました。
 NASCARは当面の対応として、タイヤが原因で自走できない車は牽引によってピットまで運び、タイヤを交換してレースを続行できるという特例を設けて対処しましたが、そうはいっても運んでもらう間に場合によっては数周遅れになるため、チーム/ドライバーとしてもとりわけ駆動輪のパンクは絶対避けないといけない事象と思われます。
 スピン状態に入ったら、下手にブレーキを踏んでタイヤをロックさせてぶっ壊すより、アクセルを踏んでタイヤをきちんと転がし続けてすっ飛んだ方がレースとしての損失は少なくて済みそうです。まあ、そんなことが簡単にできりゃあ誰も苦労しないんですがw

 ピットではバイロンにも災難、ナットがなかなか外れずあやうくボッタスになりかけて6秒失い17位へ後退。最初にピットを出たのはレディックでした。レーン選択では彼に続いて2位のラーソンも外側を選び、これによりレディックとジョーンズの1列目となります。ステージは残り15周。
 今日のジョーンズはリスタート直後に内側でがっちりグリップさせて順位を上げており、ここも内側からレディックと激しい争い。その後ろでも激しい争いが展開されていましたが、3位を争っていたブラッド ケゼロウスキーが姿勢を乱してこれまたスピン。幸い誰も巻き込みませんでしたがまたもやコーション、長いレースになりそうです。


 ステージ残り9周でリスタート、リスタート直後だけ前に出たジョーンズでしたがすぐにレディックが抜き返し、そのままステージ2も制しました。ジョーンズ、ジョーイ ロガーノ、ライアン ブレイニー、ラーソンのトップ5。

 ファイナル ステージもレディックとジョーンズの1列目でリスタート。ターン4ではせっかく6位まで順位を上げてきたエリック アルミローラがスピン状態になりますが、ぎりぎり持ちこたえてそのままダイナミックにピットへ。前日も予選で同じことをやっていたみたいです^^;

 ここもレディックが逃げるかと思ったら今回はジョーンズが一度つけられた差を詰めていき、レディックをしっかりと捉えてレースは残り50周となります。ここでFOX名物Crank it Up!
 ところがその40秒後、エンジン音を楽しむ間もなくいきなりレディックがターン1手前で白煙。左後輪がパンクしたようでそのまま力なくターン1を通過します。急きょ実況がしゃべり始めますが、あろうことかバイロンがラインをターン2出口でレディックにぶつけてしまいクラッシュ。思わぬ形で優勝候補が脱落しました。バイロンは大ダメージでここでリタイア、レディックは手負いでレースを続けます。

 大外をゆっくり走っていたレディック、確かに接触直前に少し内側に動いてはいるんですが、右前方に白煙を上げた低速の車両がいるのにそのスレスレを通ってぶつけたバイロンは自分から事故を起こしたと言わざるを得ません。自分の車のコントロールに必死だったんでしょうかね。

 ピットではジョーンズが僅差でアレックス ボウマンを下しリードを維持。リスタートはジョーンズとロガーノの1列目となります。一時2周遅れになっていたチェイスが7位まで盛り返してきました。
 ジョーンズはリスタートで出遅れてしまいロガーノがあっさりとリード。リスタートに違反が無かったか検証が行われますが、その間にケゼロウスキーがまたもやスピン。今回はバッバ ウォーレスに軽く押されたことが原因で、ウォーレスは無線で「6番にゴメンって伝えて」。そしてこの事故の巻き添えを食ったハリソン バートンが大ダメージ。先週もケゼロウスキーのせいで車が横転しましたけどハリソン君に何か恨みでもあるんでしょうかw
 
 さすがに1周半ほどしただけなので上位勢はステイ アウト。残り35周、ロガーノとラーソンの1列目でリスタート。すぐに進路を変えてラーソンの頭を抑えに行く鬼ブロック作戦に出たロガーノでしたが、軽くあしらわれてラーソンがリーダー。ただ、今日の展開からしてこれですんなり終わるはずもなく、172周目にロス チャステインが単独スピンしコーションです。
 今日は湯水のようにタイヤが消費されますがここでも全員ピットへ。チェイスが一気に3台をゴボウ抜きして先頭でピットを出ると、ボウマンも同じく3つ順位を上げて続きます。ラーソンが3位へ後退、ってヘンドリック無双やないかい!
 残り22周、ブリスコーが唯一ステイアウトを選択しチェイスと並んでのリスタート、タイヤの古いブリスコーは一瞬で集団に埋まり、リーダー争いはラーソンが2列目からチェイスを捉えて再びリーダーへ。
 ところがこの後思わぬ展開、ボウマンがターン3で姿勢を乱してカベドンして順位を落とすと、フロントストレッチでは三つ巴の争いからラーソンがあろうことかチームメイトのチェイスにぶつけてヘンドリック王国が一瞬で崩壊しました。

チェイス「バカか!」
ラーソン「すまない、あいつがそこにいるって分かってなかったんだ」

 スポッターはけっこう慌てて「アウトサイドアウトサイドアウトサイド!」って言ってるので、チェイスが外へ並べて仕掛けてくることに対して、ラーソンへの指示が徹底されておらず、ラーソンも内側のロガーノしか見てなかったような感じがします。ロガーノのスポッターは「3ワイド ボトム」って言ってるのでちゃんと自分たちが3ワイドの争いにあることを伝えられているようでしたが・・・

 全米のファンを敵に回した気がするラーソンですが、ロガーノを突き放して独走態勢。一方のチェイスはタイヤに損傷を負った様子ですがコーションを期待しているのかそのまま走り続け、ラーソンに抜かれて周回遅れに。抜かれる際にちょっと幅寄せした気がw
 で、結局192周目にチェイス自身のタイヤが壊れてスピン、本日12回目のコーションとなります。これには逆にラーソンのファンが納得いかないといったリアクション。ラーソンとチェイスのチーム内争いがなんか激化してきた気がします、こういうのが無いとへえ、グヘヘヘ。なお、壁ドンしたボウマンは1周遅れの25位、チェイスは2周遅れの26位でレースを終えました。
 
 おそらくこれが最後になるであろう重要なピット作業、ラーソンは会心の速さでぶっちぎりの先頭、そこになんとダニエル スアレスが5つ順位を上げて2位に飛び込みます。スアレスはコーション前に一時4位を走行していましたが、壁に当ててしまって少し順位を下げており、恵みのコーションにピット作業が加わって千載一遇のチャンスを手にしました。ピット作業時間の不確定要素が今のところものすごく大きいですね。
 
 残り4周、ラーソンとスアレスの1列目でリスタート。ジョーンズから大きな助けを得たスアレスは残り3周でラーソンからリードを奪い取ります。これは行けるか!と思ったのも束の間、ターン3~4でラーソンのミニ四駆走りが炸裂しフロントストレッチで再逆転。この後はラーソンを誰も捉えられず、昨シーズンのチャンピオンが開幕2戦目で実力を見せつけました。

 2位は気づいたらオースティン ディロン、以下ジョーンズ、スアレス、ロガーノのトップ5。アルミローラがダイナミックピットインから取り返して6位、予選でスピンして部品交換のために最後尾スタートだったケビン ハービックも長い時間をかけて徐々に順位を上げて7位。
 最後尾+ペナルティーだった兄ブッシュが8位で、レース序盤にシフターのトラブルでいきなり6周遅れになっていたヘムリックが9位と、コーションの多発もあって後方からスタートしたドライバーがトップ10でフィニッシュ。エクスフィニティ―同様荒れました。エクスフィニティ―で勝ったカスターが11位、ポールシッターのシンドリックは12位。

 まだ2マイルのトラックも特殊な部類ではありますが、昨年までのレースならスアレスやジョーンズが最後に優勝争いに絡んでいる、というような場面は極めて稀だったはずで、それが起こっていたというのは新車になって競争力を持てるチームが増えた証左かなと感じました。最後の4周は見ていて興奮しましたね。
 スアレスは前に出た後、本来なら大外ラインで速度を稼ぎつつラーソンにクリーンエアーを与えないようにしたいところだったと思いますが、ちょっと守りに入ってミドルを走ったことでラーソンに隙を与えたかなと感じました。逆転の筋書きをきちんと立てるラーソンはさすがですね。そういえば彼も後方スタート組でした。

 スピン連発がダウンフォースの少なさなのか、荒れた路面に対してタイヤの内圧を下げ過ぎてタイヤを壊しているせいなのか分かりズラかったですが、大観衆のお客さんは楽しめただろうと思いますし、この感じなら当面はお客さんがたくさん入りそうです。

 次戦はラスベガスです。

コメント

Cherry さんのコメント…
今回のMVPは中段チームの方々ですね。トラックハウス、GMSがそんなに速くなるとは...
今の所、チェイスを刈り取り、怒らせたドライバーは数戦以内に凡ミスで散っていくのでラーソンもその被害者になることを祈りましょうw(名付けてエリオットの法則)
SCfromLA さんの投稿…
>Cherryさん

とりあえず道具の差がリセットされたというのは大きいですね。トラックハウスはあんまり攻め込んだセッティングではなく長く安定して走る方向性を好むように見えるので、それもこのレースで終盤活躍した要因だと感じました。
チェイスの呪いは間違いなくラーソンを襲うと思うので、その時は笑ってやろうと思いますw(←悪いやつ)
日日不穏日記 さんの投稿…
レース後、エリオットが話し込んでた黒シャツの人物は、チャド・カナウスでしょうか。クルーチーフのクリフ・ダニエルズとアラン・グスタフソンで情報交換を行うでしょうが、これは後に引きそうな気がします。あのロガーノでさえ、ケセロウスキーと接触した記憶はないので。スポッターにも責任はあるでしょうが、ラーソン自身も何らかのアクションを起こした方が良いんじゃないかと。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 ちょうどラスベガスのウイークエンドに、リック ヘンドリックの呼びかけでラーソンとチェイスはミーティングを行ったそうで、ひとまず前向きに進展したようです。言ってるそばからまたぶつかったりしなければ当面は大丈夫そうかなと思いますね。