ABB FIA Fornula E World Championship
アタックモードのアクティベーションはいわゆる野球場の区間、ターン11と12の間の内側にあります。ただでさえ鋭角なターンが続く箇所をさらに鋭角に曲がらないといけないですが、取得後真っすぐターン12に突っ込んで行けば外からはそうそう抜かれないので案外順位を落としにくく、それゆえ無理に順位を守ろうとして接触が起きやすい形状です。ターン11で前の車が想像以上に減速して追突する危険性にも要注意。
違和感の正体はほどなくして分かりました。
Mexico City E-Prix
Autodromo Hermanos Rodriguez 2.606km
45minutes+1Lap
winner:Pascal Wehrlein(TAG Heuer Porsche Formula E Team/Porsche 99X Electric
フォーミュラE 第3戦はメキシコ シティー。ここは土曜日の1戦だけの開催です。昨年はプエブラのオーバル トラックを使用しましたが、今年はまたアウトドローモ エルマノス ロドリゲスに戻ってきました。2020年5月以降、ここはCOVID-19の患者を治療するための臨時病床として利用され、2021年7月まで運用されました。
今回はフリー走行からポルシェが好調、グループ予選でもA組でアンドレ ロッテラー、B組でパスカル ベアラインといずれの組もポルシェのドライバーが最速となります。見ていると高速で鈴鹿のデグナーのような形状をしたターン1を多くのドライバーはすっ飛びそうな走り方で通過していきますが、ポルシェの2人はいずれもブレーキでの安定感が高く、出口で全くはみ出さないスピード感の無い走りをしています。
セクター1は他と比べてタイムが遅いので、応答性がやや鈍くてここの通過タイムでは負けているようなのですが、そのリアの安定性の高さをテクニカルな部分でうまく活かし、ずっと右に切ったまま立ち上がる最終・ターン16できっちり車を前に進めていることがタイムに繋がっているように見えます。セッティングそのものとタイヤの使い方で、1周の最後までリアのグリップ力を残せる走り方になっているんでしょうね。
そしてデュエル、準々決勝ではDSの2台・アントニオ フェリックス ダ コスタとジャン エリック ベルニュがいきなり対決することになり、僅か0.011秒の差でベルニュが勝ち上がり。しかし準決勝でベアラインに敗れます。
もう1つのブラケットでは準決勝でロッテラーがエドアルド モルターラにこれまた0.067秒差という僅差の敗北。これで決勝はモルターラ vs ベアラインとなり、ロッテラーは3位からのスタートとなりました。
デュエル予選の決勝・先行のモルターラは良い走りを見せていましたがターン11、12でミス。これでは勝てんと思ったモルターラ、ターン16でギャンブル的にアクセルを踏んでいき、滑って2回ほどカウンターを当てた末に
最後はスピンしてそのままチェッカーを受けるド派手な幕切れ。回ってもアクセルを踏み続け、グルグル回るステアリングを素早く切り返してぶつけずに前を向かせたモルターラにはドリフトの才能がありそうです。もちろん勝ったのはベアライン。自身3度目のPPですが、過去2回もメキシコシティーとプエブラでいずれもメキシコのイベント。
でも、2019年のメキシコシティーはチェッカーまであと数mでエナジー切れとなって逆転を許し、それ以前にシケインを通過したせいでタイム加算のペナルティーを受けて、仮に走り切っていても優勝は取り上げられていました。
そして昨年のプエブラは1位でチェッカーを受けたのに、『決勝で使用するタイヤの申告に関する違反』という、電子メールの手続きミスで失格。予選では相性が良いのに、決勝の運は最悪です。
レース開始10分前になるとスタジアム区間で音楽ライブが始まり大盛り上がり。アタックモードは4分×2回の標準的な設定となりました。
スタート、牽制球の投げ合いはありましたがベアライン、モルターラ、ロッテラー、ベルニュ、ダコスタ、ニック デ フリースのトップ6はスタート順位と変わらず、まずは綺麗にレースが始まります。2周目に後方でアレクサンダー シムズがトラブルかコース脇に車を停めてしまいましたが大きな影響なし。観客数の上限までチケットを販売したわけではないそうですが、スタジアムは満員で大盛り上がりです。
開始6分、ロッテラーが後ろに空間を作り最初のアタックモード、翌周にモルターラが入ってこれをカバーします。こうなるとリーダーのベアラインは次の周にカバー。上位3台は無難に最初のアタックを終えた、かに思われました。が、続くストレートで意外な展開。エナジー管理を意識したベアラインは早々にリフトに入ったようで、その隙をついてモルターラがターン1でリードを奪いそのまま差を広げます。私も一瞬よそ見してましたw
DSテチーターもこの週末は好調で、この後アタックのサイクルがズレているベルニュがポルシェ2台を抜いて単独の2位へ浮上、ダコスタも割って入って4位となります。ポルシェがレースになってなんだか劣勢。
開始17分、追い詰められる前にポルシェの2台が連なって2台でアタックへ。ダコスタはこの際に減速したロッテラーに追突してフェンダーが壊れてしまいました。ここから上位の2度目のアタックのサイクルとなり、ここでエナジー残量が表示されますがポルシェは残量で周囲のドライバーを上回っています。目の前の争いのためにドカンと使わず、均等に使っていく方向性のようです。つまり、この後逆転が起きる可能性があります。
2回目のサイクルを終えてレースは残り20分を切り、オーダーはモルターラ、ベルニュ、ベアライン、ロッテラー。ロビン フラインスがアタックのサイクルをずらして上手く戦い5位に上がってきます。フェンダーの壊れたダコスタが6位。モルターラは序盤に250kWで飛ばした影響かやや残量で劣っており、隊列が徐々に詰まってきました。
残り15分、ポルシェが逆襲を開始。ストレートでまずベアラインがベルニュを抜くと、ターン2~3でロッテラーもベルニュを抜いて3位へ。残量を多く残しているポルシェがまず間の壁を取り払ってモルターラを攻略に向かいます。フラインスもここに追随してベルニュを抜きますが、こっちはむしろ残量が少ないので今そんなにせめて大丈夫かと心配になります。
迫って来るポルシェ勢に対し、残量で1%以上劣っているモルターラには抵抗できる余力はなく、残り13分、ベアラインは再びストレートでモルターラをかわしリードを奪還。これまたロッテラーがターン2~3でこれに続き、ポルシェがこのレース初めてワンツーとなりました。
さらに残り7分でフラインスもモルターラをかわしとうとう3位へ、相変わらず残量は少ないんですがマジで大丈夫なんでしょうか。一方リーダー争いはロッテラーがベアラインよりエナジーを多く残しており、どうもロッテラーが勝とうとしている雰囲気があります。彼はかつてテチーター時代にチームメイトのベルニュと見事にぶつかったことがあるので、ある意味油断できません。
3位のフラインスは残量が少ないので後ろにモルターラ、ベルニュ、ダコスタが渋滞。DSテチーターの2人の方がエナジーをしっかり残してあり、残り3分でモルターラがこの2台に食われました。フラインスの残量では3位を守るのは難しく、ベルニュ、ダコスタが3位、4位へ。
そしていよいよ最終周に入ろうかというところで、違和感に気付きました。普段ならもう少し揃っているはずの各車の残量が妙にバラバラです。
ベアライン、残り1秒でコントロール ラインを通過(。∀°) これで、ここからあと2周あります。えーっと、既に3%しかない人はどうすれば(っ ◠‿:;...,
ポルシェは事前の予想で、条件的に40周のレースになると想定した一方で、ライバルのいくらかは39周を想定して動いていると感じたようです。彼らにはじゅうぶんなリードがあったので、チームとして少しペースを落とすように指示し、ベアラインのペースを落とさせて39周で終えることも可能だったはずですが、自信を持って1秒前にコントロールラインを通過しました。
ロッテラーは残量で上回っており最後まで雰囲気は出しましたが、待望のポルシェの初勝利に貢献すべくそのまま順位を維持。ベアラインは昨年までの不運を取り返すフォーミュラE初優勝、ポルシェにとってのフォーミュラE初勝利はワンツーで達成されました。ロッテラーはできれば自分が勝ちたかったけど終始強さを見せての2位。
40周になると早めに勘付いて対応したチームが上位に来たと言え、3位ベルニュ、4位ダコスタとDSテチーターはしてやったり。モルターラ、デフリース、フラインスと続きました。フラインスは一旦6位まで一気に落ちましたが、このタイミングで必死に周囲との残量の差を解消したようで、一旦抜かれたモルターラを抜き返しました。あれだけ一気に巻き返せるのは結構驚きでした。
ポルシェの組織的嫌がらせによりジャガーとマヒンドラは完全に詰み、逆にこれを読んだ日産e.damsは残り2周の段階で14位、15位だったところからごっつぁん。ルーカス ディ グラッシがレース後に接触によるペナルティーを受けたこともあって、セバスチャン ブエミが8位、マキシミリアン グンターが9位と今季初の入賞を達成しました。
電欠で失格した人こそいませんでしたが、読みを誤った人たちはお手上げ状態になり、ミッチ エバンスは残り2周の時点での7位から19位に転落。1周70秒のトラックで62秒遅れになりました。
ポルシェはこの半年ほどで組織の体制にかなり変更がありました。昨年の10月にモータースポーツ部門の副社長がフリッツ エンツィンガーからトーマス ローデンバッハへ交代。ローデンバッハはポルシェのパワートレイン部門の仕事をつとめた後、一旦アウディーへ移籍して電動パワートレインの仕事を担っていました。
さらに、ポルシェのファクトリー レーシング部門の責任者でフォーミュラEにも関係していたパスカル ズーリンデンが同じ10月に一身上の都合により退社。ズーリンデンは結局マルチマチック社へ移籍しました。マルチマチックはポルシェと共同でLMDh車両を製作するコンストラクターです。
フォーミュラEチームでも、オペレーションの責任者であったアミール リンデセイが開幕戦の終了後に退任。こちらも一身上の都合が理由だそうです。退任は既に開幕前に決定されていたそうで、これに備えてフローリアン モドリンガーという人を雇っており、モドリンガーがリンデセイの後任となりました。
このモドリンガーはBMW、アウディーと2メーカーでDTMに携わり、その後アプト スポーツラインでフォーミュラEに関わっていました。ということは、ポルシェのモータースポーツ部門の偉い人であるローデンバッハ、フォーミュラEで管理責任を担うモドリンガーはいずれもアウディーの電動部門で仕事をした面々です。
個々の人材の移動は直接関連した動きというわけではないでしょうが、全体としてはアウディーがフォーミュラEから撤退し、グループ企業であるポルシェにその人材の一部を割り振っているような様子もうかがえます。ポルシェの看板を掲げてメーカーとして参加しておきながら、優勝争いできない状態というのはブランドとして容認できるものではないので、組織の態勢を立て直しつつ、「やるなら勝て」というメッセージがあるようにも見えます。
そんなポルシェの内情がありましたから、リンデセイ退任後の初戦でいきなり勝った、しかもワンツーな上にライバルを軽く陥れた、というのはチームにとってとても明るい材料で自信に繋がったと思います。
目先の争いは無視して全体で見るのか、まず前を取った上で考えるのか、というフォーミュラEらしいレース展開でしたが、今回のポルシェはまるで常勝チームかのような全体を見た戦い方でした。毎回こういうレースができるようになったら恐ろしいですね。
テロップで残量表示が出るまでは、抜かれている側の効率が悪くて厳しいのか、むしろ抜いている方が使いすぎなのかが判別できないので、序盤はポルシェの効率が悪いんだろうな、と完全に騙されていました。
ドライバー選手権では、レース前の1位、2位だったモルターラとデフリースが5位、6位だったのであまり変わらずモルターラが5点差で選手権1位。デフリースは序盤にかなりボコられてましたが、きっちり管理してスタート順位まで戻しました。ベアラインとロッテラーが同点で3位、4位になっています。
チームではベンチュリー68点、メルセデス-EQ66点、そして荒稼ぎしたポルシェが60点とこの3チームが抜け出しました。
次戦は4月9日、10日にローマ2連戦です。
コメント