ABB FIA フォーミュラEは今週末に第3戦が行われますが、来季・シーズン9からの体制についても徐々に動きが見えて来たようです。エンビジョン レーシングとジャガーTCSレーシングは2月8日、2022/2023年のシーズンからエンビジョンがジャガーのパワートレイン供給を受けることを発表しました。
元々はDSバージンとしてDSのパワートレインを使用、DSがテチーターと組むために関係が解消されるとシーズン5からはアウディーのカスタマーとなり、常に上位を争うレースを見せて来たエンビジョン。そのアウディーも撤退してしまったので、Gen3導入初年度となるシーズン9からは新しい相棒が必要でしたが、そのお相手はジャガーとなりました。ジャガーが供給を行うのは初めてです。
エンビジョンの最高技術責任者でマネージング ディレクターのシルバン フィリッピは
「ジャガーと彼らのファクトリーは2016年に参戦して以来フォーミュラEでもっとも激しい競争相手の1つでした。チームの高度なパワートレイン技術とフォーミュラEプログラムへの全体的な取り組みにより、ジャガーは私たちにとって最も魅力的な選択肢となりました。」
「フォーミュラEは世界で最も急速に成長しているスポーツの1つであり、世界中の都市で次世代のモータースポーツファンを刺激しています。 しかし、もっとエキサイティングなのは、気候変動との戦いにおける最大の問題の1つを解決する上で、私たちが果たすことができる役割を認識しているため、間違いなく世界で最も協調的なスポーツであるという事実です。」
と、コメント。一方、ジャガー ランドローバー モータースポーツのマネージングディレクター・ジェームス バークレイは
「Gen3のジャガーパワートレインをエンビジョンレーシングに供給すると発表できることを誇りに思います。 彼らはフォーミュラEで最も競争力のあるチームの1つであり、新しい時代のFIA フォーミュラEにパワートレインテクノロジーを使用することになったのは光栄です。今後も一緒に働き、さらなる成功を収めることを楽しみにしています。 私はシルバンと彼のチームに多大な敬意を払っています。彼らはジャガーにぴったりです。 私たちは両方ともフォーミュラEに全力で取り組んでいます。Gen3時代のレースは、高性能のレース環境で電気自動車技術の限界を押し広げようとしています。」
「エンビジョンレーシングは、パワートレイン用に独自のソフトウェアを最適化できるため、我々は引き続きライバルであり続けます。 しかし、私たちは一緒に革新するために競争しており、来シーズンはジャガーを搭載したフォーミュラEレースカー4台がグリッド上に並んでいるのを見るのが楽しみです。」
とコメントしました。
The Raceの伝える情報をまとめると、エンビジョンは提携先を決めるにあたって、電気自動車分野そのものをより理解することで、本業の事業にいかに相乗効果をもたらすか、というのがポイントの1つだったと思われます。フィリップはThe Raceに対して
「エンビジョンにとって、電気自動車の周りで起こっていることすべてを完全に理解することは本当に、本当に重要です。そうすれば、それはエコシステムの一部になるからです」と発言。この会社は再生可能エネルギー事業に加えて電気自動車の蓄電池も手掛けており、電気自動車の時代はまさに会社にとって躍進への大きなカギを握ります。
ジャガーは2025年にジャガーブランドの新車を全て電気自動車にするという野心的な目標を発表しており、ジャガーの会社としてのEV化への姿勢、それに伴ったフォーミュラE計画の持続性やプロモーションといった観点から、ジャガーは良い選択肢だったと思われます。また、ジャガーとエンビジョンはお互いにチームの拠点も比較的近いようです。
独立チームが平等な競争環境で参戦するため、規則により製造会社は供給先に対して2名のエンジニアとシミュレーター モデルなどを提供することが定められているようで、ジャガーを含め供給する側は人員や道具の準備をする必要があります。
そのほかの陣営の体制発表もここから順次行われるとみられています。The Raceのいくつかの記事をあたってみたところ、次に確度が高いとされているのが、アンドレッティーとポルシェの組み合わせ。Gen3はシーズン9~12までの4シーズンの規則として想定されていますが、ポルシェはシーズン10までの2年分しか参戦を確約していないと認めています。F1に参戦するかどうか考えており、F1をやるならフォーミュラEからは撤退すると考えられるためです。
そのため、ポルシェと組むと2年後にまた相棒を失うリスクがあるんですが、アンドレッティーはアメリカの新興自動車メーカー・ルーシッドに声をかけていて、シーズン11から彼らが参戦してくれれば、今度はルーシッドと組んで参戦を継続するというオプションを考えているのではないか、とのこと。一方でポルシェはなかなかF1をどうするかまだ決断できていないので、FEに残る可能性もあるようです。
そして、撤退するメルセデス-EQからチームだけが独立する、通称チーム ブラックリー。どういう形でシリーズに残るのか未だに分かりませんが、2月1日のThe Raceの記事では、マクラーレンがこのチームに関心を示しており、なおかつパワートレインの供給元としては日産が候補に挙がっていると伝えています。
チーム代表のイアン ジェイムスは昨年の段階でマクラーレンのCEOであるザック ブラウンと顔を合わせているようで、そこから現在に至るまで協議は継続している様子。マクラーレンと協議しているという事実はジェイムス自身がThe Raceに対して認めています。現在はマクラーレンの側で最終決定するかどうかを見定めている最中のようです。
マクラーレンが実際に関与するとして、チーム名自体にマクラーレンを冠することになるのかどうかなど不明な点も多いですが、もし仮にそうなると『マクラーレン/日産』という組み合わせが誕生する可能性もあります。これはなかなか夢が膨らむ並びですね。日本のメーカーが名門のマクラーレンに供給、その力量が思ったほどでなく、やがて首脳陣が批判を始めて、ついにはドライバーがノーp・・・夢がしぼみますね(´・ω・`)
そして、新規参入するマセラティ―はどうやらもう1つの独立チーム・ベンチュリーと組むことになりそうです。マセラティーの参入に併せて規則が変更され、自動車会社は25万ユーロを支払うことでグループ内の別ブランドを1つだけ、別の名称を用いたパワートレインとして使用することが可能となりました。いきなり決まったので俗称『マセラティ― ルール』と呼ばれています。
これでマセラティ―はDSのパワートレインをマセラティ―という名称で使用して運用を行うことが可能になりました。そして、完全に独自チームとして新規に参入するのではなく、メルセデスのパワートレインを失うベンチュリーと組む可能性が高いようです。もっとも、本家のDSの方はテチーターが新規の出資者探しに難航してチームの先行きが不透明なままなんですが・・・
ここまでの情報をまとめると、シーズン9は
マヒンドラ
NIO333
ジャガー
エンビジョン/ジャガー
ポルシェ
アンドレッティー/ポルシェ
DSテチーター?
ベンチュリー/マセラティ―(DS)
日産
マクラーレン?/日産
ドラゴン / ペンスキー/未定
というような構図になりそうです。この通りだとするとまだ誰にも供給していないのはマヒンドラとNIOの2社。ドラゴン/ペンスキーは元々ボッシュなどと自社開発するつもりだったものを断念したので、他チームと比べるとカスタマー供給を受けるための計画づくりが他所より遅れたと考えられ、色々調べましたが具体的にどこになりそうだ、という話が見当たりません。
The RaceによればNIOはチームブラックリーへの供給メーカーとして候補に挙がっていたようなので他チームへの供給は前向きであると考えられます。一方マヒンドラのパワートレインは、ドイツの部品メーカーであるZFが技術協力しており、現時点の車両の競争力ではマヒンドラに分があります。
直接関係無いですけどマヒンドラは農業用トラクターで世界でも大手で、今年からNASCAR Cup Seriesでスチュワート-ハース レーシングのスポンサーになっています。アメリカのレース界とはちょびっとだけ縁がありますね。逆に中国の自動車メーカーであるNIOはアメリカとはビジネス面で手を組むのは難しそう。
マヒンドラと組むのか、あるいはどこか合計3チーム体制にするようなマニュファクチャラーが現れるのか、レースとともに来季への体制発表もこの先数か月は注目です。
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