F1 第21戦 サウジアラビア

FORMULA 1 STC SAUDI ARABIAN GRAND PRIX 2021
Jeddah Corniche Circuit 6.714km×50Laps=308.45km
winner:Lewis Hamilton(Mercedes-AMG Petronas F1 Team/Mercedes-AMG F1 W12 E Performance) 

 長い長い、長すぎてもう開幕戦をどこでやったか忘れている2021年のF1もいよいよ最後の2連戦となりました。第21戦は初開催のサウジアラビア。ジェッダ コーニッシュ サーキットという市街地での開催です。ジェッダは首都リヤドに次ぐサウジアラビア第2の都市で、紅海に面し人口は400万人を超えています。あれ、マジで開幕戦どこだっけ、あ、バーレーンかw
 世界最速の市街地をお題目に据えたコースは、ターン数は一応27個あることになっていますが、実際はただの全開区間も多く実質的なコーナーは12個ぐらいです。ターン13のヘアピンでぐりっと折り返して戻って来る細長いコースですが、そのターン13以降のコースの後半半分はコーナーが実質3つしか無くて、DRS区間も3つあります(;・∀・)
 そしてお題目通り予選での平均速度は250km/hを超え、F1の今シーズン全体でも2番目に早いサーキットとなりました。とはいえ道幅が狭いし、何か間違えると大事故に繋がりかねないので果たして本当に大丈夫なんだろうかと思ってしまいます。
 普通にレースが流れている分にはいいんですが、誰かが横を向いた、トラブルで失速した、あるいはフリー走行や予選で全力の人とゆっくり走る人がいる時など、車両同士の重大な衝突事故に至らないか心配です。ちなみに冠スポンサーのSTCはサウジ テレコム カンパニーという現地の通信会社です。
 そもそも、市街地といっても元々の道路に、開催に合わせて新設した部分を付け加えて"デザイン"されているので、どちらかというと『F1のサーキットとして作った場所を後から公道にも使う』といった方が正しい気すらします。うーん、だったら鈴鹿サーキットって一般道として開放したら全部ガードレールで囲った”鈴鹿市街地サーキット"として許されるのか?とかちょっと疑問が。しかも、こんだけ盛大に作っておいて、サウジアラビアはこことは別に常設サーキットを作っており、F1はいずれそっちへ行く予定になっています。



 たまたま情報集めに見たFP3では本当にルイス ハミルトンがニキータ マゼピンと絡みかけるなどやっぱりちょっと怖いなあと思いながらの予選。
 やっぱり時々危ない場面もある中で、Q2ではフェラーリのカルロス サインツがターン10でスピン。奇跡的にリア ウイングの端っこがバリアをかすめただけでしたが、2回目のアタックでも同じ場所でミスって結局まともなタイムを出せずにQ2で敗退します。フェラーリはシャルル ルクレールもFP2で大クラッシュしていて、ちょっとリアが軽そうな雰囲気です。

 Q3、とにかくコース後半はただただタイヤが冷える上に日没後の開催なのでタイヤの温度管理が難しい様子。ハミルトンは1回目のアタックでグダグダになって、一旦取りやめて1周間を置いてからの再アタック。これではタイムは伸びず、マックス フェルスタッペンが0.4秒近い差を付けて暫定の1位となります。
 チームの決まり事でこのランではバルテリ ボッタスが先にコースに出ることに予め決まっているんですが、自分のペースでタイヤに熱を入れられない要因になっている気がします。ここまで来て今さらボッタスもそんな平等を欲しいとは思わない気がするし、そこだけ大事にしても今さら過ぎるのでハミルトン優先で良い気がします^^;

 ハミルトンのタイムはQ2でミディアムを使って記録したタイムよりも遅いので、ひょっとしてソフトの感触が良くないのではないかと思いましたがそこはさすがにチャンピオン。2回目はきっちりタイヤに熱を入れたようで、さっきより0.5秒も記録を更新して暫定1位になります。ミスったせいで他の人とサイクルがズレて、道中に遅い車を5台も抜く羽目になりましたがここ一番の集中力はお見事。私も画面の前で拍手。
 しかしフェルスタッペンは別の次元にいました。いきなりターン2の出口でちょっと踏みすぎて危うく壁に当たりかけますがお構いなし。まるで彼の世界には壁など存在しないかのようにその後も壁すれすれを走ってセクター2まででハミルトンを0.24秒も上回り、あとは最終コーナーしか無いのでぶっちぎりのポールだと誰もが思いました。が、


 なんとその最終・ターン27のブレーキでロックさせてエイペックスを逃すと、それでも気持ちが高揚しすぎたか外れたラインでアクセルを踏み込んだもんだから出口で見事に壁にドスン。右リアのサスペンションが折れてここで車を停めてしまいました。
 セクター2の走りを見た時にはもう画面の前で何もかもが異常すぎて笑いが出てしまったんですが、その30秒後のまさかの結末に思わず泣けてきました。別にどっちのファンとかでもなくすごいレースが見たいだけなんですが、あまりの落差でSUPER GTの最終戦並みに言葉が出ませんでした。まだ予選なんですけどね。
 現場でも思いは同じらしく、相手のミスでありながらメルセデスのトト ウォルフも顔芸を放棄して表情が固まっていました。でもヨス フェルスタッペンは思いっきり机をぶっ叩いてました。

 これでPPはハミルトン、2位にバルテリ ボッタスとメルセデスが1列目を占めました。ぶつけたのでギアボックスが心配なフェルスタッペンですが最初のタイムが速かったので3位、そして結果的に交換はせずに済みました。
 ハミルトンにはフリー走行での黄旗無視とマゼピンに対する妨害の2件の審議があって予選前に呼び出されて長いこと拘束されていたようですが、黄旗はコース脇のLEDパネルが誤って一瞬点灯してしまったことが原因ということでお咎め無し、妨害はドライバー側の責任には限度があるのでチームへの罰金となり、レースへの直接の影響はありませんでした。

 4位からルクレール、セルヒオ ペレス、ピエール ガスリー、ランド ノリス、角田 祐毅、エステバン オコン、アントニオ ジョビナッツィーのトップ10です。火曜日までフォーミュラEのテストに参加していたナッツィー、普通ならF1は幅の広い常設コース、FEが市街地なのに、この週末はやってることが真逆でしたから相当なスピード感の差があったと思いますけど、適応力が高いのかもしれません。
 彼曰くFEは雨の時のF1のようでかなり扱いにくいそうですが、4つ目のテスト セッションではチームメイトのセルジオ セッテ カマラから0.3秒落ちのタイムを記録し模擬レースにも参加しています。ただ、ドラゴン ペンスキーは今季限りで自社製パワートレインの使用を終了して、シーズン9からはカスタマーになるみたいですね。ってフォーミュラEの話に変わっちゃった。

 決勝、気温28℃、路面温度31℃とぬるそうな条件でスタート、見ているこっちは12月の深夜2時半でちょっと寒いです。偶数列は不利じゃないかという事前予想でしたがボッタスは仕事を果たして2位をしっかり維持。危ない場面になる要素も無い綺麗な動き出しでした。予選での恐ろしい速度感からすると決勝の走りはずいぶんと車が遅く見えます。
 上位5台は予選順位通り、アルファタウリの2台が順位を下げてしまいました。角田は右に寄りすぎてオコンを軽く壁に挟んでしまい接触、これがいちばん危ない場面だったかもしれません。

 ハミルトンとボッタスは約1.5秒差、ボッタスとフェルスタッペンも約1.5秒差で推移、乱気流の中では走りたくないところです。じゃあ誰も全く抜けないのかというと、アルファタウリの2台とフェルナンド アロンソだけがやたら苦戦してドバドバ抜かれています^^;

 10周目、ハミルトンがファステストを連発して急速にボッタスとの差を広げ始めたと思ったところでターン22~23でミック シューマッハーがクラッシュ。大破してSC導入となりました。
 ハミルトンはちょうど新しい周回に入ったところでしたがこの周の終わりにピットへ飛び込みました。メルセデスは2台同時に入りたいのでボッタスがわざと距離を開けて走行。メルセデスとレッドブルは今回ピットがお隣さんなので、フェルスタッペンはこのままではピットに入りズラくてチャンスが全く無いので、そのままステイ アウトしました。

 ハミルトン、ボッタス、ルクレール、ペレス、ノリス、アロンソといったところがミディアムからハードへ交換、10台はステイアウト。リスタート順位はフェルスタッペン、ハミルトン、ボッタス、オコン、ダニエル リキャード、ルクレール、ガスリー、ペレス。フェルスタッペンは仮にステイアウトが失敗でも普通に走れば3位にはなれるので、リスクをそこまで負わずに勝負に出た感じです。

 が、ここで思わぬ事態が発生、ミックがぶつかったバリアの破損が酷かったため、13周目の走行中に赤旗が宣告されました。フェルスタッペンはこれでピットに入らずしてタイヤ交換が可能になり、全くの想定外の形で形勢が逆転しました。メルセデスとしたら株を買ったらその日の取り引き後に業績の下方修正が出て翌日にストップ安になったような心境です。ハミルトンは当然この赤旗の判断にお怒り。

 15分ほどの赤旗から再開。ハードなら計算上はもうピットに入らず走り切れるけどミディアムではちょっと距離が長いかも、という条件なのでハードでスタートしている人はミディアムを選びにくい場面ですが、ハードでスタートしたリキャードがミディアムを選んで5位からリスタート。ペレスもあえてハードから新品ミディアムに戻しました。
 ハミルトンが「ピットを出る時にフェルスタッペンがスタート練習したぞ」と文句を言うと、フェルスタッペンも「ハミルトンが10車身以上間を空けてルールを守ってない」とお互いにリスタート前からチクり合いになります(っ ◠‿:;...,

 15周目、スタンディングでリスタート。見るからにハミルトンの反応が抜群ですぐフェルスタッペンに並びますが、フェルスタッペンはターン1でコース外まで突っ込んでターン2の内側を通過して抜き返した、ように思いました。ハミルトンは回避行動に出て、そこをオコンが抜いて行きました。ボッタスもターン1で突っ込みすぎました^^;


 その後ろではターン2でルクレール、ペレス、ガスリーが3ワイドになってしまい、ルクレールとペレスが接触。ペレスがスピンしたので後方が混乱し、マゼピンがジョージ ラッセルにものすごい勢いで追突。レースどころではなくまた赤旗になります。
 ターン1での押し出しの攻防はもはやこの人たちの間では日常になっていますが、今回ハミルトンは完全にフェルスタッペンの前に出ていてもはや外からフェルスタッペンが抜き返せる位置関係でも無かったところで無理に後ろから外へ並び、コース外から回り込んでいるように見えます。
 モンツァでの接触よりももっと無理な追い抜きに思いますが、しかしオーストリアでは無理して抜きに行った人を押し出したペレスにペナルティーが出たこともあるので過去の判例との整合性がかなり難しくなっているように思います。
 また、フェルスタッペンの後ろではボッタスが突っ込みすぎていて、引いていたら追突を食らってハンガリーの二の舞になっていた可能性もあるので、これはレッドブルを擁護する一因ですから非常に話が複雑になってしまったように思います。

 赤旗中もレース ディレクターとチームの間ではこの案件のやり取りが行われます。マイケル マシは自分たちで独断で決断するのではなくチーム側とのすり合わせによる解決を望んでいるようで、オコン、ハミルトン、フェルスタッペン、の順での再開をメルセデスとの間で確認すると、これをレッドブルに提示しました。レッドブルが断ったら順位をそのままにする代わりに審議にかけるつもりだったんでしょう。
 レッドブルはこの話を呑んで次のリスタートはオコンが先頭。レッドブルはリスタートで頭を抑えるためかフェルスタッペンにミディアムを与えました。ハミルトンはハードのままでの2位スタートで、また何か起きそうな気がします。さっきタイヤを盛大に傷めたボッタスもミディアムで5位からのリスタート、またスタンディングです。駆動系壊れないだろうな・・・
 というか、そもそも規則のどの部分を引用してこのリスタート順位の調整を行っているのか分かりませんが、ペナルティーを出すなら出すでリスタート後にきちんと処理すべき案件な気がします。話をよく聞いて納得の上で解決、と言えば聞こえが良いんですが、なんか決断したことをあれこれ批判されるのが嫌なので連帯責任にしようとしている、とも感じられます。

 リスタート、ハミルトンはまた良い反応でオコンの内側から狙おうとしますが、あまり良い動き出しとは言えなかったフェルスタッペンが一番内側から入って3ワイド。左右を挟まれたハミルトンはできること無し。オコンも切り込んだら事故になるのでコース外へ退避しますが、コース外走行なのでその先でフェルスタッペンに譲ります。ハミルトンも翌周にオコンを抜いて、散々ごちゃついたレースは結局フェルスタッペン、ハミルトンの並びで展開され始めました。
だんだんフォーミュラEのスタート感が・・・


 フェルスタッペンのリスタートは、前が2人とも見て避けてくれたからいいけどほとんどミサイルだったような気がします。ハミルトンも思いっきり内側を閉めて入れさせない方が良かったかもしれませんが、とはいえオコンより発進加速が良いのにインベタを走ると、ターン1で角度が無さ過ぎてオコンと絡む可能性もあるので、それもまた安全かと言われると微妙です。いずれにしてもフェルスタッペンは突っ込んじゃいかん。

 23周目、8位争いのベッテルと角田がターン1~2で接触。角田がウイングを落っことしてVSCとなります。角田はウイング無しで無事に1周して帰還、部品も回収して1周ほどで解除されました。ただ細かい破片が悪さをしないか気になります。
 角田には妙に迅速に5秒ペナルティー、レース後に本人も非を認めるコメントをしてベッテルには謝罪したそうですが、ターン1の進入で確かにロックさせてはいたものの、あの短いターン1~2の距離で、その手前で並んでいたベッテルに対して引いて無いから責任がある、というのはちょっと無理があるように思いました。
 そのベッテルはこの後キミ ライコネンと並走していて接触してしまい、右側がバリバリに壊れてターン13にでっかい部品を落っことしていきました。ライコネンは壁とベッテルに挟まれてしまいました。ベッテルは「ライコネンは下がるべきだった」と言っていますが、下がるにしたって場所はもう少し残してあげるべきでは^^;

 フェルスタッペンとハミルトンは1~1.5秒差で推移。緊迫した争いが続きますが、28周目にはこのベッテルの落とし物を拾うために2度目のVSC。この目立つ奴は回収されてすぐ解除されましたが、他にも縁石の上とかに見える大きさのものが転がっていて本当にこれで良いのか疑問です。ドライバーからも無線でクレームの電話が相次ぎます。既に現地時間は夜10時、運営も眠いのかもしれませんが、29周目にまたVSCとなりました。
 今回は入念に破片を回収したいのでVSCは延々と続いて33周目のリスタート。ハミルトンの方が少し速そうに見えるんですが、コースの前半部分では乱気流の影響と車両特性が相まって差が開いてしまうので、なかなかハミルトンもDRSを得るところまで迫れません。

 しかし35周目にまた落とし物。どうやらまだベッテルの車に脱落寸前の部品があったらしく、これによってまた短時間のVSCとなりました。ドライバーも集中力の維持が大変そうですが、このVSCの前にフェルスタッペンに迫っていたハミルトンがVSC終了後の37周目に最接近。ターン1で外から狙うとフェルスタッペンがやはり無理やり突っ込んで押し出し覚悟の自爆ブロック。
 ハミルトンは辛うじて接触を回避しましたが、これがさらなる信じられない展開に繋がりました。レッドブルはフェルスタッペンに対してハミルトンに順位を譲るように指示、レースディレクター側からの指示によるもので、これに従って最終コーナーの手前で早めに減速しました。しかしハミルトンの側にはこれが伝わっていなかったため、失速したフェルスタッペンと、なぜ急に遅くなったのかよく分からないハミルトンがお見合いのような状態に。すると、フェルスタッペンがブレーキを踏んでハミルトンが追突してしまいました。


 これでハミルトンはウイングの右側の翼端板がボロボロに。この件が審議となりますが、もはやなんと言っていいのか分からない状態です。トトさん激怒でヘッドセットをぶん投げました。でも後程またヘッドセットしているトトの姿が確認できましたので、2セット目のヘッドセットを投入したようです。1ストップ作戦ですね。


 42周目、また同じ場所でフェルスタッペンがハミルトンに譲る行動に出ましたが、譲った先の最終コーナーで飛び込んで抜き返すという荒業に出ました。ちょうどこのタイミングで、そもそもの発端となったターン1での攻防についてコース外走行で利益を得たとして5秒加算のペナルティーが課せられますが、さっきの接触がまた別件で審議対象となりました。そもそも規則で『順位を入れ替えたら1分間は抜いてはいけない』みたいな規則って作ったらダメなんですかね?

 続く43周目にフェルスタッペンは再度ハミルトンに最終コーナー手前で譲りますが、ここでもフェルスタッペンは譲ってるのにまたハミルトンの外側に無理に並ぼうとします。ハミルトンはもうなんかあったらたまらんのでさすがにキレたか、大外回りしてフェルスタッペンはコース外へ。

 それはそれとしてウイング破損の影響が気になったハミルトンですが、壊してなお速くてファステストを更新して差を広げます。フェルスタッペンの方はミディアムが厳しくなって来たようですが、さっきからゴタゴタやった結果3位のオコンが20秒後方で、さらにその1秒後方にボッタスもいていずれもウインドウ内にいるのでお馴染みプランFが使えません。
 独走するハミルトンですがウイングは段々部品をまき散らしているので、突然どっかでぶっ壊れる危険性もあり油断できません。フェルスタッペンはもっとペースが落ちているので、ハミルトンには縁石を避けるよう指示が出ます。それでもまだファステストを更新しているので、ひょっとしてウイングの細かい形状っていらないんじゃないかと思いますw

 ハミルトンはそのままトップでチェッカーを受けて今季8勝目、通算103勝目、そしてボッタスがなんと最後の最後、最終コーナーを立ち上がってからDRSを使ってチェッカー目前にオコンを抜いて3位となりました。ボッタスは2017年のアゼルバイジャンでも最終周のチェッカー目前にランス ストロールを抜いて3位になっておりこれが2回目の出来事です。トトは新しいヘッドセットで笑顔、オコンは無念、遺恨は遺憾。


 リキャード、ガスリー、ルクレール、サインツと続き、フェラーリは4戦連続で仲良く並んでのチェッカー&入賞。これは来年は1-2連発を期待できるんじゃないですか?え、無理ですか?フェルスタッペンにはレース後に10秒加算のペナルティーが追加されましたが順位には影響しませんでした。

 ハミルトンはファステストを含めた26点を獲得したので、8点差だったフェルスタッペンとの差が0となり、同点で最終戦を迎えることになりました。優勝回数ではフェルスタッペンが1つ上回っているのでタイ ブレーカーを握っていますが、これが効力を発揮するには同点で終わることが条件ですから、どちらも0点になるか、片方が9位、もう一方が10位とファステスト、という場面しかおそらく無いと思います。
 ですから、ほぼ確実に”最終戦で先にゴールした方がチャンピオン”となりそうです。もうNASCARみたいなもんですね。まさか、「このバトルの結末は、ダブルクラッシュと行こうぜ(悪い顔)」とかにならないといいんですが、いや、フォーミュラEのシーズン1であったなそういうの。。。
 なお、同点で最終戦を迎えるのは1974年のエマーソン フィッティパルディーとクレイ レガッツォーニ以来史上2度目の出来事だそうです。この年はエマーソンとレガの間で4度も1位が入れ替わり、3戦を残してレガが9点をリードしていましたが、これを続く2戦で2位、1位としたエマーソンが同点に追いつき、最終戦ではレガッツォーニがトラブルで11位、エマーソンは6位でエマーソンがタイトルを手にしました。この最終戦・第15戦アメリカではヘルムート コイニクの死亡事故がありました。
 

 予選のQ3以降、本当にフェルスタッペンとハミルトンしか映像で見た記憶がないぐらいずっとこの2人が映っていて、他のドライバーの姿をあまり覚えていないレースでした。よく言えば互いに引けない中での死闘とでも言うんでしょうが、残念ながら私には一線を超えた泥仕合に見えました。
 コース外での政治的な駆け引きが完全にコース上に伝播した雰囲気。以前にオートスポーツ誌でジャーナリストの方が「セナプロには無かったお互いへの敬意がこの2人には残っているのであんなことにはならないと思う」と言っていたと記憶していますが、残念ながら既にそれも消し飛んでいるように見えます。

 論点が多いですが、まず発端となったフェルスタッペンの無謀な防御、ぶつかってもいいや、という意図すら感じるものでしたし、それ以前の動きも強引なものが目立ちました。前回、フェルスタッペンがここに来て今季初めて焦りを感じて浮足立っているように感じる、と書いたと思いますが、予選でのクラッシュでさらに増幅されたように感じました。
 そして順位返還、そもそもハミルトンにちゃんと伝わってないというのが問題でした。ただ、ハミルトンも抜けばいいだけの話なのになぜかお付き合いして妙な時間が流れ、これも事故に影響しました。確かに、何の理由もなくいきなり前の車が失速したら驚きますが、トラブルだって起こり得るんですから、普通後ろに並びはしない気がします。
 フェルスタッペンが譲った後すぐにDRS検知点でDRSを拾い抜き返そうという魂胆があったので、ハミルトンがそれを阻止しようとした、という見方がありますがこれも正直分かりません。ハミルトン側はレース後にフェルスタッペンがDRSを得ようとしていたことを指摘しているので疑ってはいるようですが、あの瞬間にそう思って抜かなかったのかまでは不明です。
 フェルスタッペン側としても、「譲ってるのにいつまでも一緒についてきて変だ」と思ってブレーキを踏んだという可能性が絶対無いとは私には思えず、お互いの不信感の高まりと運営の失敗が全部重なった結果だったと感じました。
 ただ、ミラーを見て後ろにいること自体は把握しているので、急ブレーキを踏んだらぶつかることは想定できたはず。審議結果としては、2.4Gになる急減速をしたフェルスタッペンに接触の主な原因がある、ということですが、これそのものは間違った判断ではないのでしょう。それ以外の要素が多すぎるので、「その1点だけで問題を済ませて良いのか」と感じるところが最大の問題です。
 その後のフェルスタッペンのさらなる”譲ったフリ”などは敬意のカケラも感じなかったですし、チーム側ももう少し彼を制御しないといけなかったはず。接触してハミルトンがリタイアしてこれでチャンピオンが決まっていたら、タイトルと引き替えにレッドブルは相当色んなものを失ったので、むしろ同点になってくれて幸運だった、というぐらいの気持ちで最終戦に臨んでもらいたいです。

 で、そもそもをさらに巻き戻すと、これまで散々スタート直後を中心に低速コーナーでの押し出し攻撃を不問にしてきたことが、この局面でも接触覚悟の無茶苦茶な争いをお互いに繰り返す遠因になっています。何度も今年書いたと思いますが、その都度起こる「レースをさせろ」という批判を避けようとして起こった事案を流してきたツケが来ていると思います。

 そしてもう1つ、そもそもこのコースでF1を開催したことが問題だったと思います。開催権料が欲しい、パンデミックが収束しない中でも年間23戦に限りなく近い数を維持したい、変わったことをやりたい、そういった考えからの開催という面が大きいと思いますが、許容できる危険度を超えています。
 最初にも書いたように、『市街地と名乗ることで安全面をかなり削り取ることに成功した新設サーキット』に近いと言えます。ここでレースして良いなら、スポーツランドSUGOでもF1を開催できるんじゃないでしょうか。進むべき方向性がズレているように思います。
 レースを楽しむというよりもはや事故が起きないか心配して見ているような状態で、競技という枠からかなり外れてしまっている印象でした。


 さて、遺恨を持ったまま国境を渡りそうですが、いよいよ次戦が最終戦のアブダビです。一部の形状を変更したヤス マリーナでこの歴史的なチャンピオン争いにいよいよ決着がつきます。終わってほしくないような、もうこれ以上は心臓に悪いのでさっさと終わってほしいような、そんな複雑な気持ちです。

コメント

ウルミコス さんの投稿…
フェルスタッペンは贔屓目に見てもダブルクラッシュ上等の走りでしたね。
任意保険未加入の怪物みたいな振る舞いにもかかわらず、それを見事にいなして同点に持っていったハミルトンの凄まじさを改めて感じたレースでした。
結果的に来週はchampionship2ですが、綺麗に終わる気がしませんね(っ ◠‿:;...,
SCfromLA さんの投稿…
>ウルミコスさん

 NASCARみたいに晴れ晴れした気持ちで終わりたいものです。ちょうどレイアウト変更した箇所で何か起きたりしようもんなら目も当てられないですね。あ、次のミニカーは1974年のレガッツォーニとかどうですか、売ってるか知らんけどw
って話を落とそうと思ったら、検索ですぐ出て来るぐらい本当にこんな時代のF1でも買いたければ買えるんですね、ミニカー沼恐ろしや(っ ◠‿◠ c)