各国のレースはシーズンが概ね終了している状況ですが、ということはABB FIA フォーミュラE 世界選手権の新たなシーズン、通称シーズン8の開幕が迫ってきました。新しいカラーリング、ドライバーが小出しに発表されて体制が固まって来たので、自分へのメモを兼ねてまとめておきます。開幕して色とドライバーを覚えるまでにだいたいシーズンの7割ぐらい消費され、やっと覚えた頃にシーズンが終わるんですよね^^;
もうすぐ25歳になるアスキューは2019年のインデイー ライツのチャンピオンで2020年にインディーカー シリーズにアロウ マクラーレンSPから参戦したものの、インディアナポリス500での事故の影響で脳震盪の症状が出て後に数戦を欠場。結局2021年のシートは手に入らず、怪我をしたドライバーの代役等で5戦に出場するにとどまりました。名門アンドレッティーで新たな挑戦となります。
11月16日、ドラゴン/ペンスキー オートスポートはアントニオ ジョビナッツィーと契約したことを発表しました。現在アルファロメオからF1に参戦しているジョビナッツィーですが、同日にチームは2022年に周 冠宇(ヂョウ グァンユゥ)と契約したことを発表して、ジョブナッシーになったことが明らかになっていました。この発表をもって、ドラゴンとの契約締結も情報が解禁されたわけですね。
ドラゴンはセルジオ セッテ カマラが継続起用されるため、シーズン8はセッテカマラ/ジョビナッツィーのコンビとなります。ところで、ジョビナッツィーと言えばグリッド紹介画面でのマフィアにしか見えない立ち絵が一部で大人気ですが、今回の発表に際したジョビナッツィーのツイート。たぶんドラゴンとしての公式の素材だと思うんですが、
It’s going to be thrilling 👌
— Antonio Giovinazzi (@Anto_Giovinazzi) November 16, 2021
It’s going to be challenging 💪
It’s going to be: …….electrifying!!!!!! ⚡
Non vedo l’ora di iniziare questa nuova avventura, ci sarà da divertirsi, insieme, come sempre 💙#AG99🐝 #dragonpenskeautosport #formulae pic.twitter.com/2mQ1WEtvF0
なんか期待通りすぎて笑えます。
一方同じくアメリカ拠点のチーム・アバランチ アンドレッティー フォーミュラEは11月24日、オリバー アスキューが加入することを発表しました。昨シーズンまでBMWと手を組んでいたアンドレッティーは同社の撤退に伴い新たなスポンサーとカラーリングとなっています。
アバランチは高速・低コストでブロックチェイン技術を提供するITプラットフォーム企業だということです。アバランチは雪崩という意味の単語ですね。企業ロゴに合わせて赤色をベースとしたペイント スキームになりました。
アスキューの加入を伝えるツイートと 新しいペイントスキーム |
もうすぐ25歳になるアスキューは2019年のインデイー ライツのチャンピオンで2020年にインディーカー シリーズにアロウ マクラーレンSPから参戦したものの、インディアナポリス500での事故の影響で脳震盪の症状が出て後に数戦を欠場。結局2021年のシートは手に入らず、怪我をしたドライバーの代役等で5戦に出場するにとどまりました。名門アンドレッティーで新たな挑戦となります。
チームは昨年シーズンに総合3位となったジェイク デニスが残留しており、伸び盛りのデニスと新人のアスキューという組み合わせに、BMWが置いて行ったパワートレインで戦うことになります。
11月25日には、NIO 333 FE チームがダン ティクトゥムの加入を発表しました。現在22歳のティクトゥムは2017年にマカオGPで優勝、最終周の最終コーナーで優勝争いをしていたフェルディナンド ハプスブルグとセッテカマラが事故った結果、3位にいた彼が漁夫の利で勝つというなかなか歴史に残る出来事でした。
この後レッド ブルのジュニア ドライバーに選ばれて2018年のFIA F3で4勝を挙げてシーズンで2位、マカオでは連覇を達成。一時はトロ ロッソのドライバー候補にも名前が挙がる存在でしたが、2019年に日本のスーパーフォーミュラで結果を出せず、その際の態度がよろしくなかったこともあって唐突にシーズン中にもかかわらずジュニアの契約を解除してレッドブルを追放されました。
その後ウイリアムズのテスト/開発ドライバーとなるも、今度は『ゲーム実況中にニコラス ラティフィーを馬鹿にする』という問題行為を起こし、それ以外にも問題があったようでこれまた解雇。
そもそも、2015年にカートからMSAフォーミュラというカテゴリー(現在のイギリスF4)にステップ アップした際にも、
接触で順位を下げる→SC導入→追い越し禁止を無視して抜きまくる→接触相手のところまで追い上げてぶつける
という問題行為を起こして2年間の出場停止処分を受けたところからキャリアが始まっており、基本的に素行が問題視されているドライバーと言えます。若くして成功し順調に階段を駆け上がったが故に、問題があると他者や道具のせいにしてしまう利己的な考えが直らない、と客観的には感じます。
そんなティクトゥムが果たしてフォーミュラEで上手く行くのか私には不安しかないですが、これでNIOはチームに所属して8年目を迎える・オリバー ターベイとティクトゥムのコンビとなります。
では改めてここから現段階でのチームごとの顔ぶれやスポンサーなんかを確認していきます。
・Avalanche Andretti Formula E
Jake Dennis
Oliver Askew
アンドレッティーは上述の通りデニスとアスキューのコンビ。ちなみにマイケル アンドレッティーはF1への参入を目論んでアルファロメオの買収交渉を行っていたようですが破談しています。
・Dragon/Penske Autosport
Sérgio Sette Câmara
Antonio Giovinazzi
ドラゴンはフル参戦2年目、通算では3年目のセッテカマラとジョビナッツィー。最初に上げたあの写真がそのまま公式サイトの顔写真になっているので、ドライバー/チーム一覧で彼だけ顔が白黒になっていてちょっと笑えますw
・DS Techeetah
António Félix da Costa
Jean-Éric Vergne
DSテチーターは変わらずアントニオ フェリックス ダ コスタとジャン エリック ベルニュのコンビが継続されますが、状況は平穏ではありません。チームは財政難から売却交渉を行っていたもののこれが頓挫したと伝わっており、両ドライバーともチームの将来性への不安からできれば他に行きたい意向がメディアに伝わっています。
ダコスタは、ニック デ フリースがチャンピオンを手土産にウイリアムズのF1へ転向するのであれば、空いたメルセデスEQへの移籍を目論んでいたようですが、結局ウイリアムズとメルセデスはアレクサンダー アルボンを選んだので早々に計画が潰えました。
ベルニュの方もプジョーのハイパーカーにさっさと専念してしまう可能性が指摘されていましたが、とりあえずシーズン8は2人とも元のシートに落ち着いた格好です。
・Envision Racing
Robin Frijins
Nick Cassidy
フォーミュラEが始まった最初のシーズンからバージン レーシングとして活動し、昨シーズンはエンビジョンをタイトル スポンサーに迎えていたこのチーム。シーズン8ではバージンが抜けて、チームはエンビジョン レーシングという名称になりました。ドライバーはロビン フラインスとニック キャシディーで継続です。
日本でエンビジョンと言うと英会話教室の会社ですがそれとは全く関係無く、中国の車載系電池大手企業。日本では日産とNECがリーフ用のバッテリーを製造するために立ち上げたAESCという企業がありましたが、この会社もエンビジョンが買収して、現在はエンビジョンAESCという名称でバッテリーの製造を行っています。
さらに驚かせたのが、エンビジョンが新体制やペイントスキームの発表を行った場所で、なんと国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の会場でした。
'And we go GREEN'... 🚦🟢😜
— Envision Racing (@Envision_Racing) November 1, 2021
Introducing our new livery for Season 8 of the @FIAFormulaE World Championship. #abbformulae pic.twitter.com/OFYhsUvs17
さらに現地では競技車両とは別に、2人乗りのEVフォーミュラ車両や廃プラスチックを使用して作ったフォーミュラE車両を展示するなど、今後の自動車業界の覇権を争う企業だけにかなり熱心に気候変動についてアピールしているようです。日本の帝人もスポンサーで、プレス リリースでCOP26での展示車両使われている素材なんかの情報をあげています。
全くの余談ですが、現在フォーミュラEで使用されているバッテリーはアメリカのルーシッドという会社のものが使用されていて、ルーシッドは2021年7月23日にSPAC(特別目的買収会社)との合併でニューヨーク証券取引所に上場、『次のテスラ』と注目を集めています。エンビジョンもこういう供給元になって名前を売りたかったりするんでしょうかね?
・Mahindra Racing
Oliver Rowland
Alexander Sims
マヒンドラは日産e.damsからオリバー ローランドが移ってきました。チームとしてはGen3車両となるシーズン9以降に向けての体制構築も行っているようで、そのあたりが魅力的に映ったのかもしれません。アレクサンダー シムズは通算4年目、マヒンドラでは2年目のシーズンです。昨年までより赤が強めの車でのシーズンとなります。
Say hello to @MahindraRacing's distinctive new livery for Season 8 👌⚡️ pic.twitter.com/GzPYB2jHx1
— ABB FIA Formula E World Championship (@FIAFormulaE) November 18, 2021
Oliver Turvey
Dan Ticktum
NIOは先に書いた通りターベイとティックトックみたいな名前の人のコンビとなります。チーム体制にかなりテコ入れを行ったようで、成績は今一つなんですがGen3規定への参戦意思表明も早くて参戦意欲はかなり強いです。情報が少ないのでなにゆえそうなってるのかよく分かりませんが、Next EVとしてフォーミュラEに参戦していた1年目には市販車の1つも無かったものが、今ではそこそこ事業として成立し始めてヨーロッパにも進出する予定だそうなので、中国企業にとってこのプラットフォームは魅力的なのかもしれません。
・Nissan e.dams
Maximilian Günther
Sébastien Buemi
日産e.damsはセバスチャン ブエミが引き続き参戦。相棒は昨年BMWにいたマキシミリアン グンターが移籍してきました。何人か候補がいて、ルーカス ディ グラッシもその中の1人だったようですが、あれこれと話が進む中で手に入れたのがグンターでした。彼も速いし24歳で伸びしろもありそうなので、良い契約をまとめた印象です。そして、シーズン8のペイントスキームも公開されました。
着物に着想を得たそうですが、よくわかりませんw とりあえず赤い面積が増えました。マヒンドラと見間違えないように気を付けます。そういえば日産は2007年にルノーとともにマヒンドラと提携してチェンナイに工場を作り低価格車の共同開発も目指しましたが、マヒンドラが2008年にここから手を引いてしまった、ということがありました。絶対見間違えたらあかんやつや!【Formula E】
— NISMO_11/27-28_S-GT最終戦@FSW (@NISMO_JP) November 23, 2021
日産e.dams、新しいマシンのカラーリングを公開https://t.co/fWRFCAha5s#NissanFormulaE #FEjp #FormulaE @NISSANJP @FIAFormulaE pic.twitter.com/2uF7X6BpZu
その後日産は同年に同じくインドのバジャジ オートという企業と提携して低価格車両を発売しようとしましたが、これも結局うまくいかず2012年に提携を解消しました。マヒンドラと一緒に作ったルノーとの合弁工場は今もたぶん現役です。
・Jaguar TCS Racing
Mitch Evans
Sam Bird
ジャガーは新たにタイトルスポンサーとしてタタ コンサルティング サービシーズというインドの企業を迎えました。ドライバーは変わらずに、昨年チャンピオンに片手が届いていた私の推し・ミッチ エバンスと、1年目から参戦し続けるサム バードの強力コンビです。
TCSは日本でも中嶋レーシングのスポンサーとして知られていますね。タタはインドでも最大手の財閥系企業グループで、グループ企業のタタ モータースは2008年に日本円で30万円を切る超低価格車・ナノを発売したことで知られています。まあ、結局思惑が外れてあんまり成功しなかったんですけど、上に書いた日産のインド低価格車戦略もタタへの対抗が目的でした。
ジャガーランドローバーは現在はそのタタモータースの傘下なのでジャガーから見ると親会社ですから、そういう関係もあるのかもしれませんね。なお車の見た目はあんまり変わっておりません。
・Rokit Venturi Racing
Lucas di Grassi
Edoardo Mortara
ベンチュリーにはアウディーの撤退に伴って仕事探しをしていたディグラッシが加入。エドアルド モルターラとの組み合わせです。ずっとアウディーで参戦していたディグラッシは初めての他所のチームからの参戦となりますが、顔ぶれとしてはけっこう強力です。おかげでノーマン ナトが弾き出されたわけですが^^;
チームはこのオフにトップが交代し、これまでチーム代表だったスージー ウォルフが最高経営責任者へ、そして副代表だったジェローム ダンブロジオがチーム代表に就任しました。どういう効果があるんか知らんけどw
ベンチュリーもCOP26で講演を行って、スージー、ダンブロジオ、ディグラッシがしゃべってたそうです。なんだ、COP26ってフォーミュラEファンが行くと楽しい場所じゃないですか!(え)
・TAG Heuer Porsche Formula E Team
André Lotterer
Pascal Wehrlein
ポルシェは変わらずタグ ホイヤーをタイトルスポンサーに掲げてアンドレ ロッテラーとパスカル ベアラインのコンビ。シーズン6の開幕戦でいきなりロッテラーが2位になった時には活躍を想像したもんですが、結局2シーズンで表彰台はこれを含めて4回で未だに優勝できていません。
開発領域が限られたレースとは言え、マネージメントなどのこまかーーーいセットの積み上げにおいて、やはり既存のチームの経験値に比べると負けている部分があって苦戦しているみたいですね。
ポルシェはGen3規定での参戦意思を表明してはいるんですが、F1が2026年からパワー ユニットを簡素化してMGU-Hを廃止、代わりに電動モーターにさせる仕事を増やす方向に動いたことでF1参戦の噂が再燃。さらにLMDhでの耐久レースの活動も始まるので、どっかしらでフォーミュラEを去るのではないかと既に言われ始めています。とりあえずGen2最終年で1勝しておきたいですね^^;
・Mercedes-EQ Formula E Team
Stoffel Vandoorne?
Nyck de Vries?
メルセデス-EQはシーズン8をもってフォーミュラEから撤退することが決定しています。ドライバーはおそらくデフリースとストフェル バンドーンで変わらないと思われますが、まだ発表が無い状態です。2人とも既に来年以降を見据えているのか、11月29日~12月2日にフォーミュラEのシーズン前テストがあるにもかかわらず、12月6日にシーブリングで行われるインディーカーのテストに参加予定。先にも書いた通りデフリースはウイリアムズからF1に参戦する道を模索していたので、それが叶わずに違う道を探しているようです。
メルセデスに関しては、撤退後もトト ウォルフあたりが個人的にチームを買収して、プライベーターとして引き続き設備を使って参戦を継続するのでは、とか、ローレンス ストロールがお金を出して、今後電動化する予定のアストン マーティンの名前で参戦する気があるんじゃないか、とか別のプランの噂も出てはいますが噂の域を出ません。
既に目の前のシーズンに関する情報が少ないだけでなんだか不安になりますが、チャンピオンなので今シーズンも憎たらしいぐらい速い姿を見せてもらいたいですね。
と、今のところこんな感じです。メルセデスの2人はこっちのテストには参加するんでしょうか^^;
コメント
もしティクタムがベルニュと組んでたらレースに世紀末感が出てある意味楽しみでしたが!
来シーズンはバードに加えて我らの推しが1人増えてますます楽しみですな笑笑
去年も既にマヒンドラとドラゴンの区別がつかなくて困ったのに、アンドレッティーまで赤で新規参戦するのは勘弁してほしいです笑
もう既にティクタムが苛立ってガッシャンやる未来しか見えないんですが^^;