フォーミュラE、"Gen3"のイメージを公開

 ABB FIA フォーミュラE 世界選手権は11月29日からシーズン8に向けてのテストが始まりました。メルセデス-EQもちゃんとニック デ フリースとストフェル バンドーンが走っていて一安心です。彼らはテスト項目が最初からレース想定で初日のタイムは見た目上えらく遅いんですが、それだけ既にレースを見据えてるんでしょう。
 新たな予選制度の模擬戦も行われたようで、開幕に向けて運営面でも問題点の洗い出しが始まったなという印象ですが、そんな中でFIAとフォーミュラEはシーズン9から導入される新車・通称Gen3のイメージと概要を公開しました。ティーザー画像とかいうやつですかね。


 というわけで、今回明かされた内容などをメモしておこうと思います。このご時世ですので、かなり『持続可能社会に対応したレーシング カー』であることが強調されているのが特徴的と言えます。箇条書きされた発表内容をそのまんま訳しますと

・世界で最も効率的なレーシングカー- レース中に使用されるエナジーのうち少なくとも40%はレース中の回生ブレーキによって生み出される
・フロントとリアの両方にパワートレインを備えた最初のレーシングカー:リアの350kWに、新しくフロントに250kWのパワートレインが加わり、回生能力は現行のGen2車両の2倍以上となる合計600kWに達する
・フロントにパワートレインと回生機構が追加されたため、リアに油圧ブレーキを搭載しない初のフォーミュラ カー
・最高出力350kw、最高速度200mphで、同等のパワー ウエイト レシオを持つ350kWの内燃機関エンジン車両と比較して2倍の効率を発揮する電動モーター
・Gen2と比較して小型で軽量
・車両はネット-ゼロ カーボンで、ネットゼロカーボンとして認定された最初のスポーツとしてのチャンピオンシップの価値を維持
※フォーミュラEは2020年に認証団体からネットゼロカーボンと認定されている
・破損した全てのカーボン ファイバー部品は航空宇宙産業の革新的な取り組みによってほかの用途に再利用可能な新しいものにリサイクルされる
・先進的な取り組みにより26%の持続可能な材料がタイヤの構造に組み込まれる
・Gen3は内燃機関を大きく上回る効率的な電動モーターを搭載。電気エナジーの90%以上を運動エナジーに変換できる。高効率な内燃機関でも熱効率は40%
・全てのサプライヤーは持続可能なKPI(重要業績評価指標)を遵守しており、シーズン9までにFIAの三ツ星環境認定認証を取得

 とこんな感じになっています。エナジー効率に関しては電気自動車と内燃機関ではだいたいそういう数字になるのは昔から分かってるので、なんかついでに情報を盛っただけ感があるなと思いました。問題はその電力を何でどう作っているか、ですからね。
競技車両に関する内容だけかいつまむと
・フロントにもMGUが搭載される
・最高出力が250kW→350kWに向上
・どのぐらいか分からんけど軽く小さくなる
の3つぐらいしか分かっていないわけですねw 過去に出された見通しでは、Gen3ではバッテリーのレース中の急速充電が行われるという話もありましたが、今回の発表にそうした内容はまだ盛り込まれていないので不明です。バッテリーの容量も分かりませんね。フロントにも動力を追加して軽くするってそうとうな技術的進歩が必要な気がしますが何がどうなってるのかめっちゃ気になります。

 FIAの会長・ジャン トッドは
「新しいGen3のフォーミュラEシングルシーターは、高性能、効率、持続可能性の交差点で作成された車です。8シーズン前にこの分野が開始されて以来、FIAのチームがフォーミュラEとともに達成した作業は、革新を推進し、持続可能なモビリティの開発を促進することを絶え間なく追求しています。この新しいシングルシーターがフォーミュラEを次のレベルに引き上げることは間違いありません。」

 また、フォーミュラEのCEO・ジェミー ライグルは
「Gen3車の設計では、高性能、効率、持続可能性が妥協することなく共存できることを実証するように着手しました。FIAと協力して、世界で最も効率的で持続可能な高性能レースカーを製造しました。」
「Gen3は、これまでで最速、最軽量、最も強力で効率的なレーシングカーです。これはその生息地:ホイール トゥー ホイールの市街地レースのために生み出された獣です。ABB FIAフォーミュラE世界選手権のシーズン9から、世界中の都市で次世代のモータースポーツファンを刺激し、興奮させるのを目の当たりにすることを楽しみにしています。」

 ここからは過去に発表されたGen3の情報なども併せて見て行きます。まず画像を改めて眺めますと、真っ暗で何も分かったもんじゃないですが

 ウイングがあるようには見えないですね。まあ今の車でもウイングと呼べるかは既に微妙なぐらい独特の形状なんですけどね。なんとなく、どの角度から見ても『V』が感じられるようなデザインになっている気がします。LEDライトの使用箇所も増えてますが、単なるイメージ画像だけの話かもしれません。あ、私芸術とか美術とか一番ダメな分野なので参考にならないですよw


 真上からの画像だとタイヤがはっきり見えているので、ホイール カバーは無いか、より小さくなっている可能性がありそうです。元々Gen3への繋ぎとしてGen2Evoという小幅に変更した車両が使用される予定だったものがパンデミックで無くなりましたが、Gen2Evoのイメージでもタイヤは露出していました。
幻になったGen2Evoのイメージ

 確認しておくと、シャシーを作成するのはこれまでと同様にスパーク レーシング テクノロジーズが担当します。SRTは現在アルファロメオF1チームの代表を務めるフレデリック バスールが設立した企業で、FIA F2選手権などに参戦しているARTグランプリもバスールのチームです。このスパークがダラーラの協力で作成したシャーシで、Gen2シャーシの正式名称は"スパーク SRT05e"という名前です。
 バッテリーは現在はマクラーレン アプライド テクノロジーズが供給していますが、このバッテリーは基本的にアメリカのルーシッドという会社が開発、作成したものです。しかしマクラーレン/ルーシッドの協力関係はどうやら解消されたらしく、新規則でバッテリーを供給するのはウイリアムズ アドバンスド エンジニアリングとなります。
 また、シーズン1からタイヤはミシュランが供給してきましたが、シーズン9からのサプライヤーは韓国のハンコックとなります。

 TheRaceによれば、SRTはカモフラージュを施した車両でのテストを10月から開始しているほか、ハンコックのタイヤについては旧型GP2車両を改造した実験車両を使って年初からテストが行われているとのこと。試作車両のテストには、日本でもおなじみのブノワ トレルイエが起用されているそうです。

 同じくTheRaceによれば、今回の発表で初めてGen3を目にしたメルセデスEQのチーム代表・イアン ジェームスは
「非常に迅速にGen4を検討し始める必要があると考えています。 時間軸を考えると、電気自動車産業の発展のスピードを考えると、私たちはその栄光に頼ることはできません。」
と、急速に進展する電気自動車の市場を考えると、先手を打って行動する必要があると指摘しました。ジェームスはメルセデスがメーカーとして撤退して以降もプライベーターとして参戦する道を模索しているとされており、将来への提言からは彼が今年限りで去る存在ではない様子も感じます。さらにジェームスは
「我々は3つの仕事の流れを用意する必要があります。Gen4を可能な限り早く立ち上げることと、基本的な疑問点として技術的な焦点はどこにあるのか、そして将来的に我々はどこでレースをするのかです。」と付け加えました。

 Gen3車両は来年の5月ごろにはチーム側に引き渡される見通しだということで、運営側でのテスト期間はあと半年とそれほど長くはありません。さらにGen4のことも考えだすとなるとなんだけ手に負えない気もしますし、来年になったらやれ車が届かないだの問題が出ただのという話がありそうですが、次の情報に注目です。

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