Formula 1 Ooredoo Qatar Grand Prix 2021
Losail International Circuit 5.38km×57Laps=306.66km
winner:Lewis Hamilton(Mercedes-AMG Petronas F1 Team/Mercedes-AMG F1 W12 E Performance)
2021年のF1もいよいよ最終盤を迎えました。第20戦は初開催のカタール。元々は日程に組み込まれておらず、いくつかのイベントが中止になったことを受けて追加されたものです。今回の開催だけでなく、2023年からの10年間の開催契約も結ばれたと発表されており、再来年からはお馴染みのイベントになるようです。
ちょうど決勝日の11月21日は、2022年のFIFA ワールド カップの開幕までちょうど1年というキリの良いタイミングで、その関係のゲストがいたり、選手もPK対決していたり、カタールが全面アピールしてる感じです。
舞台となるロサイル国際サーキットは2004年に開場、MotoGPが開催されている基本的には2輪を走らせるトラックで、中高速コーナーが多くてすんごい速度でコーナーを駆け抜けていく、というターン1を過ぎたら一か所も抜ける場所がなさそうな形状です。
2009年にGP2 アジア シリーズを開催しているのが唯一と言える高レベルのフォーミュラのレースでした。この時にレース2で優勝したのが現在レッド ブルのドライバーであるセルヒオ ペレスでした。当時19歳ですかね。レース1の勝者はニコ ヒュルケンベルグ、シリーズのチャンピオンは小林 可夢偉でした。
パストール マルドナード、ジェローム ダンブロジオ、山本 左近、エドアルド モルターラ、ビタリー ペトロフ、あたりも参戦していたようです。後にF1やフォーミュラEで優勝していたり、国会議員になったりしてる面々ですねえ。
また、このイベントにはスピードカー シリーズという元F1ドライバーなんかが参加していたストック カーによるレースも併催されていて、ジャンニ モルビデリ、ジョニー ハーバート、ジャン アレジ、ハインツ-ハラルド フレンツェン、さらにはこのレースだけのスポットで、あのダカール王者・ナッサ― アル アティアーも参戦した記録があります。
ちなみに、コース名はロサイル(Losail)と表記されていますが、この都市の名前はルサイル(Lusail)と表記されています。実際、F1の方も
Losail International Circuit,Lusail
って書いてますね。中東地方の言語は西ヨーロッパ系言語とは異なるので発音を英語に置き換える時にどう表すかで変わるんだと思いますが、ワールドカップのために作ったスタジアムもルサイル表記なのに、ここだけなぜロサイルなのか疑問が解けません。好き好きにみんなが書いてるんじゃなくて、サーキット側が自分で英語表記をこうしてるわけですからね。
さて、ロサイルといっぱい書いてるとミサイルに見えてくるのでこの辺でおいといて本題へ。予選ではQ2で波乱。上位チームはミディアムでアタックする中、ロサイル経験者のペレスがミディアムでの1回目のアタックで不発に終わると、ソフトで走った2回目のアタックでもまさかの不発で11位。アウト ラップで渋滞にハマって思ったようにタイヤの温度を上げられなかったとのことです。私、画面見ながら「ソフトで行くならさっさと出てクリアな場所を走った方が」なんて呟いてたんですが、その通りになったようです^^;
さらにシャルル ルクレールも苦戦を強いられ、ミディアムでの1回目のアタックではカルロス サインツに0.9秒も差を付けられて「どうやって0.9も上げるのか分からん」とお手上げモード。ソフトでもタイムが伸びずこちらも13位でQ2敗退となりました。
Q3ではルイス ハミルトンが1回目のアタックでセクター1からバッタバタになっており、これアタック止めるんちゃうんか?とすら思いましたがなんとこれで最速タイム。当然2回目はもっと速くなるわけで、唯一の1分20秒台を記録し、2位のマックス フェルスタッペンに0.4秒もの大差をつけてPP獲得となりました。笑うしかなかったですねw
さらに問題は続きました。この最後のアタックで攻めすぎたピエール ガスリーが最終コーナーの1つ手前、ターン15の出口ではみ出してフロント ウイングを縁石に当ててしまい木っ端みじんに。これで自分のタイヤを切ってしまい、そのままターン16を立ち上がった後コースの内側に停車。
これで黄旗が出たものの、すぐに解除されたのか我々が見る画面上ではトラックはクリアーとされていて、後続のドライバーがそのままアタックを完了していきます。マックス フェルスタッペンはここでタイムを更新したもののハミルトンには全然届かず。
ところが、実はこの時にストレート上のマーシャルは黄旗を2本振っていました。減速義務があったわけです。しかしコース脇の電子パネル、車内のディスプレイ、ドライバーのイヤホンに入力される警告音など、電子的な部分は早々に黄旗解除扱いとなっていて、ここが黄旗区間であることを示していませんでした。しかし、旗も電子パネルも意味合いは同じ、さらに言えば電子的なものはあくまで補助なので、マーシャルが旗を振っていればそれが規則になります。
こちらがF1公式サイトに上げられた動画、分かりやすく印をしてくれていますが、左側に旗を振っているマーシャルさん、右には緑色になったパネルがあり、その奥に車が停止しています。内容があべこべになっているわけですが、従うべきは旗の方です。
が、現在はおそらくドライバーを含む多くの人は現実には視認性の高い電子パネルや手元のディスプレイを判断材料の主力にしていると思われます。またドライバーとするとこの状況ではやっぱり右奥の車が目に入り、そしてその手前のパネルを見ることになりそうなので、意識としては
「あれ、右に止まっとるな、でも緑だよな、まあいったれ」と、ほんの一瞬の時間しかないですから思いがちですし、下手をしたらガスリーの車に目が行ってる間に黄旗は見落とした可能性もありそうです。実際、同じく黄旗無視の嫌疑をかけたれたバルテリ ボッタスは調査に対して見落としを認めました。
レッドブルの方は電子的な仕組みが機能していなかったことを考慮するよう求めたものの認められず、フェルスタッペンは5グリッド、ボッタスは3グリッドの降格処分が課せられました。カルロス サインツも嫌疑がかけられましたが、こちらは黄旗は見落としたけど止まった車を見て減速は行ったと認められ罰則はありませんでした。
元々レッドブルはフリー走行でリア ウイングに問題があって、DRSが動かないなど強度か何かに不具合があって走行時間を失うなど満足いく週末になっていない中でさらなる痛手。苛立ちが募ったか、代表のクリスチャン ホーナーがマーシャルの行為を非難するコメントをして戒告処分を受けるなど、どうもウイングも人間もバタついていました。
FP3、作業を見られたくないために 人間の壁を設けるレッドブル陣営 |
この降格により、グリッドはハミルトン、ガスリー、フェルナンド アロンソ、ランド ノリス、サインツ、ボッタス、フェルスタッペン、という順位となりました。2~4位の3人はソフトでのスタート、戦略としては2ストップが予想されています。
スタートから元気だったのはアロンソで、ターン1ではガスリーを抜けませんでしたがターン2で大外刈りして2位へ。フェルスタッペンもターン1をインベタで走ったら前に誰もいなくて順位があがり、インベタすぎてアロンソに気づいてもらえずうっかり押し出されたもののいきなり4位になりました。一方ラーメン屋は豚骨スープでもこぼしたか蹴り出しが遅すぎて11位に後退。
いかんせんアロンソはトップ2チームに対抗できる車ではありませんのでハミルトンは悠々リード。一方フェルスタッペンはガスリーにちょっと詰まりますが、3周目の最終コーナーでガスリーが思いっきりミスってはみ出したので4周目のターン1で抜いて行くと、続く5周目にアロンソも抜いて、ハミルトンから4秒差の2位となります。アロンソの敵はガスリーですから無理しないですよね。
ハミルトンとフェルスタッペンは1分28秒台前半、アロンソ以降は1分30秒台後半、と完全に別次元のレースが展開される中、ボッタスはなんとか2台抜いて9位、ペレスは6位です。当面トップ2には関係しそうもありません。
意外とDRSを使ったターン1での追い抜きはできるようで、16周目にはペレスが4位まで挽回、一方ハミルトンは小刻みにファステストを更新しながらフェルスタッペンを引き離していきます。この段階で8秒差になりました。3位のアロンソは既にハミルトンの30秒以上後方です。というわけで、17周を終えてお手上げのフェルスタッペンが先にピットに入りました。ミディアムからハードへ。
一方ハミルトンはファステストをなおも更新していて「タイヤはまだいいぞ、さっさと入れるようなことはするなよ」と伝えますが、やっぱり相手に合わせる戦略にした方が安全なのでピットに呼ばれました。「ピットに入るの早すぎるんじゃないの」と予想通り文句を言うハミルトンに対し、ピーター ボニントンは「じゅうぶんなペースを持ってるから」。
ボッタスの方はどうやら1ストップで状況を打開したいと考えているようで、リカルド ムスコーニは無線で「フェルスタッペンは2ストップのようだからチャンスはあるぞ」。いや、でもこの段階でフェルスタッペンはボッタスの12秒前方、お互いあと1回のピットを残しているなら条件は同じで、フェルスタッペンの方がペースが良くてタイヤも新しい。ボッタスにどうチャンスが・・・?その電話、詐欺です!しかも冷却が苦しいのか直線でわざわざ汚れたラインを通ってる^^;
当初2ストップ推奨とされたレースですが、中団勢はやはりトラック ポジション重視の1ストップで行こうとしている人が多く、ソフトでスタートしたアロンソも23周目まで引っ張ってピットに入りました。それも、自己ベストを徐々に更新しながらここに辿り着いていて、タイヤをしっかりと管理できていることが伺えます。エステバン オコンも同様。一方アルファタウリは2人とも2ストップ戦略で、大きく考え方が分かれました。なおピレリは1ストップを推奨していません。
第2スティントのトップ2は互いにファステストを奪いあいながらの争い。ピット前に9秒ほどだった差はピット後に8.5秒となり、これを徐々にフェルスタッペンが詰めて行きます。
33周目、スタートからまだピットに入らずに走り続けていたボッタスの左前輪が限界を迎えてしまったようでパンク。コース外に飛び出した上に、そのまま車が傾いた状態で半周ほど走行、やっぱり詐欺被害に遭いました。これがあるからピレリは1ストップをおススメしていなかったんですねえ。ボッタスはチャーハンを炒めて、じゃなくて車を傷めてしまい結局リタイアとなります。
再び優勝争い、フェルスタッペンは一旦ハミルトンとの差を7秒以内にまで詰めましたが、ここから追い返されてまた8.5秒差になります。無線では「ちょーーーっとずつバイブレーションがある」。変に意地を張ってタイヤが爆発したら大変なので、無理せず早めにタイヤを換えてもよさそうです。
41周目、ここでフェルスタッペンはピットに入ってミディアムへ。2.1秒の驚きの速さで作業を終えました。これを受けてハミルトンも翌周にピットに入りました。作戦完全コピーでフェルスタッペンには何もできそうにありません。ただフェルスタッペンから後ろが離れすぎているので、最後にファステストの1点を取りに行く環境は整っています。
3位は引き続きアロンソで、後ろのノリスに対して差があるので3位を確保できそうな環境にあります。自分でもその自信はあるようで、無線で「エステバンにライオンのように守れって伝えてくれ」、とエステバン オコンに対して発破をかけています。
ちょうどその頃オコンには2ストップのペレスが追い付いてきていましたが、さすがにこれを守るのは無理でした。抜かれた後に妙に粘って抜き返そうとしましたが、これやると後ろからランス ストロールが追い付いてきます。まさか無理して先輩の助言を守ろうとしたわけではないでしょうが・・・^^;
アロンソに対しては、無線で「可能なら高速コーナーでの縁石を避けてくれ」という指示。すると50周目に、1ストップかと思われたノリスがなんとあと8周なのに2回目のピット。パンクが原因でした。4位を手放すことになったノリスはこのレース9位で終えました。
さらにジョージ ラッセルもパンクでこちらはコース外へ飛び出し緊急ピットすると、翌周にはなんとニコラス ラティフィーもパンク。まかさのパンク祭りになってしまいました。こちらは運悪く最終コーナーでパンクしたため、1周できずコース外に車を停めてしまいます。なんかマーシャルさんが遠巻きに眺めてるけど大丈夫かな^^;
ハードもミディアムも30周ほど走ったところで壊れてしまう現象が連発し、もうあと5周ほどのレースですが1ストップ勢は爆弾を抱えたような状態になります。アロンソは「俺は走り切れるの?無理なの?」。大丈夫だけど、左フロントの縁石は避けてね、という回答が来ますが、そうこうしているうちにVSCとなりました。さっきのラティフィーの車を撤収するためでした。判断が遅い^^;
この間にフェルスタッペンはピットに入ってソフトへ交換。既にファステストは持ってるんですが、とどめを刺しに行きました。VSCが解除されてそのままハミルトンが悠々とトップでチェッカー、今季7勝目を挙げました。これでハミルトンはF1で優勝を上げたサーキット数が30となりました。
フェルスタッペンは2位とファステストにより19点を獲得。2人の点差は6点縮まって8点差となりました。残り2戦で8点なので、まだ双方に自力チャンピオンの可能性がある状態となっています。
そして3位にアロンソが入り、フェラーリ時代の2014年第11戦ハンガリー以来105戦ぶりの表彰台となりました。これはF1史上最長のブランクです。フェルスタッペンは2015年からF1に参戦していますので、アロンソの表彰台を始めて目撃したことになります。復帰してから走るごとにレベルが上がって全盛期から衰えてないんじゃないか、と思えるほどで40歳であることを全く感じませんね。
コンストラクターズ争いでもこれは非常に大きく、オコンもライオンのように順位を守って5位だったので、アルピーヌは一気に25点を獲得。アルファタウリは2台とも2ストップ作戦にしてなんと2台とも入賞圏外という厳しい結果に終わり、レース前の同点の状態から一気に25点差へ広がりました。
フェラーリ対マクラーレンの方は、ノリスがパンクしたことがマクラーレンに大打撃。フェラーリもあまりよくなくてサインツとルクレールが7位、8位でしたが、マクラーレンはノリスの9位だけだったので点差がさらに広がって39.5点差となりました。ちなみにフェラーリはこれで3戦連続で2台が続けてフィニッシュしています。
ブラジルからのハミルトンの速さは圧巻。エンジンの交換には不具合による部分もあると思われますが、新品になったことで残りのレースは本来の設計想定よりも短い走行距離で済むので、そのぶん性能を出せているという側面はありそうです。
今回のレースも、フェルスタッペンはスタートで2位にいて、ハミルトンの前に出て、それでもおそらく単騎ではひっくり返されて2位が限度。ペレスも含めて2対1で勝負してようやく勝機があったかどうか、というぐらいだったと思います。
予選のペナルティーは事実上結果に影響しなかった、と前向きに考えることもできますが、唯一のチャンスを用意すらできなかったのは事実。しかも、あのアタックはタイムを更新していなくても実際には2位になっていて無駄な黄旗無視でしたから、チームとしてもう一度引き締める必要はあると思いました。
開幕からの流れとして、初めて本格的にライバルに追われたハミルトンとメルセデスがしょうもないミスをする場面が多い印象を受けてきたここまでですが、アメリカ・メキシコで一気に流れを引き寄せたかという雰囲気からのここ2戦のハミルトンとメルセデスの圧力に対し、今季初めてかというぐらいにフェルスタッペンとレッドブル側に少し堅さが感じられます。
ところでふと考えると、今回フェルスタッペンがペナルティーを受ける原因になったのはガスリーの自滅。で、前戦で10位からスタートして追い上げていたハミルトンが少し得をしたのはSCが出たからで、その原因は角田 祐毅とストロールの接触でした。いずれもこれが無くても結果は変わらなかった可能性が高いですが、いずれもアルファタウリ絡みなんですよね^^;
次戦はまた初開催のサウジ アラビア。コース図だけを見ると、なんというか『立体交差にするのを忘れた鈴鹿』みたいな形状ですが、市街地コースでどうやらバクー市街地よりヤバいらしいです。計算上は、次戦で極端な結果が出れば最終戦を待たずにチャンピオンが決まるケースもあります。慣れた普段のサーキットよりは、リタイアする確率や不確定要素が大きいサーキットではありますが果たして・・・
コメント
それはそうと、オコンはハンガリーでの恩返しをしようと思って、粘っていたようです。
次戦の市街地コースは荒れそうで荒れなさそうで...
ライコネンに言わせれば"Let’s see how it goes."といったところでしょうか。
そうか、コンストラクターズポイントではなく、単にアロンソの3位をより強固なものにするための防御指示であり粘りだったわけですね。アロンソって自分中心ドライバーの代表みたいな感じだったのが、やっぱり耐久レースでの経験が効いたのか復帰してからえらいチームプレイヤーになった気がしますね。オコンはアロンソと良好な関係を築いている稀有なチームメイトなので、化ける大チャンスかもしれない・・・