F1 第19戦 ブラジル

Formula 1 Heineken Grande Prêmio De São Paulo 2021
Autódromo José Carlos Pace 4.309km×71Laps=305.909km
winner:Lewis Hamilton(Mercedes-AMG Petronas F1 Team/Mercedes-AMG F1 W12 E Performance) 

 F1第19戦はブラジル、正式にはサン パウロGPとなります。ブラジルは以前からお偉いさん方がどうもリオ デ ジャネイロに新しいサーキットを作ってそっちでF1を開催したいという動きを見せています。より人口の多いところに新しいものを作った方が儲かるからだ、とか、今のプロモーターからより高い開催権料を踏んだくるために、実現する気なんてないけど脅しの材料にしてるんだ、とか色々言われていますが、サンパウロでの開催契約が5年間延長。
 プロモーターも新しくなり、これを受けてより地元色を打ち出す、というか「ブラジルGPといえばサンパウロですよ!」とより強く主張したいので名称を変更したものと思われます。

 さて、この週末は今季3度目にして最後のスプリント予選開催レース。ですが開催前から問題が発生します。メキシコを発つはずの貨物便が悪天候により出発が遅れてしまい、荷物の到着がギリギリに。ただでさえ忙しい日程なのに、チームの人はさらに作業が忙しくなります。
 さらにルイス ハミルトンはICEの交換によりレース前の段階から5グリッド降格が決定。ここに来ての降格は痛手で、マックス フェルスタッペンが一気に選手権で優位に立つ可能性も出てきました。トト ウォルフの苦い顔が目に浮かびます。

 予選ではハミルトンが圧倒的な速さを見せました、が、なんと予選後の車検でリア ウイングに規定違反が見つかってしまいます。DRSを開いた時に開口部の大きさが規定の最大値となる85mmを0.2mmだけ超過していた、ということです。ウイングの中央部分では適合していたけど端っこの方がダメだったということで、ほんの僅かに何か狂ってるんでしょうね。
 ただ、ここにさらに別の問題が発生、ちょうど国際映像では画面から外れた位置でしたが、フェルスタッペンが予選を終えて車を降りた後、自分の車のリアウイング、続いてハミルトンのリアウイングに触れたようです。ハミルトン車の後方車載カメラが犯行の瞬間を捉えていました。
たっぺん「このウイングどないなってんのや・・・」



 いわゆるパルクフェルメ規定という車両の保管に関する規則では、保管の管理下に置かれた車には許可された人以外手を付けてはいけないことになっています。予選を終えたドライバーの中で研究熱心な人、フェルスタッペンとか、セバスチャン ベッテルもそうですが、彼らは相手の車をじっと観察したり触れたりするある種のスパイ活動をよくやっています。
 なんとなく黙認されてきたところがあるんですが、ハミルトンのウイングに問題があって、そのウイングに触れた人がいてしかも選手権の対戦相手となるとやはり黙ってもいられないのでこちらも問題視せざるを得なかった、というところだと思いますが、予選後に2名に嫌疑がかけられた状態でこの日は結論が出ませんでした。原因がフェルスタッペンが触って曲げたことにあったら大問題ですからね^^;

 日を跨いだ審議の結果、ハミルトンはやはり技術規定に違反した車で走行したので失格となってしまいました。これによりスプリント予選は最後尾スタートになります。メルセデス側は、何かしらの問題で壊れたことが原因で利益は得ていないので考慮してほしいと言っていたようですが通りませんでした。これはモータースポーツならどこでもそうなるでしょう。普段よりも急いで車を組み立てたことで失敗した、ということもあるんでしょうかね。
 一方フェルスタッペンは競技規則への違反ですが、5万ユーロの罰金で済みました。やってはいけないことをしたけど、予選結果に何か影響を及ぼしたとは言えないということです。メルセデスの直線の速さからウイングを疑っていたフェルスタッペンが、自分で触って曲がり具合を確かめようと思ったそうです。

 土曜日のスプリント予選、フェルスタッペンがPPで、タイヤは24周のレースに合わせてミディアムを選択。しかし、2位スタートのバルテリ ボッタスら数名はソフトに賭けました。
 蹴り出しの良さを活かしてボッタスはスタートで先行すると、5位スタートでこちらもソフトのカルロス サインツもターン4でフェルスタッペンをかわします。無理しなくて良いのに併走しようとしたフェルスタッペンは大きくコース外へ、ダメージ受けたらどうするんだ^^;
 フェルスタッペンはサインツをあっさり抜き返してボッタスに迫りましたが、予想より路面温度が低くてソフトが長持ち。無理にリスクも負えないのでそのままの順位となり、スプリント予選はボッタスが制しました。エンジニアのリカルド ムスコーニ「ポ~~~~~~~~~~~ル」ってブラジルだけにサッカーっぽい言い方でボッタスを称えました。フェルスタッペン、サインツ、セルヒオ ペレス、シャルル ルクレールと続きます。

 ハミルトンはというと、道幅が広いとは言えないこのコースでニュータイプに覚醒したのかと思わせる動き。いきなり16位に上がるとその後も追い抜きを連発して、最終周にはターン1でランド ノリスの内側に豪快に飛び込んでなんと5位で終えました。ここから5グリッド降格なので決勝は10位スタート。フェルスタッペンが2位で2点貰ったのでこの段階で21点差になっています。ノリスも無理に抑える意味が無いので、来たら開けるつもりだったんでしょう。
 タラレバですが、スプリント予選制度でなかったら普通に20位からスタートするしかなかったので、制度に多少助けられた部分があります。まあ、通常スケジュールならこんなミスしなかったかもしれないので本当にタラレバですが。


 決勝、気温23度、路面温度54度とすごい温度になりました。19台がミディアム、角田 祐毅だけがソフトを選択しました、大丈夫?
 スタート、ボッタスは加速が鈍くターン1でフェルスタッペンが内側に並ぶと、お約束の押し出し攻撃でボッタスをかわします。まあ今日のはそこまで酷くないかな(。∀°)ターン2の脱出で鈍ってしまったボッタスはターン4でペレスにもかわされてコーナー4つでレッド ブルが1・2位となりました。
 その後ろではサインツがスタートに大失敗、行き場を失った5位のノリスが片輪を緑色のところにはみ出しつつ並びますが接触してしまいました。タイヤがパンクしたノリスはそのままコース外へ。最後尾となります。ノリスは片輪がはみ出ていたのでコースに戻りたくて少し左へ、たぶんサインツが場所を開けてくれるだろうと信頼して動いたんだと思いますが、サインツが普通に直進してたので接触した感じです。
 サインツは左側がたっぷり空いていたので場所を開けてあげた方が良かったんですが、そもそも空転して右に滑ってしまった上に、自分が失敗しているので下手に動くと危ないかもしれない、というところはあったと思うので、並んでしまったらもうあとは局面に任せるしか無かったでしょうかね。


 ハミルトンはスタートで7位に上げると追い抜きを連発。なんと5周目に3位になります。ボッタスはまだ2秒近くハミルトンの前方でしたが、ゆーーーっくり走って道を譲り、ハミルトンも「ありがとうバルテリ」。フェルスタッペンとは約5秒差。
 さらにハミルトンには思わぬ恩恵。角田がランス ストロールを抜こうとしてターン1で接触し、ウイングを落っことしてしまいました。この破片の回収作業のためになんとSCが導入されました。

ハミルトン「バルテリに俺についてこいって言ってよ、あいつら倒そうぜ」

 すげえキーの高い歌手がライブで「一緒に歌おうぜ~~!!!!」って言った時と同じぐらい「え~、無~理~」って思ったの私だけでしょうか。

 接触に関しては、ここのターン1はエイペックがやや奥にある上にブレーキング位置から既に緩く左に曲がっていて、レコード ラインを走ると間口がかなり広くて内側に入りやすくなっています。どの時点をもって『ターンに向かってステアリングを切り込んでいったか=優先権が発生したか』を考えるのが難しいタイプのコーナーで、ストロールは全然後ろを見ていませんでした。
 角田はソフトを履いていて制動距離も短かったので、飛び込みとしては全然止まれないミサイルというわけではなくうまく懐に入った動きではあったんですが、他のドライバーの争いを見てもあの距離感で飛び込むのは危ない動きだという暗黙の認識があるようにも思います。
 軽く左に曲がっている都合上、ブレーキング中は視線がやや道幅を意識して右に行きやすいコーナーで、下っていてエイペックスも少し見にくいのでブレーキを終えると視線はターンの先の方へ意識が行きがち。左斜め後方は見落としやすく、ターンインの最中に急に車が突っ込んで来たような感覚になります。ゲームですらそうなので実車だと余計にそうだと思います。
 角田には10秒加算のペナルティー。これが妥当かと言われると他の裁定と比較すると疑問に感じましたが、「悪いのは裁定とストロールだ!」と言っているだけでは結局また同じ接触をして自分が不利になります。
 また、そもそも、あそこで仮にストロールが見ていて懐に入っても結局切り返しのターン2でストロールが前になってターン4の勝負になるわけですから、それなら最初から後ろについてターン2を綺麗に脱出してターン4で狙った方がリスクも小さかったと思います。このあたりはチームメイトだったり、交流のあるドライバーと率直に意見交換しておいた方が良いかなと思います。

 10周目にリスタート、ハミルトンのスリップストリームに入ってるけど抜いちゃいけないボッタスにルクレールが襲い掛かります。結果的に、自分の後ろでなんかごちゃごちゃやってるのでハミルトンがミラーを気にして走りにくそうに見えますw
 11周目、ターン1でミック シューマッハーとキミ ライコネンが接触。ミックのウイングがバラバラに砕け散ってしまい、今度はVSCとなります。ペレスがVSC導入直後に少しゆっくり走ってフェルスタッペンとの距離が開いた様子で、これに対してハミルトンがすんごい煽り運転してます^^;
 14周目に解除となりますが、ペレスはVSC終了の予告を見て開けた分の差を詰めに行ったようで、なんかうまいことハミルトンの苛立ちを誘発しました。おそるべきレッドブルのハミルトン包囲網。
 18周目、ハミルトンはターン1で外から豪快にペレスを抜きますが、ペレスもDRSを取り返してターン4で外から逆転。しかし翌19周目にもハミルトンは再度外からかわすと、今度はターン4で逆転できる間合いにさせませんでした。これでとうとうハミルトンは2位、抜きつ抜かれつをやったのでフェルスタッペンとは4秒差になりました。お客さんは大盛り上がり。



 フェルスタッペンとハミルトンはほぼ同じペースで走行、24周目にはフェルスタッペンが1'14.774、ハミルトンが1'14.775とほぼ同タイムになるすごい争いです。フェルスタッペンは「スライドがちょっとずつ大きくなってきた」。ハミルトンは「リアがすごい動いてきた」。徐々にタイヤの摩耗が影響し始めました。ペレスはここから3.5秒ほど後方、ボッタスはさらに2秒後方です。よりチームメイトのお役に立てるのはどちらでしょうか。

 26周目、ハミルトンが先にピットへ。ミディアムからハードに交換し6位でコースに戻ります。これを見てフェルスタッペンも翌周にピットへ。ハミルトンは前に空間のある場所を走っていると思いきやあっという間にダニエル リキャードに追いついていてちょっと損。
 それでも28周目のターン3からのDRS区間でリキャードを抜いたハミルトンはフェルスタッペンを追随して1.5秒差に迫ります。フェルスタッペンは「次はアンダーカットさせるなよ」。ペレスも28周目にピットに入りました。

 ボッタスはコース上にとどまっており、これはお馴染み鉄の屑作戦発動か?と思いましたが、30周目になんと2回目のVSC。左側を壊していたストロールの車から宙ぶらりんになっていた空力部品が飛び散ってちょうどターン1手前で散乱してしまいました。これで得したのがボッタスで、ちょうど良い場所にいたのでピットへ。このおかげで労せずしてペレスをオーバーカットすることに成功しました。

 ピット後も上位4台のタイムは極めて拮抗しており、36周目のタイムはこんな感じ。

 全員1分13秒51~57、もうみんな同タイムです。見ての通り、第2集団はルクレール、サインツ、ピエール ガスリー。リキャードがその後ろ、ノリスはこの画像では9位ですが実質的にまだピットを終えていないので入賞圏外で、フェラーリ対マクラーレンはどうやら今日もフェラーリ優勢です。

 ハミルトンに対してエンジニアのピーター ボニントンは「もし次ピットに入るとしたらどっちのタイヤが良い?」と聞きますが、会話を聞かれて相手に付け入る隙を与えたくなかったハミルトンは会話ではなくステアリングの操作で回答すると答えた模様。
 そんなやり取りを聞いて40周目、今度はフェルスタッペンが先にピットへ。すると41周目、ハミルトンがこれに、と思ったら入って来たのはボッタスでした。せっかくタイヤの履歴が少し若くてペースもそれなりだったのに、わざわざ入ってルクレールの後ろで戻る意味あるのかな?と思ったらボッタスも走ってて疑問だったらしく「これで正しいの?」。

 42周目にペレスもピットへ。お助けコンビはなにゆえこう動いたのか若干謎でしたが、43周目にハミルトンも入りました。ハードで繋ぎますが、ハミルトンは「欲しかったタイヤじゃない」と不満。ボノは「まだ距離が長い、ミディアムは摩耗が大きかった」と答えます。だったら何でドライバーに聞いたんでしょうか。ボッタスも「簡単にワンツーできたのに」と愚痴るなど、全体的に2回目のピット戦略はいびつでした。

 しかしハミルトンは猛追。47周目にフェルスタッペンのDRS圏に入ると、48周目のターン1で揺さぶっておいてターン4で外から狙います。が、フェルスタッペンは自分もろとも曲がれないラインでブロック。容赦ねえ(;・∀・)
黄色いところがコースで、黒い部分がコース外です(大嘘)


 ボノは「さっきの事案は審議されてるよ」とハミルトンに伝えますが、実際は審議ではなく記録されただけで、結局審議の必要なしと判断されました。個人的には、全然止まれもしないのは行き過ぎてるし、繰り返されると困るので再発防止のためにも黒白旗ぐらい出すべきかなと思いましたね。
 メルセデスは無線で「コース外を使って利益を得て、調査も無し、なんでなん?」と詰め寄りますが「全部映像を見たところ、よくあることですから」と返されました。そもそもよくあっちゃダメなんだよw

 コースの中でも外でも火花を散らす両陣営、ハミルトンは押し出された後も1秒近辺でフェルスタッペンを追走します。一方ボッタスは逆に自分の履歴が古くなったのでついていけなくなり、ペレスが僅かずつですが接近。ほんと何で先にボッタスを動かしたんでしょう^^;

 59周目、ハミルトンはこれまででもっともターン3を接近した状態で立ち上がるとDRSを使ってもうターン4のブレーキングで勝負することなく直線で前に出てしまいました。この前の58周目からの組み立てが見事でした。


 DRSを使ってターン1で強引に入りそうな雰囲気を出してフェルスタッペンに内側を警戒させ、これによってエサを撒いてターン2からの脱出速度でターン4勝負。さっきはこれで失敗しましたが、今度はターン4では早めに引いておき、次の周でしつこくもう一度同じ事をして完璧に捉えました。
 フェルスタッペンはこの59周目の攻防で複数回の進路変更があったのでこれに対して黒白旗が振られますが、これを無線で伝えられたフェルスタッペンは「完璧だね、よろしく行っといて」。フェルスタッペンってよくこの運動量の中でジョーク言えますよね、しかもブラックな皮肉w

 士気の上がるメルセデスはボッタスに対してトトが直々に「行けバルテリ、捕まえろ!」と言いますが、ものすごくキーの高い歌手(ry

 69周目、ペレスはピットに入ってソフトに交換し、ハミルトンが持つ最速ラップの1点だけでも奪い取ろうと動きます。私は内心「ひょっとしてメルセデスは70周目にボッタスをピットに呼んでペレスの前に置いてファステストを阻止するんじゃないか」とか思いましたがさすがにそこまではやりませんでした。
 ハミルトンが今シーズン6勝目、通算101勝目を達成。フェルスタッペンは最後はガッツリペースを落として2位で、「手を尽くしたけど速さが足りなかったよ」とえらいさっぱりとした無線。今回はメルセデスとハミルトンの速さが別格でした。

 5位からルクレール、サインツ、ガスリー、エステバン オコン、フェルナンド アロンソ、ノリス、という10位までの並びでした。アルファタウリとアルピーヌはコンストラクターズ争いでレース前の段階で同点でしたが、このレースでもお互い6点ずつでまた同点になりましたw
 フェラーリ対マクラーレンはフェラーリの圧勝でその差が31.5点まで開きました。ただ中東のストップ&ゴーのコースだとマクラーレンが強いのでまだ分かりませんね。

 まさかハミルトンがこんなにあっさり上位に戻ってきて優勝するとは思いませんでしたが、ハミルトンがそうとう集中して自信もあったんだろうなと思います。振り返ればペレスに抜き返された場面なんて、もし焦っているのならフェルスタッペン同様自分ごと飛び出してでも順位を守りにかかっても不思議では無かった気がします。
 しかし実際には抜き返されたらさっと引いて、落ち着いて次を待ちました。フェルスタッペン相手でも1回は想像以上にエライ防御をされましたが、意地にならずに2回目はどうすれば抜けるのかをきっちり組み立てていました。
 直線が速いので抜ける自信があったとは思うんですが、途中何回かボッタスの位置を気にしたりして様子を聞くぐらいだからレースを俯瞰して見れていたのは間違いなさそうです。最初の方にニュータイプに覚醒したんじゃないか、と書きましたけどこのレースに関してはあながち間違ってない気がします。

 とはいえ、ドライバー選手権ではまだフェルスタッペンが14点差で1位。コンストラクターズはメルセデスが11点差で1位ですが、こちらも簡単にひっくり返る数字です。今回も早起き(というか深夜2時なので『睡眠中断』に近い)して見ましたけど、見た甲斐がありました。メキシコは寝てしまったので私の南北アメリカ大陸3連戦は2勝1敗です(何の話や)
 だいたい途中で「そういえばガスリーは実質何位かな」とか、「お、良く見たらナッツィーが頑張ってるじゃいか」とか、ライブ タイミングを見ながら他の順位争いに興味が出るタイミングがあるんですけど、一切そんな暇無かったですね。NASCARと同等にチャンピオン争いが面白いって素晴らしい(*´▽`*)

 さて、次戦はなんと大陸を移動するのに休みもなく初開催のカタールGP、ロサイル国際サーキットという、メタモンみたいな形状のサーキットです。決勝が23時スタートなんですが、この時間ならむしろ早朝の方が楽なんですよねえ、まあどうせ見るけどw



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