Gr.4のオーバル用BoPを検証してみた

 FIAグランツーリスモチャンピオンシップ、今さらながらマニュファクチャラーシリーズに初登場するGr.4でのオーバル。今回初めて「え、Gr.4にもオーバル用BoPってあったの?」と思った方も多いかと思いますが、仮に存在を知っていても、実際にレースしたことのある方はおそらくあまり多くないと思います。
 果たして本当にBoPは妥当な数値になっているのか、このレースに出る気が最初から無いにも関わらず私はそこだけ妙に気になってしまい、とりあえず片っ端から乗ってみました。


 条件としては、アーケードモードのタイムトライアルを使用し、ブルームーンベイスピードウェイ 13:00 の条件でレーシングミディアムを使用して走行。そこそこまとまるまで周回して最速タイムと最高速を記録していきました。走ってるうちに慣れる可能性を考慮して、一巡した後に数台だけ再度走らせましたが、更新は0.1秒に満たない範囲だったので誤差の範囲と考えました。また、マニュファクチャラーシリーズでは使えないヴェイロンとGRスープラも一応試しました。
 あ、当たり前ですが私の力量の範囲での検証ですので、単に異様に下手くそな車があったせいで序列が崩れていたとしてもご容赦ください。


 メーカー名順に並べるととりあえずこうなりました。だいたい最高速は262km/h、タイムは49秒あたりが多いように見えますが、時々大きく外れている車があります。では、これらをタイム順に並べ替えてみます。



・驚異のバランスブレイカー

 最速はなんとGRスープラでした。たまたまこれはいちばん最後に使ったんですが、1周目にコントロールラインを通過して計測に入った時点で既に「あ、これ異様に速い」と気づき、探り探りの1周目で既に47秒台に入ってもはや勝負にならないことが分かったので、2周で計測をやめましたw
 タイム差も表記しましたが、スープラ基準だと参考にならないので、2番目に早くマニュファクチャラーシリーズで使える車ではいちばん速かった650S基準で表記しました。
さすがはNASCAR仕様車両、っていや待て・・・

 スープラを除外するといちばん速かったのが650Sで唯一270km/hに乗せました。続くのがシトロエン、バイパー、NSX、コルベットの4台の集団。SLSもアメ車に近い特性でしたが一段劣る印象でした。シトロエンは1560kgの重量がヴェイロンを除けば最重量車両なんですが、最高速が異様に伸びます。
 これらの車はいずれも単独で既にエンジンがかなり目一杯回っています。特に6500rpmでピークを迎え、それ以上回してもパワーが出ないバイパーでは完全にパワーバンドの山を通り超えてしまい、加速は異様に速い一方でストレートの途中から伸びません。コントロールラインからターン1までの間に3km/hほどしか上積みがありませんでした。
 650Sもやはりパワーバンドは真ん中よりの車両ですが7速でリミットギリギリになっていて超過気味、そういう点で最もエンジンの力を使い切っているのはNSXとコルベットという印象です。NSXはターン1での巻き込みがやや危なっかしいです。


・ある程度バラける中団争い

 タイムで第2グループに来るのは48.5秒を記録したFタイプから49秒ちょうどあたりのTT Cupまでの10台という感じでした。駆動方式、馬力がばらつきつつも似たタイムになりました。
 ランサー、WRX、アテンザの3台はいずれも比較的軽量な設定でターンの通過速度で多少補っている印象です。ウラカンは210km/hを過ぎたあたりから謎の小刻みな振動が出て私はこれがダメなんですが、ここはターン1以外ずっとこの速度域なので25周は私には耐えられません^^;
 異彩を放つのがメガーヌトロフィーで、この車だけ1000㎏すら下回っています。実は全車両中で唯一この車だけBoPを適用してもノーマル状態から一切性能が変わっていません。オーバル専用BoPでは数値だけが変更されてセッティングシート上はパワーも重量も『100%』という表記になってしまうんですが、メガトロだけは本当の意味で100%/100%です。
 当然ながら最高速は滅茶苦茶遅く、その代わりターンが異様に速いので1周するとRC Fよりも速く走れました。ただ特性があまりに違うのでこれが集団に混ざると正直危ない気がします。そのRC Fはスペックだけ見たらアメ車と同等のタイムが出そうに思いましたがあまり伸びませんでした。BoP適用で86の方が重くなってるのがなんかいびつですw

・ドライバーで補うにも限度がある第3集団

 メガーヌ以降の車はかなり苦しい集団と感じました。メガーヌは2番目に軽い(つまりルノーが軽さで言えばトップ2)上に足回りが元々良く動くので、ターン1の感触なんかはかなり気持ちよく走れるんですが明らかにパワー不足。
 ヴァンテージ~M4の後輪駆動車はいずれも1400㎏を超える設定になっていますが、その割に出力の設定が低くて明らかにパワー/ウエイト レシオで上位勢のアメ車に劣っています。走っていても、ヴァンテージやマスタングは元々のアンダーに加えて直線も特別速くないので基礎的な性能で負けている印象、ケイマンはなんで1560㎏もあるのか分かりません。なんと唯一最高ギアの出番が無くて、ギアは6速まであるのに走行中は5速のリミットにも届きません。燃費を稼ぎたければ6速に上げるだけで良いので楽ですが、そもそも加速が悪いです。

・無理ゲー感漂う2台

 4CとRCZは正直お手上げでした。4Cでターン1に入るとものすごい勢いで巻き込むので慎重に走らないとスピンします。オーバルではブレーキバランスの調整ができなくなるので、前寄りにして抑え込む手段が使えません。消耗無しでこれなので、タイヤが減ったらもっとヤバそうです。軽量車両で直線も遅いですし、1回ターン1でミスったら終わりですね。
 そしてRCZは明らかに数値設定を間違えているとしか思えないほど遅かったです。重量がほぼ同じシロッコより30馬力少なく、120㎏以上軽量なメガーヌより16馬力も少なくて同じタイムで走れるわけがなく、一体何を想定して決めた数字なのか分かりません。オーバルは他にブロードビーン、ノーザンアイル、ルートXでも適用されますが、この数字が活きる条件なんて私には思い浮かびません。

・消耗を入れると多少は変わるけど・・・

 もちろんレースでは燃料3倍、タイヤ15倍という設定がありますし、2回ストップ義務という表記なので(25周で2回って8分おきにピットですけど頻度高すぎません?)消耗と戦略によって勢力図に多少変化はあるでしょう。さすがに全部の消耗具合は試せないので、数台の燃費だけ軽く調べてみましたが、NSXとバイパーは6速の高回転域で回り続けるので結構燃費は悪かったです。
 ただ、加速や最高速の面で一定の優位性があるので、ここで言う第2集団に対してであれば、260km/hぐらい=第2集団の車のほぼ最高速まで加速しておいて、そこから燃料マップを6にして走るとタイム的な損失を抑えながら航続距離はそこそこ伸ばせそうでした。6速で上が少し余っているコルベットは実戦でバイパーより強いかもしれません。
 燃費走行する650Sに対して、一生懸命エンジンを回しているケイマンはたぶんついて行けません。メーカーによってマッチングした瞬間に勢力図がある程度できてしまって、その中でのレースにならざるを得ないのではないか、という印象を受けました。


 RCZの数値を見ると、正直きちんと煮詰められていない内容だと思われても仕方ない設定だと感じます。10戦のうちの1戦でシリーズはエキシビション、逆にレースによってはFF天国になることもあるので、シトロエンやマクラーレンが無双するレースがあってもいいじゃないか、と言われればそれまでですが、トラックの大半でアクセルを踏んでいるだけのレースで争いに明らかに入れない車がいるというのはちょっと事情が違うように思えます。
 ひょっとするとレース当日までにアップデートなり、オンラインBoPだけの変更なり、あるいはこのイベント専用のBoPが用意される予定が既に存在していて、これらの懸念は関係無くなるのかもしれませんが、もし仮にこのままだとしたら、ちょっとこのレースを設定した考え方そのものに対して私は疑念を抱かざるを得ないです。

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