F1 第17戦 アメリカ

Formula 1 Aramco United States Grand Prix 2021
Circuit of The Americas 5.513km×56Laps=308.405km
winner:Max Verstappen(Red Bull Racing Honda/Red Bull RB16B-Honda)


 F1はアメリカ大陸に渡っての戦い、第17戦はアメリカです。先週はNASCAR Cup Seriesが開催されていたテキサス州に今度はF1がやってきました。
 なんとなくお祭りムードのアメリカ、ダニエル リキャードはマクラーレンのCEO・ザック ブラウンと「表彰台に乗ったら、所有しているデイル アーンハートの車両を運転させてもらう」と約束していたらしく、イタリアでの優勝によって大願成就。1984年のシボレー モンテカルロを駆ってゴキゲンです。

https://youtu.be/YIZItRqlzwg

 NASCARといえば、先週のNASCAR Cup Seriesではコール カスターのピットにミック シューマッハーが遊びに行ってましたね。実はアメリカでは、ドラッグ レース界にトニー シューマーカー(英語でのScumacherの発音はシューマーカーとなる)というNHRAトップ フューエル クラスで8度のチャンピオンに輝いている偉大なドライバーがおり、その父・ドン シューマーカーも伝説の人物として知られています。
 この苗字自体それほど多く存在する苗字ではないと思うんですが、なぜかドイツとアメリカのレース界において歴史に残るドライバーの苗字であり、それでいて何の血縁関係もない他人だそうです。不思議なことがあるもんだなあ、と初めてトニー シューマーカーを見た時に思いましたね。

 全く関係無い話からF1に戻りましょう、メルセデスはどうも現行のパワー ユニット、内燃機関あたりに何か致命的に問題があるらしく、バルテリ ボッタスになんと6基目のICEを投入、5グリッド降格が確定します。ジョージ ラッセル、セバスチャン ベッテルも同様にPU交換によりペナルティー。F1GPニュースによればメルセデスは信頼性向上のための改良を届け出ているそうなので、嘘ついて性能を上げたいのではなく本当に危ないんでしょう。まさかペナルティー受けるところまで芝居とは思えん。


 予選日からお客さんは満員、発煙筒は焚くわ、シューイやってるおっさんはいるわ、火を噴いてる謎のタコみたいな物体はあるわ、NASCARの観客席とは比較にならんぐらいはっちゃけてる気がしますw

 そんなお客さんをさらに盛り上げるように予選はメルセデスとレッド ブルが拮抗し、結局マックス フェルスタッペンがPP、ルイス ハミルトン、セルヒオ ペレス、ボッタスの順となりました。ペレスはこういうダウンフォースが必要で高低差のあるコースは特にフェルスタッペンとの差が大きくなる傾向にありましたが、この週末は自分の好みに合わせたセッティングでうまく対応しているようです。
 なお、フェルスタッペンの予選タイムは1'32.910でしたが、NASCARではタイラー レディックが記録した2'12.911が最速でした。ちょうど40秒遅いので、一緒に走ったら3周ぐらいで周回遅れですね^^;


 Q3の最後のアタックの最後の最後でちょうど雨が降って来たらしく、ペレスはその影響もあってセクター3をまとめきれなかったという不運もあったようですが、週末を通してフェルスタッペンに肉薄しており、ボッタスが降格すると対ハミルトンで2vs1の争いを行うことができます。
 なおそんなペレスですが、好みと全く合わなかったのかグランツーリスモSPORTの企画・Red Bull Beat The Proではむっちゃ遅いタイムしか記録できず頭を抱えていました。フェルスタッペンはそつなく1分58秒8を記録してさすがの腕前。私はノーズ視点ですが58.6でギリギリ勝ちましたw(車内視点では59.1しか出なかった)角田 祐毅が2分00秒6、ペレスは2分5秒でした…

 決勝、気温28℃、路面温度36℃とこの時期としては高い条件。スタートは動きだした瞬間に素人目にすぐ分かるレベルでハミルトンが勝っていてあっという間に並んでしまい、ターン1で内側に入ると、フェルスタッペンが外に並ぼうとしても当然ラインを残してもらえません。もはやハミルトンお馴染みの押し出し攻撃。
 後方ではランス ストロールとニコラス ラティフィーのお金持ち子息コンビが接触して最後方に下がりました。エステバン オコンもS字区間でちょっとミスったら、ちょうど後ろから豪快に抜きに来ていたアントニオ ジョビナッツィーにウイングを踏まれてしまい緊急ピットを強いられました。オコンは結局40周したところで、車両の後部に問題があるということでリタイアとなりました。

 フェルスタッペンは序盤から「あいつすごい滑ってるよ」とハミルトンの状況を指摘し、DRS圏内を走行してついていきます。ハミルトンも「現状向こうの方が速い」と自覚。ただとりわけセクター1でずっと乱気流を受けるとタイヤによろしくありません。ペレスはそこから3秒ほど離れた3位で、これは適切な距離を保っているといえます。
 ハミルトンとフェルスタッペンはミディアムとハードを各2セット持っていますが、ペレスはハードが1つしかないので戦略がやや狭いのが難点。ボッタスはスタートから順位を下げて10位なので当面この争いの援護にはなれそうもありません。

 この後ろではシャルル ルクレール、リキャード、カルロス サインツ、ランド ノリスとマクラーレンとフェラーリがこちらもハゲしい争いを展開中。このうちサインツだけがソフトでのスタートなので戦略がやや苦しいですが、このチームのドライバーは2人ともたまにすんごいタイヤをもたせるのでサインツがどの程度戦えるのかが見ものです。

 10周目、フェルスタッペンが早くもピットへ。ミディアムからハードに繋いでアンダーカットを狙っていきリキャードの後方の5位で復帰。詰まったら作戦が台無しですが、裏側のストレートできっちり抜いてきます。ハミルトンの方は「タイヤは良いよ」という無線で、アンダーカット阻止に動いてもどうせ手遅れなのでそのまま継続。履歴差を作って終盤勝負、何か起きてSCが出たら超ラッキー!作戦です。
 ペレスの方も12周目に入ってこちらはミディアム連投、ハミルトンはペレスにまでアンダーカットされるわけにいかないですからもう動くしかなくなります。13周を終えてミディアムからハードへ。当然これでフェルスタッペンがリーダーとなりました。ハミルトンまで6秒差、既に大半のドライバーが1回目のピットを終えています。

 14周目、ピエール ガスリーが問題を抱えて低速走行。サスペンションが壊れたということでリタイアとなりました。元々地盤があまり強くない土地に作ったために年々凹凸がひどくなるCoTA、レッドブルはフリー走行でリア ウイングに亀裂が入ってしまうなどけっこう車体への負担が大きいので、原因となった可能性があります。10月のMotoGPでもかなり問題になっていました(見てないけど)。

 16周目、フェルナンド アロンソとキミ ライコネン、おっさん2人の13位争いはターン1でアロンソが内側を守ってブロックしますが、並走したライコネンにラインを残さず押し出し。ライコネンもギリギリまで車を寄せて並走したので、ライコネンの空力部品をアロンソのタイヤがバリバリとかじる接触となり、当たりながらもライコネンが抜いて行きました。
バリバリバリ・・・


 アロンソは「コース外から抜いて行ったぞ。順位を返すべきだ」と言いますが、うーん、無理に外に並んだという感じでもないのであれは押し出し攻撃になるかなあ。まあハミルトンがあれで許されてしまってるからみんなやるようになるんでしょうけど。

 20周目、アロンソはジョビナッツィーに対してかなり強引にターン12で内側に飛び込んでそのままコース外まで突っ込みコース外から抜きました。なんというか、明らかに「さっきライコネンは合法だったんだからこれでいいだろ」という抜き方。
 実際FIA側からアルピーヌに対して無線で指摘されると「ライコネンがやったことだろ」と反論したようです。当然そんな理屈は通じずに、順位入れ替え指示が下されたのでアロンソも従いました。この後もどことなくアロンソは大人げない走りをしていましたが、リアウイングに破損が発生して49周でリタイア、アルピーヌは2台ともトラブルで姿を消しました。


 単独走行になってテレビに映らなくなった優勝争いはピット後の6秒の差をハミルトンがすこーしずつ削り取ってきて25周を終えると3秒差。ペレスは中古のミディアムをある程度マネージメントして走らないといけないために、この2台についていけなくなります。
 28周目にいきなりVSCになったので何事かと思ったら、ターン16のあたりに落ちていた破片を回収するためだったようで数秒で解除。同じころペレスは飲み物が出て来ない故障に見舞われているようで、今日の気象条件も考えると、まだあと150km走らないといけないのに大変です。ペース低下も致し方なし、というところでしょうか。

 29周目、フェルスタッペンが2回目のピットに入りハードを投入。ハミルトンへは無線で「ターゲット+6」が伝えられます。元々予定していた周回数より6周長く走るという意味ですので、さらなるタイヤの履歴差を作った上で、長い距離を走らされるフェルスタッペンを追い詰める戦略です。フェルスタッペンがいなくなった後の30周目にいきなりファステストを記録しているので、タイヤもまだ元気なようです。
 30周目にペレスもピットに入ってハミルトンの戦略を縛りにかかりますが、いかんせん38秒差になっているので揺さぶるには遠すぎます。ハミルトンはタイヤが古いので当然フェルスタッペンより遅いんですが、新品相手にまだ0.4秒ほどのペース差とむしろ非常に速くて損失が少ないので、ここに勝機を見出している様子。

 ハミルトンは34周目あたりからペースが一段階低下してフェルスタッペンの接近度合いが強まり、37周を終えてピットへ。新品ミディアムの選択肢もありましたが新品ハードを選択してフェルスタッペンの8秒後方で復帰します。フェルスタッペンは第2スティントのハードがそこまで速くなかった中でこのスティントでかなり飛ばしており、果たしてこれで最後までもつのか、あるいは3回目のピットがあるのか、まだ色々考えられる可能性があります。

 フェルスタッペンは自己ベストを記録しながら応戦しますが、ハミルトンが常時これを上回るペースで走行して毎周0.5秒ずつ差を詰めていき、残り8周でとうとう2秒差になりました。しかしこのあたりから乱気流の影響が大きくなるのでハミルトンのペースが鈍化、一方フェルスタッペンはまだ自己ベストを出して応戦し、ここから先になかなか踏み込ませません。
 残り2周、ハミルトンはフェルスタッペンの1.2秒差まで迫りますが、さすがにセクター1で1.3秒に離されると、肝心なターン11でハミルトンが失敗してストレートでスリップストリームを使えず1.6秒差に拡大。しかしその後ちょうど周回遅れのシューマッハーにフェルスタッペンが引っかかって、また1.2秒差に戻ります。

 最終周、普通に行けば1.2秒差をひっくり返すのは難しいとはいえ、使い古したタイヤで何か少しでも失敗すれば狙われる危険性がある緊張した争いになります。


 しかしフェルスタッペンは最後まで完璧な走りを披露、スタートで失った順位を見事に取り戻すポール トゥー ウインでオランダ以来の今季8勝目を挙げました。ハミルトンはファステスト ラップを記録してボーナスの1点を得ましたが、ドライバー選手権で12点差となりました。

 今回は頑張って4時起きしてタイムをPCで確認しながら両者の戦いを見ていましたが、そう簡単に抜けるコースではないとはいえフェルスタッペンは先に先に動いたので本当にタイヤがもつのかな、と思いながら見ていました。
 しかし結果的にフェルスタッペンは最後まで綺麗にタイヤを使いました。慎重になりすぎればハミルトンが早々と追いついてしまうし、飛ばしすぎれば当然タイヤが終わるわけですが、絶妙にどちらでもない領域でタイムを右肩上がりにした技術と集中力は抜群だったと思います。
 メルセデスからすれば、スタートで頭を抑え、相手が2台で攻めて来る状況でレッドブルに先に動きを出させて自分たちがどう戦うべきかという道筋をつけたところまでは良かったと思いますが、34周目にタイムが1分41秒台に落ちたところで諦めて35周目に入れてもよかったかなとは思います。ここからもう2周走ってしまい、ここで2.5秒ほどフェルスタッペンに詰められて追いかける差が遠くなってしまいました。
 とはいえフェルスタッペンがあそこまで速いペースでなおかつタイヤをもたせるとは計算できていなかったかもしれませんし、おそらく紙一重の差でしょうからこれはもう後付けでしかないでしょう。55周目にハミルトンがターン11を綺麗に立ち上がっていれば、それだけで結果はどうなったか分かりません。
 2つのチームの最高のドライバーが別々のタイヤの使い方で305km走って1秒差で決着ってそうそうお目にかかれるものではないですし、早起きした甲斐がありました。


 3位からはペレス、ルクレール、リキャード、ボッタスのトップ6。サインツ、ノリスと続いて9位に角田でした。角田はQ2をソフトでアタックして10位でQ3に進んだのでソフトでのスタートとなり苦戦すると思っていましたが、終わってみれば現状で速いと思われる4チームに次ぐ位置でのフィニッシュ。もちろんガスリーがリタイアしたという事情もありましたが、多くのレースでアルファロメオやウイリアムズに捕まって後方で終えていたことを思うと、目立たないですが良い内容のレースだったと思います。

 次戦は1週間の間隔を空けてメキシコへ、ペレスの母国GPです。チェーコ、チェーコ、チェーコ!

コメント

首跡 さんの投稿…
アメリカでのF1人気は上昇中?と思える週末でした。
そして、NHRAドライバーの名前が出てくるとは!
調べてみたら、トニー・シューマッカーは51歳、ロン・キャップスは56歳、ジョン・フォースは71歳!
これは、カイル・ブッシュやハービックにもまだまだ頑張ってもらって、10~15年後には親子で一緒に走る姿が見たいですね…
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 NHRAの話題にも乗ってくれる方がいてありがたいですw ハービックの息子のキーラン君はなんか才能ありそうな感じがしますね。昔はNASCARも50超えて走ってましたけど、今は40そこそこまで行ったら区切りをつける方の方が多いのでなかなか親子ってないですよね~。