F1 第16戦 トルコ

Formula 1 Rolex Turkish Grand Prix 2021
Intercity Istanbul Park 5.338km×58Laps=309.396km
winner:Valtteri Bottas(Mercedes-AMG Petronas F1 Team/Mercedes F1 W12)

 F1第16戦はトルコ。この週末は元々は日本でレースが開催されているはずだった、ということもあり、レッド ブルは1戦限定の特別スキームを導入。白をベースにし、日本語で『ありがとう』と書くなど、ホンダが本来最後の母国レースを行う予定だったことに対してメッセージを送ります。この辺のプロモーションのやり方はさすがですね。


 イスタンブール パークは昨年、急きょの開催に伴って舗装工事をしたら路面がツルツルで、ここに雨が降ったら油も浮いてヌルヌルでしたが、今年は多少落ち着いたはずなので昨年ほどの酷い状態にはならないと予想されました。

 この週末はメルセデスがルイス ハミルトンに対して4基目のICEを投入。事前に10グリッド降格が確定した中で始まります。しかし金曜日の走り出しからメルセデスが好調な一方でレッドブルはやや出遅れた感じ。マックス フェルスタッペンとしては鬼の居ぬ間になんとやら、といきたいところですが簡単ではなさそうです。

 さらに、土曜日は雨になってしまい昨年の混戦も頭をよぎる難しい条件。Q1開始時点で『セッションが始まって数分で雨が降る』という情報が多く、とにかくスリック タイヤで一発でタイムを出そうとみんな急いでコースへ出て行きます。
 しかし、急いで出た車が最終コーナーで間隔を開けようと減速するのでお約束の大渋滞発生。ハミルトンは嫌気がさして紳士協定破りの動きを見せますが、ターン1でいきなりミスってはみ出しました^^;
 どのドライバーもタイヤに熱が入っておらず、かつターン1は元々下って難しいところに、午前中の雨で濡れた部分が散在して難所になっていました。結局雨は降ったものの大した量ではなかったのでそのままスリックによるアタック合戦が続けられ、ダニエル リキャードがQ1で脱落し、ミック シューマッハーが通過する波乱が発生。リキャードはこの結果を受けて予選後にPUの新しいコンポーネントを投入しました。

 Q2ではジョージ ラッセルがQ3進出にじゅうぶんなタイムを出す、と思ったら最終コーナーでミスって無念の脱落。そしてQ3ではバルテリ ボッタスが1回目のアタックで1位となりますが、ハミルトンが2回目できっちりこれを上回り予選1位=11位スタートを決めました。ボッタスがPP、フェルスタッペンは及ばず2位からのスタート、メルセデスの望み通りの予選でした。シャルル ルクレール、ピエール ガスリー、フェルナンド アロンソ、セルヒオ ペレスと続きます。
 角田 祐毅も9位に入っており、レッドブル的にはハミルトンが追い上げて来る過程で自陣営の壁が3枚もありますから、足止めしてできるだけ下位に押し込むことができれば、してやったりです。
 なお余談ですが、ウエットだったFP3で最速だったのはガスリー。インターミディエイトで出したタイムですが、これは昨年のFP1でフェルスタッペンが出したドライでのタイムより5秒も速いタイムでした。いかに昨年の走り始めが異様に滑っていたか分かります。


 決勝も雨になってしまい全車インターミディエイトでのスタート、このコースはドライだと偶数列が圧倒的に不利なのでいくらかマシにはなりますが、いずれにしても形状的にスタートはけっこう怖いので各車注意が必要です。
 スタート、上位3台は綺麗なスタート、その後ろでガスリーがアンダーを出したというか、内側からペレスが来たので3ワイドの真ん中に挟まったというか、外側のアロンソに接触してしまいました。ガスリーは順位を1つ下げただけで大きな損害は無かった様子ですが、アロンソは17位に転落。
 ガスリーにはこれで5秒加算のペナルティー、本人は無線で「挟まれた」と不可抗力を主張しましたが、映像を見た限りではターン1のミドルあたりからもう曲がらなくて、ペレスがどうということでもなくアロンソに当たっているように思います。もう少しペレスのスレスレをいかにも「僕これ以上は左に行きたくても行けないんです!」っていう感じで出口付近で当たっていたら結論は変わったかもしれません。
 で、そのアロンソも翌周に安易にシューマッハーの内側に入ったら当たって回してしまい、結局アロンソもこの件で5秒加算ペナルティーが課せられました。被害者、のち、加害者でした。


 ハミルトンは1周目に2つ順位を上げて9位に上がりますが、8位の角田を抜けずここで一旦停滞。レッドブルからするととても良い仕事です。ハミルトンからするとあまり対戦したことが無い相手ですが、たぶん『無線でよく暴言吐いてるやつ』ぐらいは知ってると思うので、私がハミルトンの立場なら変に絡まないよう慎重に走りますね^^;
 ハミルトンは8周目、ターン3で意表を衝いて外から角田をかわしていきました。これはさすがの動きです。ただ既にボッタスからは19秒差となってしまいました。

 一方のボッタスはフェルスタッペンに対して2秒ほどの差をつけてまずは主導権を握っている様子。あまり路面が乾いてタイヤ管理が必要になっても、逆に雨量が増えてもボッタスは苦手分野なので、今がちょうど適温相場という気がします。ゴルディロックス路面と名付けましょうw

(イギリスの童話・『3匹のくま』に登場する熱くもなく冷たくもない、ちょうど良い温度のスープにちなんで、金融市場において、景気が過熱も後退もせず、金利も安定しているような投資家にとってちょうど良い塩梅の状態のことを『ゴルディロックス相場』と呼ぶ。ゴルディロックスは主人公の少女の名前)

 ハミルトンの方は10周目には6位まで浮上、この時点でのファステスト ラップも記録してこれ以上離されないように必死です。後方からスタートしても勝ってしまうハミルトンって憎たらしくて仕方ない一方、集中力の高さと圧倒的速さには毎回感心させられます。こういうことを組織のトップが考えるとすぐリバース グリッドだなんだって言い出すんでしょうね。

 14周目、ハミルトンはガスリーも抜いて5位へ。次のペレスまでは7秒ほど差があるので、ようやく追い抜き祭りにも一息、という感じです。さすがに右前のタイヤがけっこう摩耗しているようで「ハゲて来た」って言ってるんですが、まだファステストが出ます。一方ボッタスはフェルスタッペンとの差を3.5秒まで拡大。タイムだけ見れば横ばい圏という感じで、ドライバーからのコメントを見てもまだまだスリックには程遠い状態です。

 ボッタスとフェルスタッペンの争いは15周目を境に少し流れが変わり、徐々にフェルスタッペンが差を詰め始め、この後2.7秒ほどの差で一進一退を繰り返します。ラーメン屋、やはりタイヤ摩耗レースになるとやられてしまうのか。。。

 21周目、16位で失うものの少ないリキャードが新しいインターミディエイトに交換。昨年は新しいものを乾き始めた路面に投入したらタイヤがボロボロになってしまう逆効果だったので、これが役に立つのかどうかライバルも興味津々。同じころ、角田は単独スピンしてしまって入賞圏外へ後退、結局このレースを14位で終えました。

 25周目、ターン7あたりで雨が降って来たという情報ですが特に影響は無さそう。リキャードはタイヤを換えても特に速い様子が無くて他のドライバーはそのままステイ アウト。ボッタスは無線で「タイヤは基本的にスリックになったよ」。映像を見ても、接地面はもう溝が無いですね。
 ただ調子は相変わらず良さそうで、一旦2.7秒差前後で張り合っていたフェルスタッペンを4秒差近くまで追い返します。フェルスタッペンの後方約2秒ではルクレールも同じペースで走っていて、ペースに波があるペレスがそこから10秒ほど後方です。

 34周目、ハミルトンがようやくペレスを捕まえてターン12で外から仕掛けましたが、さすがにタイヤのへたって来たハミルトン、大外刈りとはいかずペレスがブレーキで頑張ってサイド バイ サイドに。ターン13の出口でハミルトンが少しアンダーを出した結果、ペレスがピット入り口のボラードの左=ピット入り口へ一回入ってからコースに戻る思わぬ事態に遭遇しました。不可抗力なのでペナルティーは無いでしょうね^^;
なかなかこういうことは起こらないですね^^;



 36周目、ボッタスから6秒まで離されたフェルスタッペンがピットへ。ペレスの前、3位でコースに戻りました。さっき2台が争ってくれたこともあってちょうどいい具合に空間がありました。ペレスもグッジョブ。
 これを見てボッタスが37周目にピットへ。実質トップでコースに戻り、まだフェルスタッペンに対して4秒以上の差です。ペレスも入ったのでハミルトンの前はとりあえずクリアになりました。同じころ、なんだかセバスチャン ベッテルがヨレヨレしてピットを出たなあと思ったら、スリック、それもミディアムを選んだようでこれが大失敗(。∀°)全くもってタイヤが機能せず、のたうち回って1周してピットに戻り、最後はピット入り口でもスピンして危うくクラッシュするところでした。
 本人曰く、「インターミディエイトがもう限界だったし、まだ濡れた部分はあるけど、スリックに替えた方がいいんじゃないかと自分の心の声が呼び掛けた」そうなんですが、心の声さんは完全に路面を見誤りました。

 これで暫定トップはルクレール。いつまで引っ張るのかなと思ったら、どうやらピットに入らず最後まで行くつもりのようです。ただ、37周目に一回飛び出して3.5秒ほど失ったこともあり、ボッタスは既に6秒ほど後方。フェルスタッペンから2位を奪い取るのが現実的な目標でしょうか。
 ハミルトンの方も41周目にピットの指示が出ますが、ハミルトンは「なぜだ」と聞き返し、エンジニアのピーター ボニントンは説得に失敗。こちらもステイアウトして粘ります。こちらはペレスに抜かれずに4位でゴールしてやろうという考えでしょうか。まあ、ダメになってからピットに入っても失う順位は少ないんですが、万一タイヤがぶっ壊れると0点なので安全を考えたらいずれ従うしかないでしょう。

 45周目、さすがにタイヤが限界に近くて43周目にもまたはみ出したルクレールにボッタスが追い付きます。ルクレールは「このままこのペースで行くとして、何位を狙ってるんだ」と聞きますが、リカルド アダミは「ボッタスを後ろに留めたら1位だぞ」。編集して間の会話が切り落とされてるならいいんですが、これが元々の応答だったとすると会話が噛み合ってない気がするのは私だけだろうかw


 47周目、ボッタスがターン1でルクレールをかわして1位に復帰。さすがにこれでお手上げという感じでこの周を終えてルクレールもタイヤを交換しました。
 ハミルトンに対してはボノから「タイヤの情報教えてくれる?」と無線が飛ぶと、ハミルトンはキレ気味に「滑りまくってるけど行けるよ!」と返答。しかし50周目、「ここで入らないと、ガスリーに抜かれないための最後のチャンスだ」と言われてピットへ。

 51周目、ペレスがルクレールを抜いて3位に浮上。ルクレールはターン12のブレーキングでブロック ラインを取りましたが、ウエットならレコード ラインを走った方が防御しやすい気がします。去年も最終周に対ペレスで同じことをして止まり切れずにペレスに抜かれたと思いますが、今回も抜かれてしまいました。
 さらにルクレールにはタイヤを換えたばかりのハミルトンが接近。どうも交換したばかりのタイヤでリアのグリップが得られていない様子のルクレールですが、ハミルトンの方も当然状況は同じなわけで、無線でお怒り。
「今何位なんだ!入るべきじゃ無かったんだ。グレイニングだらけだ!言ったろ!」

 結局のところ、今のコースに合ったタイヤは”そこそこハゲたインターミディエイト”であって、新品はかえって不利でした。後ろから”だいぶタイヤの溝が無くなった良いタイヤ”を履いたガスリーが迫ってきて、逆にハミルトンは追い立てられます。

ボノ「ガスリーが後方1秒だぞ」
ルイス「ほっといてくれ!」

 苛立つハミルトンとは対照的にボッタスがゴキゲン。最終周には全セクターで最速を並べてのファステストを記録し、最後は安全に走ったフェルスタッペンに14秒差をつけての優勝、昨年のロシア以来となる久々の勝利を手にしました。久々の表彰台の頂点!

間違えました。


 ペレス、ルクレール、ハミルトンのトップ5。PU交換により19位からスタートし8位まで追い上げたカルロス サインツがドライバー オブ ザ デイを獲得しました。エステバン オコンはタイヤ無交換で走り切って12位スタートから10位でした。

 戦略的にはフェルスタッペン、ボッタスの入った35周目あたりがちょうど良かったと思われます。溝のあるインターミディエイトをあまり水が無い路面で使うと、表面の良く動くゴムの部分はやたら発熱だけしてグニグニ動いてグリップもせず表面だけ急な入力で傷んでしまうので、丁寧に熱を入れて表面を削り、『うまいことスリック化させる』ことがポイントでした。去年と全く同じ結果です。
 レースの終盤に交換した人は当然速く走りたいので攻めて走り、そうすると溝が消え去るまでの間の数周はタイヤの性能が一時的にガタ落ち。ハミルトンともなると交換が遅すぎて、そこから良い状態になる前にレースが終わってしまった感じです。

 本来であれば、タイム水準的にはスリックに切り替わっていてもおかしくない状況だったはずなんですが、結局誰も投入できず、ベッテルを見るとそういう状況ではありませんでした。気温が低くて曇っており、霧雨のように常に水分が漂っている状態で水がうまく消し飛ばなかった、ということと、舗装と水との相性が影響したと思われます。ゴルディロックスはいくつかの要素が絡んで生まれました。

 結果論ですがハミルトンは最初にピットに呼ばれたところで入っていた方が、終盤にかけてうまくタイヤを使い、ルクレールを捕まえられた可能性が高かったと思われます。ステイアウトしたらどうだったか、というとおそらくペースがガタ落ちでペレスから順位は守れず、ルクレールもちょっとどうかな、というところで、タイヤが爆発するリスクと比べて利益は少なかったように思います。
 チームはチームで、ハミルトンに断られた後はどちらかというとスリックへ切り替えられるタイミングを待とうという考えに傾いたようなので、

・タイヤが壊れるリスクを考えたら無交換はしたくない
・順位は欲しい
・ハミルトンは昨年もそうだったがハゲたインターミディエイトで自信がある
・スリックに繋げそうな気がする

と複数の要素が一度に絡んでしまい、結局手詰まりになってしまいました。ハミルトンはレース後、ピットに呼んだチームの判断に対する不満をぶちまけていたようですが、どっちも優先事項がまとまり切らなかった全体としての管理ミス、という印象です。
 これでフェルスタッペンが選手権で6点差の1位となりハミルトンを逆転。過去6戦で4度もリーダーが入れ替わり、7戦連続で1位と2位の差が8点以上開かないという接戦が続いています。

 一方ボッタスはゴルディロックス路面の恩恵もありましたが、セッティングの決まった車で最初から最後までレースを制御下に置くという仕事を久々に完璧にこなせて自信をいくらか取り戻せたかなと思います。去年はウエットでグダグダになったイベントだっただけに、余計にこの勝利は彼にとって精神面で大きいのではないかと思います。
 アルファロメオに移籍すれば勝てる環境では無くなる可能性が極めて高いですが、勝つための流れを手にした状態でドライバーが移籍し助言する効果ってバカにできないですし、ここでは自分が引っ張る立場になるでしょうから、来年に向けても見る側として嬉しい勝利ですね。

 次戦は大陸を渡ってアメリカ。そこからメキシコ、ブラジルとF1は南北アメリカ大陸を南下していきます。

コメント

首跡 さんの投稿…
タイヤ無交換を実行したオコンには、驚きました。
Twitterに完走後のオコンマシンのタイヤ画像があったのですが、ハゲしく摩耗していましたね。
また、川井氏の「baldっていうのは、まあ、そういうことです」の発言を聞いた時は、なぜか何とも言えない気分になりました。
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 川井ちゃんに代わって何も気にせず訳しましたw
あの条件でインターをもたせようと思ったら、1周目まで遡ってどうタイヤを使ってきてかを考えないともたないと思うので、オコンはよっぽど無理させずに使ってたんでしょうね。
クビサがデビュー戦でインターミディエイトを異様にうまく使ってゴールしたはいいけど、摩耗しすぎて重量違反で失格になった一件をふと思い出したりしましたが、今はチームもその辺まできっちり管理されてるんでしょうかね~。