ニック デ フリースがチャンピオンとなってシーズンが終了したフォーミュラE。来季・2021/2022年のシーズン(シーズン8)開幕は2022年1月ですが、来季に向けたドライバーの動きが出て来たのでここまでの動きをまとめます。
The-Race.comというサイトがフォーミュラEについてのかなり詳しい話を取り上げてくださっているので、最近かなり重宝しております。
日産e.damsは9月2日、シーズン8のドライバーとしてマキシミリアン グンターと契約したと発表しました。グンターは2018/2019シーズンにドラゴン レーシングでFEに初参戦し、翌年からの2年間はBMW i アンドレッティーで通算3勝を挙げたドライバー。ただ、シーズン7に関してはチームメイトで新人のジェイク デニスがチャンピオン争いしたことと比較するとやや見劣りし、情報によれば数名のドライバーと天秤にかけられていたようです。
日産はセバスチャン ブエミが残留し、来季はブエミとグンターのコンビとなることが確定しました。一時はアレクサンダー アルボンと契約するという可能性もあったようですが、アルボンを手放したくないレッド ブルはウイリアムズのシートにアルボンをあてがうことで彼を繋ぎとめようとしているとの観測があり、彼自身もF1にシートが無ければインディーカーへ行きたい意向があるそうなので、縁が無かったようです。
なお、オートスポーツ No.1559によれば、シーズン9で導入される新型車両・Gen3では、パワートレインへの日産の関与度合いは強まることになるとのことです。
その日産で3シーズンを過ごしたローランド、既に日産を離脱することを発表していましたが、まだ正式発表されていないものの、マヒンドラ レーシングと契約を完了しているとみられています。ローランドはシーズン2で一度だけニック ハイドフェルドの代役としてマヒンドラから参戦したのがFEデビュー戦となっており、それ以来の”古巣”となります。
ローランドのチームメイトは現在のところ不明のようです。シーズン7はアレクサンダー リン、アレクサンダー シムズのアレックスコンビでしたが、いずれもFEと並行してスポーツ カーのレースに出場しており、リンはこちらに専念する可能性があるようです。マヒンドラ自体はシーズン9以降の参戦を確約しており、わざわざイギリスに新しく資金を投入してこのカテゴリーに気合いを入れているようです。
一方シーズン7をもって撤退してしまったアウディー。シートを失ったルーカス ディ グラッシはどうやらベンチュリーに加入することで合意したとの情報です。日産とも話をしていたようですが、結局はメルセデス製のパワートレインを使用して競争力のあるこのチームが彼の次なる働き場所となりました。
チームメイトはエドアルド モルターラが契約を更新する見通しで、ノーマン ナトがシートを失うことになりそうです。彼がテストやシミュレーターのドライバーとして残るのか、それともチームを離れるのかは不明です。
DSテチーターはチームが現在不透明な状況にさらされているようです。チームは中国のメディア企業であるSECAという企業がオーナーを務めていますが新たな投資家への売却を模索しているとされます。
そして有力とみられたのが、暗号資産・イーサリアムの共同創業者として知られるアンソニー ディオリオという人だったのですが、SECAとディオリオの間で行われていた交渉がこの夏にどうやら破談になったとのこと。DSテチーターはとりあえず来季、さらにはGen3導入へ向けて活動を続けてはいるものの、将来性が不透明になっていてこれがドライバー契約にも波及しているとのことです。
アントニオ フェリックス ダ コスタは契約があるので残留するのが基本線のようですが、Gen3時代にこのチームが本当に存続するのが不透明なので他チームや他カテゴリーの可能性を模索しているとのこと。そしてジャン エリック ベルニュの方は来季の契約自体も不透明。DS=ステランティスとすると、グループ内のプジョーがWECに復帰し、ベルニュはそちらにも携わっているのでさっさとこっちへ行ってしまう可能性もあるようです。
数少ない、既に来季のドライバーが固まっているチームはジャガーとポルシェで、いずれもドライバーは継続。ジャガーはサム バードとミッチ エバンス、ポルシェはパスカル ベアラインとアンドレ ロッテラーです。
そしてなんと言っても気になるのは、ドライバーとチームのチャンピオンを決めたわずか4日後に来季限りでの撤退を決めたメルセデスベンツです。既にレースが始まる前には結論が出ていて発表の時期を待っていた、というのが正しい時系列なわけですが、このチームについては撤退後にどうするかについて色々な話が出ています。
このチームは拠点をイギリスのブラックリーという場所に、メルセデスのF1チームと同じ建物内で構えています。そのため、技術者などの体制については立地のおかげで非常に高度なものを利用することができる環境にあります。
メルセデスベンツという会社としては、フォーミュラEは投資に見合わないと判断されてお金を落としてもらえなくなったわけですが、メルセデスベンツEQフォーミュラEチームのチーム代表・イアン ジェームスは
「実際のところ、私たちが利用できるさまざまな選択肢を目にすることができて非常にエキサイティングだと思いますよ」とコメント。チームをメルセデスから独立させた、いわば『チーム ブラックリー』として、メルセデスの作業場所を活用しながら独立したチームとしての参戦を模索している可能性があるようです。
チームのスポンサーであるVestasとNEOMもGen3時代に興味を示しているようで、そのためにメルセデスは撤退表明をしていながらも、チームそのものはGen3に向けた準備を進めている様子がみられるということです。
メルセデスといえば、かつてF1ではホンダの突然の撤退により、チーム代表だったロス ブラウンがチームを買収して『ブラウンGP』として存続。ホンダとブラウンが仕上げていた車が2009年の規則に対して見事な仕上がりだったところに、メルセデスのエンジンも優秀でチャンピオンを獲得、そしてそのままメルセデスのF1チームへとワークス化されました。
言うなれば今回はこの逆のプロセスになりますが、他のメーカーが譲り受けるための橋渡しになる可能性は閉ざされていないようです。
また、メルセデスのグループといえるアストンマーティンも市販車両の電気自動車化を標榜していて、グループとして考えた時にアストンマーティンのブランドが参戦することには一定の意義があると考えられることから、いきなり2023年とは行かなくても、後々にここへ滑り込むような案も噂として挙がっています。
そもそもメルセデスはワークスとして参戦する1年前には『HWAレース ラボ』という、メルセデスと関係が深いHWAチームを『先遣隊』として参戦させた経緯もあり、HWAのスタッフのいくらかはまだチームに残っているようです。
ただ楽観視できると言い切れないのは、アウディーも撤退に際して現在のエントリー枠を売りに出したものの入札が成立しなかったとされていることで、参戦したいメーカーはあるといわれているものの、空きました、じゃあ喜んで参加します!というほど楽な状況ではないみたいです。年間の参戦費用はオートスポーツ誌によると日本円で60億円ほどするそうなので、決して安くはないんですね。
撤退組ではBMWは撤退してもアンドレッティーがチームとして活動を継続し、開発が凍結されていることもあってシーズン8は今のBMWのパワートレインを継続使用しますが、シーズン9に向けては新たなパートナーが必要です。
多くのメーカーは、関心がフォーミュラEよりも安価で独自性が出せてル マン24時間という知名度のあるレースで競えるLMDh規定に関心を寄せていて、メーカーの市販車は『〇〇年までに全ての車両を電動化』と脱内燃機関の方向なのに対しモータースポーツ活動は逆行して脱電気自動車という状態です。
フォーミュラEとしても、開発競争を過激化させるとコスト高でバタバタ倒れるので領域を絞って、メーカーよりドライバーのレースにすることで接近戦を演出してきましたが、狭すぎる開発領域がメーカーの不興を買ってしまっている状況なので、難しい舵取りを求められています。
レースの知名度そのものが向上して宣伝効果が上がればそれでも容認されますが、意外と伸び悩んでいるのが実情だそうなので、新車の導入とチーム減という状況で迎えるシーズン9は大事なシーズンとなりそうです。とりあえずそのためにシーズン8も面白いレースが見たいですね。

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