Formula 1 VTB Russian Grand Prix 2021
Sochi Autodrom 5.848km×53Laps=309.745km
winner:Lewis Hamilton(Mercedes-AMG Petronas F1 Team/Mercedes-AMG F1 W12 E Performance)
F1第15戦はロシア、ニキータ マゼピンの母国GPです。ただ、マゼピンはロシアの国家ぐるみの組織的ドーピング問題の関係で国籍が『ロシア』ではなく『ロシア自動車連盟』になっている『中立国選手』の扱いなので、万が一、いや億が一、いや京が一マゼピンが優勝することがあっても、表彰式でのロシア国旗の掲揚や国歌の演奏はありません。公式サイトは国際映像でも、本来国旗が入る箇所がただの白い四角形になってますね。思いっきり『Russian Grand Prix』って書いてあるのに^^;
Sochi Autodrom 5.848km×53Laps=309.745km
winner:Lewis Hamilton(Mercedes-AMG Petronas F1 Team/Mercedes-AMG F1 W12 E Performance)
F1第15戦はロシア、ニキータ マゼピンの母国GPです。ただ、マゼピンはロシアの国家ぐるみの組織的ドーピング問題の関係で国籍が『ロシア』ではなく『ロシア自動車連盟』になっている『中立国選手』の扱いなので、万が一、いや億が一、いや京が一マゼピンが優勝することがあっても、表彰式でのロシア国旗の掲揚や国歌の演奏はありません。公式サイトは国際映像でも、本来国旗が入る箇所がただの白い四角形になってますね。思いっきり『Russian Grand Prix』って書いてあるのに^^;
さて、そんなソチ、この週末は天候が不安定で木曜日には排水が追い付かずF2・F3のチームが使う側のパドックで浸水が発生。そして不安定な天候はF1にも影響しました。
金曜日の走行はドライでしたが、FP2ではルイス ハミルトンがピットで止まり損ねてクルーを跳ね飛ばしてしまいます。アゼルバイジャンのリスタートでも失敗の原因となった『ブレーキ マジック』の切り忘れが原因でロックしたようですが、F1で自身初だという失敗に
「心臓が飛び出しそうなくらいドキドキした。すごく心配したよ。ありがたいことに彼は無事だった。あんなふうにマシンのすぐ前に立つなんて、とても勇気がある。」とコメント。金曜日の2回のフリー走行はいずれもバルテリ ボッタスが1位でハミルトンが2位となりました。
ところが土曜日に天候がまた悪化、FP3は走行すらできず、雨上がりの濡れた路面での予選となりました。マックス フェルスタッペンはパワー ユニット全交換をするためどっちみちビリなので、タイムも出さずさっさと撤収。同じくPU交換をするシャルル ルクレールとニコラス ラティフィーもQ2でタイムを出さず撤収しました。
雨は降っていないものの気温が17℃しかない上に、再舗装した箇所やコース上を道路や看板が跨いでいる箇所に水が残っているために、Q2まではなかなかスリックを履く状況になりませんでした。
しかしQ3になって、ある種失うものが無いジョージ ラッセルがスリックに交換するとここから他のドライバーも追随。しかしこの不安定な路面では、タイヤにしっかりと熱を入れ、スリックでの走り方のポイントを押さえた上で最後のアタックの1回にようやくチャンスがあるような綱渡りの挑戦。
結果、ランド ノリスがPP、カルロス サインツが2位、そして勇気ある決断をしたラッセルが3位となりました。インターミディエイトのアタックでは最速だったハミルトンですが、スリックに替えようとピットに入ったら入り口を曲がり切れずまさかの壁ドン。ウイングがバッキリと折れてしまって交換に時間を要してしまい、ただでさえ少ない残り時間がさらに無くなる結果に。やはり全くタイヤを作動できないまま、最後には無駄に単独スピンだけして4位となり、スターディング グリッドはおもしろい顔ぶれになりました。
せっかく好調だったボッタスは雨になると弱くて7位、フェルスタッペンの代わりにできればメルセデスを抑え込みたいセルヒオ ペレスは9位となり、防壁にはなりそうもありません。雨で強いと思われたピエール ガスリーはQ2で敗退し12位。タイヤを交換せずに走り続ける戦略が外れて、アタック後のガスリーは怒りでヘイローを叩きまくってました。指を骨折しないといいけど^^; 角田 祐毅はタイヤを交換して13位でした。
決勝、状況はドライですが海の方には大きな雨雲。ここは厳密にはソチから30kmほど離れた隣町ですが、調べたらソチは雨が降ってるようです。ボッタスはなんとここにきてPUのコンポーネントを交換し後方16位からのスタート。フェルスタッペンの行く手を阻むために派遣された感^^;
予選のQ2は全員インターミディエイトだったので、上位10台を含め決勝のスタートでの使用タイヤは自由選択。多くはミディアムですが、ひねくれもののフェルナンド アロンソは6位ながらハードでのスタート。気温19℃、路面温度22℃、大阪人の今の気分からするとちょっと寒く感じる気候です。
スタート、ラッセルの動き出しが良く見えましたが、ここは実質的なターン1であるターン2までがとてつもなく長いので陣取り合戦しているうちにサインツが先頭でターン2を外からかぶせて確保しました。ハミルトンは行き場を失い7位へ後退、アロンソは全くタイヤの準備ができてなくてターン2を素通り。お馴染みクソ狭い通過ゾーンが用意されていたんですが、猛スピードで駆け抜けました。ある意味すごいけどあかんw
サインツ、ノリスが抜け出し、3位のラッセルがランス ストロール、ダニエル リキャード、ハミルトンを抑える展開。後ろからハードを履いたペレスが近寄ってきてハミルトンの監視役になりそうです。後方では14位のボッタスがフェルスタッペンを抑えていて、変な位置でメルセデスとレッド ブルの対決が勃発しています。
6周目、フェルスタッペンがターン13でボッタスをズバッと抜きました。まさか来るとは、という感じでボッタスは無抵抗。
トップのサインツは自由に攻めているわけではなくある程度マネージメントを入れているようでノリスは9周目あたりから攻撃に転じます。サインツの方も「ペース上げた方がいいかな」とタイヤ管理一辺倒では苦しい雰囲気。実際、一時8秒以上に広がった3位ラッセルとの差がそこから徐々に縮まっているので、サインツは飛ばせるほど余裕がなく、逆にラッセルは車の能力を活かしてうまく走っています。その間にフェルスタッペンが12位まで浮上しボッタスは数台後ろとフェルスタッペン対策としては役に立ちそうもありません。
サインツの近くを走ったせいか、ノリスもタイヤが痛めつけられて12周目には「左フロントが完全に終わった」。事情はみんな似たようなものらしく、12周を終えると4位のストロールが団体を一抜けしてピットへ。ハードに交換します。
すると13周目、画面に映ってないところでノリスがサインツを抜いてリーダーに、ターン13であっさり抜いてサインツはお手上げ。この13周目にラッセルもピットに入り、3位集団のフタがいなくなりました。
翌14周目、これ以上引っ張るとストロールにアンダーカットされてしまうサインツが見切り時と見てピットへ。ミディアム勢は苦しんでいる様子でしたが、さっきタイヤが終わったと言っていたラッセルは自己ベストを記録してまだ行けるというコメント。
気づけば見た目上の2位はリキャードでハミルトンの抑え役。ここは彼が頑張って抑えるほどノリスの優勝に貢献できます。モンツァでのノリスの献身に対してお礼を返す日が早くも来ました。ノリスは本来ならサインツのアンダーカットを警戒しないといけないんですが、タイヤを換えたサインツと同等のタイムで走れているので引っ張るほどお得な状態になってきています。
雨によってラバーがほぼ乗っていない状態の路面で、レース開始直後はタイヤへの攻撃性が高く左前のタイヤにはグレイニングが出ていました。しかし20台が走行していることでだんだんラバーが乗って路面が改善し、ゴムが舗装のザラザラを徐々に埋めるので攻撃性も低下。結果、引っ張っている上位勢はタイヤの摩耗を路面の改善が覆い隠して上回り、むしろタイムが早くなっていきました。グレイニングも消える方向に向かい、さっさとミディアムを見限った人は諦めが早すぎたようです。
23周目、ノリスはリキャードより毎周1秒ほど早く周回して12秒差。リキャードの後ろにはハミルトン、ペレス、アロンソ、フェルスタッペンが3秒ほどの差に集まります。ハミルトンは抜けずにどうしようもなく、しかしピットに入るとおそらくラッセルの後ろでコースに戻ることになるのでアンダーカットしに行っても自滅の恐れあり。
メルセデスはとりあえずピットに入る動きを見せ、これで相手のリキャードのピットを誘い出すことに成功。さらにマクラーレンはここで作業に大幅に時間を食い、ラッセルの5秒後方、ピットを終えた組では4番目になってしまいました。最近の新しいピットの規則で何かうまくいかなかった様子です。
直接の対戦相手がピット作業ミスで下がったし、前が開けばペースはまだ早いのでハミルトンはステイ アウトを継続。一方サインツはどこへ行ったのかというとまだピットに入っていないボッタスに追いついて詰まり、そのボッタスはガスリーを抜けずに詰まっていました。ガスリーもセバスチャン ベッテルに詰まってるトレイン状態。
26周目、ハミルトンとフェルスタッペンが同時にピットへ。リキャードがめっちゃ飛ばしてるので、ハミルトンはこれ以上引っ張るとまたひっくり返されてしまうところでした。ストロールとリキャードの間でコースに復帰。フェルスタッペンはリキャードの後ろになります。
28周目、後ろの動きがある程度分かったところでノリスがピットへ。マクラーレンのクルーのみなさん、今度は失敗しませんでした。この後ハミルトンはコース上でストロール、サインツ、ガスリーを抜いて30周目には見た目上の5位、実質2位となってノリスとの間に車はいなくなりました。まだ8秒差ありますが、トト ウォルフから「ルイス、勝てるぞ!」と無線が飛びます。
36周目、まだピットに入っていなかったペレスとアロンソが入ってピット サイクルが終了。ペレスは3位でコースに戻れるはずでしたがタイヤ交換で失敗して9秒近くかけてしまい5位、かつフェルスタッペンの目の前になってしまいました。これだと譲るしかないなあ、と思ったら、翌周にフェルスタッペンがアロンソに抜かれて、間に1台入ってしまいました。
一方トップ争いはハミルトンが毎周0.8秒ほど早いタイムで追い上げて来ていて、39周目にはとうとう2秒差を切ります。しかしノリスもこの39周目にファステストを出して応戦。ハミルトンの方が2周古いタイヤで、かつこのあたりから乱気流の影響が出てきますから、ここから先のタイヤの使い方、攻め時の選択が重要です。
残り10周、レースの最後の方に雨がパラっと来そうだ、との無線が相次ぐ中で上位2台はとうとう1秒差。ノリスはセクター3でなんとか0.2秒稼いで1.3秒差にし、コースの残りでハミルトンが取り返して1秒に戻る、ということを繰り返します。DRS圏まであと一歩。一方ペレスがリキャードを抜いて4位へ浮上。フェルスタッペンは集団走行が長くてタイヤがくたびれたのかアロンソからも離されて7位で停滞です。これならさすがに入れ替えなくて良さそう。
残り8周、お客さんが雨具を取り出しはじめて本当に雨が来た模様。そして翌周にハミルトンがとうとうノリスの1秒以内に入ると、ターン5でノリスが滑ってコース外へ。幸い抜かれずに済みましたがかなりリスクが高まっています。ハミルトンもここで無理して自滅したら元も子もないので無理は禁物。その間にペレスはサインツを抜いて3位に自力で復活。
ターン5のあたりはかなり滑りやすくなって何台かはピットへ。雨に気を取られたかストロールが全くミラーを見てなくてベッテルとぶつかる危ない場面もありました。たまたまホイール同士で真横から当たったのでよかったものの、あとコンマ数秒接触のタイミングが違ったらベッテルが宙に浮いてそのままフェンスに衝突していてもおかしくない危険な接触でした。ストロールは10秒加算ペナルティーを受けますが順位に影響せず11位でした。
ノリスはチーム側からの雨の情報にも「黙れ!」と一蹴し、インターミディエイトにするかどうか聞かれても「いらねえ!」
ハミルトンの方も48周目にピットの指示が出ますが、本人の判断か入らずに通過。翌周も同じやり取りが継続されたようで49周目に入りました。ただ、ハミルトンはピット直前に「雨止んだぞ」と伝えており、本人としたら不服な感じだったようですが、「ピットに入れ、もっと降る」とピーター ボニントンがハミルトンを制してピットに呼んだようです。
そしてこの49周目が運命の分かれ道でした。50周目にはもうターン5あたりがかなりの雨で、ノリスはインターミディエイトのマゼピンに簡単に置いて行かれます。他が乾いていればなんとか、というところですが1周でハミルトンに8秒ほど追いつかれたのでこのままだと逃げ切れず、しかし今タイヤを換えると優勝は絶望的です。
しかし運命は残酷で、51周目・残り3周、ターン3あたりで大雨になり、もはやインターミディエイトどころかウエットの状況になってしまいました。全くまともに走れず、ついさっき18秒差だったハミルトンがもう追いつき、ノリスはターン5で全く止まらずコース外へ流れて行ってスピン。無情にも優勝はその手からこぼれ落ちました。
この混乱で水を得た魚になったのはフェルスタッペン。ハミルトンから見て1周早い48周目にタイヤを換えておりこれが成功して3位に浮上。ノリスがもはや運転不能になって2位へ。ノリスはピット入り口のコーナーすらちゃんと曲がれず危うく入り損ねる状態でもうボロボロ、結局7位に終わりました。
ハミルトン、通算100勝目は記憶に残る劇的な展開の中で手にしました。フェルスタッペンは50秒以上離されましたがなんと最後尾からスタートして2位で損失を最小限に抑えました。サインツ、リキャード、ボッタスのトップ5。今日は早めにタイヤを交換した慎重派の人の勝利でした。
なんか特別なテロップが用意されてました。 最終コーナーでスピンして負けたらどうする気やったんやろうw |
100という途方もない勝利数が、本人の実力だけでなく信頼できる優秀な数多くのスタッフと共にチームで成し遂げたことを象徴するような勝ち方にも見えましたね。
展開としてはいくつかポイントがあり、複雑に絡み合ったレースでした。序盤のマクラーレンは極めて理想的な展開でしたが、最初の躓きはリキャードのタイヤ交換で時間を要してしまい、ハミルトンを揺さぶる手段を1つ手放してしまったことでした。
あの時ハミルトンが『前の車と逆をやれ』で、マクラーレンが動かなければ自分が動く予定だったのか、単なる釣りだったのか分かりませんが、ハミルトンが動いてもまた集団に詰まってアンダーカットは容易ではなかったですし、少なくともタイヤと時間を使わせることができたはずなので、マクラーレンはメルセデスに先に動かせた方が良かったように私には見えました。
そして、第2スティントでハミルトンは前に車が居ても意外と引っかからずに全部抜いた一方で、リキャードはサインツに詰まってしまい、結果あっという間にハミルトンの後ろにフリー ストップするだけの空間が生まれていたことがハミルトンを圧倒的に楽にしました。
本来ならウインドウ内には2回目のピットを終えたペレスが入っているはずでしたがこれも作業ミスで離れてしまい、ハミルトンにとって非常に楽な展開を生みました。リキャードもサインツを抜いていたらひょっとしたらウインドウ内にいたかもしれません。
ハミルトンとすれば優勝はもちろんしたいけど、雨に足を掬われて0点は絶対やってはいけないですからある程度無難に行きたいところ。後ろに大きな差があって交換しても2位のまま、仮に失敗しても他の人がだいたい交換したのを見てから動けましたから、非常にリスクの少ない手堅いレースをすることができました。ハミルトンは無線の雰囲気だとスリックで付いて行きたかった様子ですが、チーム側がそれをきっちり抑え込んでいました。
一方でノリスに対しては、エンジニアのウィル ジョセフが「インターミディエイトはどうかな?」と聞いたぐらいなので、判断はドライバーの意見を重視していたように思います。特にジョセフは過去の雰囲気から、かなりノリスに寄り添って、なんなら車載映像を見ながら『隣に乗って指示を出している』ようなタイプのエンジニアなので、この2人にはそういった関係性が非常に合っているんでしょう。
ただ、この場面ではノリスの方は走ることに必死で考えるとかいう心理状態ではどう見てもなくなっていたので、何かを決めるならチーム側である必要があったと思います。が、チームとしてもまたあそこまでいきなり雨量が増える、という情報分析には至っていなかったようで、チーム全体として今回は読みを間違えた、というところです。いずれこの経験が活きる時が来るでしょう。
仮にノリスが49周目にタイヤを換えていたらハミルトンは逆をやったのか?というタラレバが気になります。ハミルトンはポイントが大事なので同じように交換していたような気がしますが、仮に逆をやって、失敗してから50周目にピットに入っても2位だったので、とりあえず1周だけは勝負をしたかもしれず、この話題でF1GPニュースは15分ぐらい解説陣がしゃべれそうですw
逆に自己判断でピットに入って成功したのがフェルスタッペンで、画面には映っていませんでしたが48周目にピットに入るよりも前に、雨の中でサインツとリキャードをコース上で抜いてきていたようです。タイヤ交換の決断が早かった上に、不安定な状況でコース上で追い抜きをして見せたフェルスタッペンはやはりただ者ではありません。2位はたまたまタイヤ交換が当たった、というだけではありませんでした。
タイヤ交換のタイミングという点では47周目、48周目組が当たりを引いたことになり、47周目に入ったキミ ライコネンはそれまで13位あたりを走っていたのが、終わってみたら8位でした。
逆に引っ張りすぎた人は雨に耐えられずスピンしたりして散々でしたが、50周目になってしまってかなり損をした中でも6位に残ったアロンソもやはり特別な技術を持つドライバーだと改めて感じさせられます。ペレスも同じ状況でしたが、コース上でピットの前にアロンソに抜かれていて9位でした。
レース終盤に雨が降るかも、という話があっても、大抵は影響が無いかフルフル詐欺で終わってしまうので、今回ほど強烈な影響があったものは久しぶりに見た気がします。大雨でノリスがよたよたし始めたあたりからはもう言葉も出ませんでしたが、たまにはこういうレースもいいですね。次戦はトルコです。
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