マゼピン、幻のファステストラップ

 2021年のF1ベルギーGPはある意味で記憶に残る一戦となりました。悪天候によりレースが全く開始できず、結局セーフティー カーの下で3周目に入った周回の途中で再びの赤旗。これで全車がピットに帰ってきてそのまま再開されずにレースが終了。これまでで最も短いレースとなった1991年のオーストラリアGP(14周で終了)を大幅に塗り替えるF1史上最短レースとなりました。
 長年F1を開催していればこういう天気の日があったっておかしくないので、ハーフ ポイントのレースですら史上6回目だというのが逆に意外だなと思ったりしました。よく毎回きちんとレースが開催出来ているものです。まあ"6台しかいない"とかたまにその手の問題は起こってきましたけど。

 で、ひたすらレースが始まるのを待ち、始まったと思ったらまたやめてしまった中継を延々と見ていた人の中で話題&笑いのタネとなったのが、『ニキータ マゼピンがファステスト ラップを記録した』というものでした。ハースのTwitterアカウントもこんな投稿を発信していたようです。
https://twitter.com/HaasF1Team/status/1432031183374848001

 中継映像では、マゼピンの名前の左側にファステストを表すアイコンが表示されており、マゼピンがその画面を見て「俺ファステストだよ」と笑っているかのように見える映像も映し出されました。マゼピンといえばF2でもかなり荒っぽい運転が問題視されたことも多く、F1昇格後もクラッシュが耐えなくて、あんまり良いことではないですが『存在自体が笑いのネタ』みたいなところが少なからずあります。
 そんなF1ファンのいじられキャラ(?)だけに、記録に残ってよかったね、なんとミック シューマッハーより先にファステストを記録できた!、なんてことを思ったり思わなかったりした方もいらっしゃるかもしれません。F1ではファステストラップにボーナスで1点が与えられますが、10位以内であることが条件です。マゼピンは17位なので点数を貰う権利はありませんが、この場合でもファステストラップの記録は付きます。
画面を見て笑顔のマゼピン。
おそらく左前方のカメラが国際映像のクルーと思われる
https://twitter.com/HaasF1Team/status/1432022213801267202


 が、私は変だなと思いました。というのも、F1の規則では赤旗でレースが中断して再開されなかった場合、その2周前にコントロール ラインを通過した時点(コントロールライン通過の基準で言うと1周前)での記録が結果として採用されることになっているからです。今回は3周目の途中で赤旗が振られたので、結果は1周目を終えた時点での結果に基づくはず。
 他方でマゼピンがファステストラップの3分18秒016を記録したのは2周目で、この規則通りなら2周目は存在しなかったものとみなされますから記録から消えるはずです。もちろんこの時点ではレースはまだ中断中で再開の可能性もありましたが、再開して普通に走ったら1000%マゼピンの記録は抜かれますw

 結局このままレースは終了したわけですが、気になったので公式サイトに確認しに行ったところ、普段のレースには存在するFASTEST LAPの項目がありませんでした。レース結果も全てのドライバーの周回数が1で記録されており、やはり2周目は無かったことになり、マゼピンのファステストは幻でした。
 レース後に書かれたレース系サイトの記事などでもいくつか『マゼピンがファステストだったが10位以内ではないので1点は付与されなかった』という旨の記述を見ましたが、そうではなくそもそもファステストは記録されていない、というのが正確です。

 で、そうなると別に浮かび上がるのが、『1周目のタイムはカウントされないのか?』ということでした。レース結果によれば、優勝したマックス フェルスタッペンのレース時間は3分27秒071。1周しかしていませんし、2位以下はフェルスタッペンより必ず長い時間がかかっていますから、ファステストラップはフェルスタッペンということになります。が、記録上ファステストラップは誰にも記録されておらず、いわば『該当者無し』となっています。

 この件に関し、レッド ブルのヘルムート マルコはRacing News 365に対して「そのことは確認しています、もう0.5点欲しいですね」とコメント。レッドブルはボーナスを貰えないか一応検証は行っている様子です。
 規則上、1周目だからファステストではない、というような明確な規定は存在しません。ただ、競技規則6.4には『有効なファステストラップを記録』したドライバーに1点を与えるとされており、FIAが有効と認める必要があります。たとえばコース外を走行するなどしていた場合には、『有効でない』と解釈されて点数が貰えません。ポルトガルGPでちょうどそういうことがありましたね。
 で、今回のケースではレースをしているわけでもないセーフティーカー先導での周回であり、なおかつこの時はピット出口からコースに入って1周したので、サーキットの総距離である7.004kmを走破してもいません。そう考えると、これが『有効』ではないという解釈が成り立つため、誰もファステストラップを記録していないと解釈されたようです。
 そう考えると、仮にこのSC周回があと数周行われてマゼピンのタイムが更新されずにレースが終了したとしても、同様にレースをしてすらいないことが理由となってファステストラップが認められずに幻になった可能性もありそうです。
 ただ、これシーズン最終戦を終えて0.5点差とかになってしまったら、マルコ博士がこの話を蒸し返してきやしないか多少気になります。もし万が一最終戦を終えてそういう騒動が本当に起きることがあったら、「あ、そういえばズラスポになんかそういうの書いてあったな」と思い出していただければと思いますw

 キミ ライコネンが引退を発表したというのに、全然関係無いマゼピンの話題をお送りしましたw
 
 

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