NASCAR用語 サ行

・サイド ドラフト side-draft


 ドラフティングの一種で名前の通り車両の側面で発生する。先行車両の斜め後方から後方車両が接近すると、先行車両の側面を流れている気流が乱れ、一部がスポイラーへと導かれたり、クオーター パネルの内側に巻き込む。
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 結果、先行車両の抵抗/後方乱気流が通常時よりも増加し車速が鈍る。一般的なドラフティングのイメージが”後ろに付いて速くなる”のに対し、これは”相手を遅くする”のが大きな特徴。特に速度域の高いスーパー スピードウェイでは顕著に効果がみられるほか、1.5マイルのトラックでもかなりの効果がある。


・ショート ピッティング short pitting

 相手よりも先にピットに入り、早いタイムで周回することで相手のピット後に前に出る戦略のこと。日欧で言うアンダーカット。NASCARでは基本的にタイヤの摩耗が非常に大きいためショートピッティング戦略は効果が大きいが、1.5マイル以下のオーバルではピットに入ると一時的に周回遅れになるため、コーションのタイミング次第では大損することがある。


・スカッフ タイヤ scuff tire

 既に使用されているタイヤのこと。日欧で言うユーズド タイヤ。スカッフ=すり減る、などの意味。NASCARではレース毎にタイヤの仕様セット数が定められており、コーションの出方によっては使い切ってしまうことがあるため、展開によっては念のため使用状態の良いスカッフタイヤは残しておいていざという時に使うことがある。また、予選が行われる場合にはレースのスタート時のタイヤは予選で使用したスカッフタイヤを装着する義務がある。


・スティッカー タイヤ sticker tire

 未使用の新しいタイヤのこと。日欧で言うニュー タイヤ。未使用のタイヤにはデータが記入されたステッカーが貼られていることからこう呼ばれる。NASCARではレース毎にスティッカータイヤの本数が定められるため、コーションが出るたびに何も考えず交換していると、レース終盤に足りなくなることがたまにある。


・ストック カー stock car

 本来的には『工場から出荷されて何ら改造されていない車』、という意味だが、ここから転じて、『レース専用に作った車ではなく、量産車をベースとして改造したレース用の車両』という、レース専用車両と区別する意味の単語となった。
 現在ではNASCARをはじめ、ストックカーと呼ばれるものは全く市販車と関係しないレース専用設計の車両であるため元々の言葉の意味からは外れ、『パイプ フレームでくみ上げた共通の骨格に、市販車に似せた外観を被せたレース車両』というような意味合いで捉えられる。
 なお、本来的な市販車という意味合いでのストックカーは、現在は『ピュア ストック』などの表現で呼び分けられている。




・スピーディング ペナルティー speeding penalty

 ピット レーン内における速度制限違反に対するペナルティーのこと。NASCARではトラックごとに設定されている速度制限が異なるほか、車両側に速度リミッターが装備されていないので、ドライバーは自力で速度を合わせないといけない。バンク部分からフラットなピットへ向かう際には車が不安定になったり、ブレーキが冷えていて減速が難しいことも多いため日欧の一般的なレースよりも難易度はやや高いと考えられる。
 速度はレーン内に複数設けられたタイム計測地点の通過時間から計算するため、厳密には区間内のタイムが基準以内であれば、瞬間的に速度を超過していても速度ではない。かつては計測地点の数が少なかったため、自分のピット ボックスがある計測区間では『どうやっても基準タイムより遅くなる』ことを利用して、故意に加速して速度制限を事実上無視する技術があったが、規則が形骸化しかねないために計測地点が増やされ現在はほぼ不可能。
 また、レーンが曲がっているショート トラックでは内側を走ると距離が短くなってしまい、速度を守っていても時間が短すぎて速度違反とみなされることがあるため注意が必要になる。
 違反に対してはコーション中なら隊列の最後尾、アンダー グリーンならパス スルーのペナルティーが科せられる。


・スポッター spotter

 オーバルには必須のクルー。トラックの一番高い場所から双眼鏡で見下ろして、無線でドライバーに対して周囲の車の位置などを教える。ストック カーは非常に視界が狭く、また高速で走行しているために、俯瞰した視点からの指示は極めて重要。クラッシュが発生した際にはどちらへ回避すべきか指示を出したり、ライバルの走行ラインを伝えて速く走る手助けをするなど情報は多岐にわたる。
 またスーパー スピードウェイでは誰が誰を押しているのか、どちらのラインが速いか、どう動くべきか、といった情報が極めて重要で、情報を欲しがるドライバーの場合スポッターはほぼ喋りっぱなしになることもある。ある意味、上からコントローラーで車を操っていると言っても決して言い過ぎではない。


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