FE 最終戦 ベルリン

ABB Formula E BMW i Berlin E-Prix Presented by CBMM Niobium
Tempelhof Airport Street Cuircuit 2.355km
45minutes+1Lap
winner:Norman Nato(ROKiT Venturi Racing/Mercedes-EQ Silver Arrow 02)

 ABB FIA フォーミュラ E 世界選手権、いよいよ世界選手権としての初代チャンピオンが決まる最終戦となりました。前日に続きベルリンが舞台ですが、昨年も使用された逆走レイアウトでのレースです。ただ逆回りさせればいいわけではなく、シグナルや縁石などのインフラ面で多少手直しがいるので結構大変みたいですが、綺麗に逆回りコースが出来上がり(?)ました。
昨日は左に向けて出たピットを右向けに出る

 レース前の段階のポイントを確認してくと、ニック デ フリースがリーダー。エドアルド モルターラ、ジェイク デニス、ミッチ エバンス、ロビン フラインス、ルーカス ディ グラッシ、アントニオ フェリックス ダ コスタ、と続きます。予選を含めたら最大で30点を獲得可能、この場合2位の人は18点で一気に12点差を自力でつけられるため、予選前の段階では計算上ここまでの7人に自力でのチャンピオン獲得の可能性がある、ということになります。










 



 下位には絶対沈みたくない予選、グループ1は4台が0.1秒以内に収まる僅差でミッチ エバンスがグループ内の最上位。すると後続のグループのドライバーが思いのほかタイムを伸ばせず、結局エバンスが7位に僅か0.005秒差でスーパーポールに生き残りました。グループ予選最上位は既にチャンピオンの権利が無いストフェル バンドーン。
 デフリースは昨日ほど悪くなかったものの13位、他のコンテンダーはほとんどこれよりも下位となり、予選の上位10台のうちチャンピオンの権利があるドライバーは3人だけ。10位のパスカル ベアラインは数字上は権利があるものの点差が離れすぎているので、実質的には3位のエバンスと9位のデニスだけとなりました。

 バンドーンはそのままスーパーポールも最速で、他のドライバーに点数を与えないという意味合いではチームメイトのデフリースを援護することに成功。ノーマン ナトがトラブルでスーパーポールを走れない、という思わぬ"追い風"も吹き、エバンスはスーパーポールで3位。このままの順位で終えればじゅうぶん逆転でチャンピオンを獲れそうな位置です。
 ジャガーとエバンス推しの私が大喜び。ちなみに私は予選を深夜にたまたま目覚めてしまった2時ごろから見て、決勝は朝起きてから、ということにしたので、エバンスの戴冠に向けてちょっとワクワクしながら再び寝ました。(この後5時ごろ地震でたたき起こされる)


 スタート、シグナルが消えた瞬間目を疑う場面が訪れました。なんとエバンスが動かない・・・3位の車が止まっていたら当然危険なわけで、あろうことかモルターラがこれに突っ込んで大クラッシュ。言葉を失う光景でした。即座にSCが導入され、そのまま赤旗となってしまいました。


 厳密には発進はしたんですが、前に動いた瞬間に動力を失った模様。チーム側の調査はこれからですが、インバーター等の電気系トラブルではないか、とレース後の段階でエバンスは語っていたようです。
 モルターラの方は衝突で26Gの衝撃を受け、念のため病院で精密検査を受けたところ椎骨の微小骨折と診断されました。医学的なことは分かりませんが、首から背中にかけての骨というのは危険な場所だけに、焦らず慎重に治療してほしいなと思います。

 デフリースは2台がクラッシュした脇をギリギリすり抜けて、破片を跳ね飛ばしたものの事故は回避。もし予選13位じゃなくて11位だったら事故ったのは彼だったかもしれません。クラッシュ後の車の跳ね返り方次第ではもっと多くの車が巻き込まれていても不思議ではなかったので2台で済んだのは不幸中の幸いという感じでしたが、エバンスには何の慰めにもなりません。
 それでもすぐさまインタビューのマイクを向けられて答えるエバンスはプロだし、そういう決まりがあるんだろうなあと思いましたが、昨今の『アスリートのメンタル ヘルス』という言葉がちょっと頭をよぎりましたね。

 最有力だったエバンスが消え、もし現場を通過していれば最有力になれるはずだったモルターラも消えたことで、チャンピオン争いの目先の注目はデニスとデフリース。デニスはリスタート時点で8位でこのまま行くとデフリースと同点という状況。お互いにここから順位を上げていくとしたらかなり際どい勝負になります。

 赤旗が解除され、SC先導で1周して残り42分でリスタート、エナジー削減は2kWh。ところがまたしても言葉を失う光景が。なんとデニスがターン1を曲がり切れず真っすぐコース外のへと突き進み撃沈。前にいたセバスチャン ブエミがブレーキ中にラインを変えて追突しそうになったせいかと思いましたが、どうやら駆動系の問題でリアがロックした可能性があるようです。
やり場のない怒りとともに車を降りるデニス


 チーム側の説明では、デニスはリスタート前に後ろから異音が聞こえたように感じ、そして普通にブレーキを踏んだらロックしてどうしようもなかった、という流れだったとのこと。リスタート前には、一旦車両が赤旗解除に向けてピット出口に並んだ後、おそらくモルターラの救急搬送のためだと思いますが予定時刻を過ぎて待機する時間がありました。
 そのため、デニスはこの止まったり動いたりという通常と異なる動作が駆動系に負担を与えたのではないか、とも感じたようですが、チーム側は可能性は低いと考えているとのことです。これで今度はFCYとなりました。

 残り36分50秒でリスタート、またもやエナジーを2kWh削減。気づいたらデフリースがコンテンダーで最上位の10位となり、ライバルが全員後ろにいますから圧倒的にチャンピオン獲得へ有利な条件となりました。

 優勝争いはバンドーンとローランドの争い。しかしバンドーンが頭を抑える形になっています。残り34分で4位のナトがアタックモードを最初に使うと、前に波及して翌周にアレクサンダー シムズ、さらに翌周にローランド、とアタックモードに入りました。このサイクルでナトがリーダーとなります。バンドーンはこの流れには乗らず、アタックモードをさらに1周遅らせました。

 残り23分、リーダーは依然としてナト。シムズは早々に2回目のアタックモードも使いましたがローランドの憎たらしいブロックに手間取らされて2位まで上げたところでアタックモード終了。ナトはシムズから2秒前方という状況、シムズ以外はみんなもう1回アタックモードが残っているので、シムズはサイクルから考えてやや不利になります。

 この後2回目のアタックモードのサイクルが概ね一巡するとナトが圧倒的なリード。ローランド、シムズ、デフリースのオーダー。しかし残り17分、ターン2でルーカス ディ グラッシがアントニオ フェリックス ダ コスタを壁に押し付けてダコスタがクラッシュ。これで本日2度目のSC導入となりナトのリードは台無しになりました。ダコスタはディグラッシに対して嫌味の拍手を送ります。ディグラッシはドライブスルーのペナルティー、F1もやっぱり基本はドライブスルーでよくない?

 残り約12分でリスタート、今度は3kWhのエナジー削減で、本日合計で7kWh=約14%持って行かれました。ナトのリスタートに後続の2台が完全に合わせてリスタート直後から混戦。そして、やめとけばいいのに4位のデフリースもここに参加してしまいます。
 翌周にファンブーストを使ってシムズをターン1で刺しにいき、ますがイン側の壁沿いからのアプローチだったので出口で膨らみ、結果後続車両が次々とやってきて益々の混戦状態。最終的にアンドレ ロッテラーと軽く接触して7位まで後退してしまいました。バンドーンは万一リタイアしたとしても現実的に逆転の可能性があるドライバーはいないんですが、それにしたってリスク高すぎだろお。
一歩間違えたら3ワイドの3台全員クラッシュしそうだった


 3位以下がごちゃついたのでナトとローランドだけが抜け出し、やっぱりローランドはついていけなくてナトが再びの独走。そのまま、エナジーを0.6%も余らせてトップでフィニッシュ。開幕から速さを見せながらもマネージメントでまだまだ修行中、という感じだったルーキーが最終戦で初優勝を挙げました。


 ローランド、バンドーン、ロッテラー、シムズのトップ5。そしてデフリースは8位でチェッカーを受けて、2020/2021シリーズのチャンピオンとなりました。そして、チーム選手権もメルセデス-EQ フォーミュラ E チームが獲得して2冠達成。表彰台にはチャンピオンとしてトト ウォルフが、このレースの勝者・ベンチュリーの代表としてはスージー ウォルフが登壇して夫婦共演になりました。
健闘をたたえ合うデフリースとバンドーン


 ナトはスーパーポールを走れず6位からのスタートでしたが、アタックモードの1回目のタイミングが絶妙でした。この逆走レイアウトはアタックモードを取った後に少し長い直線があるので、使って抜かれてもその直線で抜き返せるなら損失はチャラ。ナトはこのパターンで損がほとんどなく、これより上のドライバーはみんな使うと順位を下げて抜き返す時間が必要でした。
 ナト自身は前がアタックモードに入ってくれるので勝手に順位が上がり、下がった人は後ろで時間を使いあう形になったのでマネージメントに割く余裕が生まれたと思います。逆にバンドーンはサイクルをズラしたことで、コース上でアタックモードの車をブロックしようとして抜かれることが数度あり、ここで時間を使ってしまいました。
 ところが、今後の活躍が楽しみなはずのルーキーはなんと来季のシートが無いかもしれない、との噂。アウディーの活動終了に伴ってチームごと消滅するのでディグラッシが売り込んでいるという話です。来季が1チーム減なのか、新規参入があるのか、でも状況は変わりますが、FEがダメなら彼は耐久レースの方にシフトする様子です。

 それにしてもスタートでエバンスが脱落した衝撃は、今後しばらくは忘れられないレースの1つとして記憶されそうです。別にこれはフォーミュラEだから起きたことでは全くないんですが、15戦で11人の勝者が生まれた激戦のシーズンを象徴するような出来事となりました。まさかスタートすらしないとは思わないです。。。

 開幕戦の段階ではメルセデスが圧倒的に速さを見せており、第5戦の段階で2勝を挙げたデフリースが常に選手権で上位にいたわけですから、例えば第2戦を見終えた私に、今日からタイムスリップしていった私が話しかけて「デフリースがチャンピオン獲ったで」とネタバレさせても、昔の私は「そらそうやなあ」と答えたと思います。
 しかし中盤戦での思わぬ苦戦や不運、このレースの予選までの流れからすると半分以上はデフリースは負けだと思ったので、よく重圧に耐えたし、たぶんF1に乗ってもそつなく乗れるぐらい才能のあるドライバーではないかと思います、これはオタクの直感ですけどね。

 来季、シーズン8は2021/2022という名前ですが、ズレたスケジュールをそのまま引きずって2022年1月のディルイーヤで開幕。ケープタウン、バンクーバー、ソウルが初開催で登場する予定です。2020年シリーズ全15戦、関係者のみなさん、素晴らしいレースをありがとうございました!


コメント

首跡 さんのコメント…
今年も面白いシーズンでした。
チャンピオンシップ候補の内、3人が早々に脱落するなんて…
「何が起きるか分からない」とはいえ、衝撃的でした。
とりあえず、デフリースさん、メルセデスさん
ドライバーズ&コンストラクターズ2冠おめでとうございます!
来季の活躍も期待したいところですが、
メルセデスがGen3導入前に撤退の可能性が出ているようで、
個人的にちょっと気になりました。
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 混戦のシリーズには混戦の結末が訪れる、というのが宿命づけられてるのかなと思うようなレースでしたね。
メルセデスの動向については、トト曰く「決断は下されたが今はまだ言えない」そうなのでおそらく撤退すると思われますが、チームがメルセデスの部門から独立する、あるいはアストンマーティンブランドとして参戦する、という噂も飛び交っており、撤退=消滅、とは限らないみたいです。
ダイムラーからするといらない存在かもしれないですが、現場の人としたら仕事したいですし、全車両をEV化するぞと言っておきながらあっさりFEを足蹴にするのはブランド的にあまり印象が良いとも思えないので、発表とさらなる噂待ちですね。