FE 第14戦 ベルリン

ABB Formula E BMW i Berlin E-Prix Presented by CBMM Niobium
Tempelhof Airport Street Cuircuit 2.355km
45minutes+1Lap
winner:Lucas di Grassi(Audi Sport Apt SCHAEFFLER/Audi e-tron FE07)

 フォーミュラE第7シーズン、世界選手権となって初のチャンピオンが決まる週末となりました。第14・15戦はベルリンでの2連戦。去年6回もレースをしたお馴染みテンペルホーフ空港特設サーキットです。今季限りで撤退するBMW iとアウディーにとってはお別れとなる母国でのレースとなります。

 前戦のロンドンではルーカス ディ グラッシがSC中にピットに入り、隊列走行するコース上の車をごぼう抜きするという珍事が発生(規則で定められた一時停止を怠ったとされたために作戦は失敗に終わった)しましたが、これを受けてこの週末のレースではSCの運用手順を改定。
 SC導入中は、SCがセーフティー カー ライン1に到達したらピットの出口の信号が赤となって、ライン2に到達するまでの間これが維持されることとなり、ピットに入った車は隊列の車の多くが通り過ぎるまでピットを出ることができないことになりました。競技規則でどう縛るかはおそらく今一生懸命考えているところでしょうね、ていうか非常事態で運営でいっぱいいっぱいだったとはいえ去年のうちにやっといてよ。。。

 予選、1点が貰えるグループ予選の最上位はジャン エリック ベルニュ。さらにスーパー ポールも0.073秒差で制して予選だけで4点を獲得しました。選手権12位、1位から27点差でこのレースを迎えましたが、いきなりその差を詰めました。
 ちなみに、去年の第8戦のベルリンでもベルニュはPPを獲りましたが、スーパーポールのタイムは1'06.277、今年は1'06.227。一瞬同じタイムかと思いましたw



 2位にはチームメイトのアントニオ フェリックス ダ コスタ。ダコスタは選手権で5位/15点差とベルニュより上にいるので、チームとしたらこっちにポールを獲ってほしかったかもしれませんが、予選グループ1からは唯一のスーパー ポール進出でもちろん最上位スタート。グループ1からはジェイク デニスも予選8位と手堅くまとめており、彼らは前に追いつくチャンスです。
 一方、選手権リーダー・メルセデスEQのニック デ フリースは予選グループ1で苦戦して19位、チームメイトのストフェル バンドーンはグループ2なので上位進出を期待されましたがなんと22位。カスタマーのベンチュリーは揃ってスーパーポールに進出したのに、何かセッティングで外してるんでしょうか。
 元々滑りやすく、温度変化などで路面の状況が変わりやすいコンクリート舗装ということで予選グループによる差というのはそこまで大きくない印象。統計上では最も予選で成績が良いグループ3の人もそこまでタイムが伸びませんでした。一回しかないアタック機会でいかにタイヤの性能を引き出し、理想の走りを実現できるか、というところが非常に重要に感じました。

 決勝、アタックモードはターン6の外側にアクティベーションがありますが、なんと8分間を1回と発表されました。1回だけというのはなかなか驚きです。DSテチーターの2人は同士討ちをやらかしがちですが果たして無事に帰って来られるでしょうか。

 スタート、上位は概ね綺麗に1周目を切り抜けていきますが、中団以降ではターン1、ターン6でいくつかの接触が起こったようで順位がだいぶ変動、誰がどう得して損したのかは映像を見直さないと良く分かりませんが、あまりレース結果に影響してないようなので置いときます。
 上位5台は予選順位のまま進行、ベルニュ、ダコスタ、ディグラッシ、エドアルド モルターラ、ノーマン ナト、ミッチ エバンスのトップ6です。アタックモードが1回しかないため戦略でミスったら挽回できないですから、様子を見ながら戦うしかなさそうな雰囲気。

 開始10分、7位のセバスチャン ブエミ、8位のオリバー ローランドと日産e.damsの2台が同時にアタックモードに入ります。ローランドはラインに合流した直後にパスカル ベアラインと揉み合いになり、接触でベアラインはタイヤを傷めてピットへ。さらにこの直後、サム バードがトラブルでちょうど最終コーナーを出た先の位置で停止。とりあえず黄旗で再起動を待ちますが、結局他の車が2周してもなお動かないのでSC導入となりました。

 開始17分、リスタートとなってエナジー削減は4kWh=約8%。日産の2台はアタックモードを1分ほど残してのリスタートでしたが誰も抜けず、むしろブエミはなぜか通常モードの車に追われてる^^; 
 結局ブエミは11位、ローランドは13位でチームは2台とも無得点。ブエミはレース前の映像で、『スタート時点での順位のままフィニッシュした場合の得点と、実際に得た得点の差』において全ドライバーでワーストと紹介されていました。つまり、そこそこ得点を得られる順位でスタートしているのに、決勝でごっそり順位を下げているということになります。印象通りの統計値ですね^^; またローランドは今季限りでチームを離脱することを発表しています。

 このリスタートでは13位以降の車がなぜだか妙に離れてしまい、結果12位のレネ ラストは完全にフリーな状態でリスタートしたその周にアタックモードを獲得。何の順位も失わずに一人だけブーストを得てここからものすごい追い上げを見せることになり、結果的にレースにも影響を与えることになります。


 ちょうどレースの半分、22分30秒というところでテチーターはどうやら指示を出したようで、ターン6でダコスタがベルニュをかわしてリーダーとなります。その背後では4位のモルターラが上位勢で最初にアタックモードに入りました。車間距離が詰まっているので一時的に7位まで下がってしまいます。
 翌周、ラストはナトを抜いて4位となりこれでアウディー2台が3、4位となると、さらにターン6でディグラッシがベルニュのインを差し、ラストがこれにひっついてついでに抜いて行く連係プレーを披露。ベルニュはペースを上げられないのかこの後も順位を下げて行きます。

 残り19分30秒、ディグラッシはダコスタも抜いてリーダーとなると、ここでもラストがセット販売で抜いて行ってアウディーが1・2位となりました。ディグラッシとダコスタはいずれもまだアタックモードを使っていない同条件の争いなので、見た目でも実質でもディグラッシが1位、主導権を握ったと言ってよさそうです。

 この後アタックモードを使っていたモルターラとナトがアウディー勢の前に出て一旦はベンチュリーが1・2位となりますが、遅れてアタックモードを使ったディグラッシが残り11分30秒でモルターラをかわし再度1位を確保。ナトはもうちょっと壁になってモルターラの援護をしたかったはずなんですが、ブロックが中途半端であっさり抜かれました。
 3位にはミッチ エバンスが上がってきましたが、エナジー残量が僅かながら周囲より厳しくて後続の蓋になり、優勝争いはディグラッシとモルターラの一騎打ちになりました。


 モルターラはディグラッシの背後に迫りますが、両者の残量に差はほぼなく自力での追い抜きは非常に難しい状況。最終周は少しでもミスをすれば逆転する接近した争いでしたが、モルターラも自分から少しでも攻めに行ったら電池切れする状況だったので手出しはできず。
 最終コーナーの立ち上がりだけはラインを変えてモルターラが勝負に出ましたが、外回りしてクロスをかけようと踏み込んだ先にちょうどディグラッシがいるという絶妙の防御となり、そのままディグラッシが0.141秒差で逃げ切りました。あとほんの少し何かのタイミングが違っていたら大逆転があったかもしれません。


 通せんぼジジイとなっていたエバンスは、最後には絶対抜かれるか事故るかだと思っていましたが、相手が経験の浅いナトだったことも幸いしたか辛うじて3位を死守。6位までの車が1秒差で立て続けにチェッカーを受けていきました。

 序盤はプラン通りに進めていたのかと思ったテチーターですが、結局ベルニュが6位、ダコスタが7位。仲良く走ってはいたんですが、表彰台にもかすらないという意外な結果でした。また、リスタート後にアタックモードを一人だけ使って無双していたラストは、終盤は自分だけアタックモードを使えないので抜いた人にどんどんお返しされて行き、結局9位でチェッカーを受けました。

 そしてこのレース結果を受けて、ドライバー選手権はこうなりました。












 デフリースは無得点でしたが1位の座を守る形に。レース前の段階での選手権上位6人の中では結局デニスが最上位となる5位で10点を獲得。ダコスタは予想外の失速で6点しか得られずデフリースから9点差の7位で最終戦を迎えるます。ただ、7位なら予選はグループ2。ひょっとして、2日間全体での得点を重視して「優勝以外ならあえて選手権7位になれるような順位にする」みたいな策略があったのではないかとも思える位置です。
 とはいえ、チームは若干の混乱状態だったようで、ベルニュはリスタート後に後続がアタックモードを使って攻めて来るタイミングで入れ替えを指示されたことに無線で激怒して、放送できないお言葉をお話になられていた様子。ただチームのスポーティング マネージャーを務めるジェームス ロシターは

「彼は自分の走っている部分だけを見ている。彼の立場から見ればそうだったが、こちらは持っている情報には彼は精通していない。」

 と、戦略に問題は無く、ドライバーが怒るのは分かるが主張は通らないとの立場を示しました。一方ダコスタの方は「時々スロットルが戻らない症状があるように感じ、回生をしないことがあった」と不具合が出ていたということです。これが全部順位調整のための芝居だったらなかなかのもんですね。

 逆にディグラッシは勝ちましたがギリギリでグループ1に入ってしまったので、まず対デフリースで考えてもあまり有利とはいえない状況です。ロンドンでいらんことせんかったらひょっとしたらトップに立てたかもしれないのに、アラン マクニッシュは欲に駆られて結局損した気がしますね、まだ分かりませんけど。

 さて、いよいよ次戦はシリーズ最終戦。ですがJ SPORTSでは放送枠が無さ過ぎて放送時間がなんと 決勝(生放送) → 予選(録画) という思わぬ状況が発生。そもそもJ SPORTSの放送予定の大枠はイベントの開催時間が正式決定される前におおよそで決めてしまっているので、いつどのレースを見てもほぼ『予定を変更してお送りしています』という表示が出るんですが、今回はとうとう変更しても生放送を放り込む隙間が無かったようです。
 J SPORTSオンデマンドでは限定で生放送されますが、この予選のためだけに加入するのはさすがにキツイので、いっそのこと早く寝て、朝起きてから録画で予選→決勝と見ようと思います。

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