SGT 第4戦(3戦目) もてぎ

2021 AUTOBACS SUPER GT Round4 MOTEGI GT 300km RACE
ツインリンクもてぎ 4.801km×63Laps=302.463km
GT500 class winner:STANLEY NSX-GT 山本 尚貴/牧野 任祐
(TEAM KUNIMITSU/Honda NSX-GT)
GT300 class winner:muta Racing Lotus MC 加藤 寛規/阪口 良平
(muta Racing INGING/Lotus Evora MC)


 ちょっと間が空いてしまったSUPER GTです。5月末に予定されていた鈴鹿での第3戦が、三重県鈴鹿市にまん延防止等重点措置が適用されていることを受けて延期されたためにえらい間が空いてしまいました。SUPER GTは延期等があってもラウンド数を従来通りの数字で呼ぶため、今年の3戦目なんですが表記は第4戦になります。

 もてぎは2010年以降変則日程だった昨年を除けば最終戦での開催なため近年は秋開催ばかりですが、それ以前は9月頭の暑い時期に開催されていましたので、私とするとこの焼けるような日差しのもてぎには馴染みがあります。7月の開催はおそらく史上初めてで、その7月としてもかなりの高温の条件となったためブレーキとタイヤの温度管理が大変になりそうです。

 予選、GT300クラスではGAINER TANAX GT-RがPPを獲得、安田 裕信が一発でタイムを出しました。J SPORTSの放送で「セクター4が伸びなかった」って言われてましたが、あれは単にセクター4で速いスープラが比較対象になっているだけで、相対で遅くても自身としては別に遅かったわけじゃない気がしますね。あれ、安田センシュのスーツからFUE植毛が無くなったな・・・
 たかのこの湯 GR Supra GT、リアライズ日産自動車大学校 GT-R、埼玉トヨペットGB GR Supra GTと続いてGT-Rとスープラが並びました。ランキング1位で72kgのハンデを積んだリアライズGT-Rが3位というのはライバルに対してかなりの先制攻撃です。

 ところで、前戦でちょろっと『arto RC Fから中国平安のロゴが無くなったけどどうなったんだろう』といったことを書きましたが、今回からチーム名にPING ANの名前が無くなりました。中国ではここ最近テック企業などにたいして政府が監視や圧力を強めているというニュースをご存知の方も多いと思いますが、4月29日の時事通信の記事
に平安保険の金融子会社が指導を受けたとの記載があるため、前戦で急に消えたのとおそらく関係しているのではないかと思います。こんなん気にしてるGTファンはあんまりおらんと思うけどw

 GT500クラスはSTANLEY NSX-GTがQ1、Q2とも最速でPPを獲得、0.051秒差でWedsSport ADVAN GR Supra、3位にRed Bull MUGEN NSX-GTとなり、タイヤで言えばブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップの並びです。ストップ&ゴーで縦方向の入力が多く横方向が少ないもてぎはブリヂストン以外のメーカーが相対的に浮上する傾向があり、まさにそういった結果となりました。
 4位にウエイト30kgのau TOM'S GR Supra、5位が同46のKeePer TOM'S GR Supraとそこそこの重さでそこそこの順位。さすがに燃料流量制限が加わるENEOS X PRIME GR SupraとAstemo NSX-GTは13、14位です。


 気温33℃、路面温度51℃と真夏の気候となった決勝、Arnage AMG GT3がスタートできない問題が起こりピットへ押し戻すのに時間がかかりましたが、元々フォーメーション ラップが2周だったのでレースへの影響はありませんでした。アルナージュはこのレース22位で完走しています。
 2周のフォーメーションを終えてスタート、GT500ではレッドブルNSXが5位に後退しトムスの2台が3、4位となって1周目を終えます。ダンロップはタイヤの発動がちょっと遅いかもしれません。一方GT300は上位10台の順位に変動なし。


 7周目、ブリヂストン勢と比べてやや遅れてタイヤが作動してきた様子のウエッズスポーツが一気にスタンレーを追い上げるとターン5で外側から豪快に抜いて行きます。制動距離が全然違ってスタンレーのブロックは無力化されました。ちょうどこのあたりからGT300クラスとの1回目の遭遇で、ウエッズは集団を使って雲隠れするように後続を離していきます。


 GT300はゲイナーGT-Rが少しずつ2位との差を広げていく状況、と言っても10周して1.5秒とないのでわずかの差です。3位のリアライズGT-Rは重いので後ろに3台を引き連れ、7位以降は大きく離れました。

 GT500、天候同様ジリジリとした展開が続いていましたが19周目にレッドブルNSXがキーパースープラを抜いて1つ順位を戻しました。2位のauまでは5秒差。一方GT300では上位勢の中で6位のグッドスマイル 初音ミク AMGが20周を終えて真っ先にピットへ。1位から7秒差という位置でしたが左側2輪だけ交換してピットを出ました。トリッキーなGT300のピット サイクルが始まります。

 GT500では23周を終えて9位だったARTA NSX-GTが最初にピットへ。続く24周目に2位のスタンレーNSXも入ります。ストップ&ゴーのもてぎは燃費に厳しいコースですが、NSXは比較的燃費が良いとされているので早めに動くことが可能です。

 GT300のトップ・ゲイナーGT-Rと2位たかのこの湯スープラは25周目同時にピットへ。ピットを出るとゲイナーの後ろに初音ミクAMGが接近、たかのこの湯はアンダーカットされてしまいました。ミク号はゲイナーのタイヤが作動しないうちに抜いてしまいたいところでしたが、ゲイナーはあっという間にタイヤが作動して真後ろにつけるにとどまりました。

 GT500でもウエッズが28周を終えてピットに入り、見た目上2位だったauも同時に入ります。ウエッズは右前タイヤを外すのに時間がかかってしまい、ピットを出たところでスタンレーに逆転を許してしまいました。仮に通常の作業であればとりあえず前に出ることはできて、アウト ラップの間に抜かれたかどうか、という感じでした。ひょっとしたらレース結果を左右したかもしれない出来事でした。

 GT500の30周目、GT300クラスでリアライズGT-RとJLOC ランボルギーニ GT3が接触。ヘアピンの入り口で真横がバーンとぶつかってしまい、リアライズは左前のサスペンションがポッキリと折れました。

 これは中継映像だけでははっきりと分からないのでSUPER GT+で放送されるの待ちな案件ですが、ヘアピンに対してインから行ったリアライズのジョアオ パオロ リマ デ オリベイラに対して、ウラカンの小暮 卓史が随分と早いタイミングでステアリングを切り始めてしまってぶつかっている感じです。小暮に黒白旗が出された記録があるのでおそらくこの件についてでしょう。さらなる加点が期待できたリアライズはこのレース26位、JLOCウラカンも24位でした。

 GT500は32周目にレッドブルNSXがピットを終えてサイクル一巡、オーダーはスタンレーNSX、ウエッズスポーツスープラ、auスープラ、レッドブルNSX。キーパーはピットで少し時間を要しているうちに後ろから車が来て通過を待つ時間が加わり、7秒以上失って8位に落ちました。
 GT300はこの時点でまだ引っ張っている車が数台いますが実質的な順位はゲイナーGT-R、初音ミクAMG、たかのこの湯スープラ、埼玉トヨペットスープラ。2台のスープラがピット後に接近戦を展開中。序盤抜け出した6台のうちの2台、JLOCウラカンとリアライズGT-Rが事故ったのでHOPPY Porscheがスープラ2台から10秒以上離れた位置の5位です。

 GT500、ペースで勝るウエッズスポーツは36周目にスタンレーの1秒以内に接近。同じころ、GT300のスープラ対決は埼玉トヨペットがたかのこの湯をかわします。これで実質3位、前を行く初音ミクは9秒前方ですが相手はタイヤを2本しか交換していません。

 41周目、arto RC Fがトラブルによりコース脇で停車したためFCYとなります。ここでGT300クラスにえらいことが起きました。まだピットに入っていなかった暫定1位のmuta Racing Lotus MCが白煙を上げるRC Fを見てピットに飛び込み、タイヤ無交換でさっさとピットを脱出して1位でコースに戻りました。ピットサイクル前にはゲイナーの約30秒後方でしたが、ピット後はレース ペースに戻って約11秒のリードです。


 一方GT500の1位争いはFCYで間に入ったK-tunes RC F GT3がちょっと遅いみたいでFCY前よりびみょーに差が開いている気がしますが、43周目の途中にリスタートされました。タイヤが冷えてしまうとウエッズスポーツはまたペースを上げるまでに少し時間がかかりそうな気もします。

 44周目、GT500の5位争いで逃げるModulo NSX-GTが最終コーナーでGT300車両と接触。一発で車が壊れてしまいそのまま外側に車を止めてしまいました。これで2度目のFCYです。今回GT500は1位と2位の間に車が入っていないのでシステムがちゃんと機能していればあまり差は変動しないはずですが、低速コーナーでは技術しだいでタイムを稼ぐ余地があります。

 47周目の途中にリスタート、低速走行と発進を繰り返すとclass1規定の車両は駆動系への負担が気になるところですが全員無事に動いているようです。GT500の1位争いは3秒差に拡大、リスタートからしばらくウエッズスポーツの方が遅い印象です。
 GT300はリスタートを繰り返しているうちに埼玉トヨペットが初音ミクに追いついて3位に浮上。そしてエヴォーラとゲイナーGT-Rの差は秒単位で詰まって行きます。阪口 良平はピットを出た直後にタイヤカスを拾ったらしく、なかなかペースが戻らなかったという話です。

 50周目、GT500ではアステモNSXにトラブルが発生、せっかく10位まで上げて入賞できそうだったのにガレージ送りです。同じころ1位争いは1.1秒差に再度接近、もうFCY出ないでね!GT300も埼玉トヨペットがゲイナーを追い上げ、そのゲイナーはエヴォーラを追い上げているのでトップ3が凝縮されていきます。

 残り9周、GT300はエヴォーラ、ゲイナーGT-R、埼玉トヨペットスープラの上位3台が完全にひとかたまりになりました。GT-Rからしたらマザーシャシーであるエヴォーラはカモかと思いましたがそう簡単には抜けず、そうしている間にややフロントのグリップが落ちて来たのかS字ではむしろ離されてスープラにつつかれ始めます。これはエヴォーラにとって大チャンス。
 一方GT500は一旦1秒以内に入ったウエッズスポーツがまた1.5秒以上に突き放しにかかります。山本 尚貴がポケットに隠していたナニかを取り出したようです。

 GT300の争いは決め手を欠いたまま引き続き一瞬のミスも許さない展開、GT500は4秒以上の差となっていよいよ最終周へ。スタンレーはちょうどこの周のセクター3でGT300の2位争いを、そして1位のエヴォーラを最終セクターで抜いたのでこちらの争いもこの周で終了のお知らせ。
 そのままスタンレーがトップでチェッカーを受け、その真後ろでエヴォーラもチェッカーを受けました。


 レース後の話ではスタンレーの山本は、相手が速くて引き離したくても無理なのは分かっているので、あえて引き付けてタイヤを使わせて突き放す考えだったとのことで、抜きにくいもてぎの特性を利用したまさにプロの戦いかただったようです。さすがはチャンピオンですね。
 一方GT300のエヴォーラの方は、ピットを引っ張る戦略、何かが起きたらすぐ入る用意と無交換でも走れる仕上がりが見事に噛み合っての優勝。追いかけたゲイナーの側からすると、見ているとGT-Rなら抜けそうに見えますがそう簡単ではなく、追いかけるためにかなりタイヤも使ってしまったという話でした。

 今シーズンのレース結果で驚かされるのは特にGT300の1位からのタイム差で、開幕戦は4位までは1.021秒、第2戦も3位まで1.286秒。そして今回も3位まで1.819秒。オーバルなら分かりますけどロード コースで300kmや500kmの耐久をやって、終盤にSCでリセットされたわけでもないのに3戦連続でこの結果というのは驚くしかありません。

 そして、記録を見て気づきましたがGT300クラスではHitotsuyama Audi R8 LMSの川端 伸太朗、Yogibo NSXの密山 祥吾、Arnage AMGの柳田 正孝、ARTA NSX GT3の佐藤 蓮、GT500ではリタイアしてしまいましたがModulo NSXの大津 弘樹の計5人にFCY中の速度違反で40秒加算のペナルティーが科せられていました。
 特に川端、密山、柳田の3人は2回のFCYともにペナルティーを科せられており、ドライバーが何か手順を間違えているというよりは車両の設定とかに何か間違いがあるような気がするので、このあたり何が起きたか知りたいですね。

 抜きにくいもてぎで車列ができやすいという特性もありますが、FCYによる逆転、プロらしい正面からの素晴らしい争いと色々見れて面白いレースでした。見えてない部分はテレビ東京さんにお任せしますw
 次戦は8月の暑い時期に延期となっていた鈴鹿での『第3戦』。もてぎは11月の第7戦でもう一度登場します。

コメント

okayplayer さんの投稿…
先生2点質問です!
エヴォーラって前はスープラのシンティアム(?)が乗ってたと思うんですが、あのエヴォーラと関係があるんでしょうか?

あと、500で片側2輪交換って今まで見たことない気がするんですが、500ではキツいのでやらないんでしょうか?
SCfromLA さんの投稿…
>okayplaeyerさん

 2号車のエヴォーラはスポンサー集めがこのご時世で難航してしまって2021年の参戦を取りやめる方向の話になっていたんですが、昨年6号車のMC86を走らせていたインギングがおそらくGT300の参戦枠の関係でこちらも参戦できない運びになっていて、お互いの利害が一致したのでチームをまとめる形で参戦しています。そのため車両はエヴォーラで、スポンサーやカラーリングは去年のmuta Racing MC86の見た目になってますね。

https://www.as-web.jp/supergt/661512

 ちなみに2019年までオーナードライバーだった高橋さん、ものすごい敏腕経営者で本業の方は盤石のようです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%A9%8B%E4%B8%80%E7%A9%82

 GT500は基本的に負荷が大きくて交換しないで走るのはしんどいですね。昔は奇策もありましたし、NSXはリアだけ減ってフロントが減らないからリア2輪、HSV-010ではその逆があったりしましたが、今の共通規則では稀な無交換があるぐらいです。
 GT500は交換が速いので2輪で稼げるのはせいぜい6秒ぐらい。アウトラップはバランスが無茶苦茶ですし、おそらくですが中古と新品が左右で混在すると中古はゴムが減ってるぶん厚みが減っているため車高が非対称になってしまい、空力的にもマイナスではないかと思います。下面のダウンフォースが重要なので、この影響もたぶんあると思います。
okayplayer さんの投稿…
なるほどなるほど〜、スッキリしました!

というかこのオーナーの人ル・マンにも出場経験があるんですね笑
すごい笑笑