NCS 第22戦 ニューハンプシャー

NASCAR Cup Series
Foxwoods Resort Casino 301
New Hampshire Motor Speedway 1.058miles×301Laps(75/110/116)=318.458miles
※日没により293周に短縮
competition caution:Lap30
winner:Aric Almirola(Stewart-Haas Racing/Smithfield Ford Mustang)

 NASCAR Cup Series、オリンピック休暇前の第22戦はニュー ハンプシャー。ここ数年は追い抜き促進策としてトラクション コンパウンドが用いられていますが、今回は週末の天候が不安定だったので2016年以来かなり久々に細工をしないことになりました。水が乗ると浮いてしまって危ないんですよね。と言っても昨年塗ったやつがまだ路面に残っているので多少の効果は残っています。

 そして今回のNBCの放送席は実況のリック アレンがおらず、ジェフ バートン、デイル アーンハート ジュニア、スティーブ レターテの3人だけで放送する企画となっています。この3人、正直私からすると声が似ていて、3人いるはずなんですがギリギリジュニアの声が判別できる程度で、バートンとレターテはどっちがどっちか分からなくなります^^;

 
 そんな全員アナリストによりお送りするレースはカイル ブッシュとマーティン トゥルーエックス ジュニアの1列目、先週に続いてカメラに雨粒が付着する弱い雨の中で始まりました。
 カイルは順調にレースをリードしていましたが、ほどなく驚くべき事態となりました。6周目に急に雨が強くなりリーダーのカイルと2位のトゥルーエックスがスピン。後ろでデニー ハムリンも回ってしまい即刻コーションとなります。通常NASCARはこうなる前にコーションを出すはずですが、今回は雨量の増加を認識する前に事故が起きました。
 ハムリンはほぼ無傷ですがトゥルーエックスは外装を損傷、カイルは右後部を大きく潰してしまいます。これにキレたカイルはペース カーのカムリに「コーション出すのが遅いんだよ!」とばかりに八つ当たりでぶつけてフェンダーを破壊。カイルはガレージ送りでリタイアとなります。ペースカーは軽度の損傷で済みましたw

 ケビン ハービックのスポッター・ティム フィデワは無線で「18番がペースカーにぶつけたよ」
 ハービック「ぶつけたの!?」

 赤旗で中断している間にはコリー ラジョーイが華麗なタッチダウンパスを披露して観客を沸かせました。ラジョーイって左利きだったんですね。

 赤旗が解除されてコーションに戻りトゥルーエックス陣営はすみやかに修復作業開始。そしてジョーイ ロガーノはスピンしていたわけでもないのにピット クローズ状態で早々にピットへ飛び込みました。
 エンジン ルーム内にデブリーが入り込んでスロットルが全開にならなくなった、という稀な問題を起こしていたようです。赤旗前にピットに戻る際に異変を感じ、クルーが確認のためにフード フラップを開けて手を突っ込み内部を確認。これが赤旗中の作業に該当したため、2周ペナルティーが課せられました。
これも立派な『作業』に該当します
まあ原因不明でもっと遅れる可能性もあったわけですが


こちらが原因となったゴム片

 雨はそれほど長く続かなかったものの、このレースが長引いたら日没で途中終了する可能性があるという情報で、チームとすると日没時間も考慮に入れて作戦を考える必要が出てきました。雨雲自体はレーダーを見る限り大きなものはなさそうですが、表示された気温は17℃ほどなのでここ最近の熱波から考えると今日は異様に涼しい気候、路面が乾くのも簡単ではありません。

 路面が乾くまでコーション周回を続けたのちにそのままコンペティション コーション扱いとなってピット オープン&給油が可能になり中団の車を中心にピットに入りました。ここまでほぼコーション中の話しか書いていませんw

 24周目、チェイス エリオットとカート ブッシュの1列目でリスタート、カートが一旦リードを奪いますがすぐにチェイスが奪い返し、これにクリストファー ベルが続きます。カートは出だしの一瞬だけ速かったみたいです。32周目、アンソニー アルフレードがクラッシュしてまたコーションに。

 このコーションでも中団以降の車がピットに入り戦略がまちまち、39周目にエリオットとクリストファー ベルの1列目でリスタートします。バックストレッチでコディー ウェアーがスピンしてしまいますが、後方の車なので後続がいないのと綺麗に一回転したのでグリーンで継続。あんまりレースを止めたくないんですかね。エリオットがリードします。

 ようやくレースが落ち着いて流れ始めるとロング ランで速さを見せたのはライアン ブレイニー。エリオットを追走して機会を窺うと、62周目にインからかわしていきました。そのままブレイニーがステージ1を制します。ブラッド ケゼロウスキーがエリオットを抜いてステージ2位でペンスキーがワンツー。マット ディベネデトーも9位なのでチーム全体として調子がよさそうです。

 ステージ間コーションで全車ピットへ。ここでケビン ハービックが3つ順位を上げて一気に先頭になります。ハムリンもなんと5つ上げて2位となり、去年は常に優勝争いしていたお馴染みの2人が前に出ました。2番ピットのケゼロウスキーは1番ピットのカイルがリタイアしたことで事実上1番ピットの恩恵を受けられますが、発進でえらい空転してしまって4位に後退です。ピットの路面はかなり滑りやすいようです。


 ステージ2、ハービックとハムリンの1列目で始まりますがハムリンが思いっきりから回って内側のラインが壊滅。ハービック、エリオット、タイラー レディックのトップ3となります。「リスタート ガイコ ゾーン」とか取っ散らかった実況するからズッコケたんじゃないでしょうか^^;

 ハービックは久々のリーダーを満喫。ニューハンプシャーのパッケージは最終戦フェニックスのものと似ているので、チャンピオンを狙う人たちにとってこのレースは単なる1レースにとどまらず、最終戦を睨んだデータ収集と実戦の場でもあるようです。ハービックがここで勝ったらもしや久々に砂漠王復活か・・・?

 車載映像を見ながらコメンテーター2人が解説してくれていますが、ここはターン1の入り口・ブレーキングしながらターンに入ろうとステアリングを入れるあたりにちょうどバンプがあって、ステアを入れながら乗ると容易にロックしてしまうので注意が必要だという話。バックストレッチの方はブレーキを踏んだ直後ぐらいにバンプが2個ありますね。

 長いグリーン フラッグ ランからそろそろピット サイクルかなあと思い始めた128周目、クイン ハウフがライアン ニューマンと絡んでクラッシュ。ハウフはターンの前に窓から手を出して「内側からどうぞ~」ってやってたのに、ニューマンが普通に同じラインに突っ込む判断ミスをしたようです。
 左側に大きなダメージを受けたハウフ、これだと給油するのがそうとう難儀な気がしますがとりあえずこの後も走ってました。結局187周を走ってリタイアしたみたいです。ニューマンはこの後ピットでウィリアム バイロンのクルーを撥ねてしまい二重に印象が悪いですが、幸いクルーは無事でした。

 全車ピットへ向かいハービック、ハムリン、ケゼロウスキー、エリオットの順でピットを出ました。エリオットはコーション前にはハービックをしぶとく1秒差前後で追っていましたが、ここで2つ順位を下げてしまいました。

 136周目にリスタート、今度はちゃんと「ガイコ リスタート ゾーン」と実況したせいかハービック、ハムリン、ケゼロウスキーとオーダー通りのトップ3。4位争いが3ワイドになりエリオットはさらに順位を下げました。エリック アルミローラがこの争いからなんと4位へ。エリオットはこの後もピットで作業に時間を食うなど流れが悪化してなんと18位でした。

 139周目、バッバ ウォーレスが軽い接触でスピンしクリス ブッシャーも巻き添え。ちょうどロード コースに向かって道幅が広がっていたので、ブッシャーは左側のバリアに直撃することは避けられましたが、ウォーレスと当たった右側がけっこうなダメージです。ウォーレスは26位、ブッシャーは29位でこのレースを終えました。このコーションでようやくロガーノがリード ラップに復活。

 145周目にリスタートしますがハムリンがまたリスタートに失敗、やはり実況は関係ありませんでした(←当たり前)。そして翌146周目にケゼロウスキーがハービックを抜き去りリーダーとなります。アジャストが上手く決まって満足だというケゼロウスキーがそのままステージ2を制しました。

 ステージ間コーションで全車ピットへ、ケゼロウスキー、ハービックの順でピットを出ますがハムリン陣営はここで大失敗。左前のナットがうまく締まらず、まだ締まってないのにピットを出てしまったのでこれはもうどうしようもなく再ピットとなりました。
 画面上は映像が明るくなるように調整してくれているのでそこまで暗く見えませんが、実際はかなり暗くなってきているという情報でレースの打ち切りが近づいているかもしれません。このミスも暗いこととの関係を指摘されます。

 NASCARは、打ち切りの場合その10周前に告知すると通達。ファイナル ステージが始まりました。ケゼロウスキーとブレイニーの1列目でのリスタートですが2列目からハービックがケゼロウスキーを押しまくって力業で2位を確保しようとします。しかしターンで全くついていけずに大きく離されてしまいました。アジャストでロング ランに振ったか、車が合わなくなったのか。

 リーダー争いはケゼロウスキーとブレイニーのチームメイト同士。198周目にブレイニーが前に出ますがケゼロウスキーもへばりついて追走。201周目にはうっかり接触してしまいますが、どうせケゼロウスキーは今年限りでチームを離れるので少々仲が悪くなっても関係ありませんねw


 ターン出口での踏み出しが遅いブレイニーに対しケゼロウスキーはあれこれと攻撃を試みますが、踏むのが早すぎて今度は思いっきり追突してしまい、さすがにまずいと思ったのかこの後は注意深く走って決め手を欠く状況。その間にハービックがアルミローラを引き連れて追いついてきてしまい優勝争いは4台になります。

 218周目、アルミローラがハービックを抜いて3位へ。車載を見るとハービックはちょっとリアの安定感に欠けてスロットルを踏むと車がふわふわしてる印象を受けます。
 さすがにバトルが続いたのでこの後一旦レースは小康状態となりましたがアルミローラはコース上最速で前を追います。237周目、ケゼロウスキーをかわしてとうとう2位となりブレイニーを追い上げていきます。現在ポイントで27位のアルミローラ、勝てばプレイオフ争いに大きな影響です。

 246周目、アルミローラはとうとうブレイニーをかわしリーダーに。そしてこのあたりからピット サイクルとなります。早々にレースが打ち切られると予想するなら引っ張って終了を待つ賭けもできますが、少なくとも燃料が足りているうちに終わることはない、と考えるなら早めに入っておかないとアンダーカットされてしまいます。


 残り51周、アルミローラとブレイニーが同時にピット、ほぼ同じ時間でピットを出ます。アルミローラは実質的なリードを維持しますが、ブレイニーは先に入っていたケゼロウスキーにアンダーカットされました。
 さらに残り49周、ケゼロウスキーがアルミローラをかわして実質的リーダーに。しかしアルミローラの方がロングランでは優れており、残り43周でアルミローラが抜き返しました。今まで21戦何をやっていたんだという快走です。

 残り27周、雨ごいならぬ闇ごいをしていたディベネデトーがピットに入りアルミローラが見ため上でもリーダーに戻ります。ベルがここに来て速さを見せ、2位に浮上してアルミローラを少しずつ追い上げていますが残り周回数は僅かです。賭けには負けたMatt Dですが単独で走ったのが案外良かったみたいでこのレース11位とまずまずの結果でした。

 残り18周、ここでNASCARは残り10周と宣言し、レースは293周への短縮が決定。アルミローラは周回遅れのオースティン ディロンを抜くのに苦労してベルがさらに接近してきましたが、見事に仕事をやり遂げました。2018年秋のタラデガ以来となる通算3勝目、過去の2勝はいずれもスーパー スピードウェイなのでそれ以外では初の優勝です。薄暗いニューハンプシャーに花火が打ち上げられて勝者を祝いました。

 全くもってポイントでは圏外だった人が優勝でプレイオフ進出を確実にしました。リチャード チルドレス レーシングの2人がチームメイトで16位を争う状態です。ディロンがそこまで考えていたかは分かりませんが、アルミローラに勝たれると都合が悪かったのは間違いないでしょう。

 まさかアルミローラが勝つとは全く予想していなかったのでこの結果には驚きの一言。レギュラー シーズンは残り4戦ですがその舞台はワトキンス グレン、インディアナポリス ロード コース、ミシガン、デイトナ。ロードではエリオットが速いとはいえ通常よりは予想外の勝者が出やすく、デイトナは言わずもがな。万一圏外のドライバーがあと2人勝ったらこのままの順位ならハービックが弾き出される非常事態です。
 思った以上に路面温度が低かったことで思わぬ合う合わないが発生したのかなあと思いますが、もしそうならチームとアルミローラからすると「どんな条件では速いか」が分かるので逆説的に「普段遅い理由が何か」の手がかりにもなります。結果が悪すぎる重圧からも解放されて、この後どういった結果を出すかちょっと注目です。
 まさかの勝者の驚きと共に、NASCARはオリンピックにともなう2週間の夏休みに入りました。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
カスターやブリスコーが勝つことは有り得ないと思っていたけども、アルミローラも圏外でした。ポイント20位以下ですしね。レディックの方が可能性ありそうでしたし。ただ、ステージ3はアルミローラの完勝。<新クローザー>の称号を与えたいと思います。
SHRの初勝利が、ハーヴィックでなく、アルミローラだったことには、意外、驚愕・・・言葉が出てきませんね。少しNASCARお休みです。ケーブルテレビ(ひかり)を観ているので、フォーミュラEとインディカーでものんびり眺める予定です。ダゾーンもNEXTも観てませんのでF1はハイライトだけです。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 こういう想定外が起こるからこそのNASCARですね。僅かとはいえ短縮された周回があったならベルは勝っていたのか?というタラレバも含めて、コーションが少なかった内容以上に記憶に残るレースだなと思いました。
 あとはグレンでチャステインが勝って、インディアナポリスでハムリンが勝って、ミシガンでハービックが勝って、デイトナでMatt Dが勝てば、、、
カイルプッシュ さんのコメント…
カイルとトゥルーエックスのスピン、2台でダンスしてるみたいでしたね。ジェミニのCMを思い出しました。
まさか後方でハムリンまでダンスしてるとは思いませんでしたが。
何でJGRばっかりが、、
SCfromLA さんの投稿…
>カイルプッシュさん

 ものの見事にカムリ3台が回りましたね~。雨の降り始めは先頭走者が一番危ない、というのはレースの定番なので上位スタートだった不運を嘆くしかないですが、ドライバーに対するチームからの注意喚起がひょっとしたらよそと比べて甘かったのかもしれないですね。ペースカーを押す姿はまさしく「カイルプッシュ」でしたw
カイルプッシュ さんのコメント…
主さん、うまい!!