NCS 第19戦 ポコノー

NASCAR Cup Series
Explore the Pocono Mountains 350
Pocono Raceway 2.5miles×140Laps(30/55/55)=350miles
winner:Kyle Busch(Joe Gibbs Racing/M&M's mini's Toyota Camry)

 NCSポコノー2連戦の2戦目です。前日のレースが最終周の最終ターンで逆転という信じられない結末でしたので、平凡に終わった翌日よりは遥かに気持ちの落ち着かない雰囲気だったろうと思います。ちなみに視聴者数は145万人、視聴率が1%を切る水準になってしまい、昨年の土曜日のポコノ―を4割も下回って2000年以降のカップ シリーズとしては最低視聴者数だったそうです^^;

 スタート順位は上位20台は前日の決勝レースの上位20台の逆順、21位以下は順位通りという決定方式。結果、前日20位で終えたクリス ブッシャーがPP、マイケル マクダウルが横に並びます。レース距離は前日より10周・25マイルだけ伸びて350マイル。前日にレースをしているのでコンペティション コーションはありません。
 本日のスポンサー・ポコノ― マウンテンズは山がお金持ちでスポンサー、なわけではなく、この地域の観光情報の発信などを行う観光協会みたいな組織だと思います。サイトは一応多言語対応で日本語も選択可能ですが、最近のgoogle翻訳さんはだいぶ性能が向上しているので、Chromeのブラウザーの翻訳ボタンでもそんなに大差なかったですw

 スパイアー モータースポーツはジャスティン ヘイリーがXfinity Seriesのレースで大クラッシュ、体は大丈夫だったみたいですが、念のためカップ戦は欠場し代走としてジャスティン オールガイアーが久々に登場です。ジミー ジョンソンがCOVID-19の陽性判定を受けて代役で出て以来ですね。現在エクスフィニティ―でランキング4位のドライバーです。


 特にレースに絡まないので結果から言えばオールガイアーは25位でした。ヘイリーの今季最上位は24位ですので、オールガイアーはそれなりに仕事を果たしたと言えると思います。去年の代役出走の時は17周目にピット内の多重事故でリタイア、2016年にもブリストルで一戦だけ出場しましたが、スピンしたカイルに突っ込んで354周でリタイアしていました。

 ポコノーって過去数年こんなに観客いたかなあというぐらい大歓声の中でグリーン フラッグとなりました。なぜかテロップが本来のNASCAR公式仕様ではなくNBCの放送そのまんま仕様になっています。

 
 とか気にしてたら2周目にアンソニー アルフレードがクラッシュしていきなりコーションになりました。リプレイのオーバーレイもNBC仕様、コーション中のCMは編集でカットされてスポンサー関係のテロップもそのまま、そして60fpsなので今日だけ何らかの理由でNBC仕様なんですね。

 ケゼロウスキーが無線で口にするぐらいやっぱりお客さんは多いみたいで、インフィールドもキャンピング車両で観戦するみなさんが大勢集っています。アメリカっぽいですねえ。

 7周目にリスタート、内側でマーティン トゥルーエックス ジュニアがマクダウルを押しまくってリーダーに押し上げます。一方外側のブッシャーはターン1でラインを外れて15位まで後退。梨汁をぶちまけたブッシャーは結局このレース19位で終えたなっしー!

 12周目、前日の勝者・アレックス ボウマンは『軽くブレーキを踏んだだけで振動が出て車がガタガタする」とかなり不穏な無線。一方リーダー争いは引き続きマクダウルとトゥルーエックス、そしてクリストファー ベルも加わった3台で行われています。
 14周目、トゥルーエックスがマクダウルをかわすと、抜かれて勢いが弱ったところに続けてベルも入り2位へ浮上します。トゥルーエックスは前日のレースではターン1のバンプに苦しみ、最後のピットで2タイヤ交換したらハンドリングもむちゃくちゃになって酷かったとのこと。軽くスランプにハマってます^^;

 この後特に何も起こらずステージは残り3周、トゥルーエックスはステイアウトする一方で2位のベル以降でピットに入る車が出ました。ウイリアム バイロンはうっかり周回遅れになって作戦が失敗しそうになりますが、必死に攻めてステージ終了間際に僅差でトゥルーエックスを抜いてラップ バックに成功。ステージ1をトゥルーエックスが制しますが、目だったのは完全にバイロンでしたw


 前日は優勝をあと一歩で手放したカイル ラーソンは最初のリスタートでハムリンに追突して前端部分がへこむ損傷。修復のために道具を一式用意しておきます。
バットと金槌!

バットを突っ込んで、根元を金づちで叩く

 ステージ2、外側にブラッド ケゼロウスキーとライアン ブレイニーが並んで2台でリスタートを決めます。この2台はまだピットに入っていないので10周ほどしたらピットに入る必要があります。2ストップ決めうち作戦ですね。
 リスタートでは内側もベルとカイル ブッシュでチームメイトの並びだったんですが、カイルはシフトに問題が起きてしまい、ちゃんと持ってないとギアが4速から抜けてしまうような状態だそう。バンジー コードを車内のどっかにひっかけてノブを固定することを検討しています。なんか去年も書いた気がするなあと思ったらポコノ―でチェイス エリオットが、ケンタッキーではブレイニーが同じ問題に見舞われていました。たぶん来年からの新車では起こらないでしょうね。

 46周目、ケゼロウスキーとブレイニーがピットへ。ただブレイニーはピット前にペースが落ちて順位を下げていたのでケゼロウスキーからかなり離れてしまい、しかもこの後ルース ウィールで緊急ピットとなりました。これでコース上のリーダーはステージ1終了前にピットに入った組のカイルとなります。
 しかしカイルの前方にオースティン ディロンが登場。ディロンはケゼロウスキー同様ステイアウトから45周目に1回目のピットを行った2ストップ狙い、周回遅れになるまいと必死なためカイルはこれを抜けず、その間にバイロンが背後に迫ります。カイルはストレスがぐるっと一周回ったのかなぜか歌っていますw 調べたらFly Like an Eagleという曲だそうです。

 結局カイルはディロンを抜けず、バイロンもまた無理に抜くより戦略を考えて抑えて走る方向になったのでレースは膠着しました。ディロンのペースが上位のペースを決定づけている状態ですが、タイヤは新しいのでそんなに遅いわけでないのが救いでした。むしろカイルは燃料セーブに利用してる?
 65周目、2位のバイロンがピットへ。69周目に3位のハムリン、71周目に2位のベルと同じ作戦の人が続々ピットへ向かいます。一方カイルはリザーブ タンクに切り替えてさらに航続距離を延ばしにいき73周目に入りました。
 しかしシフトが壊れているカイル、ピットを出る際にボウマンと交錯したのも不運でしたが、それより問題なのはギアが4速から動かなくなっていることで、エンジンがかからずにクルーによる押しがけ。加速もとてつもなく遅いのでバイロンから20秒も後方になってしまいました。

 サイクルが一巡するとバイロン、ケゼロウスキー、ハムリン、ベル、チェイス エリオット、トゥルーエックスの順。2ストップを狙ったケゼロウスキーですが、この時点で別の作戦のバイロンに先行されて最小で残り1回のピットと同条件なので、この作戦単独では既に不発という状態です。後ろに同じ作戦で壁になってくれる車もいません。
 ステージ2はこのままバイロンが制しました。ステージ1の最後にラップバックしていなかったらここにはいないはずなのであの頑張りが生きたことになります。戦略的にも特に不利な状況というのは見当たらないので優勝最有力。

 ステージ後のコーションでは主に中団勢がピットへ。ケゼロウスキーは元々ステイアウト予定でしたが、このままではただのじり貧なので戦略を変更してピットに入りました。そしてカイルはクルーが乗り込んで修復が可能か探りますが、結局直すことはできませんでした。

 ファイナル ステージ、バイロンを先頭に始まり、ハムリン、エリオットが続きました。1列目インからリスタートしたベルは4位に後退。翌周に中団の混乱からエリック ジョーンズがウォールに当たってスロー走行。ひとまずコーション無しで進んでいましたが、結局93周目にデブリーでコーションが出されました。コール カスターも後ろにダメージ、修理代がかかる週末です。

 このコーションは運命の分かれ道、残り45周ほどでのリスタートになるはずなので、グリーンだけだと少し燃料が足りない状況。ピットに入るか否かフェイント合戦になりますがバイロンとハムリンは入り、エリオットとベルはステイアウトを選択しました。
 ところがここでちょっとした珍事。エリオットはフェイントをかけてピット入り口ギリギリでコースに戻りましたが、この間に真っすぐ走っていたベルに抜かれてしまいます。これをNASCARは『エリオットが自ら速度を落として順位を手放した』と判断、なんとコーション中にもかかわらず順位が変動しベルがリーダーになりました。
 ピットに入った中でも戦略が分かれ、ハムリンは給油のみで先頭でピットを出ますが、バイロンは安心安全の4タイヤです。ハムリンは15位、バイロンは21位あたりからのリスタートとなりました。カイルは集団の中でリスタートしたってどうせ加速できずビリになるだけなので、他の車より1周後にピットで燃料を注ぎ足してリスタート。距離を空けてある程度速度を乗せておき、最後尾から2秒ほど後方で独りだけでリスタートしています。

 97周目にリスタートされますが、ベルはせっかくコーション中に手にしたリーダーの座を守れずボウマンにかわされます。さらにこの周の終わりにロス チャステインとターン3で並走して壁に挟まれました。この接触でベルではなくチャステインがダメージを受けて緊急ピット。
 ベルは翌周のターン3でもおもいっきりスライドし、今度は右後部を壁にぶつけて車体を破損、緊急ピットとなりました。さらにこの横を向いたベルと軽く接触するもらい事故でチェイス エリオットも右前タイヤをパンク。この後緊急ピットとなりました。ピットが大忙し。エリオットはこのレース27位でした。

 オーダーはボウマン、ハービック、ケゼロウスキーとさっきまでと様変わり。ボウマンだけはステージ2のアンダーグリーンでピットに入った人で大きく戦略がズレており、ハービック以下はステージ2終了後に入った人。この人たちは燃料が足りないので確実にもう1ピットです。

 106周目、ブレイニーがピットに入り戦略ゲームが始まります。残り34周で既にウインドウ的には入っても良いタイミングなので、あとはどうすれば最速になるのかを考えて各陣営が戦略を考えます。
 94周目に入った燃費レース組ではバイロン、カート、ハムリン、ラーソン、カイルの順。カイルはシフトが壊れてますが、他の人より1周後に燃料を注ぎ足したおかげで燃料はわずか1周足りないだけという情報。どうせ失うものもないし、給油しに行ったらまた発進できないので何が何でも走るしか無いし、コーションが出てしまったら絶望的です。

 トラック上ではバイロンとハービックがリーダー争いをしていましたが、ハービックはこれを抜けないまま112周目にピットに入って給油のみでピットを出ました。ボウマンは116周目にピットへ、こちらはタンクが空っぽでたくさん給油しないといけないので2タイヤ交換です。

 残り20周、まだケゼロウスキーだけがピットに入らず暫定のリーダーですが、2位のバイロンが実質のリーダー。続くカートとは10秒の差で、この後ろにハムリン、ラーソン、カイル、バッバ ウォーレスがへばりついて燃費レースを展開しています。ラーソンはまだ3周足りないとか言っており、そうすると普通に考えて逃げているバイロンは完全に燃費レースを無視状態。
 ところが、クルー チーフのルディー フューグルは残りが15周になるころに「全てのターンの手前で2秒速くスロットルを戻せ。最大セーブだ」といきなり猛烈な燃費レースに切り替えさせます。しかしライバルが45周かけてコツコツと節約しているものをそんな短時間でどうにかできるとは思えません。
 データを見るとカート以下の4台は概ね54秒台の後半から55秒のタイムで走っていますが、バイロンは53秒台中盤でケゼロウスキーと同じようなペースでした。それがいきなり56秒台に落としています。

 
 残り10周、カイルがラーソンをかわしてこの集団の3位に浮上。行け、カートを抜いてこの隊列の前に出ろ、という指示で動かしに行きます。するとそれを察知したか、こちらも行けるタイミングに来たのか、ハムリンもカートをかわします。カートは風よけになっていたせいでこの先もペースが上がらず、なおかつ燃料は結局足りなくて20位でレースを終えました。
 一方バイロンは急激に遅くなってあっという間にハムリンとの差は2.5秒、そのすぐ後ろにカイルが続いています。カイルはハムリンにきっちりつけて重圧をかけつつも、まずは変な争いをせず2台でバイロンを潰しにいく考えの模様、バイロンはセーブの開始が遅すぎてどうしようも無い気がします。

 ケゼロウスキーは残り8周でピットに入り給油のみでバイロンから12秒ほど後方の7位で復帰、燃費レースやってない組では彼が先頭で、前方の6台が全員ガス欠してくれたら優勝です。しかしハムリンもカイルも54秒台前半から53秒台にまでペースを上げていき攻めの姿勢、バイロンも負けたくないのでペースを再度54秒台に戻しますが、、、
 残り4周、バイロンの燃圧が低下。フューグルはピットを指示しますが、言われたころにはもうピット入り口に来ていて今さら入れないというちぐはぐ。ガス欠こそしなかったもののバイロンは残り2周でピットへ、12位に終わりました。
 これで残るはハムリンとカイルの意地の張り合い、しかしこれもあっけなく決着、戻ってきたら残りが1周となる139周目のターン3でハムリンは限界となりピットへ、外側からカイルがかわしとうとうリーダーとなります。

 あとは7秒ほど後方にいるラーソンに抜かれない範囲でできるだけ燃料消費を抑えて走り切れば勝利。実際にはラーソンの方がより苦しい様子。画面にはチャステインがスイカ切れで失速している様子も見えて中団以降の争いも厳しい燃費レースになっている様子がうかがえましたが、カイルはきっちりと車を持ち帰りました。
 ミッションが壊れて4速しか使えず最後尾からリスタートした車がなんと優勝、ヘンドリック モータースポーツの連勝を6で止めてみせました。燃料もギアも無いのでもちろんバーンナウトなんてできません。

 皮肉にも、ライバルを打ち破って燃料をもたせた最大の要因はトラブルでした。前述のように、93周目に起きた4回目のコーションで大多数の車は94周目にピットに入って給油しましたが、カイルだけは95周目にもう1回入って注ぎ足しました。コーション中の1周分ですから通常走行に換算すれば僅かな差ではありますが、1周が2.5マイルもありますし、リスタートで1~3速の高回転域を使うこともなかったのでそれなりの差にはなっていたと思います。
お馴染みのお辞儀ポーズ

 もちろん燃費レースをやるのに隊列のビリにいるんですからコース上で燃費走行しつつも抜かないといけないわけで、たまたま給油したから勝てた、というような簡単な話ではありませんが、全ての流れがなぜかカイルに向かって集約されて行きました。前日の最終ターンでパンクしたラーソンに続き、まさかポコノ―で劇的な結末が2日連続で訪れるとは思いもしませんでした。
いつぞやの偽カイルのお辞儀も併せて再掲
角度がバッチリ!


 対照的にバイロン陣営は考えが中途半端すぎました。あそこまで燃料を使ってしまっていたのならもたないので、そのまま飛ばして最後に注ぎ足せばおそらく5位にはなれたはず。1位でないと、2位じゃだめなんです!という考えだったとしたらそもそも最初から燃料を抑えるべきで過程が全然そうなっていないですし反省会ですね。
 ラーソン、ケゼロウスキー、ハービック、ウォーレスのトップ5でした。ウォーレスは今季ここまでトップ10すら一度も無く当然ながら今季初のトップ5。23XIレーシングにとってはチーム史上初ということになります。そしてそろそろ気になるプレイオフ争い、こうなりました。

 このところトラブル続きのマット ディベネデトーはもはやこの表にすら出て来ない状態。逆にダニエル スアレスがこの週末を13位、15位と手堅くまとめ、ここ9戦で7度のトップ15フィニッシュと安定。当落線上にいるカートに対して僅か48点差としています。この数日後、まさかこのチームに関する重大発表が行われるとは思いもよりませんでした。

 次戦はカップシリーズでは1956年以来2度目の開催、初開催と言っても差し支えがないロード アメリカです。Matt D、狙うならここしかない!


コメント

まっさ さんの投稿…
スイカ切れ! あぁぁ ガナッシのうちに勝てるか勝てないかで将来が決まるかもだからなぁ。。ドキがムネムネです。。
スイカマシマシでお願いしますよーーーーーーー><
Matt Dファンには申し訳ないですが私はスイカ一筋で勝負ですw
え?宣言しなくても分かってたって? 気にしないww
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 チャステインの評価はここ数戦で明確に向上していると思いますね~。個人的にはトラックハウスの理念とMonster Energyってあんまり合わない気がするのと、チームカラー的にも苦労人のチャステインって合う気がするのでチャステインがトラックハウス、カートは23XIというのはありそうなかと思っています。
CGRのスポンサーがいくつか引き継がれるなら資金面でいきなり苦労はしないでしょうし、チャステインは給料がスイカでいいからカートより安いですしねw
ChaseFun9 さんのコメント…
いやあ衝撃のダブルヘッダーでしたねえ
まさかあんなファイナルラップのドラマが続くとは
しかしそろそろHMS,JGR,TP以外から勝者出て欲しいですね~
とは言ってもHMSが勝つのは全然良いですけど(笑)
SCfromLA さんの投稿…
>ChaseFun9さん

 気づいたらSHRが勝たないままシーズンも半分終わってしまいましたからね~。
レギュラーシーズン残り7戦のうちロードが3戦、デイトナが1戦と番狂わせトラックが押し込まれてるので、面白いことが起きるのを楽しみに待っています。Matt Dとチャステインがそこに入ると当ブログとしては最高です(笑)