トラックハウスがチップガナッシのNASCAR部門を買収!

 NASCAR Cup Series、2022年に向けた大きな出来事が起こりました。今季から新規参戦したトラックハウス レーシングは6月30日に会見を行い、チップ ガナッシ レーシングのNASCAR部門を買収することを発表しました。



 


 発表では、トラックハウスはCGRのNASCAR部門に関する全ての資産を譲渡されます。今シーズンが終了した後に譲渡が正式に行われることになり、チームは2022年に2台体制であることを明らかにしました。1台はダニエル スアレスであることが明言され、もう1台は後日
に発表されるということです。

 1990年に設立されたCGRはインディーカー シリーズ参戦のために立ちあげられ、NASCARに参入したのは2001年。フェリックス サバテスがオーナーを務めていたチーム SABCOの株式の過半数を取得して参入。当初はチップ ガナッシ レーシング with フェリックス サバテスという名称でした。
 その後テレサ アーンハートが所有していたデイル アーンハート Inc.と合併してアーンハート ガナッシ レーシング with フェリックス サバテスとなり、2014年にアーンハートが離脱。
 2015年にはロブ カウフマンが出資して共同オーナーとなり、サバテスは2020年に退いていました。カウフマンは元々マイケル ウォルトリップ レーシングに出資していましたが、順位不正操作事件に端を発したスポンサーの大量離脱とそれに伴う低迷に激怒し、突然記者会見を開いてMWRからの撤退とCGRへの出資を発表。MWRを公然と批判していたことを覚えています。

 そんなCGR、けっこう紆余曲折していることは明らかで、長年の大口スポンサーであったホームセンター大手・ターゲットの離脱は結構な痛手だったんじゃないかと思いますが、20年目を区切りにNASCARを去ることになりました。取引の対象はNASCAR部門なので、インディーカーなどのチップガナッシの他のプログラムには影響はありません。


 一方のトラックハウス レーシングは、元ドライバーであり投資家でもあるジャスティン マークスが2020年に設立した企業・トラックハウス エンターテインメント グループの一部門として作られて2021年に参戦を開始したばかりの新興チーム。
 STEM教育を広めることをチームの目的に掲げ、チームの理念に賛同する企業と手を組んでレース活動を通じて社会の向上を目指すという斬新な発想で立ち上げられました。共同オーナーには著名なラッパーで、人種差別問題に対して積極的に発言していることでも知られるピットブル(本名:アーマンド クリスチャン ペレス)が就任し、ドライバーには唯一のメキシコ人ドライバーであるダニエル スアレスを起用。
 チームのショップは提携するリチャード チルドレス レーシングのショップ内に置かれてカスタマーとして参戦していますが、スアレスは現在プレイオフ順位で18位とポイントでのプレイオフ進出を争う位置に付け、度々上位に顔を出して驚きを与えています。

 オーナーのチップ ガナッシは記者会見で
「ここで皆さんにお会いできてうれしいです。私たちのチームは売りに出されていなかったと断言いたします。ジャスティンは、素晴らしいオファーとレースのためのより良いビジョンを持って私のところへ来ました。」
「みなさんもご承知のように、NASCARにはたくさんの新しい血が入ってきています。マイケル ジョーダンやデニー ハムリン、ブラッド ケセロウスキー、スパイアーの人々、コウリッグ レーシング、たくさんの新しい血があり、それらは新しい視点、そしてさらに重要な新しいビジョンを持ち込んでいるようです。」

※なんか流れでケゼロウスキーがオーナーになる話が既成事実になっている気がするw

「私が思うスポーツにはビジョンを持った人々が必要であり、今日のNASCARは成功を築き続けており、ほとんどのアカウントで成長を続けています。」
「NASCARに関わっているとワクワクすることがたくさんあると思います。NASCARのリーダーシップのおかげで彼らは私の最高の師匠であり、ジム フランスやビル フランス ジュニア、マイク ヘルトンなどの人々何年にもわたって私のより良い友人になりました。」
「私が自分のチームを売り込もうとしていたとしていたなら、チャーターを探している、チームを探している、またはスポーツに参加しようとしているすべての人と話をしたでしょう。 私はそうしませんでした。 私は一人と話をしました、そしてそれはここにいるこの男です。 私は他の誰とも話をしませんでした。」
「私はまだモータースポーツとオートレースのスポーツに専念していることを知っておいていただきたいです。 私の意見では、それは世界で最も偉大なスポーツであり、今でも上向きの軌道に乗っていると思います。」
「私たちはまだ関わっており、私はレースを退くわけではありません。 私はまだインディーカーシリーズ、IMSA、スポーツカー、エクストリームEを持っています。したがって、私たちの日々は決してレースをやめるわけではありません。」
「私はジャスティンがこのビジネスでうまくいくことを望みます。私はいつでも彼を助けるためにここにいます。それでは、ジャスティン マークスにお渡ししたいと思います。 ありがとうございました。」

と、チームの売却は多くの相手に持ちかけて競争させたのではなく、話を持ち込んだマークスの熱意に動かされた結果であるという認識を示しました。マークスは

「大きな日ですね。取り上げていただいているメディアと聞いてくださっている方みなさんに感謝したいと思います。NASCARがこれらすべてをまとめてくれたことと、現在ご覧いただいているすべてのファンの方々、ここにいる方やインターネット越しの方々、みなさんに感謝したいと思います。」
「このプロセス全体を通じてプロ意識と率直さと勤勉さを発揮されたチップに感謝したいと思います。これは非常に迅速に行われましたが、このプロセスを通じて彼らと協力できたことは私のプロとしてのキャリアにおいて誇らしいことです。」
「今日は明らかにトラックハウスにとって素晴らしい日ですが、私たちはこれから長い間ニュースになります。レースやスポンサーについて話すことができるようになり、ドライバーやすべてについて何年も何年も、願わくば何十年も話すことができるようになります。」
「今日は、チップが過去20年間にNASCARにもたらした遺産と貢献を尊重する日だと思います。 1300以上のカップレース、この競技の全ての重要なイベントで優勝し、ジェイミー マクマーリー、カイル ラーソン、ファン パブロ モントーヤ、ロス チャステイン、その他多数のドライバーのキャリア、ストックカーキャリアの立ち上げに貢献し、Havoline、Target、Bass Pro Shops、Miller Coors、McDonald'sなどの数々の企業と画期的なパートナーシップを実行してきました。過去20年間にCGRで構築されたすべてのハードワークとレガシーは、トラックハウスのビジョンの基盤として機能し前進していきます。」
「そのプロセスを通過するのにチップより優れた人は誰もいないと思います。 CGRは私の人生の大きな部分であり、私のキャリアの大きな部分を占めています。丘の上に立っていたのを思い出します、チップにはこの話をしたので少し冗長ですが、1996年のインディカーレースでラグナセカの丘の上で父と一緒に見ていて、ジミー バッサーがインディカーのチャンピオンになったレースで、アレックス ザナルディがコークスクリューで信じられない追い抜きをしたのを覚えています。親友と一緒に大学のウェイトルームにいて、ジェイミー マクマレーがシャーロットでデビュー2戦目で優勝するのを見ながらトレーニングをしていたのを覚えています。」
「ロレックススポーツカーシリーズでBMWのレースを始めたときには毎週、チップのプロトタイプがレースに勝ち、チャンピオンシップで勝つのを見ました。」
「レース界における親友の1人であるジョーイ ハンドは、チップの下でレースをしてルマン24時間をフォードGTで優勝し、彼のキャリアの頂点に到達するのを見ました。私の個人的なドライビングキャリアのハイライトは優勝でした。 2016年にミッドオハイオで開催されたチップの42号車でのXfinityシリーズです。」
「今この瞬間、それは本当に素晴らしいモータースポーツの物語の別の部分のように感じます。トラックハウスでやるべきことがたくさんありますが、その仕事をすることへの熱意もたくさんあります。」
「繰り返しになりますが、このプロジェクトをまとめるために手伝ってくれたすべての人に感謝したいと思います。 この競技に消えない足跡を残したチップを祝福したいと思います。」

 この後の質疑応答によれば、両者が実際に会って話を進め出したのはこの1~2ヶ月ほどだったということです。当然ながら買収によってチームは来季から現在のCGRのショップを拠点とすることになります。
 会社の本拠地があるナッシュビルを拠点とするということも考えなくはなかったそうですが、CGRの素晴らしい設備がある中でその選択をすることは考えなかったとのこと、そりゃそうだ。
 先日のNASCAR記事でトラックハウスが来季に2台体制を模索しながら、実際はチャーターを1つも持っていない、という話を書きましたがまさかこんなことが裏で進んでいるとは思いもしませんでした。噂系記事も全く無かったですし本当に売りに出されていたわけじゃなくて秘密裏に1対1で進めていたんでしょうね。

 気になるのはドライバーで、スアレスが確定していますので残りは1。カートがトラックハウスと23XIレーシングからオファーを受けているという話も前回書きましたが、カート自身はあくまで「チップガナッシと話してから」というような態度でした。ところが実際はチップガナッシ=トラックハウスになってしまいました。
 現状チャステインとカートのどちらかから選ぶことになるだろうと予想されますが、どちらの可能性が高いのかは予想しズラいです。いずれにせよ、2022年に向けてNASCARは血を入れ替えながら前進していると改めて感じました。チップのコメントからは「これからは若い世代がこのスポーツを担っていくんだぞ」というような意思を感じましたね。

コメント

まっさ さんの投稿…
まさかのまさかのまさかのまさかの。。。。。。

これは誰も予想できないです><
紆余曲折ありすぎなガナッシとはいえ。。。
まさかカートvsチャステインのシート争いになるとは...。
あぁぁ 眠れない日々が続きそうです。
カイルプッシュ さんのコメント…
チップガナッシが!!
びっくり!!!