FE 第12戦 ロンドン

ABB Formula Heineken E London E-Prix
ExCel London Cuircuit 2.25km
45minutes+1Lap
winner:Jake Dennis(BMW i Andretti Motorsports/BMW iFE.21)

 2020/21年のフォーミュラEも残すところあと2ラウンド・4戦となりました。第12・13戦の舞台はロンドン。以前開催されていたバタシー パーク外周道路ではなく、エクセル ロンドンという大規模な展示施設を利用した特設コースでの一戦です。ロンドン オリンピックが開催された際にはボクシング、柔道、テコンドーなどの屋内競技の会場ともなりました。
 簡単に言えば建物の内外にある駐車場などの施設道路を壁で仕切ってコースにしているような感じでスタート/フィニッシュは4階建ての建物の2階部分となる建物内。そこから屋内をちょこちょこと走って建物外の1階部分の道路を走り、一階層上って建物内に戻る、というコースです。
 今回、久々にせせこましいカート場みたいな場所を走るために使用エナジー量が少なくて回生の機会が多いため、通常の52kWhのエナジー総量では多すぎると判断され、通常より少ない48kWhに制限されてのレースとなりました。効率よく走ることをさせたいレースなのに全力で走るのはいかがなものか、というのと、過去の経験で全力で走れるとみんな無茶して赤旗級の多重事故が起きるからレースにならない、という懸念があるそうです。
 それでも結構余り気味になりそうなのと追い抜きが極めて難しそうなので、アタックモードの仕様をどうするのかも事前の焦点だったようです。エナジー総量を36kWhまで減らした方が良いのではないかという意見もあったとか。
ピットのあるホーム ストレートを後ろから


 非常にアクセスの良い建物なのですぐお隣には鉄道が走っており、ターン13あたりでは最寄り駅がカメラの画角内に映り込み、うまく行けば鉄道も一緒に楽しめます。この鉄道はドックランズ ライト レールウェイという鉄道会社のカスタム ハウス駅です。日本で言うと新交通システムみたいな鉄道で基本的に無人による自動運転。時刻表を見る限り10分間隔で走っているみたいですね。

 見た目かなり新鮮で興味津々ですが、非常に狭くて窮屈なコーナーがいくつかあるので、久々に大渋滞の玉突き事故が起こりそうな見た目です。

 土曜日は雨になってしまい、予選時は雨は弱まって路面水量は走るごとに減っていく状況でしたが、グループ4はめっちゃ乾いてるから勝負にならないほど速い!というほどでもなく、ミスも起きるので結局グループ3の人が多くスーパー ポールに出る順当な結果に。第1グループの最上位はエドアルド モルターラの16位でした。
 グループ予選の1位はアンドレ ロッテラー。スーパー ポールは後から出る人が順々にタイムを更新していくのでそのままPP獲得かと思われましたが、ロッテラーはまさかの5位に終わります。PPを獲得したのはグループ予選で2位だったマヒンドラのアレクサンダー リンでした。あれ、マスクしたらカイル ブッシュと目元がよく似てる気がする。
 2位にBMW i アンドレッティーのジェイク デニス。デニスのチームメイト、第10戦のニューヨークで勝利を挙げたマキシミリアン グンターは難しい路面に足を掬われてクラッシュしてしまい最後尾スタートとなりました。

 決勝、スタート前に発表されたアタック モードの仕様はなんと8分間×2回という長いものでした。抜けないのとエナジーが余るので、235kwを長く使わせてマネージメントを考えさせよう、という意図です。まあ追い抜きは時間が長いとアタックモードがお互いに被りやすいので相殺されて変わらん気がしますがね。

 決勝スタート、上位はなんとか狭いコースを無事に通過しますが中団は建物を出るターン5あたりで大混雑になってしまい、アレクサンダー シムズが接触で車両を壊し走行不能になった模様。失速したので後続はさらに混乱し、サム バードはサスペンションを壊しリタイア、ミッチ エバンスもウイングの脱落で緊急ピット、事実上勝負権を失いました。シムズの車が止まったので排除のためFCYとなります。
ただでさえ狭いのに左端でシムズが失速
道幅は2台分しか残ってない^^;


 FCYが解除されるとリンとデニスはピッタリくっついて走行。デニスはリンについて「すごく遅く走ってる」と意図的にコントロールしていると感じます。駆け引きが始まっている様子ですが、開始9分でこの2人は同時にアタックモードを取得。3位のセバスチャン ブエミのペースが上がらず空間があったので、1位2位のまま駆け引きは続きます。ブエミは決勝で厳しいですねえ。
 
 開始15分、リンとデニスが変わらず接近してにらみ合い、3位のブエミは4秒ほど離れてしまって、この後ろではガシャガシャとやり合う車が多発。多くが1回目のアタックモードを終えているんですが、レネ ラストだけ使わずに7位を走行中。ノーズの先端を壊して左側のフェンダーも吹っ飛んでるんですが、なんかハイノーズの車になったように見えてむしろカッコよく見えます。

 リンは1回目のアタックモードが切れると連続でまたすぐアタックモードを使うよう無線で指示が飛びます。デニス陣営もこれを聞いてるはずですが、同時に使ったら何も起きないのでここは使わずに通過しこのレース初めてリードを奪います。デニスは無線で「リンより速く走れるよ、でもブエミの後ろには落っことさないでくれ」。リンへの無線は「プッシュしてついてけ!」

 リンは抜けないのか抜かないのか、結局8分間デニスの後ろを走り続けてアタックモードが終了しました。デニスの方はFCYやSCでアタックモード未消化になったり抜かれたりするリスクを気にしてそろそろ入りたいみたいでしたが、エンジニアはまだ引っ張る指示を出します。
 リンはアタックモードが切れた直後、本来一番踏ん張らないといけない場面だったのにターン10で突っ込みすぎてなんと大きなロス。そしてデニスは言葉通りその後もリンを引き離し、翌周に満を持してアタックモードを使用しました。1位のまま2回目を使えたのでこれでもうあとはきっちりマネージメントするだけです。


 残り15分、リンはペースが上がらなくなってブエミに追いつかれてしまい、ニック デ フリースも交えた2位争いとなります。テレメトリーの表示を見る限りではやはり48kWhでも各車いつものようなリフト&コーストをしていないので普通の全力電気自動車レースになっているようで、そうするとマネージメントよりも車の走行性能やタイヤ管理が速さにより大きく影響します。

 残り12分、デフリースがターン10でブエミの内側に飛び込んでかわし3位へ浮上、ただ狭いヘアピンを内側から突っ込んだので当然タイムが遅くリンとの差が開きます。
 しかしリンはリアのグリップに苦しんでいる様子でデフリースは追い上げていき、残り3分、やはりターン10で飛び込んで前に出ました。ちょうどええタイミングで列車がすれ違ったのを私は見逃しませんでした。

 デニスは2位に5.3秒の大差をつけてそのまま優勝、今季2勝目でドライバー選手権で一気に3位に浮上しました。デニスの入賞は今季まだ5回目で、他の選手権で考えると『12戦して5回しか入賞してないのに3位なの!?」と思いますが、選手権1位のバードも同じく5回です。グループ予選の制度のせいで、ほぼリバース グリッドの状態になるので安定して入賞するのが非常に難しいんですよね。
 予選の映像を見ているとBMWは足回りがしなやかで、バンプも舗装の変化も多くてグリップが抜けやすい箇所がいくらかあるところを非常に綺麗に走っているように見えましたが、決勝での速さはその良さを裏付けたように思います。

 マネージメント競争だとドライバーは持っているエナジー総量の範囲でしかペースを上げられないので電力がペースを支配してメカニカルなグリップなんかは多少悪くてもごまかされたりしますが、今回はそうではないので車の速さの良し悪しがそのまんま決勝のペースに出て、いつもより集団がばらけたなという印象でした。アタックモードはあっても抜けないですねw

 しかしマネージメント要素が少ない中でもいくらかの問題は起きました。ノーマン ナトはおそらくチーム側が周回数の計算を間違えていたと思われ、残り1周で既に残量1%とどう見ても完走できる状態でなくリタイア。
 そして今季最高の4位でチェッカーを受けたはずのブエミでしたが、車両のソフトウェアの不具合によってほんの僅かに規定の48kWhを超過して使用してしまいレース後に失格になりました。チームメイトのオリバー ローランドも同様に失格となって、日産e.damsはチーム選手権で10位とルノー時代に遡っても史上ワーストと言える順位に落ちてしまいました。

 ブエミの失格により4位がロッテラー、5位ラスト、6位ルーカス ディ グラッシ。アウディーはしぶといですね。2台で順位を入れ代わり立ち代わりしながらレースしていましたが、ラストは選手権1位から9点差の7位。予選でグループ2に入れてなおかつ僅差、しかも明らかに上り調子なのでかなり面白い存在です。
フロントがだいぶ壊れたラスト

 次戦も翌日にロンドンでのレースです、アタックモードの使い方に変更があるのかどうか、連戦の2戦目だからもっとみんな無茶するのか注目です。屋内を併用した特設コースって日本で開催することを考えた時に使えそうな案なので誘致を目指してる自治体さんは参考になりそうな気がしましたね。


コメント

まっさ さんの投稿…
スッキリ! リンの顔、、、どこかで絶対見たことあるんだよおおおおおおおおおおおおってなってました。。。
ありがとうございます。
スッキリ!
ご褒美に自費でm &m‘s買って
くださいww
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 似てますよね?良かった!けどなんで買わなあかんねんw
ちなみに私は数年前、DTMのライブ配信のチャットに「ラストってロザンの宇治原に似てる気がする」とぼそっと投稿し、後日リライブで視聴していた知り合いがそれを見て笑ったそうですw 似てる気するねんなあ。
okayplayer さんの投稿…
なんという電車かだけでなく時刻表まで見るなんて流石ですパイセン!
SCfromLA さんの投稿…
>okayplayerさん

 普通の内容じゃあ面白くないのでネタを仕込まないといけませんからね!VVVFインバーターなのか直流モーターなのか知りたくて全面展望の動画も調べたりしました(音を聞く限り直流っぽい)
https://youtu.be/UeFSQnAYRrg
この動画の9分40秒あたりからカスタムハウスの駅ですね。撮影列車は通過してますけど 笑
okayplayer さんの投稿…
VVVFなんちゃらもわからなければなぜ日本のYoutubeチャンネルがロンドンの電車の動画までカバーしれるのかもわからないし完全に情報過多ですセンパイ
SCfromLA さんの投稿…
>okayplayerさん

 ハハハ、そう思ったから本編の内容に盛り込まれずボツネタになったのですよ 笑 よし、暇な時にVVVFインバーターで記事を書くか!(。∀°)