FE 第11戦 ニューヨーク

ABB FIA Formula E ABB New York City E-Prix
Brooklyn Street Cuircuit 2.32km
45minutes+1Lap
winner:Sam Bird(Jaguar Racing/Jaguar I-type 5)

 FE第11戦、連日のニューヨークです。船着き場、コンテナ置き場みたいなところなので『ニューヨーク市街地』と呼ぶのはなんかちょっと違う気がしますねw

 曇天の日曜日、2連戦の場合2日目は練習走行が1回だけという流れになっているので、日本時間では23時前というぎりぎり起きていられる時間に開催される予選、現地時間で言えば午前10時ごろと早起きです。パンデミックで今はそういうことも無いですが、元々FEは走行時間が詰め詰めな上に、間の時間にメディア対応やらイベントやらがあって、1日の詰め込み具合としては世界屈指の忙しさです。

 予選は小雨がぱらつく中で行われ、前日はモノコック交換で大変だったサム バードがPPを獲得、2位にミッチ エバンスが続いてジャガー レーシングが1列目を占めます。ジャガー推しの私には嬉しい結果。3位には昨日のポールシッター・ニック キャシディー。エバンスとの差は0.001秒でした。雨でグループ予選のどこかだけ極端に有利不利が出る、ということも特に無く普通に第1組が遅い傾向でした。
 それでも選手権1位のエドアルド モルターラは14位と第1組にしては健闘。同点で選手権2位のロビン フラインスは21位スタート、選手権3位のジャン エリック ベルニュはなんとトラブルでタイムを出せず24位スタートとなりました。

 どんよりしていますが雨が降らないまま決勝へ。前日の様子から奇数列が有利と見られ、やはり3位からキャシディーが好発進してエバンスから半車身ほど前に出ましたが、エバンスはロックさせながらのブレーキでなんとか防御に成功します。あと数m奥に突っ込んでいたらたぶんバードを撃墜していたと思われるギリギリのブレーキでした。ジャガーがワンツーを維持。


 そして後方ではベルニュがなんとスタートすらできずにグリッド位置で止まっており、当然ながらこれでSC導入となります。

 3周目にリスタート、3kWh=約6%のエナジー削減となりました。リスタート後から再びハゲしい争いとなりあっちこっちでガシャガシャと接触音。オリバー ターベイは左フロントのフェンダーをターン7の外側に落っことしますが、FCYを出しもせず部品は延々と現場に放置されます^^;

 そんな混戦の中、11位スタートからうまく9位に上げていたレネ ラストがターン11で前方の争いから仕方なくゆっくりコーナーに入ると、セバスチャン ブエミが合わせ損ねたっぽくで玉突き事故。ラストはタイヤを傷めたようでピットへ向かいました。選手権4位につけていたラストですが、このレースでピットに入ったらどうしようもなくこのレース20位で終えました。
完全にブエミのノーズがタイヤに刺さっている^^;


 そのブエミのペースが上がらず9位以降は詰まってしまったのでここに大きな空間が発生、リスタート2周目に8位のアレクサンダー シムズがフリーの状態でアタックモードを使用。これを受けて前に波及する形でアタックモードの1回目のサイクルに入ります。
 
 開始10分、堅実に走っていたモルターラでしたが、アタックモードでやや強引にジェイク デニスを抜こうとしてデニスにスペースを残さなかった結果、自分がリアを引っ掛けられてスピン。きちんと車を持ち帰って1点でも獲りたいはずの選手権リーダーが慌てすぎて自滅し17位に終わりました。ターベイの部品を踏んで蹴飛ばすかと思ったら絶妙に踏まずにスピンしましたw


 開始12分、バードとエバンスが同時にアタックモードへ。エバンスは一旦3位に落ちますがすぐにキャシディーを抜いて2位へ戻します。キャシディーと4位のパスカル ベアラインはアタックモードをまだ使っておらず、後ろにはアタックモードを使用した車が数珠つなぎになってきたので、この2人はアタックモードをちょっと使いズラい状況となりました。周囲とはズレた戦略を考える必要があります。

 開始16分、キャシディーに対する無線は「かなりぎりぎりだ。もしそれ(=前に対する追い抜きか?)をやったら、赤信号だ」
 残量的に仕掛けられる余地というのはかなり少なく、とにかく最小限の消費量で走っておくのが重要だという話です。そしてその無線の直後、集団がちょっとばらけた隙を見て4位のベアラインがアタックモードの1回目。これを見て翌周にキャシディーもアタックモードの1回目を使いますが、同じタイミングで先頭のバードが2回目のアタックモードを使用して早くも義務を消化しました。今回はエバンスは同時に使用せずに戦略をずらしてきました。

 キャシディーはアタックモードが使えるうちにエバンスをかわしたいところですが、エンジニアの無線の内容からしても下手に飛ばすと電池切れすると思われるので攻めまくるわけにはいかない様子。35kWのブーストがあっても、リフト&コーストが早ければ見た目上の直線の長さよりも実際のそれは遥かに短くなります。結局2周以上かけてようやっとエバンスをかわしました。
 抜かれたのでエバンスはアタックモードをここで使用。この後ターン10でキャシディーを抜いて2位に戻りました。バードは既に2回の義務を終えて後ろにチームメイトの壁がある状態ですからかなり盤石、エバンスが2回目のアタックモードを使ってくるキャシディーをいかに抑えるかがレース結果を左右します。

 残り20分30秒、後ろに空間があるうちにキャシディーが2回目のアタックモードを使いましたが4分の間にエバンスを抜くことはできず、あとは通常モードでのレースとなります。背後にアントニオ フェリックス ダ コスタが迫っておりキャシディーは後ろも気にする必要が出てきました。

 中団争いでは9位で抑え込み続けていたブエミが残り18分というところでルーカス ディ グラッシに回されてしまって12位へ後退。フォーミュラE1年目から争い続けるこの2人、何かと絡みます。ディグラッシにはペナルティー、回ったブエミはこのレース15位でした。後ろにいるノーマン ナトはスタート直後に誰かの外装パーツがノーズにぶっ刺さってそのまま走っているのが笑えましたが堅実に走って7位でした。


 優勝争い、2位のエバンスが後続を抑え込む形になっていてバードだけが単独で逃げていきます。先頭を走って、速くて、なおかつ残量が多く、おまけにファンブーストまで持っているという無敵状態です。エバンスは逃げれないのかキャシディーが度々仕掛けてくるのでブロック ラインを取ってさらにタイムを落とす状態。
 ただ、いつまでも攻撃し続けるにはやはりエナジー残量の兼ね合いがあるようで、しばらくするとキャシディーの攻撃はとりあえずおさまりました。この2台が争ったせいもあって2~6位までが数珠つなぎになってしまい、お互いに仕掛けどころを考えないと自分がやられる一触即発の状態です。5位にパスカル ベアライン、6位アンドレ ロッテラーのポルシェ2台は残量で前2台より1%ほど多く、最後に何かやりそうです。
 
 ダコスタは低速コーナーで完全にキャシディーにひっついてノーズで押してる、というかたまにリアを持ち上げてるぐらいの接近戦を展開。絶対誰か最後にターン10で突撃してくるな。。。そんなことを思っていたら残り2分、ちょっと中継担当者さんがバードに気を利かしたか車載映像を映している間になんとエバンスが抜かれている( ゚Д゚)


 2台に続けて抜かれて4位に落ちると、左リアがおかしくて白煙を上げておりポルシェの2台にもあっさりと抜かれてしまいました。パンクかと思ったらサスペンションが折れてる(;・∀・)

 チームメイトの悲劇をよそにバードは完璧なマネージメント、結局一度もリードを譲らない完勝、今季2勝目・通算11勝目で選手権でもトップに立ちました。


 キャシディーはダコスタの強引な攻撃を察知してきっちり防御に回り2位を獲得、ダコスタが3位。ベアライン、ロッテラーと続きました。エバンスはターン4でスライドして自らバリアにぶつけてしまってサスペンションを折っていました。やはり苦しかったので目一杯走っていたんですね。結局最後にはほとんど走れなくなり入賞すら逃して13位でした。

 今回は同一チームで上位2台を抑えた場合にアタックモードをいかにうまく利用してその体制を固めるか、というあたりがなかなか面白いレースでした。変にバラバラに動くと譲り合いで時間を使ってしまったり、何かの拍子に2台がはぐれてしまうことがあるのでそれを阻止してできるだけレースを常に分かりやすい状況下で進めようという雰囲気を感じました。
 結局最後はエバンスが自滅してしまいましたが、スタート時の順位のままワンツー寸前まで行きましたので、ジャガーとしては見事なレース采配だったと思います。

 一方、前日は大半の時間で先頭を走りながらエナジーを使いすぎて4位に落ちたキャシディー、今日は3位から逆の展開で前に合わせた上手いマネージメントでした。単に『後ろにいた方が前に合わせやすい』というだけの話ではなく、おそらくキャシディー自身のドライビング面で1日で学習したことも多かったんだと思います。選手権でも一気に5位になりました。当然次戦の予選は第1組なので、ここでどう我慢するかが重要です。

 ニューヨークのレースは何が楽しいのかと思ったら、FEらしい低速市街地で時折ガシガシと接触しつつも、失敗すれば即クラッシュに繋がるリスクの高いコースで全神経を研ぎ澄ませて争っている感じが伝わってくるからだなと思いました。何人か無茶した人がいましたが道を塞いでしまうようなスタート直後の多重事故はさすがに7年目になると無くなったのでその辺はレベルが上がりましたねw

 最後に1つ気になるのがブエミで、チームメイトのオリバー ローランドがそこそこやっているのと比べると予選でもレースでもペース的に負けていてミスも増えている印象です。今回は回された側なので仕方ないとしても、トヨタのWECとの掛け持ちがドライビング面でも体力・精神面でもそろそろ厳しいのかな、とここ2年程感じてしまうところ。
 ルノーe.dams時代からの功労者ですしどういう契約になっているのか分かりませんが、周囲にF2あたりから上がって来る若手のドライバーも増えてくる中で、来年も日産にいるのかなあ、と勝手にちょっとシートを疑い始めています。ていうかF1のシートが無くなったのならレッド ブルはアレクサンダー アルボンをこっちに返して欲しいんですがw

 さて、次戦はロンドン。以前開催されていたバタシー パークではなく、エクセル ロンドンという施設で行われます。調べてみるとここは国際会議場らしく、例えるなら幕張メッセのホール内外を繋いだ特設コースを走るような感じっぽいです。昨年はパンデミックの影響で中止になりましたが、ここは臨時の病院になっていたそうですね。
 

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