NCS 第15戦 シャーロット

NASCAR Cup Series
Coca-Cola 600
Charlotte Motor Speedway 1.5miles×400Laps(100/100/100/100)=600miles
winner:Kyle Larson(Hendrick Motorsports/Metro Tech Chevrolet Camaro ZL1 1LE)

 NASCAR Cup Series、メモリアル デー恒例のイベント・コカ-コーラ600です。インディアナポリス500では40%の観客制限として約13万人が詰めかけ、エリオ カストロネベスが4度目の優勝を果たしましたが、こちらシャーロット モーター スピードウェイは観客制限無し。最大9万5000人収容のスタンドには、正式な発表はありませんが5万人は来たようです。

 戦没者追悼の日であるメモリアルデー、例年通り各ドライバーのウインドウ上部には、自分の名前ではなく各ドライバーが選んだ戦没者の名前が刻まれます。また、タイヤ側面のレターにもHONOR AND REMEMBERの特別なレターが刻まれ、「今こうして日常を送れているのは軍の皆さんが国を守ってくれているおかげ」という感謝と、亡くなられた方への追悼を行います。


 トラック上は外側のラインにおなじみPJ1トラクション コンパウンドが撒かれています。600マイルの長丁場なので、ただでさえ路面状況が変化しやすい中、トラクションコンパウンドの作動具合の変化もレースに影響しそうです。ていうかシャーロットみたいな高グリップのトラックに本当にこれいる?


 今回は予選と練習のあるレース。オーバルではデイトナ500以来です。PPはカイル ラーソン、2位にリッキー ステンハウス ジュニア。3位は先週オースティンで勝ったチェイス エリオットとなりました。決勝はこの時期としては低い温度で始まりました。

 なお、エリオットのスポッターだったエディー デュホーンですが、5月上旬に胎児と女性への暴行の疑いで起訴されていたことがノースカロライナ州の司法記録で明らかになりました。チームは水曜日にこれを知り、彼を停職としてスポッターを交代させ、NASCAR側も事実を報告しなかったことからデュホーンを一時的な出場停止処分としました。6月に裁判が行われる予定です。

 スタートから逃げたのはラーソン。エリオットが2位、さらに3位にウイリアム バイロンも浮上して、またもやヘンドリック モータースポーツが上位を占拠。アレックス ボウマンも8位付近ですが、こちらは車の状態について「ひどい」。ルースが酷いそうですが、このレースは600マイル、大事なのは日没後の終盤との相性です。一般に、路面温度が下がるのも、ラバーが乗るのもタイト方向に作用するので、一定のルースは想定内です。

観客は見た感じかなりの大入り

 ラーソンは後続を引き離して快走。中団ではカイル ブッシュが18位から8位へと上げてきます。こちらはスタート前に「グリップが無い」という話で、日没後に上がってくることを想像したら、自身でも驚きの状態で満足しているという情報です。温度がやや低いというのが、予定よりも早く車とコースが合う要因かもしれません。

 46周目あたりからピット サイクル。エリオットはピットを前にして差を詰め、ピットの入り口でもブレーキを詰め、ラーソンの背後についてステージ1後半へ向かいます。先週は大活躍、まっささん一押しのロス チャステインはオイル ポンプのベルトが壊れてガレージ行き、結局41周遅れの37位でした。無念。
 ブラッド ケゼロウスキーら数台がコーション待ちの賭けに出たものの不発、ライアン ブレイニーはルース ウィールで再ピットとチーム ペンスキーは今一つ流れがよくありません。

 ステージ1後半もラーソンが逃げて周回遅れを量産、スタートからのグリーン周回としてはこのイベント史上最長となります。ここでFOXの放送席には、本日のグランド マーシャル(YouTubeの放送ではカット)だったジェイ レノとケビン ユーバンクスが登場。レースが早くも中だるみしているのでしばし放送席はゲストと雑談で盛り上がります。

 ジェイレノは司会者やコメディアンとして有名であると同時に自動車コレクターとしても知られています。グランツーリスモで遊んだことがある方は「ジェイレノ タンクカー」という名前に聞き覚えがあると思いますが、彼の発案でホット ロッドと戦車用エンジンを合体させて作ったオリジナル車両です。ユーバンクスはジャズのギタリスト、レノとは番組で共演したいたこともあるそうですね。

 ステージ残り6周、10位あたりにいたダニエル スアレスが右前タイヤを傷めたようで失速。緊急ピットとなります。もったいないですが、よく壁に当てず、また後ろにいたエリック ジョーンズも追突せず回避しました。まだまだ先は長いです。ステージ1は当然ながらラーソンが制しました。エリオット、バイロンと続きます。ステンハウスが9位と健闘しました。


 FIRST PLACE FINISHと予告勝利みたいなロゴですが、これはメトロテック ケミカルというシャーロットに拠点がある企業のブランド名。車体の外装を洗浄しつつ保護する洗浄液や、車内の脱臭・消毒サニタイザーなどの化学品を扱っている企業のようです。


 ステージ2、ラーソンとエリオットの1列目で始まり、エリオットとケビン ハービックが2位争いをしている間にラーソンはもう単独走行に。ケゼロウスキー陣営の情報だと、トラクションコンパウンドの上を走ると右前の負担がちょっと大きい模様。

 このランではラーソンが独走とはならず、上位は等間隔の1列。ラーソンには可能な限りトラクションコンパウンドを避けたイン側を走ってタイヤをいじめないよう伝えられた様子ですが、125周目あたりからエリオットがラーソンの背後につきます。
 そして132周目にとうとうリード チェンジ。お客さんも大盛り上がりです。段々夕方になってきているので、路面状況も変化していると思われます。

 このステージではカート ブッシュがチャステインと同じトラブルでガレージに直行しました。先週はミスって2台の車の真ん中を突っ切ったカート、今日は失速して左右を車がすり抜けていきました。

 146周目あたりからピットサイクルとなり、トップ2は同時ピット。抜かれた後もエリオットに食い下がっていたラーソンは、ピット入り口で追いついて並走w

 ピット内で逆転して再びリーダーとなります。チームメイトもお構いなしですね。先にピットに入っていたバイロンがエリオットをアンダーカットしたため間に割って入り、ラーソンは一息つくことができました。
 173周目、修復してコースに戻ってきたカートの車が白煙を上げてオイルを撒きコーション。これは見ていて苦笑いです。このコーションでボウマン、デニー ハムリン、ジョーイ ロガーノの3人が2タイヤ交換に出てラーソンの前に出ました。ステージ残り20周ぐらいですから、ここはひとつお試しです。

 178周目にリスタート、2タイヤ組の3台がひとまずトップ3を形成します。しかしロガーノは早々に脱落、ハムリンがバイロンをかわしてリーダーとなりますが、エリオットが猛追。
 リスタート直後の混戦で3ワイドの間にハマって大きく順位を下げかけたエリオットでしたが、ここからあっという間に盛り返して183周目にリードを奪います。しかしこれも長くは続かず、188周目にラーソンがインからエリオットをかわしてコーション前の定位置へ復帰。
 このままラーソンがステージ2も制しました。エリオット、バイロンとトップ3はステージ1と同じ顔触れ。クリス ブッシャーが8位で地味ながら好走。2タイヤ組ではボウマンの7位が最上位でした。
 今日は4ステージ制ですが、過去ラーソンはステージ1、2をスイープしたレースで一度も勝っていません。いつもと違うので負のデータも払しょくされるでしょうか。

 ステージ2終了後、一旦全車がピット レーンに整列して停止。任務中に亡くなった軍関係者の方々への30秒の黙とうが行われ、レースは後半戦へ向かいました。
いよいよ日没

 ステージ3、ラーソンとエリオットの1列目でリスタートしますが、2列目のバイロンがラーソンを猛プッシュしてサポートしつつ自らも2位に浮上。そしてそのままラーソンの背後で重圧をかけます。ラーソン、今回はトラクションコンパウンドを使って走ります。
 231周目、とうとうバイロンがラーソンを抜いてリーダーに。ステージ2でのエリオットとの攻防と同じパターンですね。このレースは星条旗を意識した特別スキームが多いですが、バイロンもそのうちの1台。

 ヘンドリック3台の後ろにはカイルがつけ、5位にボウマン。5位スタートのケビン ハービックはだいたい4~5位で安定していましたがこのステージやや苦戦して6位に後退。137周を終えてずいぶんと早いタイミングでピットに入りました。ルースウィールのようで、最低限の周回で安全策をとったようです。ハービックは結局このレース10位でした。

 246周目あたりからピットサイクルとなり、ラーソンはバイロンより1周早く入った上に入り口でも攻めたのでアンダーカットに成功。再びリーダーを奪い返します。カイルもこのサイクルでチェイスをかわすことに成功し、とうとう3位まで上げてきました。
 274周目、クイン ハウフがジェームス デイビソンを押してしまい、デイビソンがあやうくクラッシュ。無線でお怒りですが幸い大きな損傷には至らずレースを続行。32位と33位の車です。

 周回遅れになりまくるリック ウェアー レーシングですが、今回は4台全て偏頭痛薬・Nurtec ODTがスポンサー。そして4台それぞれに、アメリカ軍、陸軍、海軍、空軍の名前が入っています。デイビソンはNAVY=海軍ですね。

 ラーソンはバイロンとの差を2秒に広げて快走、クルー チーフのクリフ ダニエルズによれば、今日はそれほどレース中に大きな路面温度の変化は起きない予想。実際スタートからの変化は7°Fにとどまり、車のバランスは一貫して良いようです。最初から涼しめの条件だったので落ち幅が少ないのかもしれません。
 また放送席の話だと、近年は解析技術の進歩で可能な限りスプリッターを路面に近づけて目一杯ダウンフォースを出しにいくため、そのバランス次第では、路面温度が下がってきても リアのメカニカル グリップの向上 < フロントのダウンフォース量の増加 となり、むしろルース方向になることも多いそうな。

 ラーソンは周回遅れにされまいと粘るエリック ジョーンズを抜くのに苦戦し、その間にバイロンが接近。そのままステージは最終盤を迎えますが、296周目、ライアン ニューマンがタイヤのトラブルに起因したらしきクラッシュを喫しコーションとなりました。ジョーンズは粘ったかいあってフリー パスを獲得。このままステージ3はコーションで終了となり、ラーソンがステージ3も獲りました。

 ピットではカイルがバイロンを逆転して2位となり、カイル対決でファイナル ステージが始まりました。過去に2人のカイルが1-2となったレースは4度あり、いずれも勝ったのはブッシュの方のカイルだということです。

 違反リスタートかと思う出だしで一瞬リードを奪ったカイルでしたが、動き回っているうちにエリオットとバイロンにかわされ、さらに後ろにボウマン。ヘンドリックに取り囲まれます。
 リーダー争いはエリオットがラーソンのインに飛び込もうとしますが、これを見たラーソンがラインをミドルからインに急に下りてブロック。デイトナ500の最終周かと思うようなハゲしい攻防となり、やはりチームメイトでもお構いなしの戦いです。

 そのうちぶつからないか心配でしたが、エリオットは攻めた代償か周回とともにラーソンに置いて行かれてしまい、またもや独走態勢となりました。一方3位~5位は依然として僅差のまま。まだラーソンからも3~4秒の範囲なのでぎりぎり勝負権があります。

 CM中にはトゥルーエックスがここに来てタイヤのトラブルで緊急ピット、2016年に400周中392周をリードして優勝し、『ステージ制という制度を作るきっかけを作った男』ですが、今日はどうも乗れていませんでした。この緊急ピットが致命傷となってこのレース29位でした。ってあれ?さっきから左上の表示が67LAPS TO GOのまま進んでないな、今本当は何周目なんだ・・・

 今何周目か分からない状態に陥りましたが、カイルはいずれも周回遅れに詰まったタイミングを利用してバイロンとエリオットをかわしてとうとう2位に浮上。表示はタイム差もフリーズしているので何秒差かの判断もできません。勘弁してw

 346周目あたりからピットサイクルに入ったと思われ、サイクルを終えてラーソンのリードは約2秒。カイル、バイロン、エリオットによる2位争いはピット直後も続きました。カイルはバイロンを周回遅れのラインに追いやる力業を披露しますが、この後結局競り負けて4位へ。テロップは一時周回数部分だけ手入力になったようでしたが、残り48周ぐらいでようやく修復されました。
 
66の脇をすり抜けたら52が2枚目の壁として登場…


 ラーソンはここから先も全くつけ入る隙を見せず。2位争いはこの後も形を変えながら続いて行ったため、気づいたらリードは10秒を超えてしまいました。
 大波乱のコーションも起こらず、ラーソンがこのまま4ステージをスイープでコカコーラ600を制しました。
 

 終わってみれば327周のラップ リードを記録。ピット作業の速さも素晴らしく、ピット前に一旦抜かれてもステージ後半にはクリーン エアーを得て自分のペースを常に守り、それゆえ不必要なアジャストも不要だったんだと思います。何かミスって集団に埋まると、ハンドリングが悪くなっていじりまくって負のサイクルにハマることはけっこうありますがそんな場面皆無でした。

 エリオット、カイル、バイロン、ボウマンと続き、カイルがなんとかヘンドリックの1-2-3-4を阻止。ヘンドリックは空力面で非常に良い何かを見つけており、ジョー ギブス レーシングは気温が低い今日の条件ではダウンフォースをつけすぎたのでは?と解説されていました。
 ヘンドリックモータースポーツはこれでチームとして269勝目となり、ペティー エンタープライゼスが長年保有して来た最多優勝記録を塗り替えました。本来なら新車に切り替わっていたはずの2021年、まさかヘンドリックが4台揃ってこんな快進撃を繰り広げることになるとは全く想像していませんでしたが、NASCARが必死に何か探して秋口に車検を厳格化したりしないかちと心配になるレベルですw

 ヘンドリックが速すぎて目立ちませんでしたが、リチャード チルドレス レーシングもオースティン ディロンが6位、タイラー レディックが9位、スアレスも周回遅れではトップの15位と、データを交換している結果が出ていると思われる好成績です。スアレスもトラブルが無ければトップ10はじゅうぶんいけた気がしますね。
 一方心配なのはスチュワート-ハース レーシングで、ハービック以外の3人はなんと21~23位で仲良く低迷。特にエリック アルミローラがトラブルとかも無く普通に走ってさっさと周回遅れになっているというのがあまりに不思議。スパイアー モータースポーツのコリー ラジョーイより遅いってかなり深刻だと思います。車を壊しすぎて中古で組んでるんじゃないだろうな。。。

 今年の600マイルは結局トラブルと単独事故によるコーションが1回ずつ、しかもうち1回はステージ終了と重なったので計4回だけとなりました。これはトゥルーエックスが圧倒した2016年と並ぶ数字。ただ当時はステージ制ではありません。1970年代にはコーション3回というレースが3度もあるんですが、実質的には最小レベルでした。
 特別なレース、かつ距離が長いこともあって100×4という設定になっていますが、結果的に毎ステージ同じ流れになってしまうので、これだったら100/125/175とかの3ステージ制の方が面白いような気がします。『50周走れば良い』という感じなので、燃料的には10周以上ゆとりがあり、タイヤもそこまで減らないのでゆとりがあって、レースが単調になる一因な気がします。
 来年は車が新しいのでとりあえずこのままでしょうが、来年も似た傾向なら、4ステージのこだわりはやめてもいいんじゃないでしょうかね。

 さて、600マイルも走って大変でしたが来週も休みではありません。次戦はロード コースのソノマです。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
ファイナルステージのラップ表示が分からなくなり、2ストップ?燃費レース?と見ていて混乱しました。表示が止まってたんですね。そこまでは見てませんでした。ヘンドリックと言うよりラーソンが強く、チャンピオンの目が出てきた・・・と言う気がします。チェイスとラーソンがチームメイトになったらどうなるだろう?と思ってましたが、ラーソンの伸びしろと移籍したタイミングが良かったんでしょう。ハーヴィックの孤軍奮闘が目立ちますが、SHR深刻ですね。あまりに遅すぎます。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 まさかあのテロップがバグるとは思ってなかったので不意打ちを食らった感じでしたw
ラーソンは本当にこのままファイナルまで行きそうな流れになってきましたね。ソノマでおそらく速いであろうチェイスに対して、かつてはリアタイヤを早々に摩耗させてソノマではお話にならなかったラーソンがどういう競争力を見せるのか、というのが次戦の個人的注目点です。
まっさ さんの投稿…
チャステインがぽしゃると急に見る気が。。。 スパイア時代は事故でも写ることが奇跡だったので何にせよ嬉しかったですが。。速くなった証拠です。

ヘンドリック勢はチームプレイお構いなしで走っても結果出すのに、ジョーギブスの#11と#19は2人仲良くぽしゃってしまうのはなんででしょう???
キャラの差なのか、、
NASCAR七不思議。
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 チャステインに意欲が左右されておる(;・∀・) NASCARの場合F1みたいに「レッドブルはダウンフォースが多いけどリアが不安定でペレスはそれが苦手」というような明確な違いが外から見えないので、何がどう作用して好不調の差に繋がってるかなかなか分かりにくいですよね。
ヘンドリックは今ベースのセットが異様に決まっているので、各ドライバーが味付け程度で力を発揮できる最高の状態なのは間違いないとは思うんですが。