FE 第8戦 プエブラ

ABB FIA Formula E CBMM Niobium Puebra E-Prix
Autódromo Internacional Miguel E. Abed 2.982km
45minutes+1Lap
winner:Lucas di Grassi(Audi Sport ABT Schaeffler Formula E Team/Audi e-tron FE07)

 フォーミュラE第8戦・9戦はプエブラの2連戦です。プエブラはメキシコでは第4の都市だそうでして、ここにある常設トラック・アウトドローモ ミゲール E.アベッドが舞台です。ここはペーパークリップ型の低バンクのオーバルトラックとインフィールドで構成されていて、2005年の開場なんですが最新設備のサーキット、というよりは地方の小規模トラックという雰囲気です。


 舗装がかなり荒れていて、このレースでは最終ターンとなるオーバルのターン4部分には明らかに路面の色が違うバンプがあります。常設なんですが、雰囲気はテンペルホーフ空港みたいな、空き地の特設サーキットに似ている印象です。

 今回、アタック モードのアクティベーション区間はターン8の外側に設けられましたが、単に走行ラインの外側というだけでなく、別レイアウトで使用するもう1つ大回りするヘアピンのしかも大外ラインというすごい大回りなところに設けられました。
 旋回半径が全く違うので、先日のピット出口の話じゃないですが双方のラインの合流点がちょっと危なそうです。ブリーフィングでは、走行ラインにいる車が優先で、アタックモードを取りに行った大回りの人が譲らないといけないそうです。

 
 予選ではポルシェのパスカル ベアラインがPPを獲得。0.058秒差で日産e.damsのオリバー ローランドが続きました。グループ予選ではグループ2だけ妙にタイムが良くて非常に路面が滑りやすくてタイヤのピークをうまく持って行くのが難しい様子でした。
 グループ1はちょっとでも良い路面で、あわよくばスリップストリームを得て、と思った6人が譲り合いを初めてしまい、結果は計測開始時点で並走してるわ、タイヤに熱が入ってなくてターン1を止まれないわの酷い状態でした。単走すれば良いものを・・・

 決勝、スタート前のグリッド上でローランドは無線の調子が悪いとかで作業中。無線が聞こえないとこのレースでは致命的なのでなんとか直したいところです。

 スタート、ベアラインは好発進でしたが、ローランドは何かトラブルがあったのか加速がとてつもなく遅い・・・本人も危ないと思ってすぐ左側に回避行動を採ったものの、後ろにいたジャン エリック ベルニュは左から抜こうと動いてしまったので詰まって巻き添えでスタート失敗。


 ローランドはレース中のバッテリー残量やアタックモード使用のグラフィックも表示されないので、無線の問題と関係あるのかは分かりませんが電気系の何かしらに問題が起きている様子。スタート失敗も無線が無くて手順がうまくいってないせいか、電気系の問題なのか、いずれにしてもトラブルがきっかけと考えられそうです。
 一方5位スタートのマキシミリアン グンターはスタートが良かった上に前がうまく開け、ターン1でチームメイトのジェイク デニスをかわしていきなり2位となります。

 混乱は続き、ターン8でニック キャシディーがクラッシュ。バリアに当たってサスペンションが折れてしまって走行不能、いきなりSC導入となりました。

 残り37分ほどでリスタート。ベアラインはリスタート2周目に上位勢で率先して1回目のアタック モードを取得します。ちょうどグンターがはみ出してしまい、戻ったところでデニスとゴタゴタしていたので2位以下と差が広がっていました。
 ベアラインはこれで一旦3位に後退しますが、ここはオーバル区間のやや長い全開域があるのでその周にはまずデニスをかわします。しかしマネージメントが必要なのかミスがあったのか、グンターを猛追するという展開にはならず、結局抜く前にアタックモードが終わってしまいました。

 ベアラインのアタックが終わったところ、残り30分でグンターもアタックモードを使用。しかしこちらは一気に5位まで落ちると、結局アタックモードでは3位まで戻すにとどまります。この後2位のデニスもアタックモードに入ったのでこれで元々の2位に戻りますが、ベアラインとの差はサイクル前より開いて3秒差となってしまいました。

 残り24分、ベアラインはこの3秒差を活かして順位を下げることなくアタックモードの2回目を起動。不確定要素が無ければ圧倒的有利な状況を作りました。同じ周、ベルニュもアタックモードを使いますが、走行ラインとの合流点でアレクサンダー シムズに横から当てられて壁に挟まれました。自走してピットへ向かったのでSCは出ませんでしたが、表彰台争いが一転してリタイアとなります。

 中団ではロビン フラインスが前の車を抜こうとして、2台前方のニック デ フリースに突っ込む事故発生。レース開始前の時点で選手権1位と2位による事故でした。どちらも走行を継続しますがフラインスにはペナルティーが出ました。デフリースは事故にめげずに走ったら9位で入賞し2点を手にしています。


 残り18分、サム バードが2回目のアタックモードを使いますがまた事故発生。アレックス リンと合流点で接触しバードは自走不能な大破、本日2度目のSCとなります。18位スタートから入賞圏に入っていたバード、勿体ないリタイアです。原則論に従えばバードは引いて譲らないといけない箇所だったんですが、なんか設計にそもそも問題がある気もします。


 残り約12分、ベアライン、グンター、デニス、エドアルド モルターラ、ルーカス ディ グラッシの順でリスタート。ただしデニスはまだ2回目のアタックモードを使っていません。

 ベアラインはさっきの2回目のアタックモード使用時に、必要以上に飛ばさずにほどほど走行でエナジー管理していたと思われ残量もばっちり。リスタート後快調に差を広げます。が、なんとここで技術違反による審議という情報。ローランド、セバスチャン ブエミ、アンドレ ロッテラーにもこの後同じ情報が出ます。てことは日産とポルシェです。

 2位争い、デニスがグンターを抜いて2位へ。デニスにアタックモードを使うための空間を作らせる目的でチームからの指示が出たのかと思いましたが、どうもグンターはエナジー残量が周囲より少ないので、ペース的に速く走れない様子です。

 残り5分、デニスがアタックモードを取りに行ったので7位へ後退。そして同じころモルターラがターン11でグンターを抜いて2位となります。ベアライン次第で優勝!?ディグラッシもこれに続いたので3位です。グンターはいよいよエナジー残量が厳しくなってきて通せんぼジジイになってきました^^;

 残り1分30秒、ディグラッシがターン1でモルターラをかわし、ひょっとすると優勝かもしれない2位へ。さらにレネ ラストも翌周にモルターラを抜いて3位へ。ラストは上位勢で圧倒的にエナジー残量が多いです。ラストはFEに慣れて来たのか、最近はうまくエナジーを残せているレースが出て来た感じがします。なぜかいつもシーズン後半になると強いぞアウディー。

 最終周、ベアラインらに対する審議は未だに出ず、レース後に暫定表彰式やってからまた結果が変わるやつかなあ、という流れ。ベアラインはとりあえずトップでチェッカーを受けました。


 が、『レース後に~』の心配はありませんでした。チェッカーから数秒後、順位表示からベアラインの名前がいきなり消滅。技術規定違反で失格という裁定が下りました。2位でチェッカーを受けたディグラッシはこれで2季ぶりの通算11勝目、最終ターンでドーナツを披露しますが、この車明日も使うんですよ~。


 ポルシェと日産が失格になった要因はタイヤの登録でした。規定では決勝レースが開始される10分前までにレースで使用するタイヤをFIAに対して電子的に申請する必要があります。どうもこの2チームは手続きに失敗があり、別に何かタイヤによってレースで不正な利益を得る行為が行われたわけでは無いようですが、お役所で言うところの書類不備のような状態になって失格となったようです。

 ベアラインはレースの終盤、ペナルティーの可能性を無線で伝えられたそうですが、チーム側も正確に状況を理解できておらず『5秒加算の可能性がある』と伝えて、とりあえず差をできるだけ広げるように言っていたようです。が、5秒どころか失格でした。これはベアラインはどうしようもないですね。
 この種の登録作業って他のレースでも行われていると思うんですが、FEで妙に多い気がするのは、やっぱり1日で練習~決勝まで全部やる慌ただしさとも関係しているんでしょうかね?

 一方タナボタで1-2を手にしたアウディー。タナボタとは言っても8位、9位のスタート位置から自力でこの位置まで上げて来たわけですから、非常に効率が良くて走行性能の面でもレースで安定して速く走れるセッティングだったと思います。2台揃って速いというのが良いですね。
 BMWは逆に序盤2位、3位を抑えて状況は良かったのに、アタックモードのタイミングと使用中のエナジー管理がちょっと甘かった印象です。デニスは5位で踏みとどまりましたが、グンターは最後ズタボロになって12位で入賞すらできませんでした。

 プエブラのトラックは予選を含めてドライバーがミスする箇所もあり、少なくともメキシコシティーで開催していたレースよりは面白味を感じました。エナジー管理も、難易度が高すぎてパレード化するでもなく、かといって楽々でもなくて見ていて面白い難易度に思いましたね。
 アタックモードの場所はなかなか難しいところです。走行ラインの人からしたら左後方から自分より高速で真っすぐ立ち上がって来る車両は視認しズラいですし、かといって加速している側も『引け』と言われても自分の方が合流地点での速度は圧倒的に乗っているので、行ける気がしてしまってそうそう下がろうとは思えない気がします。
 ただ、コースが完全に分かれているので別の場所から戻ってくるような印象ですが、ベルリンなんかも大回り具合で言えば同じぐらい大回りしている気もするので、『別のコースから戻って来る』という印象が、双方のドライバーの判断に干渉している面も感じますね。実際に走っているドライバーで無いと実際の危険度具合は分かりませんが、少なくとも他のレースでこの種の事故はほとんど起きていないですから、事故が起きやすい形状なのは確かでしょう。

 選手権ではランキング上位勢はあまり加点できなかったので、フラインスが変わらず1位、アントニオ フェリックス ダ コスタが今回6位で選手権2位に浮上。ラストがファステストを含めた19点を稼いで4位に上がってきました。まだまだ、今全然ここに出て来ていない人が最終的にチャンピオン争いをしていても何ら不思議ではないですね。

 次戦も連戦でプエブラです。

コメント

okayplayer さんの投稿…
アタックモードの道のアスファルトが亀裂バキバキに見えて大丈夫なんだろうかと思いながら観てました笑
バードはサンドイッチされちゃって残念…

しかしFEは毎度毎度いろんな理由で技術規定違反が出ますねぇ〜笑
SCfromLA さんの投稿…
>okayplayerさん

 毎回のように妙な失格が出て理由が分からず、しかも日本語サイトでは情報が見つからないことが多いのでNASCAR同様英語で色々悪銭苦闘させられて面白いです 笑